紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
あらゆるモノがインターネットに繋がる「IoT(アイオーティー)」は、2020年代以降の高度情報社会の核となるテーマです。
IoTを実現する技術としてはAI(エーアイ)や5G(ファイブジー)、クラウドなどがありますが、センサーや顔認証技術といった領域では日本企業が世界一の競争力を持つことで知られています。
特に、IoT機器に欠かせないセンサーなどの精密機器を手掛ける日本株は、外国人投資家に人気のセクターとなっており、日本株をけん引する銘柄が数多くあります。
今回は、具体的にどのようなテーマ株がIoT関連銘柄として注目されるのかを説明した上で、代表的なIoT関連銘柄10銘柄の株価動向をチャート付きで解説していきます。
- Iotとは何かがわかる
- Iot関連銘柄の特徴がわかる
- Iot関連銘柄10銘柄の値動きを実際のチャートで見ることができる
IoT関連銘柄とは?
あらゆるモノがインターネットに繋がるIoTについて改めて理解しておいた上で、具体的にどのような事業を手掛けている銘柄がIoT関連銘柄として注目されるのかを抑えておきましょう。
IoTとは?
IoTとは「Internet of Things」の略称であり、あらゆるモノがインターネットに接続されることです。インターネットに接続される電子機器は「IoT機器」と呼ばれ、IoT機器で溢れた社会は「IoT社会」と呼ばれます。
現在でも、パソコンやスマートフォンはインターネットに接続されていますが、2020年以降に到来するIoT社会においては、まさにその言葉通り、あらゆるモノがインターネットに接続されることが想定されます。
IoTにおいて重要な技術やインフラとしては、AIや5G、クラウド、センサーなどが挙げられます。
IoT機器に搭載された「センサー」が情報を取得し、「5G」による高速大容量通信によって情報を「クラウドネットワーク」に送り、クラウドネットワークに送られた情報は「AI」によって処理され、AIで処理された情報がIoT機器にフィードバッグされるというのが、IoTの基本的な概要です。
今や、AIや5Gという言葉を聞かないことはほとんどありませんが、AIや5Gがここまで注目される最大の理由は、IoT社会を実現するために必要な技術・インフラであるためです。
IoT関連銘柄の特徴について
IoTにおいて重要なのはAIや5G、クラウドといったIT技術ですが、これらの技術はアメリカのGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)やMicrosoftが圧倒的な競争力を誇っています。
残念ながら、日本企業がIoTの基幹技術となるAIや5G、クラウドといった領域でGAFAに太刀打ちするには非常に厳しい状況にあるということが現実です。
ただ、IoTでなくてはならないセンサーや顔認証技術といった領域では、日本企業は世界最高クラスの競争力を持つことで知られています。
例えば、ソニーのCMOSイメージセンサーは世界中のあらゆるスマートフォンに搭載されており、キーエンスが手掛けるファクトリーオートメーション(自動化工場)向けのセンサーは世界中の工場になくてはならないものです。NECの顔認証技術は世界最高レベルであることが知られています。
日本企業はIT領域ではGAFAに太刀打ちできませんが、IoT社会を支えるセンサーなどの精密機器では「技術大国日本」が未だに健在なのです。
今回注目する日本株のIoT関連銘柄は、外国人投資家にとって最も人気のあるテーマ株となっており、東証全体をけん引する一大セクターとなっています。
センサー関連銘柄
IoT社会を支えるセンサーを手掛ける銘柄を見ていきましょう。
【6861】キーエンス
【6861】キーエンスは、ファクトリーオートメーション(自動化工場)向けのセンサー大手企業です。また、同社は工場を持たないファブレス企業としても有名となっています。
【6861】キーエンスの月足チャート
キーエンスの株価は、2013年から2020年までの7年間一貫した右肩上がりの上昇トレンドとなっています。
2020年のコロナショックでもほとんど下げず、新型コロナ相場では大型銘柄の中で一人勝ちとなっており、売上高6,000億円の企業にも関わらず、時価総額はトヨタ・ソフトバンクグループに次ぐ3位にまで上げています。
2020年以降のIoT社会を支える企業であり、外国人投資家にも人気の銘柄です。
【6758】ソニー
【6758】ソニーは、世界中のスマホに搭載されているCMOSイメージセンサーや、ゲーム機「プレイステーション4」を背景に復活を遂げています。
「プレイステーション4」はインターネットに繋がっているIoT機器であり、センサーにおいてもIoT機器においても日本株を代表するIoT関連銘柄と言ってよいでしょう。
【6758】ソニーの月足チャート
ソニー株も、2013年から2020年に掛けて一貫した右肩上がりの上昇トレンドとなっています。
2020年6月には次世代ゲーム機「プレイステーション5」も発表しており、今後も上昇トレンドが続くことに期待です。
【6645】オムロン
制御機器メーカー大手の【6645】オムロンは、センサーやスイッチなどIoT機器になくてはならない電子部品を多数手掛けています。
特に、血圧センサーにおいては世界トップシェアを誇っていることで知られており、世界的な高齢化も追い風になることでしょう。
【6645】オムロンの月足チャート
オムロンも、キーエンス・ソニーほど明確な上昇トレンドではないものの、安値を切り上げている右肩上がりの株価チャートとなっています。
【6981】村田製作所
【6981】村田製作所は、センサーはもちろん、セラミックコンデンサーやインダクターなどIoTになくてはならない電子部品を多数手掛けている銘柄です。
センサーという領域に留まらず、電子部品に強い技術大国日本を象徴する銘柄と言ってよいでしょう。
【6981】村田製作所の月足チャート
村田製作所の株価は、直近5年間ではほぼ横ばいとなっています。
株価は横ばいとなっているものの、日本株のIoT関連銘柄としては絶対に外せない銘柄です。
顔認証技術関連銘柄
IoTで重要な役割を果たす技術と期待される顔認証技術関連銘柄を抑えておきましょう。
【6701】NEC
【6701】NECは、顔認証技術において世界一の技術力を持つことで知られています。
【6701】NECの月足チャート
NECの株価は、長期で見ると、回復基調にあることが分かります。近年は、国内IT投資の活発化から、純利益1,000億円超えとなる過去最高の決算を発表するなど業績も絶好調です。
AI(自動運転)関連銘柄
IoT社会を実現する上で、AI技術は欠かせないものです。特に、IoT関係で注目されるAI技術としては自動運転が挙げられます。
日本株でAIや自動運転を手掛けている銘柄はベンチャー企業が多く、期待感先行で株価が上がっている銘柄がほとんどではありますが、IoT関連銘柄として抑えておきましょう。
【3906】ALBERT
【3906】ALBERTは、トヨタ自動車と自動運転で提携したことでも知られる代表的なAIベンチャーです。
【3906】ALBERTの月足チャート
ALBERTは、2018年にテンバガー(10倍株)を達成したことでも有名になった銘柄です。ただ、2019年以降は大きく下落しており、自動運転への期待感先行で買われ過ぎたというのが正しい評価でしょう。
自動運転に搭載できるAI技術はIoTにも転用できるため、IoT関連銘柄としても注目の銘柄です。
【4425】Kudan
AIベンチャーの【4425】Kudanは、自動運転向けの高機能「SLAM」技術を手掛けていることで知られています。
なお、「SLAM」とは、センサーから取得した情報で自動車の位置を把握して地図を作成する技術のことです。
【4425】Kudanの月足チャート
Kudanの株価は、ほぼ“IPOゴール”と言ってよい推移となっています。
IoT分野でも注目されるAIベンチャーですが、株価は投機目的が先行した値動きとなっている面は否めません。
【3993】PKSHA Technology
【3993】PKSHA Technology(パークシャテクノロジー)は、画像認識や自動対話などディープラーニング技術開発を手掛けるAIベンチャーです。
自動運転ではトヨタと提携しており、AIはもちろんIoTでも注目の銘柄です。
【3993】PKSHA Technologyの月足チャート
PKSHA Technologyの株価も、Kudan同様に“IPOゴール”に近い形となっています。
日本株のAI関連銘柄はベンチャー企業が中心であり、アメリカのAI半導体大手NVIDA(エヌビディア)のような世界的AI企業は皆無であるというのが現状です。
AIはIoTとは切っても切り離せない関係にありますが、日本株にはリスクが高い新興銘柄しかないというのが現状となっています。
その他のIoT関連銘柄
センサーや顔認証技術、AI以外のIoT関連銘柄の株価動向を見ていきましょう。
【3987】エコモット
【3987】エコモットは、IoTインテグレーション事業を軸に展開するIoTベンチャーです。
AIベンチャーは数多いものの、IoTベンチャーという珍しい位置付けの企業となっています。
【3987】エコモットの月足チャート
エコモットの株価は、IPOしてから長い間、苦戦している状態です。
AIではなくIoTを前面に出すベンチャー企業は珍しいものの、珍しさだけでは株価が上がるのは難しいということでしょう。
【6232】自律制御システム研究所
【6232】自律制御システム研究所(ACSL)は、ドローン専業のベンチャー企業です。ドローンで培った自律制御技術を用いたIoT化に係るソリューションサービスを提供しています。
【6232】自律制御システム研究所の月足チャート
【6232】自律制御システム研究所の株価は、これまで見てきた他のベンチャー株と同様に苦しい値動きとなっています。
まとめ
今回は、代表的なIoT関連銘柄10銘柄の株価動向をチャート付きで解説してきました。
IoTにおいてカギとなるAIや5G、クラウドといったIT技術では、日本企業はGAFAには太刀打ちできないというのが残念な現実です。
今回は、日本株のAI関連銘柄も見てきましたが、いずれのAIベンチャーも期待感で買われているに留まっており、長期投資には適さない銘柄がほとんどであると言わざるを得ません。
一方で、IoTには欠かせないセンサーでは、日本企業は世界トップクラスの競争力を誇ります。
キーエンスやソニー、オムロン、村田製作所といったセンサー関連銘柄は技術大国日本を象徴するセクターであり、外国人投資家が長期投資目的で物色しやすいセクターです。
あらゆるモノがインターネットに繋がるIoT社会とは、「あらゆるモノにセンサーが搭載される社会」ということでもあります。
日本株のIoT関連銘柄としては、センサーや顔認識技術など日本企業が世界トップレベルの競争力を持つ銘柄を抑えておきましょう。
紫垣 英昭
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