水害関連銘柄は台風や大雨で買われやすい!国土強靭化の一環としても注目!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

日本では、毎年のように台風や豪雨による水害が発生しており、気象庁は今夏も大雨被害を警告しています。

建設・土木セクターを中心とする水害関連銘柄は、水害が発生すると物色されやすい傾向があるテーマ株です。

2018年7月の西日本豪雨や2019年9~10月の台風15号・台風19号、2020年7月の熊本豪雨といった大規模水害が発生した際には、水害関連銘柄が物色されてきました。

この記事では、株式市場で水害が注目される背景や水害関連銘柄の特徴・傾向について解説した上で、水害が発生すると物色されやすい水害関連銘柄を紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 株式市場で水害が注目される背景や水害関連銘柄の特徴・傾向についてわかる
  • 水害が発生すると物色されやすい水害関連銘柄についてわかる
  • 水害関連銘柄がチャート付きで学べる

台風や大雨による水害は株式市場でも注目される

台風や大雨による水害は、ほぼ毎年のように日本で発生しています。

2023年の最新の水害情報とともに、過去10年日本で起きてきた大規模水害を振り返っておきましょう。

気象庁は2023年夏に大雨災害への注意を発令

2023年7月始めには、九州地方を中心に大雨となっており、各地で土砂災害や低地の浸水、河川の増水などに警戒が強まっています。

ニュースになるほどの水害にはなっていませんが、日本ではいつ大規模水害が発生してもおかしくありません。

気象庁は2023年6月20日、7月から9月に掛けての3ヵ月予報を発表しました。

今夏も猛烈な暑さが予想されるとともに、前線や低気圧の影響を受けやすい東日本や西日本では降水量が多くなるため、雨による災害への注意を呼び掛けています。

気象庁は、大雨や河川の氾濫などによる水害について、5段階の警戒レベルを設定しています。

警戒レベル

情報

とるべき行動

警戒レベル5

大雨特別警報、氾濫発生情報

命の危険が迫っているため直ちに身の安全を確保する

警戒レベル4

土砂災害警戒情報、氾濫危険情報、高潮特別警報など

危険な場所からの避難が必要

警戒レベル3

大雨警報(土砂災害)、洪水警報、氾濫警戒情報など

高齢者等は危険な場所からの避難が必要

警戒レベル2

氾濫注意情報、大雨注意報、洪水注意報など

ハザードマップなどで避難行動の確認が必要

警戒レベル1

早期注意情報

災害への心構えを高める必要

※出典:気象庁「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」

特に、警戒レベル5の水害が発生すると、土砂災害などの大規模災害につながりやすいため非常に危険です。

日本は過去10年にも多くの水害が発生してきた水害大国

日本は、これまでにも数多くの水害が発生してきた水害大国です。

過去10年間において、日本で甚大な被害となった水害についてまとめると、次のようになります。

年月日

豪雨・台風被害

2013年10月

伊豆大島・土石流被害

2014年8月

広島土砂災害

2015年9月

関東・東北豪雨(鬼怒川の堤防決壊)

2017年7月

九州北部豪雨

2018年7月

西日本豪雨

2019年9月

令和元年房総半島台風(令和元年台風第15号)

2019年10月

令和元年東日本台風(令和元年台風第19号)

2020年7月

熊本豪雨

2021年7月

伊豆山土砂災害

日本では、ほぼ毎年のように、甚大な被害をもたらした豪雨・台風被害が発生してきたことが思い出されます。

2018年7月の西日本豪雨は、死者200人を超える戦後最悪の水害となりました。

2019年9月から10月に掛けて日本列島を直撃した台風15号と台風19号は、千葉県や福島県に大きな被害をもたらしました。

大規模水害は7月~10月に集中しており、6~7月の梅雨シーズン、8~10月の台風シーズンに注意が必要です。

水害関連銘柄とは

水害が発生すると注目されやすい水害関連銘柄について押さえておきましょう。

水害関連銘柄は建設・土木セクターが中心となるテーマ株

水害関連銘柄は、「水害対策関連銘柄」や「防災関連銘柄」、より広義には「国土強靭化関連銘柄」とも呼ばれるテーマ株です。

いずれにしても、水害の被害を軽くする水害対策、水害を受けた地域を復興・復旧する事業を手掛けている建設・土木セクターの銘柄が中心となっています。

また水害関連銘柄の多くが、政府が進める「国土強靭化」でも注目される銘柄となっています。

国土強靱化とは、地震や津波、台風などの自然災害に強い国づくり・地域づくりを目指す取り組みのことです。

政府は2020年12月に「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を閣議決定し、今後5年間で15兆円を目途に投じる方針を示すなど、国土強靭化は国策テーマとしても注目されています。

水害関連銘柄は水害が起こると物色されやすい傾向

水害関連銘柄は、ニュースになるような大規模水害が発生すると物色されやすい傾向があります。

水害対策や水害からの復興・復旧を目指す銘柄が、水害が発生すると物色されやすいというのは不謹慎なことではありますが、株式市場にはこのような側面があるのは仕方ありません。

水害が発生すると、自然災害に強い建設・土木セクターの銘柄に買いが向かう傾向がありますが、地域性も重要です。

例えば、九州地方で水害が発生したら九州に地盤を持つ建設・土木セクターの銘柄、東北地方で水害が発生したら東北に地盤を持つ建設・土木セクターの銘柄が物色されやすいなどです。

水害関連銘柄のおすすめ銘柄10選!

水害が発生した際に物色されやすい水害関連銘柄を見ていきましょう。

【1914】日本基礎技術

基礎工事大手の【1914】日本基礎技術は、豪雨・台風被害で物色されやすい水害関連銘柄です。

同社は、地盤改良や地すべり対策工事に強みを持っていることで知られており、水害関連銘柄の基本的な銘柄であると言えます。

【1914】日本基礎技術の月足チャート

日本基礎技術の株価は、2019年10月の台風19号、2021年7月の伊豆山土砂災害発生時に大きく買われました。

【1926】ライト工業

法面吹付け工事大手の【1926】ライト工業も、水害対策に強い水害関連銘柄です。

同社は、地盤改良や薬液注入工事に強い建設・土木セクターの銘柄として知られています。

【1926】ライト工業の月足チャート

ライト工業の株価は、長期的に上昇しており、2018年7月の西日本豪雨、2019年10月の台風19号の際に大きく買われました。

【1929】日特建設

ダム基礎工事や地盤改良を主力とする特殊土木大手【1929】日特建設は、水害を含む自然災害全般で買われやすい水害関連銘柄です。

同社は、台風などの水害だけではなく、地震被害でも買われやすい銘柄となっており、国土強靭化において最注目銘柄の一つとなっています。

【1929】日特建設の月足チャート

日特建設の株価は、右肩上がりで上昇しており、長期チャートをさかのぼってみると2006年以来17年ぶりの高値水準となっています。

政府の国土強靭化において注目されているほか、2014年9月の御嶽山噴火や2016年4月の熊本地震、2019年9~10月の台風被害でも物色されました。

【6072】地盤ネットホールディングス

工事は行わず地盤解析や地盤調査に特化している【6072】地盤ネットホールディングスは、水害関連銘柄としても注目の銘柄です。

同社は、2021年7月に発生した熱海市の土石流被害で物色されました。

【6072】地盤ネットホールディングスの月足チャート

地盤ネットホールディングスの株価は、2021年7月の熱海市・土石流被害では一時反発したものの、長期的には厳しい展開で、低位株となっています。

【1813】不動テトラ

消波ブロック大手の【1813】不動テトラは、建設セクターの中でも水害対策に強みを持つ水害関連銘柄です。

同社が手掛ける消波ブロック「テトラポット」は、津波や水害対策の代名詞的な商品としても有名です。

【1813】不動テトラの月足チャート

不動テトラの株価は、長期的には1,100~2,200円のレンジとなっていますが、2019年9~10月の台風15号・台風19号の際には物色されました。

【5284】ヤマウホールディングス

土木向けコンクリート2次製品メーカー【5284】ヤマウホールディングスは、九州地盤の水害関連銘柄です。

同社は、2020年7月、九州地方に大きな被害をもたらした熊本豪雨の際に、九州地盤の銘柄ということで買われました。

【5284】ヤマウホールディングスの月足チャート

ヤマウホールディングスの株価は、1997年以来の水準まで回復していますが、熊本豪雨があった2020年7月には明確な出来高急増があったことが分かります。

【4825】ウェザーニューズ

民間気象情報「ウェザーニュース」を提供する【4825】ウェザーニューズは、水害関連銘柄の中でもやや特殊な銘柄です。

同社は建設・土木株ではありませんが、日常の水害対策でもお世話になりやすいおなじみの銘柄と言えます。

【4825】ウェザーニューズの月足チャート

ウェザーニューズの株価は、2020年コロナショック以降に3倍以上となりました。

特に、熊本豪雨があった2020年7~9月、2021年9~11月と豪雨・台風シーズンに大きく伸ばしたことが分かります。

【5287】イトーヨーギョー

水害対策としては、電線を地中に埋め込む「電線地中化」が注目されており、小池都知事が推進していることでも知られています。

特に、2019年9月の台風15号では、千葉県で多数の電柱が倒れる被害が発生したことから「電線地中化」は大きな注目を集めました。

コンクリート製品企業【5287】イトーヨーギョーは、電線地中化を実現する製品「D.D.BOX」「S.D.BOX」を販売していることから、電線地中化に強い水害関連銘柄として知られています。

【5287】イトーヨーギョーの月足チャート

イトーヨーギョーの株価は、2019年9~10月の2つの台風で急騰となりましたが、このときの動きが強過ぎて、以降は停滞が続いています。

【5290】ベルテクスコーポレーション

防護柵やマンホールなどのコンクリート製品を手掛ける【5290】ベルテクスコーポレーションは、イトーヨーギョーと並んで電線地中化で注目される水害関連銘柄です。

同社は、電線地中化を実現する電線共同溝(C・C・BOX)技術を有していることで知られています。

【5290】ベルテクスコーポレーションの月足チャート

ベルテクスコーポレーションの株価は、右肩上がりの上昇を続けています。

2019年9~10月の台風でも強く買われましたが、新型コロナ相場以降も上昇を続けており、同じく電線地中化で注目されているイトーヨーギョーとは対照的な値動きです。

【6351】鶴見製作所

水中ポンプ専業最大手の【6351】鶴見製作所は、水害対策に強みを持つポンプメーカーです。

同社のポンプは、雨水排水やBCP対策、内水排除、災害復旧、排水強化など、水害への備えから復旧作業まで、様々なシーンで使われています。

【6351】鶴見製作所の月足チャート

鶴見製作所の株価は、現在進行形で上場来高値を更新中ですが、水害が発生した際に買われた形跡は見られません。

まとめ

この記事では、株式市場で水害が注目される背景や水害関連銘柄の特徴・傾向について解説した上で、水害が発生すると物色されやすい水害関連銘柄を紹介してきました。

日本では、毎年のように台風や豪雨による水害が発生しており、そのたびに水害関連銘柄が物色されてきました。

ただ、水害関連銘柄は、毎回この銘柄が物色されるという銘柄はなく、水害のたびに注目される銘柄が異なっています。

自然災害に強い建設・土木セクターの銘柄が軸になりますが、【4825】ウェザーニューズや【6072】地盤ネットホールディングスといった銘柄にも注目です。

水害関連銘柄は、政府が推進している国土強靭化でも注目のテーマ株であるため押さえておくようにしましょう。

紫垣 英昭