紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
「騰落レシオ」は、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数から、相場全体の買われすぎ・売られすぎを示す指標です。
騰落レシオは、130以上で買われすぎ、70以下で売られすぎを示す、シンプルで分かりやすい指標であることから、多くの投資家やトレーダーに使われる全体相場指標となっています。
とはいえ、騰落レシオが買われすぎ・売られすぎを示したからといって、相場全体がすぐに反転するわけではないことには注意が必要です。
今回は、騰落レシオの計算方法や見方、調べ方について解説した上で、騰落レシオを使って利益を出すためのトレード方法についても紹介していきます。
- 騰落レシオの計算方法や見方、調べ方がわかる
- 騰落レシオを使って利益を出すためのトレード方法がわかる
- 騰落レシオを使う際の注意点がわかる
騰落レシオとは?
騰落レシオの基本的な意味や計算方法について押さえておきましょう。
騰落レシオの意味
騰落レシオとは、一定の期間において、市場全体の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率から、市場全体の買われすぎ・売られすぎの度合いを数値化(パーセント表示)した指標です。
騰落レシオの計算期間は、「25日騰落レシオ」が使われるのが一般的となっています。
投資情報サイトなどで「騰落レシオ」と書かれている場合には、「25日騰落レシオ」のことだと認識しておきましょう。
なお、デイトレーダーなどが、より短期的な市場の過熱感を見るための指標として「5日騰落レシオ」などが使われる場合もあります。
一般的に、騰落レシオは、東証一部構成銘柄を対象として計算されます。
東証二部、マザーズ、JASDAQの騰落レシオも計算可能ですが、意識されることはほとんどありません。
騰落レシオは、個々の銘柄やセクターを対象とした指標ではなく、市場全体の過熱感を見るための指標であることに注意しておきましょう。
騰落レシオの計算方法
騰落レシオは、過去の値上がり銘柄数の合計を値下がり銘柄数の合計で割り、100倍することで算出され、パーセント表示されます。
一般的に使われている「25日騰落レシオ」では、過去25日間の値上がり銘柄数の合計を25日間の値下がり銘柄数の合計で割って100倍することで算出されます。
25日騰落レシオの計算式
過去の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が同数だった場合、騰落レシオは100%となります。
値上がり銘柄数の方が多ければ100%より高い値となり、値下がり銘柄数の方が多ければ100%より低い値となります。
基本的には、騰落レシオは80%~120%の間に収まっている場合が大半です。
騰落レシオが、120~130%以上だと「買われすぎ」、70~80%以下だと「売られすぎ」と判断されます。
ただ、騰落レシオは、使用する期間によって、買われすぎ・売られすぎの判断が異なることには注意が必要です。
2021年9月初めには、菅総理が退陣表明したことを受けて政治の停滞打破が期待されて日本株が大きく買われました。
8月20日には27,013.25円だった日経平均は、9月14日終値には30,670.10円まで上昇。
日経平均株価の日足チャート
2021年9月14日の騰落レシオは、次のようになっていました。
騰落レシオ(25日) |
騰落レシオ(15日) |
騰落レシオ(10日) |
騰落レシオ(6日) |
149.06 |
196.67 |
237.33 |
248.85 |
いずれも買われすぎの水準となっていますが、短期の騰落レシオはより大きな値となっていることが分かります。
このように、騰落レシオと一口に言っても、使用する期間によってその水準は大きく異なることに注意しておきましょう。
以降では、一般的に広く使われている25日騰落レシオ(130%以上で「買われすぎ」、70%以下で「売られすぎ」)を前提にして進めていきます。
過去の騰落レシオ推移やリアルタイムのデータはどこで確認する?
過去の騰落レシオの推移データを調べたい場合には、「nikkei225jp.com」の騰落レシオのページを確認することができます。
「nikkei225jp.com」のサイトイメージ
こちらのサイトでは、日経平均と騰落レシオの比較チャートが掲載されている他、25日騰落レシオに加えて、15日・10日・6日の騰落レシオも掲載されています。
また、騰落レシオの更新は即日中に行われるため、リアルタイムで騰落レシオを調べる際にもおすすめです。
なお、騰落レシオの数値は、各情報サイトで若干のズレがある場合がありますが、これは東証一部に含める銘柄の定義がやや異なっているためです。
騰落レシオを使うときの注意点
騰落レシオを使って投資するときの注意点について押さえておきましょう。
底値や高値からの反転シグナルを確認するようにする
騰落レシオは、130%以上で「買われすぎ」、70%以下で「売られすぎ」を示します。
しかし、だからといって必ずしも、騰落レシオが130%以上になったらすぐに下落し、70%以下になったらすぐに買い戻しが入るということではありません。
あくまで、そのような傾向があるということであり、騰落レシオが130%以上になってもさらに上昇し、70%以下になってもさらに下落することもあります。
一例として、2020年2~3月の日経平均株価と騰落レシオを見ていきましょう。
日経平均株価の日足チャート(2020年2~3月)
日経平均株価はコロナショックによる世界株安に見舞われ、騰落レシオは2020年3月4日時点で60.33%まで下落。
しかし、株価下落は止まらず、3月16日には騰落レシオは44.31%まで下落しました。
コロナショック時のように騰落レシオが40%台にまで下がることは極めて稀ですが、騰落レシオが130%以上になってもさらに上昇し、70%以下になってもさらに下落する展開は少なくありません。
単に騰落レシオの数値だけで判断するのではなく、騰落レシオが130%以上になった場合には高値からの反転シグナルを、騰落レシオが70%以下になった場合には安値からの反転シグナルを確認してからエントリーするようにすることが重要です。
他の指標やチャートも併せて使うようにする
騰落レシオは、あくまで一つの指標に過ぎないと認識しておき、他の指標やチャートも併せて使うようにすることが重要です。
騰落レシオが130%以上になってもさらに上昇し、70%以下になってもさらに下落することもあるため、騰落レシオだけでは反転を確認することはできません。
買われすぎ(130%以上)のときは、高値更新に失敗する、十字線が出現するといった反転シグナルをチェックしておくようにしましょう。
売られすぎ(70%以下)のときは、安値が更新されない、セリンクライマックス(※)や十字線が出現するといった反転シグナルが出るまで待つことも重要です。
※セリングクライマックスとは、下落局面において、出来高の上昇を伴う下落となること。
下ヒゲとなりやすく、下落局面の最終局面に出現しやすい。
日経平均株価の日足チャート(2020年2~3月)
2020年3月のコロナショックの際も、出来高急増の下ヒゲ陰線が出現するセリングクライマックスの動きがあり、安値を更新しなくなってから反発に転じていきました。
騰落レシオを使ったトレード戦略
騰落レシオが買われすぎ・売られすぎを示しているそれぞれの状況において、騰落レシオを使ったトレード戦略について見ていきましょう。
騰落レシオが買われすぎ(130%以上)を示しているとき
騰落レシオが130%以上となり買われすぎを示しているときは、そろそろ売りが入って相場全体が下落する局面が近いものと考えられます。
買い玉を保有している場合には利益確定する準備をしておき、買われすぎている銘柄への空売りや、弱い銘柄への空売りを仕掛けることを考え始めてもよいでしょう。
特に、大きく買われすぎている銘柄にとっては、絶好の空売りチャンスとなることも少なくありません。
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ただ、相場が強い場合には、買われすぎ調整後の売り局面はすぐに終わり、再び上昇に転じる展開も少なくないことには注意しておきましょう。
騰落レシオが売られすぎ(70%以下)を示しているとき
騰落レシオが70%以下となり売られすぎを示しているときは、そろそろ買い戻しの動きが起こってもおかしくありません。
短期投資で空売りをしている場合には利益確定の準備をしておき、売られすぎている銘柄を逆張りで買う、下落局面でも強かった銘柄を順張りで買うといった戦略を考え始めてもよいでしょう。
騰落レシオが40%台まで到達した2020年3月のコロナショック時には、買いの大チャンスとなっていた銘柄が多数ありました。
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ただ、相場が弱い場合には、さらなる一段安となる場合もあります。
下がっている銘柄を買う場合には、「落ちたナイフを掴む」ことにならないよう、十分に下がりきるまで待ってから買い出動するなどリスク管理を徹底するようにしましょう。
まとめ
今回は、騰落レシオの計算方法や見方、調べ方について解説した上で、騰落レシオを使って利益を出すためのトレード方法についても紹介してきました。
騰落レシオは、市場全体の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率から、市場全体の過熱感(買われすぎ・売られすぎ)の度合いを示す指標です。
騰落レシオは「25日騰落レシオ」が使われるのが一般的となっており、120~130%以上だと「買われすぎ」、70~80%以下だと「売られすぎ」と判断されます。
しかし、必ずしも、騰落レシオが130%以上になったらすぐに下落し、70%以下になったらすぐに買い戻しが入るわけではないことには注意が必要です。
騰落レシオはあくまで投資判断に使える指標の一つに過ぎず、株価チャートなども使って、天井や底値からの反転シグナルを確認した上でエントリーしていくようにしましょう。
紫垣 英昭
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