新型コロナで大注目「医療関連銘柄」10銘柄の株価動向をチャートでチェック!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

新型コロナ相場では、ワクチン・治療薬で期待されるバイオベンチャーや、人工呼吸器やオンライン遠隔を手掛ける銘柄など、さまざまな医療関連銘柄が買われています。

ただ、全ての医療関連銘柄が買われているということではなく、新型コロナウイルスをきっかけに注目される医療テーマ株に資金が集中している傾向があります。

今回は、医療関連銘柄の概要やテーマごとの特徴について抑えた上で、新型コロナ相場で注目されている代表的な医療関連銘柄の株価動向をチャート付きで解説していきます。

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この記事を読んで得られること
  • 医療関連銘柄とは何かがわかる
  • 医療関連銘柄のセクターごとの特徴やリスク等がわかる
  • 医療関連銘柄の新型コロナ相場での値動きがわかる

医療関連銘柄とは?

医療関連銘柄と言っても、長期投資向きのディフェンシブ銘柄から、デイトレードやスイングトレード向きのバイオベンチャー株までさまざまです。

医療関連銘柄には、どのようなテーマ株があるのかを抑えておきましょう。

医療関連銘柄にはさまざまな種類のテーマ株がある

医療関連銘柄とは、その文字通り、医療に関するテーマ株の総称です。

最も一般的な医療関連銘柄としては、医薬品メーカーや医療機器メーカーが挙げられます。東証一部の大型銘柄が中心となっており、配当金に優れる高配当ディフェンシブ銘柄や、値上がり益が期待できる成長株まで幅広くありますが、いずれの銘柄も長期投資におすすめの銘柄が多いことが特徴です。

なお、東証一部の医薬品セクターで構成されるETFとしては【1621】NEXT FUNDS 医薬品(TOPIX-17)上場投信が上場しており、同ETFの構成銘柄上位は武田薬品工業(23.88%)、第一三共(14.94%)、アステラス製薬(11.95%)、中外製薬(6.96%)、エーザイ(6.90%)となっています。

医薬品メーカーや医療機器メーカーは一定の需要が期待できることから売上が安定しておりリスクが低いことが特徴ですが、広義の医療関連銘柄としては新興のバイオベンチャー株も含まれます。

バイオベンチャー株は「バイオテクノロジー関連銘柄」と呼ばれることも多く、iPS細胞を使った再生医療や、がん免疫療法を始めとするがん治療、最先端の遺伝子治療などを手掛けている新興銘柄が中心です。

バイオベンチャー株はハイリスク・ハイリターンの最たるテーマ株となっており、投資初心者が安易に手を出して良い銘柄ではありません。

東証一部の医薬品メーカーや医療機器メーカーを中心とする医療関連銘柄は長期投資におすすめとなっている一方で、新興のバイオベンチャー株はデイトレードやスイングトレードといった短期投資向きの銘柄となっています。

新型コロナ相場で上昇している医療関連銘柄は?

株式ニュースなどを見ていると、「新型コロナ相場では医療関連銘柄が大きく買われている!」といった記事をよく目にするのではないでしょうか?

確かに、新型コロナ相場においては、一部の医療関連銘柄は非常に大きな値上がりとなっており、バイオベンチャーの【2191】テラは20倍を超える歴史的な急騰となっています。

ただ、新型コロナ相場では全ての医療関連銘柄が大きく買われているというわけではなく、人工呼吸器やオンライン医療、新型コロナのワクチン・治療薬といった、新型コロナをきっかけに大きく注目されている一部の医療関連銘柄に資金が集中しています。

今回は、医療関連銘柄のテーマごとに、新型コロナ相場で大きく上昇している銘柄をチャート付きで解説していきます。

なお、医療関連銘柄の動向を見ていく前に、一つの参考指標として、新型コロナ相場での日経平均株価の動向を抑えておきましょう。

日経平均株価の日足チャート(2020年2月~6月)

日経平均株価は、2020年2月には23,000円台で推移していましたが、コロナショックの暴落によって、3月中旬には16,000円台まで下げました(上図赤丸)。

その後3ヶ月は反発局面が続いており、6月には一時23,000円台を回復(上図青丸)。ただ、2月の高値水準を超えるには至っていません。

なお、いわゆる「新型コロナ相場」とは、3月中旬から6月までの反発局面を指すものとして使われることが多くなっています

新型コロナ相場での日経平均株価の値動きを念頭に入れた上で、医療関連銘柄の株価動向を抑えていきましょう。

大手製薬会社

新型コロナ相場における大手製薬会社の株価動向を見ていきましょう。

【4502】武田薬品工業

国内製薬最大手の【4502】武田薬品工業は、日本株の医療関連銘柄で最も時価総額が大きく、日本株を代表する医療関連銘柄です。

ディフェンシブ銘柄でありながら、配当利回りは4.49%(2020年6月23日終値時点)となっており、配当金目的の長期投資におすすめの銘柄としても知られています。

【4502】武田薬品工業の日足チャート

武田薬品工業の株価は、ほぼ日経平均と同じ動向となっています。つまり、新型コロナ相場では平均的な値動きになっているということです。

新型コロナ相場では大きく買われているとは言えませんが、配当金に優れる長期投資におすすめの銘柄であることには変わりません。

なお、【4503】アステラス製薬や【4523】エーザイも同様の値動きとなっており、新型コロナ相場では全ての医療関連銘柄が積極的に買われているわけではないことが分かります。

【4519】中外製薬

医薬品大手の【4519】中外製薬は、関節リウマチ治療薬「アクテムラ」が新型コロナウイルスの治療薬として有望視されています。

【4519】中外製薬の日足チャート

中外製薬の株価は、他の大手医薬品メーカーとは一線を画した上昇トレンドになっていることが分かります。

3月中旬のコロナショックで下げたことは同様ですが、直近3ヶ月では怒涛の上昇となっており、新型コロナ相場では上場来高値を日々更新し続けている状況です。

なお、3月中旬の安値(上図赤丸)から6月の高値(上図青丸)までは+70%程度の上昇率となっています。

大きな上昇率ではありますが、大手製薬メーカー株だけにバイオベンチャー株に比べると上昇率は控えめといってよいでしょう。

【4901】富士フイルム

【4901】富士フイルムは、新型コロナ治療薬としても注目されるインフルエンザ治療薬「アビガン」を手掛けていることで知られます。

純粋な医薬品メーカーではありませんが、新型コロナにおいては注目が集まる銘柄です。

【4901】富士フイルムの日足チャート

アビガン」を手掛ける富士フイルムの株価は、意外なことに新型コロナ相場では苦戦しています。

コロナショック後には真っ先に急騰し、4,152円の安値から6,420円の高値まで上昇しました(上図赤丸から青丸)が、その後は停滞が続いています。

ニュースを見ていると、「アビガンを手掛けている富士フイルムは買いなのではないか?」と思ってしまいがちですが、実際のマーケットではそうなっていません。

医療機器メーカー(人工呼吸器メーカー)

新型コロナ相場では人工呼吸器を手掛ける医療機器メーカーも注目を集めています。

【4543】テルモ

【4543】テルモは、人工心肺装置やカテーテルで高いシェアを誇る医療機器メーカー最大手です。ニュースでも耳にすることが多い人工心肺装置「ECMO(エクモ)」では国内トップシェアを誇っています。

【4543】テルモの日足チャート

テルモの株価は、新型コロナ相場で反発していますが、日経平均株価よりはやや強い程度です。

新型コロナ相場で強いことは強いですが、そこまで積極的に買われているとは言えません。

なお、テルモは、長期に渡って上昇を続けている成長株となっており、医療関連銘柄の中でも値上がり益目的の長期投資に適する銘柄に位置付けられます。

【6849】日本光電

【6849】日本光電は、脳波計や生体情報モニターなどを手掛ける医療用電子機器メーカーです。

マスク型人工呼吸器メーカーとしては国内で唯一無二の企業として知られており、新型コロナによる医療崩壊を防ぐため、政府要請を受けて人工呼吸器を増産したことも話題になりました。

【6849】日本光電の日足チャート

日本光電の株価は、欧米で新型コロナによる医療崩壊が続出した3月中旬には急騰しましたが、その後は停滞している状況です。

世界の新型コロナの感染拡大は続いていますが、医療崩壊については対策が進んできたことから注目されにくくなってきたことが一因かもしれません。

オンライン医療関連銘柄

オンライン医療は、テレワーク・オンライン教育と並ぶ新型コロナによる社会変革の一つとして注目を集めています。

【2413】エムスリー

【2413】エムスリーは、医療向け情報サイト「M3.com」などを運営していることなどで知られる医療情報企業です。

東証一部上場企業であり、2019年10月には日経平均(日経225)構成銘柄に採用されたことでも話題になりました。

同社は、LINEとオンライン医療事業を目的とした「LINEヘルスケア」を共同設立するなどオンライン医療に積極的であることから、オンライン医療関連銘柄として注目されます。

【2413】エムスリーの日足チャート

エムスリーの株価は、見事なまでの上昇トレンドとなっています。

新型コロナでオンライン医療が進展することへの期待度の高さを体現していると言って間違いないでしょう。

なお、エムスリーは医療関連銘柄の中では、値上がり益を重視した長期投資におすすめの銘柄だと言えます。

新型コロナ前から成長株であり、日経平均構成銘柄になったことで株高が加速しています。

【3694】オプティム

【3694】オプティムは、遠隔医療サービス「ポケットドクター」などの遠隔操作ソフトに強みを持つIT企業です。オンライン医療関連銘柄を代表する銘柄となっています。

【3694】オプティムの日足チャート

オプティムの株価も、新型コロナ相場において文句なしの上昇トレンドとなっており、3月の安値からは2倍以上の水準まで上昇しました。

オンライン医療は、テレワークやオンライン教育と並び、新型コロナで進むことが期待されるデジタルトランスフォーメーション化で期待されるテーマ株となっていることは間違いありません。

ワクチン・治療薬開発を手掛けるバイオベンチャー

新型コロナのワクチン・治療薬開発で注目されるバイオベンチャー株の動向を見ていきましょう。

【4974】タカラバイオ

【4974】タカラバイオは、iPS細胞による再生医療や遺伝子医療などを手掛けるバイオベンチャーです。

バイオベンチャーでありながら東証一部上場銘柄となっています。

バイオベンチャーが東証一部に昇格するには、時価総額や純利益など厳しい上場基準をくぐり抜ける必要があるため、同社はバイオベンチャーの中でも安定感がある銘柄です。

新型コロナ関連では、PCR検査キット「SARS-CoV-2 Direct Detection RT-qPCR Kit」をリリースしたことでも注目を集めています。

【4974】タカラバイオの日足チャート

タカラバイオの株価は、新型コロナ相場で上昇トレンドを描いています。

なお、3月安値の1,481円(上図赤丸)から6月には3,535円(上図青丸)まで上昇しており、上昇率は+138%です。

ここまで見てきた他の医療テーマ株に比べても、上昇率が大きくなっています。

【4563】アンジェス

【4563】アンジェスは、遺伝子治療薬「コラテジェン」で知られるバイオベンチャーです。

大阪大学と共同で新型コロナウイルスのワクチン開発を手掛けていることがニュースでもたびたび報道されており、新型コロナ相場を代表する銘柄となっています。

【4563】アンジェスの日足チャート

アンジェスの株価も、見事な上昇トレンドを描いています。

2020年3月に付けていた安値375円(上図赤丸)から、2020年6月には2,455円(上図青丸)まで上がっており、最大+554%の上昇率となっています。

ここまで見てきた他の医療関連銘柄に比べても上昇率が一桁大きく、また直近では高値圏で推移しており、もう一段高あってもおかしくありません。

【2191】テラ

【2191】テラは、がん免疫療法に強みを持つバイオベンチャーです。

がん免疫療法で知られており、新型コロナのワクチン開発とは無縁だと思われていました。

しかし、2020年4月27日に、先端医療支援を手掛けるセネジェニックス・ジャパン社と新型コロナウイルスの間葉系幹細胞を用いた治療法開発で共同研究契約を結んだニュースを発表したことから急騰しています。

【2191】テラの日足チャート

テラの株価は、異次元の値動きとなっています。

上図は対数チャートであるため実感が湧きにくいですが、3月13日の92円(上図赤丸)から、6月9日には一時2,175円まで上昇しています(上図青丸)。

これは上昇率に換算すると23.64倍、パーセンテージにすると+2,264%となります。

新型コロナ相場で最も買われている銘柄であることは間違いありませんが、期待感先行でここまで上がってしまったため、いつ大暴落してもおかしくない状況です。

まとめ

今回は、医療関連銘柄の概要やテーマごとの特徴について説明した上で、新型コロナ相場で注目されている医療関連銘柄の株価動向をチャート付きで解説してきました。

新型コロナ相場では、全ての医療関連銘柄が買われているということではなく、オンライン医療やワクチン・治療薬といった、新型コロナでより注目が集まるテーマ株が強く買われている傾向にあります。

特に、ワクチン・治療薬の開発で注目されるバイオベンチャー株は異次元の値動きとなっており、「バイオバブル」としか形容できない状況となっています。

一方で、「アビガン」を手掛ける富士フイルムや、人工呼吸器を手掛ける日本光電などは、コロナショック後には大きく買われたものの、その後の新型コロナ相場では苦戦している状況です。

両銘柄とも3月頃には「買いだ!」と言われていた時期もあり、新型コロナ相場では、いかに注目テーマ株が目まぐるしく変わっているかが分かります。

今後の新型コロナ相場でも、アフターコロナで注目が集まりそうな医療関連銘柄の動向はしっかりと抑えておきましょう。

紫垣 英昭