「レベル3」実用で大注目!自動運転関連で狙いたい8銘柄を紹介

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

自動運転車は、自動車産業の中でも、最も重要なテクノロジーと目され、その関連技術は、きわめて幅広い分野にわたり、この分野で活躍する企業の株価に世界中の投資家が注目を寄せています。

関連技術は、先進運転システム(ADAS)や自動運転用センサーが中核となり、それらの世界市場規模は拡大の一途を辿っているのです。

出荷額ベースでの市場規模は2019年に1兆3,602億円に達し2025年には、約2兆4808億円に拡大すると予測されています。

今回の記事では、自動運転車の関連企業と、その恩恵を受けると思われる企業をご紹介したいと思います。

この記事を読んで得られること
  • 自動運転車の関連企業がわかる
  • 自動運転車の関連企業の恩恵を受けると思われる企業がわかり、投資チャンスの広げ方を学べる
  • 自動運転関連銘柄への投資は何が重要なのかがわかる

自動運転関連銘柄が注目される理由

まずは、自動運転の概要と関連銘柄が注目される理由について詳しくご紹介していきます。

そもそも自動運転とは

自動運転とは「車の運転操作を自動化すること」です。

技術の進歩によって、いずれはドライバーが何もしなくても目的地に行けるようになると言われています。

なぜ自動運転関連銘柄が注目されるのか

本格的な自動運転が実現すれば、自動車業界だけではなく、社会全体に大きな経済効果を与えると予想されています。
現時点で条件付き自動運転「レベル3」が実用化されているため、今後は「レベル4」以降を見据えた研究開発や実験検証、プロトタイピングなどへの先行投資が主流になるでしょう。

自動運転の制度整備に関しては、政府の内閣官房IT総合戦略室が2018年4月に、「自動運転に係る制度整備大綱」をまとめています。

また、自動運転車の実用化に際しては、安全確保がきわめて重要となることから、道路運送車両法に基づき2018年8月に安全確保に関するガイドラインを発表しています。

自動運転は国と民間企業が一丸となって取り組む分野として、今後も注目されていくでしょう。

自動運転のメリット・デメリット

自動運転最大のメリットは「交通事故発生数の減少」です。

現在市販されている自動車は安全性能が極めて高いため、交通事故の発生原因は、そのほとんどがヒューマンエラーとなっています。

自動運転が実現すれば、車が常に運転状況を把握するので、人の判断ミスや操作ミスなどによる交通事故は激減するでしょう。

運転から解放されることによる「可処分時間の増加」もメリットのひとつです。

一般的な車は、目的地に着くまでドライバーの自由時間がほとんどありません。しかし、自動運車なら、運転時間をそのまま自由時間として使うことができます。

その一方で、事故発生時の責任問題や、自動車・交通産業の就業口が少なくなるといったデメリットも存在します。

また、システムトラブルに対するドライバーの技量不足も懸念されています。

自動走行レベルの5段階とは?

自動運転には、現在のように運転者がすべての操作を行う段階から、操作の一部をシステムが支援するステージ、さらには運転者のいない完全自動運転車までの各段階があります。

レベル0:運転者がすべての操作を行う

すべての操作をドライバーが行います。ABS(アンチロック・ブレーキシステム)や後方死角検知機能はレベル0の車にも装備されていますが、これらは運転操作に関与する技術ではありません。

レベル1:一部の運転を支援する

レベル1の車は「ステアリング操作」か「加減速」のどちらかをサポートします。

車線の逸脱によるステアリング補正や、自動的に加減速をして先行車との距離を保つACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)などの技術は「レベル1」です。

レベル2:部分的な運転自動化システム

レベル2の車は、ステアリング操作と加減速の両方をサポートします。

市販車では、日産「スカイラインハイブリッド」や、トヨタ「MIRAI(ミライ)」がレベル2の技術を採用しています。

レベル3:条件付き運転自動化で、一定の条件(限定条件)のもとで自動走行

高速道路や有料道路などの特定区間では、車が運転に関わる全ての操作を行います。

ただし、緊急時にはドライバーが対応するため、運転席から離れることはできません。

レベル2までの自動運転はあくまでも「運転支援」と呼ばれる技術ですが、レベル3からは、車が「認知」「判断」「操作」を行います。

なお、現時点で実用化されているのはレベル3までです。

レベル4:高度運転自動化で、限定条件での自動システムによる運転

特定の場所ですべての運転操作が自動化されます。

緊急時の対応も車が行います。ドライバーは何も操作する必要がありません。

レベル5:完全運転自動化で、システムがすべての運転操作を実施

レベル5では、ほぼ全ての条件下で自動運転が行われます。

いわゆる「完全自動化」です。

自動運転車開発による関連需要

内外自動車メーカーによる自動運転車開発の動きは、関連技術や部品の需要を大きく呼び起こします。

具体的には、周囲を認知するためのセンサー、人や車などの動きを察知するAIやAI利用によるディープラーニング(学習、画像認識)技術、IoT(モノのインターネット化)、AIやセンサー情報を搭載する半導体などです。

調査会社の矢野経済研究所は先ごろ、そうした自動運転用のセンサーやADASなど、自動運転車開発に伴う世界市場規模の予測をまとめています。

(出所)矢野経済研究所|ADAS/自動運転用センサ世界市場に関する調査を実施(2020年)

それによると、自動運転用センサーやADASの市場規模(出荷額ベース)は、2019年には1兆3,602億円に達しており、2025年には、約2兆4808億円に拡大すると予測されています。

自動運転車実用化の動きは、交通事故の削減や渋滞緩和などの安全で円滑な道路交通社会の実現に寄与するだけでなく、開発・実用化にともなう関連需要の拡大を通じて経済の強い成長要因になることが期待されます。

関連需要の恩恵を受ける企業は自動車メーカーだけではなく、部品メーカー、センサー、ソフトウェア企業など多彩です。

各自動車メーカーの自動運転車実用化に向けての動き

では、これから日本の自動運転車実用化に向けた、代表的な日本企業をご紹介します。

今後、活躍が期待される企業であり、投資対象銘柄としても検討すべき企業だと思います。

各企業のIR情報などを調べながら、今後の取り組みなどをチェックしていただきたいと思います。

本田技研工業(7267)世界初のレベル3を実用化

本田技研工業(7267)は本年3月、「レベル3」の自動運転機能を搭載した新型「レジェンド」を発売しました。

国土交通省がレベル3の型式指定をするのは、新型レジェンドが世界初となります。

レジェンドの外界認識には「カメラ」、「レーダー」、「LiDAR(ライダー)」が採用されているほか、高精度な地図や、全球測位衛星システム(GNSS)も導入されています。

自動運転の情報やノウハウは他のメーカーよりも進んでいるため、レベル4への先行した技術開発も期待できるでしょう。

トヨタ自動車(7203)最新の運転支援技術「Advanced Drive」を搭載

トヨタ自動車(7203)は、1990年代から自動運転技術の開発を進め、2016年1月には米国にAI(人工知能)研究の子会社を設立しました。

2017年5月には米国の半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)と自動運転車の開発で提携しています。

本年4月には、新世代の運転支援システム「Toyota Teammate/Lexus Teammate」の「Advanced Drive」を搭載した「Lexus LS」と「MIRAI」を発表しました。

(出所:日本経済新聞電子版)

Advanced Drive搭載車の自動運転レベルは2ですが、フロントフェンダーとリヤバンパーにはLiDARが装着できるスペースが設けられています。

将来的にはLiDARが「後付け」され、さらなる進化を遂げる可能性が高いでしょう。

日本電産(6594)小型モーターシェア世界No.1

日本電産(6594)は、小型モーターのシェア世界No.1を誇る電子部品メーカーです。

日本電産は多くの電気自動車メーカーから駆動用モーターの生産受注をしていますが、同社はモーターだけではなく、自動運転に用いられるミリ波レーダー車載用のカメラモジュールも手掛けています。

普及拡大が見込まれる自動運転・電気自動車の分野に強みがあるため、今後の動向もチェックしておきたいところです。

富士ソフト(9749)組み込みソフトに注目

富士ソフト(9749)は、自動車や産業向け組み込みソフト開発を得意としている独立系企業です。

自動運転では、アクセルやブレーキの制御、運転操作の判断などに組み込みソフトが必要になるため、今後の需要増に注目です。

なお、富士ソフトは欧州発の自動車向けソフト標準規格「AUTOSAR(オートザー)」の知見もあるため、さらなる業績の拡大が期待できるかもしれません。

デンソー(6902)パワートレインシステムを手掛ける

デンソー(6902)はトヨタ系列の自動車部品大手メーカーです。

売上高はドイツのボッシュ社に次いで世界第2位。

近年では、トヨタ系列以外の自動車メーカーとも取引を増やしています。

走行環境認識システムや衝突安全システムなど、自動運転に欠かせないさまざまなシステムの開発を手掛けているのも特徴です。

自動車の制御システムにも強みがあるため、自動車関連銘柄として監視対象に加える価値は十分にあるでしょう。

アイサンテクノロジー(4667)全球測位衛星システムと測量技術に強み

アイサンテクノロジー(4667)は、GNSS位置情報を使った自動運転用高度3次元地図「ADASmap」を開発した企業です。

自動運転に欠かせない車線や標識、電柱、信号などの情報だけではなく、道路曲面率や幅員などの情報も提供しています。

なお、アイサンテクノロジーは、東京都の「自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト」や、愛知県の「自動運転社会実装モデル構築事業」に参加している企業としても知られています。

ゼンリン(9474)地図情報制作・販売の大手

ゼンリン(9474)は、住宅地図を全国展開している企業です。

独自の高精度空間データで、自動運転車の「認知」と「判断」の2ステップを支えています。

2019年にグーグルマップから表記が消えたため株価は下落傾向にありましたが、自動運転関連銘柄として注目する価値は十分にあるでしょう。

ALBERT(3906)ビッグデータ解析のデータサイエンス分野で強み

ALBERT(3906)では、人工知能(AI)によるビッグデータを活用したマーケティングサービスを提供しています。

自動運転後術において必要なビッグデータ分析が評価され、トヨタ自動車から出資・業務提携することとなりました。

同社の株価は急騰後、現在調整中ですが、次の段階に進むことで株価も再評価されるのではないでしょうか。

まとめ

「レベル3」の自動運転技術を搭載したホンダ「レジェンド」登場によって、今後は自動運転関連銘柄に資金が流れてくる可能性も高まるでしょう。

「レベル3」とほとんど変わらない技術を搭載した「レベル2」の車も登場してきています。

自動車メーカーだけではなく、関連銘柄にも注目すれば、投資のチャンスも大きく広がります。

全世界で企業の競争も激化しているため、その勢力図が大きく変わることもありえるでしょう。

いずれにしても、自動運転関連銘柄への投資は、中長期的な目線で考えることが重要です。

まだまだ問題点も多い自動運転ですが、今後、この分野がどのように推移するのか、見守っていきたいと考えています。

紫垣 英昭