アメリカ大統領選挙後の投資戦略とは?任期とNY株の関係

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

【投資の教養】を運営しています、紫垣英昭です。

世界中の人たちが固唾を呑んで見守っている、アメリカ大統領選挙ですが、民主党のヒラリー・クリントン氏、共和党のドナルド・トランプ氏の一騎打ちとなっています。

暴言や女性蔑視発言などで批判が集中しているトランプ氏に対して、途中大きくリードをしていたヒラリー氏ですが、選挙直前になって、ヒラリー氏のメール問題に対してFBIは捜査をするという報道が伝わり、どちらが勝つのか混迷の度合いを増してきているようです。

今、世界中の投資家は、“トランプ・リスク”に備えたポジションを取ってきているようです。

そこで今回の記事では、2016年11月9日(日本時間)にアメリカ大統領が決まった後の大統領任期とNY株との関係について、僕の相場観を論じていきたいと思います。

この記事を読んで得られること
  • アメリカ大統領選挙が行われるタイミングがわかる
  • アメリカ大統領の任期と相関のある市場がわかる
  • 新大統領が決まった後の具体的な売買行動のヒントがわかる

 

アメリカ大統領選挙は4年に1回行われる

その前に、アメリカ大統領選挙について、若干触れておきたいと思います。

実は一般的にはあまり知られていないのですが、アメリカ大統領選挙は4年に一度、オリンピック開催年度と同じタイミングで行われます。

今年はブラジルのリオデジャネイロでオリンピックが行われましたが、オリンピックの開催年度の11月にアメリカ大統領の選挙が行われ、新大統領が決まるのです。

アメリカは、民主党、共和党の「二大政党制」で、両党の代表が選挙で戦います。

「予備選挙」で、それぞれの党の代表を決め、そして、党の代表が本選で一騎打ちの戦いを行います。

2016年の場合、民主党代表は、ヒラリー・クリントン、共和党の代表は、ドナルド・トランプで選挙が行われています。

 

アメリカ大統領の任期

アメリカ大統領の任期ですが、2期8年で任期満了になります。

すべての大統領が、2期8年の任期満了まで務めるわけではありませんが、ビル・クリントン、ジョージ・ブッシュ、オバマ大統領は2期8年の任期満了まで就任していました。

この大統領の任期中、経済の流れを変えることが良く起こります。

どういうことかというと、1期4年を終える頃になると、現職大統領は再選を望みます。

よって再選の可能性を高めるために景気へのテコ入れを就任年度後半から行なわれる可能性が高まります。

景気が良くなれば、現職大統領の求心力が高まるため、2期再選につながりやすくなります。

よって、1期就任後半は、米国経済が盛り上がりやすくなるのです。

ただ必ずそうなるということではありませんので、この辺は足元の経済指標を確認する必要があるでしょう。

 

政党の基本的な政策

日本の政党にも基本的な政策があるように、当然、アメリカの政党も基本的な政策というのが存在します。

一般的には、アメリカの民主党の基本的な政策は、積極財政、保護貿易主義、また福祉優先の政策(大きな政府)の指向であり、これに対して共和党は、均衡財政、自由貿易主義、市場原理を尊重し、限りなく政府の介入、規制を排除する小さな政府を目指しているといわれています。

しかし今回、共和党代表となった、ドナルド・トランプ氏は、保護貿易主義を政策で唱えているようであり、外交問題についても、かなり強行で偏った政策を唱えているようです。

またクリントン氏に比べ、政治経験のないトランプ氏は、選挙中にたびたび問題視された“暴言”や”偏った思考”が世界中の経済を混乱に陥れるのではないかという“リスク”を感じさせることが、投資家という視点からみると金融市場は大混乱するのではないかということが論じられているのです。

 

アメリカ大統領の任期と米国株式市場の関係

僕たち個人投資家は、アメリカ大統領選挙の報道を見ながら「どっちが勝つのかな?」なんて考えていてもあまり意味がありません。

  • ヒラリー・クリントンが勝ったら、株式市場や為替市場はどう動くか?
  • ドナルド・トランプが勝ったら株式市場や為替市場はどう動くか?どう動くか?
  • 自分たちは、どのように行動すべきか?(投資戦略として)

ということを、事前に考えておく必要があります。

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では、どのような戦略を考えればよいのか?

では、このアメリカ大統領選挙、任期などをどのように戦略に落とし込むかを考えてみたいと思います。

普通の個人投資家が、何のデータもなく投資戦略もあったものではありません。

そこで僕のオリジナル・データを、あなたに紹介したいと思います。

このデータは、10年以上前に作りはじめたデータで、いつも大統領選挙の時期にはこのデータを見ています。

では僕のオリジナル・データについて、簡単に説明したいと思います。

このデータは、1973年からのデータで、過去43年間のアメリカ大統領の任期中とNY株式の上昇、下落の傾向をグラフにしたものです。

アメリカ大統領の任期は、1期4年だということは、先ほどお伝えしましたが、ぼくが考えたのは、アメリカ大統領任期の1期4年の前半、後半で、NY株式市場がどんな動きをしているのか?とういうことを調べました。

そこ結果が、以下のグラフです。

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上記のグラフは、過去43年間での大統領の任期、前半と後半のどちらがNYダウ指数の上昇率が高いのかを示したグラフです。

これを見ると1970年代から2000年までは、任期前半より、任期後半がNY株式市場が上昇しているのです。

これは、NYダウだけではありません。IT、新興企業の多い、ナスダック市場でも同じ現象が見られます。以下が、ナスダックのグラフです。

 

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しかし、米国同時多発テロの起きた2001年以降は、この傾向が完全に逆転しています。

2001年以降は、大統領任期後半より前半の方が、NYダウ、ナスダック市場の上昇率が高いことを示しています。この傾向は今も続いているのです。

ここで起きている「逆転現象」の理由は正直、私にはわかりません。

しかし、傾向ははっきり出ています。

ますは、過去のアメリカ大統領の任期と、NY株式、ナスダック市場はこのような相関性があることを抑えておいてください。

 

このデータを、どう投資戦略に生かすべきか?

このグラフを見る限り、アメリカ大統領の任期からみると、当然、大統領任期の1年目、2年目に投資を始めれば、より高い収益を得られるのではないかと考えられます。

「だったら、新大統領就任1年目の来年がチャンスなんだ!」と思われることでしょう。

たしかにこのデータだけでいうならば、来年以降にNY株式市場に投資をすれば良いことになり、NY株式市場が上がるなら、日本株も上がることが考えられます。

しかし株式市場は、そう単純でないのも事実です。

現在、割高になっているNY株の現状を見れば「逆転現象」が起きる可能性が高まっているともいえるでしょう。

僕がいいたいことは、大統領任期前半、後半で大きく相場の流れが変わる可能性ががるということを知っておくことで戦略を立てやすくなると思うのです。

 

具体的な売買行動についてのヒント

2017年1月から、新大統領がアメリカのリーダーが誕生します。

問題は、新大統領が誕生して、世界中、特にNY株式市場はどんな動きをするかを確認する必要があります。

もし新大統領が決まり、その後、NY株式市場が下げてくるようであれば、新大統領任期前半、株式市場はあまり調子が良くないかもしれないという予測が立ちます。

逆にNY株式市場が、今年の高値を更新するような動きになるようなら、新大統領任期前半、株式市場は堅調に推移することが考えられます。

株価の調子があまり良くない場合、政府はできるだけ株価を良くしようと政策を実行することが考えられるので、任期後半、株価は上昇することが予測されます。

また株価がさらに上昇する動きが継続されるようなら、任期後半、株価は下げに転じることも予測しておく必要があるでしょう。

あとはその都度、経済指標などのデータもしっかり見ておく必要があります。

やはり株価が反応するのは、その都度発表される、足元の経済指標データです。

大統領就任任期前半、後半の動きだけでは的確に捉えることは難しいと思います。

だからこそ実際に起こった過去の傾向をベースに、経済指標発表の内容、為替の動き、株価の動きなどを確認しながら、売買行動に結びつけていただきたいと思います。

 

紫垣 英昭

 

この記事をかいた人

投資家 / オープンエデュケーション株式会社代表取締役。1964年大阪生まれ。甲子園出場経験者。大学卒業後、証券会社に勤務し、事業法人、金融法人営業、自己売買部門を担当。証券会社退職後、株式投資をはじめ、 日経225先物、FX等の売買指導を行い、個人投資家から絶大なる信頼を得ている。証券会社時代に培ったスキルを投資初心者でも理解できるよう売買指導を行い、今では3000人以上の受講生を抱え、「真に自立できる個人投資家」を輩出するために積極的に活動している。著書に『初心者でもがっぽり儲かる大化け「低位株」投資法』(幻冬舎)『億を稼ぐ投資法則』(ユウメディア)『少額資金で儲ける株ゴー ルデンルール』(ユウメディア)がある。