年利5%以上も⁉配当利回りとは?安全で高配当な銘柄を探すコツ

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

人生100年時代と呼ばれる現代。労働で賃金を稼ぎ生活を続けるには限界があります。

さらに、これから受け取れる年金額も年々減っていきます。豊かな老後を送るためにと、余裕資金を銀行にコツコツ貯めている人も多いのではないでしょうか。

しかし、今はゼロ金利の時代。銀行金利がほぼ0%。

銀行に1000万円を預けておいても、0.05%の年利であれば1年で5,000円の利息。そこから税金が引かれますので、手元に入ってくるのは3,984円しかありません。

一方、一部の高配当銘柄は4~5%を超える配当利回りを実現しています。

高配当銘柄を1000万円分保有して、5%の配当利回りの企業なら、1年で50万円の配当金。税金を引かれても、手元に入ってくるのは銀行金利の100倍の398,425円になります。

このように効率的に資産を増やす方法を知っていると、手元の資産の増え方が全く変わってきます。

上記の「配当利回りのよい銘柄を探して配当を受け取る」とういう方法のように、効率よく資産を運用し、増やすスキルは今後益々重要になっていきます。

そこで今回は、配当利回りについての解説と、配当利回りが高くかつ安全な銘柄を探すコツをお教えします。

配当利回りが良い銘柄にはリスクが大きい銘柄も多いので、配当利回りが高くかつ安全な銘柄を探すことが大切です。

高配当銘柄への投資を理解して、株式投資に役立てていきましょう!

この記事を読んで得られること
  • 配当や、配当利回りについて知ることができる
  • 高配当で安全な銘柄探しのコツを知ることができる
  • 配当金投資のしかたや知っておくべき注意点がわかる

配当とは?

株式投資で利益を得る方法には、値上がり益によるキャピタルゲインと、配当金によるインカムゲインの2種類があります。

今回は、配当金によるインカムゲインについて詳しく見ていきましょう。

配当を受け取るためにはどうすればいい?

配当金を受け取るには、配当金を出している企業の決算月の月末となる「権利付き最終日」に、その企業の株を保有していることが条件となります。

権利付き最終日は3月末と9月末となっている企業が多く、6月末や12月末、もしくはそれ以外の月の月末となっている企業もあります。

株主優待を行っている企業は、この「権利付き最終日」に株式を保有しておくと、株主優待も受け取ることができます。

権利付き最終日は、各企業ごとに異なるため、配当金投資を行う際はしっかりと確認しておきましょう。

配当金はいつ受け取れるの?おすすめの受け取り方は?

権利付き最終日に保有していた銘柄の配当金が口座に振り込まれるのは、権利付き最終日から約3ヶ月後となることが一般的です。

配当金は受け取り方法によって、「株式数比例配分方式」「登録配当金受領口座方式」「配当金受領証方式」「個別銘柄指定方式」の4つの方法があります。

証券会社の口座に振り込まれる「株式数比例配分方式」を選択することを推奨します。

また、配当金には、利益額に関係なく20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の一律課税が課されることになっています。

証券会社で「特別口座(源泉徴収あり)」を選択しておけば、証券会社が納税業務を自動で行ってくれるため確定申告をする手間を省くことが可能です。

配当金にかかる税金をNISA口座にを使って減らす方法も、後ほど説明します。

配当利回りとは?

配当金を株価で割った値を「配当利回り」と呼びます。

例えば、株価が1,000円の銘柄が1株あたり10円の配当金を実施していたら、配当利回りは配当金10円÷株価1,000円=配当利回り1%となります。

当然ながら配当利回りは高ければ高いほど良いですが、配当利回りが高過ぎる銘柄には減配や無配のリスクもあるため注意が必要です。

配当利回りを見るときの注意点!年間の配当回数に注目

また、多くの企業は配当を年1~2回実施していますが、ここで一つ注意が必要です。

配当利回りは、その企業が実施する全ての配当を受け取ることでその値になります。

すなわち、年3%の配当利回りで、配当を年2回実施する企業では、1回当たり年1.5%の配当金を1年に2回配当するということになります。

配当利回りの平均はどれぐらい?

2018年11月現在、東証1部企業の配当利回りの平均は約2%であるとされます。

銀行金利が0%の時代に年間2%の利回りを実現できるだけでも十分に魅力的ですが、配当利回りが3%を超える銘柄は特に狙い目であると言えます。

配当利回りが3%を超える銘柄は「高配当株」と呼ばれており、JT(2916)や、アサヒホールディングス(5857)などは高配当株の筆頭として度々名前が上がってくる銘柄です。

配当利回りが高い銘柄は日経平均暴落時にも売られにくい?

また、配当利回りが高い銘柄というのは、日経平均が暴落時にも売られにくいという利点があります。

以下は、日経平均株価とアサヒホールディングス(5857)の日足1年分のチャートです。

これを見ていただくと、アサヒホールディングスの株価は、日経平均の動きに連動する部分は多少あるものの、1900円あたりでずっと買い支えられているのがわかります。

出所) ヤフーファイナンス

出所) ヤフーファイナンス

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

配当利回りの計算式を見れば分かりますが、株価が下げれば下げるほど、配当利回りは高くなります。

そのため、株価が暴落して配当利回りが6%や7%になってくると、割安のうちに買いを仕込んでおきたい長期投資目的の投資家の買いが殺到し、一定の価格から値が下がりにくくなるのです。

これが、高配当株の株価が暴落しにくい理由です。

1000万円の資金だとどれぐらいの配当金が貰えるの?

配当と、配当利回りついて理解していただいたところで、具体的に、配当金はどの位貰えるかを見ていきましょう。

ここでは、先ほども紹介した高配当株の代表銘柄であるJT(2916)とアサヒホールディングス(5857)を例にして見ていきましょう。

JT(2916)の場合

2018年11月22日時点での、JT(2916)の終値は2838円、配当金は1株あたり150円となっており、配当利回りは5.54%となっています。

出所) ヤフーファイナンス

1000万円 ÷ 1株 2838円 = 3523.6 

1単元100株なので1000万円で3500株保有できることになります。

1株あたりの配当が150円なので

3500株 × 150円 = 配当金525,000円 

税金が106,654円引かれるので、1年間で税引き後418,346円の配当金が手元に入ることになります。

アサヒホールディングス(5857)の場合

同じく、2018年11月22日時点での、アサヒホールディングス(5857)の終値は 2325円、配当金は1株あたり63円となっており、配当利回りは5.16%となっています。

出所) ヤフーファイナンス

1000万円 ÷ 1株 2325円 = 4301

1単元100株なので1000万円で4300株保有できることになります。

1株あたりの配当が150円なので

4300株 × 63円 = 配当金270,900円 

税金が55,033円引かれるので、1年間で税引き後215,867円の配当金が手元に入ることになります。

それぞれに500万円ずつ分散投資した場合

資本金が1,000万円あったとして、JTとアサヒホールディングスの2銘柄に分割投資すると、JTは1700株、アサヒホールディングスは2100株ずつ保有することになります(それぞれ500万円以下の株数を取得)。

このとき受け取れる配当金は以下の通りです。

JT 1700株 × 1株配当 150円 = 255,000円

アサヒ 2100株 × 1株配当 63円 = 132,300円

合計 255,000 + 132,300 = 387,300円(税引後308,620円)

高配当株に投資しておくだけで、老齢基礎年金の半分以上となる配当金が得られることになります。

配当利回りが高いだけで買うのは危険!配当金投資の2つのリスク

配当金投資をするにあたっては、配当利回りが高いというだけで買うのは非常に危険な行為であることを認識しておくことが重要です。

配当のリスクとしては、値下がりによる保有株の下落リスクと減配・無配リスクが挙げられます。

いずれも非常に重要なのでしっかりと抑えておきましょう。

株価の下落による損失が配当益を超えてしまう場合

まず、値下がりによる保有株の下落リスクというのは、配当金目的で保有した銘柄の株価が下落することによりキャピタルゲインで損失になる場合です。

例えば、配当金が年間20万円受け取れたとしても、株価が下落して30万円の評価損が出ていたら、トータルではマイナス10万円の損失となってしまいます。

配当金が減配・無配になる場合

次に、減配・無配リスクとは、配当金が減らされたり廃止されたりすることです。配当金が減らされることを「減配」、配当金をなくすことを「無配」と呼びます。

減配・無配が発表されると、投資家から嫌気されて、株価が暴落するケースが多々あります。

配当金投資のリスクを避けるには?

この2つのリスクを完全にゼロにすることは不可能です。この先の見えない時代においては、どんな優良企業であれど業績が悪化して、株価の値下がりや減配となるリスクを抱えています。

とはいえ、リスクをゼロにすることはできなくても、業績や財務状況が安定している有力企業を選んで投資することによって、この2つのリスクを最小限に抑えることが可能です。

あまり名の知られていない新興銘柄の中には、株価を無理矢理上げるために、業績に不相応な高い配当金を設定している銘柄が少なくありません。

しかし、不相応な配当で上げた株価は脆く、いつ減配・無配が発表されるか分かりません。

値下がりリスク、減配・無配リスクを可能な限り小さくするためにも、ただ単に配当利回りが高いから買うという安易な投資は絶対にやめておきましょう。

また、安定している企業でも、いきなりの倒産がないとも限りません。

1つの銘柄のみに投資することは避け、できるだけ信頼のおける複数の企業に分散投資するのも、安全に長期投資していくためには必須の条件となります。

安全で高配当な銘柄探しのコツ

高配当銘柄への投資においては、業績や財務状況が安定しており、値動きが小さいディフェンシブ寄りの銘柄を選んで投資することが何よりも重要です。

ここで重要なのは、配当目的の投資と値上がり益目的の投資は相反するものであるということです。

後から振り返ってみれば、「高配当株に投資していたら、値上がり益もたくさん出ていた!」ということはありますが、最初から二つの目的を満たすような投資はすべきではありません。

「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあるように、配当金を目的とした投資をすると決めたら、値上がり益への期待は一切捨てさるべきです。

そのため、配当金目的の投資をするときは、値動きが小さいディフェンシブ寄りの銘柄を選ぶことが基本となります。

安全で高配当な銘柄を探す方法

それでは、安全で高配当な銘柄を探す方法をざっくりと説明していきます。

流れとしては、スクリーニングサイト等で以下の手順で調べ、銘柄を選出していきます。

高配当銘柄の探し方
  1. 配当利回りが高い順に並べる
  2. 東証1部の優良銘柄を抽出する
  3. 月足チャートでリスクの小さい銘柄を選ぶ

今回は「Yahoo!ファイナンス」の「配当利回りランキング」を使った方法をご紹介します。

配当利回りランキングを表示すると、配当利回りが高い順に銘柄が表示されます。

下図上部の、「市場を選ぶ」から「東証1部」を選ぶと東証1部の銘柄に絞り込めます。

出所)ヤフーファイナンス配当利回りランキング

そこから「東証1部」の銘柄だけを取り出し、その中でも「名前を良く知っている優良企業」を選び出します。

銘柄コードをクリックすると個別銘柄のページに飛びます。

ここでは、アサヒホールディングス(5857)をクリックしてみます。

個別銘柄のページが開いたら「チャート」をクリックします。

出所) ヤフーファイナンス

期間を1~10年の間で切り替えて、値動きを確認します。

 

出所) ヤフーファイナンス

暴落もなく右肩上がりで安定していそうな銘柄なら、長期投資向けの銘柄といえます。

これだけ先の見えない時代においては、大企業でさえ何があるか分かりません。1年に数回程度で良いので、企業の配当金に関する情報はしっかりとチェックしておくようにしましょう。

また、企業の業績は変化しても、安全で高配当な銘柄の探し方の基本的なロジックはこれからも変わることはありませんので、高配当銘柄の探し方はぜひともマスターしておきましょう。

配当金の受け取りはNISA口座で非課税に!

配当金の受け取りには20.315%の税金が発生しますが、少額投資非課税制度NISA口座を活用することによって、最大120万円までの資金に対する利益が非課税となります。

単純計算で、120万円分の資金で配当利回り5%の銘柄なら、6万円の配当金が毎年非課税で受け取れることになります。

通常口座だと12,189円の税金が差し引かれてしまいますので、47,811円しか受け取れません。

NISA口座は損失となった場合は何の恩恵も受けられませんが、配当金の場合は減配・無配とならない限りは確実に利益が生じるため、高配当銘柄への投資とNISA口座は非常に相性が良いと言えます。

配当金にかかる税金が非課税となるのは、受け取り方法で「株式数比例分配方式」を選択した場合のみとなるなど、いくつか注意点があります。

NISA口座で配当や株主優待を受け取る方法については、以下で詳しく解説していますので、併せて読んでみてください。

株初心者必見「NISA」まるわかり解説!IPOや配当の税金も0円に!|5.NISAの上手な使い方

配当金を受け取るのにおすすめの口座は?

配当金を受け取るのにおすすめの証券会社というのは特にありません。

トレードをする場合は、チャートソフトや注文ソフト、手数料などで差異がありますが、高配当銘柄投資をする場合は大手のネット証券ならどの証券会社でも差はないと言えます。

しかし、配当金をNISA口座で受け取る場合は、NISA口座での売買手数料や口座維持費が無料の証券会社を選んだほうがよりお得です。(NISA口座は一人1口座しか開設できません。)

証券口座自体はいくつでも開設することができますので、複数の証券会社に口座を開設して、吟味したうえでNISA口座をどの証券会社に開設するか決めてもよいと思います。

参考までに主要な証券会社のNISA口座には以下のような特徴があります。

  • SBI証券
    株式の売買の手数料:無料
    口座維持費:無料
    投資信託の購入時手数料:無料
    IPO:76社
    投資信託:2500本以上
    外国株:9カ国
    PTS(夜間の株式取引き)対応
  • 松井証券
    株式の売買の手数料:無料
    口座維持費:無料
    投資信託の購入時手数料:無料
    IPO:11社
    投資信託:470本以上
    外国株:取り扱いなし
  • マネックス証券

    株式の売買の手数料:無料
    口座維持費:無料
    投資信託の購入時手数料:無料
    IPO:47社
    投資信託:1000本以上
    外国株:米・中2か国(購入時手数料はキャッシュバックで実質無料)

このほかにも例えば以下のような証券会社があります。

詳細を知りたい場合は、資料請求などをして問い合わせてみてくださいね。

まとめ

今回は、配当利回りの良い高配当銘柄への投資について解説しました。

配当利回りが5%を超える高配当株もチラホラとありますが、新興銘柄や名前も良く知らないような銘柄の場合はリスクが大きく注意が必要です。

高配当銘柄への投資をするにあたっては、配当利回りが高くかつ、業績や財務状況が安定しており、値動きも緩やかな銘柄を選んで行う必要があります。

また、高配当銘柄への投資は少額投資非課税制度NISA口座との相性が良いので、NISA口座を活用することを推奨します。

配当利回りや配当金についてしっかりと理解して、人生100年時代を乗り越えていくための武器にしていきましょう。

紫垣 英昭