インバウンド関連銘柄はアフターコロナ最有力株!観光推進で人口減少下の成長産業として期待!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

インバウンドは、新型コロナで壊滅状態となっていましたが、2022年の水際対策緩和から急激に回復してきています。

インバウンド関連銘柄は、株式市場においてアフターコロナの最有力株として急反発しており、今後は人口減少社会における成長株としても期待されます。

インバウンド関連銘柄のテーマとしては、旅行やホテル、百貨店、翻訳機などが注目されており、多くの銘柄が2022年以降に反発していますが、まだ新型コロナ前の水準を取り戻したに過ぎません。

今回は、インバウンド関連銘柄の特徴や重要テーマ、直近の株価動向について解説した上で、東証を代表するインバウンド株についてチャート付きでご紹介していきます。

インバウンドは人口減少社会の成長セクターとして期待されている

インバウンド(inbound)とは「訪日外国人観光客」を意味する観光用語で、人口減少が進む日本の数少ない成長セクターとして期待されています。

インバウンドは日本の数少ない急成長産業

日本のインバウンドは、2010年代に急成長しました。

日本政府観光局(JNTO)が発表している訪日外国人観光客のデータは次の通りです。

訪日外国人観光客の推移

※出典:日本政府観光局(JNTO)「国籍/月別 訪日外客数(2003年~2023年)」

日本を訪れた訪日外国人観光客は、2010年には861万人でしたが、2019年には約4倍の3,188万人にまで拡大しました。

アベノミクス第三の矢である「成長戦略」において、明確な結果が出た成長産業は少ない中で、観光立国を掲げたインバウンド政策は、アベノミクス最大の成功例と言ってよいでしょう。

ただ、2020年の新型コロナによってインバウンド市場そのものが消滅してしまい、2020年から2021年に掛けてインバウンドは壊滅状態となりました。

2022年には水際対策が緩和され、6月からはそれまでの入国者上限1万人から2万人に引き上げられ、9月からは5万人にまで緩和、10月11日からは入国者数の上限が撤廃され、訪日客の個人旅行、ビザなし渡航も解禁されました。

今後、日本では少子高齢化による人口減少で内需が縮小していくことは避けられないため、インバウンドによる観光収入の重要性がより高まっていくことはほぼ間違いないでしょう。

インバウンドは新型コロナで壊滅も、2022年水際対策緩和で復活へ

新型コロナでインバウンド市場が壊滅したことを受けて、インバウンド関連銘柄も新型コロナ相場では大暴落の一人負け状態となりました。

ただ、2022年10月の水際緩和以降、インバウンドは急激に回復してきており、表で見てみると次の通りです。

年月

2022年10月

2022年11月

2022年12月

2023年1月

2023年2月

2023年3月

総数(人)

498,646

934,599

1,370,114

1,497,472

1,475,300

1,817,500

伸率(前年同月比)

+2,155.0%

+4,418.9%

+11,238.2%

+8,328.9%

+8,724.1%

+2,648.7%

※出典:日本政府観光局(JNTO)「国籍/月別 訪日外客数(2003年~2023年)」

2022年10月以降は前年同月比で1,000%を超える急激な回復となっており、2022年12月に至っては100倍(10,000%)超えとなりました。

2023年に入ってからもインバウンドの急激な回復は続いており、2023年3月の訪日外国人観光客は181万人と、2023年トータルでは2,000万人を超える勢いです。

2019年の3,188万人に回復するまでには時間が掛かるかもしれませんが、長期的に見れば、4,000万人を超えて成長していくことも期待されます。

また、インバウンドにおいては、円安の進行も追い風となります。

2022年には米国利上げによる日米金利差の拡大や、日本の貿易赤字の拡大などを受けて、急激な円安が進行しました。

円安の進行は、日本人にとっては海外旅行が割高になる一方で、外国人観光客にとっては日本旅行が割安になるため、日本旅行の価格競争力が上がるという点でインバウンドにはメリットです。

ただ、日本が本格的な観光大国となっていくためには、円安であろうと円高であろうと外国人観光客に選ばれる国になることが重要なことは言うまでもありません。

インバウンド株(インバウンド関連銘柄)のテーマと株価動向

インバウンド株の重要テーマやニュース、2023年時点のインバウンド株の株価動向の概要について押さえておきましょう。

インバウンド株の重要テーマ:旅行、ホテル、百貨店、翻訳機など

インバウンド株(インバウンド関連銘柄)と一口に言っても、そのテーマは幅広くなっています。

JR各社や大手航空会社に代表される「旅行株」は、インバウンド株の筆頭銘柄となっています。

特に、旅行株は新型コロナで最も大きな打撃を受けたセクターとなっているため、アフターコロナの反発が期待されるインバウンド株です。

外国人の旅行需要が増えるということは、必然的に「ホテル」需要も上がります。

ホテル株は、インバウンド関連銘柄の代表的なセクターとして、2022年以降に大きく上昇している銘柄が目立ちます。

また、外国人に人気なのが、日本の「百貨店」や「ドラッグストア」などの小売店です。

特に百貨店は、外国人観光客の爆買いの中心地となっており、2022年にはホテル株と並んで大きく反発している銘柄が多くなっています。

爆買いの対象となる商品としては、外国人観光客に人気の「化粧品」などが代表的です。

「翻訳機」も、外国人観光客が増えることで重要が増しており、インバウンドの重要テーマの一角に挙げられます。

【4344】ソースネクストが手掛ける自動翻訳機「ポケトーク」は代表的な翻訳機として知られていますが、AI(人工知能)を活用した翻訳機も次々とリリースされています。

インバウンド関連銘柄としては、「旅行」「ホテル」「百貨店」「翻訳機」などが主要テーマとなっていますが、今後もニュースで話題になるような新たなインバウンドテーマの出現にも注目です。

インバウンド株はコロナ暴落からアフターコロナで大反発!今後も成長テーマ株として注目

2023年5月時点での、インバウンド株の直近の株価動向について押さえておきましょう。

インバウンド関連銘柄は、新型コロナが猛威を振るい始めた2020年2月から3月のコロナショックで大暴落となり、その後の新型コロナ相場でもほとんど反発しませんでした。

2021年には、コロナ後の需要爆発が期待される「アフターコロナ関連銘柄」としてやや反発したものの、反発幅は限定されていました。

2022年には水際対策が緩和されたことを受けて、本格的な反発を開始しており、ホテル株や百貨店株が大きく反発するなど、インバウンドは最重要テーマ株の一角となっています。

2023年にも反発が続いており、多くのインバウンド株が新型コロナ前の株価水準を取り戻しました。

インバウンドは株式市場にとっても重要なテーマとなっていますが、多くの銘柄はあくまで新型コロナ前の株価水準を取り戻したに過ぎないと認識しておくようにしましょう。

インバウンド株の反発は2022年以降の重要なトレンドになっていますが、今後は2019年以前の成長トレンドに乗り、新高値を追える展開になっていくかどうかに注目です。

インバウンド株の重要銘柄10選!

日本株を代表するインバウンド株10銘柄について見ていきましょう。

【9020】JR東日本

インバウンド関連銘柄の中でも、まずは旅行株を見ていきましょう。

東日本の鉄道最大手【9020】JR東日本は、代表的な旅行株であり、インバウンド関連銘柄でも最有力の大型株です。

同社は、電子マネー「Suica」を手掛けていることから、そのビッグデータを使った移動革命MaaSでも注目される銘柄となっています。

【9020】JR東日本の月足チャート

JR東日本の株価は、コロナショックで暴落後は安値圏で推移し、2021年以降は横ばいとなっています。

なお、西日本最大の鉄道会社【9021】JR西日本、ドル箱の東海道新幹線やリニアモーターカーでも注目される【9022】JR東海も同様の値動きとなっており、JR大手3社はコロナ前の株価水準をまだ取り戻せていません。

【9202】ANAホールディングス

国内線・国際線ともにトップの航空最大手【9202】ANAホールディングスは、大型旅行株でありかつ、インバウンド関連銘柄としても有力の銘柄です。

【9202】ANAホールディングスの月足チャート

ANAホールディングスの株価は、JR3社同様の値動きとなっており、2022年以降は反発しているものの、まだ新型コロナ前の株価水準を取り戻せたとは言えません。

なお、同じく航空大手の【9201】日本航空(JAL)も同様の値動きとなっています。

【6561】HANATOUR JAPAN

インバウンド向け旅行業を手掛ける【6561】HANATOUR JAPANは、旅行株の中でもインバウンドに特化した銘柄として注目を集めているインバウンド関連銘柄です。

【6561】HANATOUR JAPANの月足チャート

HANATOUR JAPANの株価は、水際緩和によるインバウンド解禁が進んだ2022年以降、出来高の上昇を伴って大きく反発していることが分かります。

【9616】共立メンテナンス

続いて、ホテル株を見ていきましょう。

ホテル株は、インバウンド需要はもちろん、アフターコロナで盛況となっている国内旅行も背景に大きく反発しています。

ビジネスホテル「ドーミーイン」を展開する【9616】共立メンテナンスは、代表的なホテル株であり、インバウンド関連銘柄の一角です。

【9616】共立メンテナンスの月足チャート

共立メンテナンスの株価は、堅調に反発しており、既に新型コロナ前の水準を取り戻しています。

【6547】グリーンズ

ビジネスホテル「コンフォートホテル」やシティホテル「グリーンズホテル」を展開する【6547】グリーンズは、ホテル株の中でも強い銘柄となっています。

【6547】グリーンズの月足チャート

グリーンズの株価は、水際緩和が進んだ2022年以降、急激に反発していることが分かります。

【6565】ABホテル

ビジネスホテル「ABホテル」を展開する【6565】ABホテルも、インバウンド回復の2022年以降に強く買われているホテル株およびインバウンド関連銘柄です。

【6565】ABホテルの月足チャート

ABホテルの株価は、2022年以降に強く買われていることが分かります。

ホテル株は、国内旅行・インバウンド需要ともに急回復していることを背景に、高級ホテル「エクシブ」を展開する【4681】リゾートトラスト、ワシントンホテルや椿山荘を運営する【9722】藤田観光、京都の名門ホテル「ホテルオークラ京都」を展開する【9723】京都ホテルなど、2022年以降に反発している銘柄が目立ちます。

【8233】高島屋

外国人観光客の爆買い中心地になっている百貨店株を見ていきましょう。

百貨店自体は衰退セクターという印象が強いですが、インバウンド需要があるインバウンド株の一角として注目されています。

百貨店「高島屋」を運営する百貨店大手【8233】高島屋は、代表的な百貨店株であり、インバウンド関連銘柄としても注目されています。

【8233】高島屋の月足チャート

高島屋の株価は、2018年から2020年までは下げていましたが、以降は反発しており、特に2022年以降の反発が顕著です。

【3099】三越伊勢丹ホールディングス

百貨店「三越」および「伊勢丹」を運営する百貨店大手【3099】三越伊勢丹ホールディングスも、代表的な百貨店株であり、外国人観光客に人気のインバウンド関連銘柄です。

【3099】三越伊勢丹ホールディングスの月足チャート

三越伊勢丹ホールディングスの株価は、2022年以降に反発しており、新型コロナ前の株価水準を取り戻しています。

百貨店株は2022年以降に強く、「阪急百貨店」「阪神百貨店」を運営する【8242】エイチ・ツー・オー リテイリング、「大丸松坂屋百貨店」を運営する【3086】J.フロント リテイリングも、同様の反発傾向にあります。

【4911】資生堂

外国人観光客が百貨店やドラッグストアで爆買いする商品としては、化粧品が挙げられます。

日本の化粧品は高品質で外国人観光客にも人気となっており、帰国してからも通販で買われる「越境EC」の人気商品にもなっています。

化粧品株としては、化粧品大手の【4911】資生堂が代表的な銘柄です。

同社の化粧品は外国人観光客にも人気となっており、高級化粧品の越境EC需要が拡大していることでも注目です。

【4911】資生堂の月足チャート

資生堂の株価は、新型コロナのマスク社会やインバウンド壊滅で化粧品需要が減少したこともあり、高値圏で横ばい~下落となっています。

【4344】ソースネクスト

翻訳機も、インバウンド需要によって成長が期待されるセクターの一つです。

自動翻訳機「ポケトーク」を展開する【4344】ソースネクストは、インバウンドに強い翻訳株としてインバウンド関連銘柄に位置付けられる銘柄です。

【4344】ソースネクストの月足チャート

ソースネクストの株価は、2018年末に付けていた高値を頂点に大きく下落していましたが、2022年には安値から一時倍増の反発となりました。

まとめ

今回は、インバウンド関連銘柄の特徴や重要テーマ、直近の株価動向について解説した上で、東証を代表するインバウンド株についてチャート付きでご紹介してきました。

インバウンドは2010年代の日本経済においては数少ない成長産業となり、2010年から2019年に掛けて訪日外国人観光客は約4倍になりました。

インバウンド市場は新型コロナで壊滅状態となりましたが、2022年に水際緩和が進んだことから急激に回復してきており、2023年3月の訪日外国人観光客は181万人にまで回復しています。

インバウンド関連銘柄としては、旅行株やホテル株、百貨店株、翻訳機、化粧品などがありますが、特にホテルと百貨店は2022年以降に強く反発しています。

今後、人口減少による内需の縮小が避けられない日本経済にとって、インバウンドによる観光収入の増加は成長エンジンの一つとしても期待されるため、インバウンド関連銘柄は成長株の一角として注目しておきましょう。

紫垣 英昭