紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
宇宙ベンチャー【9348】ispaceが2023年4月に上場するなど、宇宙開発関連銘柄は次世代ビジネスとして株式市場でも注目されるテーマ株になっています。
2021年には、ホリエモンが出資するロケットベンチャー・インターステラテクノロジズと資本提携を発表した【7078】INCLUSIVEが約20倍の上昇となりました。
宇宙ビジネスは世界的な成長産業となっており、日本政府も「宇宙基本計画」を制定して、2030年代までに宇宙ビジネスの市場規模を倍増させる計画を立てています。
この記事では、宇宙開発関連銘柄がマーケットで注目される理由や過去に注目されたトピックを解説した上で、東証でおすすめの宇宙開発関連銘柄をチャート付きでご紹介していきます。
- 宇宙開発関連銘柄がマーケットで注目される理由や過去に注目されたトピックについてわかる
- 東証でおすすめの宇宙開発関連銘柄をチャート付きでわかる
- 今後もチェックしておくべき銘柄について学べる
宇宙開発関連銘柄とは
宇宙開発関連銘柄とは、宇宙ビジネスを手掛けるテーマ株を指します。
株式市場で、宇宙開発関連銘柄が注目される背景について押さえておきましょう。
宇宙開発ビジネスは成長産業になっている
宇宙開発ビジネスとは、衛星放送や衛星通信、気象衛星、GPSといった、宇宙を利用した製品やサービスのことです。
また、ロケットの打ち上げや、惑星探査機「はやぶさ2」なども宇宙開発として注目されるテーマです。
非営利団体Space Foundationによると2021年の世界の宇宙産業市場は前年比+9%の4,690億ドルとなり、米モルガン・スタンレーは世界の宇宙産業市場は2040年には1兆ドルを超える予測を打ち出しています。
※出典:UchuBiz「世界の宇宙産業、2021年は9%増の62兆円–2022年上期、72回が打ち上げ成功」
米ソ冷戦の頃は、宇宙開発競争は政府による国家的な競争となっていましたが、近年は宇宙ベンチャーを始めとする民間企業が中心となっています。
ロケットの打ち上げ回数で見ると、2022年上半期に宇宙に運ばれた1,022機の宇宙船や人工衛星のうち、958機が民間組織のものだったということです。
特に、民間の宇宙ベンチャーとして広く知られているのが、イーロン・マスク氏が創業した宇宙ベンチャー「スペースX」です。
スペースXは、再利用可能なロケットを開発する「スターシップ」プロジェクトや、衛星ブロードバンドサービス「スターリンク」などを手掛けており、「スターリンク」はウクライナ情勢においても重要な役目を果たしました。
スペースXは未上場企業のため株は買えませんが、推定時価総額は約1,500億ドルとなっており、未上場のユニコーン企業の中では世界トップクラスとなっています。
※出典:Bloomberg「スペースXの資金調達、企業価値を約1500億ドルと評価-関係者」
日本政府は「宇宙基本計画」を制定している
世界の宇宙開発競争は、アメリカと中国が主導していますが、日本も成長する宇宙産業の中で一定の存在感があります。
特に、惑星探査機「はやぶさ」は日本の宇宙開発の代名詞のようなものとなっており、日本は国産ロケットの打ち上げにおいても定評があります。
日本の国産ロケットは、2022年10月の「イプシロン6号機」、2023年3月の「H3 1号機」と連続で打ち上げ失敗となっていましたが、2023年9月7日には「H2Aロケット47号機」の打ち上げに成功しました。
日本の国産ロケットは打ち上げ成功率の高さを強みとしており、H2Aロケットは2005年の7号機から41基連続で打ち上げに成功し、その成功率は97.87%となっています。
日本政府は、日本が宇宙利用を拡大するための「宇宙基本計画」を制定しています。
※出典:内閣府「宇宙基本計画」
この中では、「宇宙産業を日本経済における成長産業とするため、宇宙機器と宇宙ソリューションの市場を合わせて、2020年に4.0兆円となっている市場規模を、2030年代の早期に2倍の8.0兆円に拡大していくことを目標とする」と記されています。
2023年6月13日には、「宇宙基本計画」は3年ぶりに改定され、宇宙安全保障を重視する姿勢を打ち出す形となりました。
宇宙開発は、軍事力との関わりも否定できません。
【7011】三菱重工業・【7012】川崎重工業・【7013】IHIの三大重工は、2022年には防衛費倍増議論を受けて株価も倍増した防衛株の中心銘柄ですが、ロケットの打ち上げなど宇宙開発でも重要な役割を担っています。
宇宙開発関連銘柄が株式市場で注目されたトピック
宇宙開発関連銘柄は、株式市場においても注目されています。
過去に、宇宙開発関連銘柄が大きく注目されたトピックを見ていきましょう。
2021年:ホリエモンの宇宙ベンチャーと提携した【7078】INCLUSIVEがテンバガー達成
2019年5月4日には、ホリエモンこと堀江貴文氏が出資するロケットベンチャーのインターステラテクノロジズが、日本の民間ロケット会社として初めて小型ロケットの発射に成功しました。
インターステラテクノロジズは、北海道広尾郡大樹町に本社を置き、液体燃料ロケット開発を行う日本のロケットベンチャーです。
インターステラテクノロジズは非上場企業ですが、宇宙開発関連銘柄には大きな影響を与える企業として知られています。
特に、2021年には、メディアのネットサービス運営支援を手掛ける【7078】INCLUSIVEがインターステラテクノロジズとの資本提携を発表し、株式市場でも大きな話題となりました。
【7078】INCLUSIVEの月足チャート
INCLUSIVEの2021年の株価は、2021年初めに付けていた300.7円から、2021年11月には一時5,900円まで急騰し、1年で約20倍となるテンバガー達成となりました。
インターステラテクノロジズは、2024年度を目途に超小型衛星打ち上げ用のロケット「ZERO」を開発中と報じられており、今後の企業提携などにも注目しておきましょう。
2023年:宇宙ベンチャーの【9348】ispaceが上場
宇宙開発関連銘柄は投資家の間で注目されているものの、東証には長らく、純粋な宇宙ベンチャー企業はありませんでした。
2023年4月12日には、超小型宇宙ロボティクスを軸に月面の水資源開発を手掛ける【9348】ispaceが上場となりました。
このIPOは公開価格254円に対して、初日は買い気配となり値が付かず、上場2日目の4月13日に1,000円を付けて、IPO初値+293%の大成功IPOに。
【9348】ispaceの月足チャート
【9348】ispaceの上場に合わせて、【6969】松尾電機や【6938】双信電機といった宇宙開発関連銘柄も物色される展開になりました。
宇宙開発関連銘柄の注目銘柄10選!
東証で注目される宇宙開発関連銘柄を10銘柄見ていきましょう。
【9348】ispace
月面開発事業を手掛ける宇宙ベンチャーの【9348】ispaceは、2023年4月に上場したばかりですが、宇宙開発関連銘柄としては最も代表的な銘柄と言えます。
同社は、月面の水資源探査を中心に、月の情報と地球-月輸送サービスプラットフォームの構築を目指しています。
【9348】ispaceの月足チャート
ispaceのIPOは2023年を代表する大成功IPOとなっており、上場後は乱高下となっていますが、2023年9月時点でもIPO初値の1,000円を上回っており、IPOゴールにはなっていません。
【7078】INCLUSIVE
メディア・企業のネットサービス運営支援を手掛ける【7078】INCLUSIVEは、ホリエモンが出資するロケットベンチャーのインターステラテクノロジズと提携を発表した宇宙開発関連銘柄です。
ただ、同社はあくまでメディア企業であり、純粋な宇宙ビジネスを手掛けているわけではないことに注意が必要です。
【7078】INCLUSIVEの月足チャート
INCLUSIVEの株価は、インターステラテクノロジズと提携を発表した2021年には約20倍になりましたが、その後は5分の1まで暴落してから1,000円前後で停滞となっています。
ただ、2023年4月の【9348】ispace上場時にも物色されるなど(上図の2023年4月に出来高が急増していることが分かります)、宇宙開発関連銘柄として注目している投資家はまだ多いと言えるでしょう。
【7011】三菱重工業
重工業大手3銘柄(三菱重工業・川崎重工業・IHI)は防衛株としてのイメージが強いですが、宇宙開発関連銘柄の筆頭銘柄でもあります。
重工業最大手の【7011】三菱重工業は、H2Aロケットの開発に深く携わっていることでも知られています。
【7011】三菱重工業の月足チャート
三菱重工業の株価は、2022年ウクライナ情勢による防衛費倍増議論を受けて大きく上昇しました。
1996年以来の高値圏で推移しており、1996年6月に記録した9,690円を超えてもおかしくありません。
防衛費倍増議論のインパクトに比べると弱いものの、H2Aロケット関連のニュースでも物色されています。
【7012】川崎重工業
重工業大手の【7012】川崎重工業は、防衛事業やカワサキブランドの二輪車はもちろん、宇宙産業にも力を入れている宇宙開発関連銘柄です。
同社は、H2AロケットやH2Bロケット用フェアリングなどで実績があります。
【7012】川崎重工業の月足チャート
川崎重工業の株価は、2022年の防衛費倍増議論を受けて大きく反発しました。
ただ、三菱重工業よりは上昇率が弱く、H2Aロケット関連でもそこまで大きくは反応していません。
【7013】IHI
重工業大手の【7013】IHIは、航空エンジンに強みを持ち、宇宙産業にも力を入れている宇宙開発関連銘柄です。
同社も、日本の宇宙開発に当初から参画しており、ロケットエンジンの心臓部となるターボポンプや、ガスジェット装置、宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームなどで実績があります。
【7013】IHIの月足チャート
IHIも、2022年の防衛費倍増議論で大きく反発しましたが、H2Aロケットなど宇宙開発関連のニュースではそれほど物色されているようには見えません。
直近では、9月12日に傘下のプラット&ホイットニー(P&W)の航空機エンジン回収のニュースが伝わったことで、大きな出来高を伴って売られています。
【6969】松尾電機
コンデンサ大手の【6969】松尾電機は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が認定するタンタルコンデンサーを手掛けていることから、宇宙開発関連銘柄の一角に位置付けられています。
【6969】松尾電機の月足チャート
松尾電機は、2023年4月にispaceが上場した際には宇宙開発関連銘柄の一角として物色されましたが、出来高がないため取引しづらい銘柄となっています。
【6938】双信電機
産業用ノイズ除去フィルターを柱とする電子部品メーカー【6938】双信電機は、人工衛星向けマイカコンデンサーを手掛けていることから、宇宙開発関連銘柄に位置付けられています。
【6938】双信電機の月足チャート
双信電機は、ispaceの上場時には物色されましたが、長期チャートで見ると株価・出来高ともに厳しい状況となっています。
【9232】パスコ
セコム系の航空測量最大手【9232】パスコも、宇宙開発関連銘柄に位置付けられる銘柄です。
同社は、地球観測衛星の地上局を自社保有する世界でも数少ない企業であり、衛星事業者やロケット事業者に活用される幅広いサービスを提供しています。
【9232】パスコの月足チャート
パスコの株価は、2019年末には決算で大反発後、2020年以降は横ばいが続いている状況です。
【3741】セック
リアルタイムソフトウェア技術に強みを持つシステム開発会社【3741】セックは、宇宙開発関連銘柄にも位置付けられるIT株です。
同社は、科学衛星や惑星探査機の搭載エンベデッドシステムと観測データの解析システムなどの宇宙天文分野向けソフトウェアを提供しており、小型月着陸実証機の地上システムの開発も手掛けています。
【3741】セックの月足チャート
セックの株価は、2019年から2022年までは下落トレンドとなっていましたが、2022年末からは反発に転じています。
【7867】タカラトミー
「トミカ」「プラレール」などで知られるおもちゃ企業大手【7867】タカラトミーは、株式ニュースなどでは宇宙開発関連銘柄の一角として名前が挙がることがあります。
同社はおもちゃ株としてのイメージが強いですが、JAXAと共同開発した超小型の変形型月面ロボット「SORA-Q」が、JAXAの小型月着陸実証機「SLIM」に搭載されていることで知られています。
【7867】タカラトミーの月足チャート
タカラトミーの株価は好調ですが、やはりおもちゃ企業としてのイメージが強いため、宇宙開発関連銘柄として物色されているようには見えません。
まとめ
この記事では、宇宙開発関連銘柄がマーケットで注目される理由や過去に注目されたトピックを解説し、東証でおすすめの宇宙開発関連銘柄をチャート付きでご紹介してきました。
東証の宇宙開発関連銘柄としては、2023年4月に上場した宇宙ベンチャー【9348】ispaceが最注目銘柄と言えるでしょう。
また、ホリエモンが出資するロケットベンチャー・インターステラテクノロジズと資本提携を発表した【7078】INCLUSIVE、大型株ではH2Aロケットで実績がある【7011】三菱重工業が注目です。
【9348】ispaceのIPOや【7078】INCLUSIVEの急騰からしても、宇宙開発関連銘柄は投資家から大きな注目を集めているテーマ株のため、今後もチェックしておくようにしましょう。
紫垣 英昭
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