紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
今回の記事は、あなたに「より実践的内容」かつ「重要」な“短期トレード理論”をお伝えします。
まずは、以下のチャートをご覧ください。
このチャートは、2017年後半の日経平均株価の値動きですが、チャートに記載している「窓開けから急上昇」という部分に注目してください。
株価チャートの「ローソク足」が、間を開けることを「窓」といいますが、この「窓」を何度も開けながら日経平均株価は力強い上昇となりました。
つまり、株価チャートの「窓」は株価の方向性を決定付ける可能性があり、この状況を上手く活用することによって、株初心者でも短期間で大きな利益を得られる可能性があるのです。
今すぐ、「窓開けを活用したトレード」を、やってみたくなりますよね。
でも、ちょっと待ってください。トレードに入る前に、過去のチャートを参考にしながら「窓明け」が本当に有効なのかどうかを確かめてみませんか?
今回の記事は、株初心者が「窓理論」を活用して短期トレードで稼ぐための方法について、お伝えしていきます。
- ローソク足の「窓」を活用したトレード手法を得られる
- 短期的に機動的な売買ができる
- 「上昇時」「下落時」のトレードノウハウを得ることができる
「窓開け」の定義、その理由と株価の動き
ではこれから「窓開け」を活用した、株初心者でもできる短期トレード手法にお伝えしていきましょう。
その前に「窓開け」の定義を少しだけお話します。
株価チャートにおける「窓」とは?
株式取引は基本的に、証券取引所に注文が集まり、そこで株価が形成されますが、為替(FX)のように24時間取引ではありません。
株式取引は基本的に午前中の取引(9:00~11:30)と、午後の取引(12:30~15:00)の2回に分けられます。
出所:岡三オンライン証券より引用
「窓が開く」という状態は、前日の高値と、翌日の安値に大きな「空白」ができることを「窓開け」と呼びます。以下の図のような状況です。
なぜこのように「窓開け」という現象が起きるかというと、それだけ「買いの圧力」(株価が下落時のときは、売りの圧力)が強いということを表しています。
多くの投資家が「買いに殺到した場合」または「売りに殺到した場合」に「窓開け」の現象が起こりやすく、株価の方向を決定付ける可能性があるというのは、裏側でこのような状態になっているというのが大きな理由です。
短期的に「窓を開けた方向」に株価は動く
多くの投資家が「買いに殺到」したり「売りに殺到する」ということは、他の大勢の投資家もその動きに追随することが考えられます。つまり株価は短期的にその方向に動く可能性があるのです。
ではその状況を実際の株価を使って見てみましょう。
【株価上昇時の窓開け】
以下は、ソフトバンク(9984)の株価の動きです。「丸」で表示させているのが「窓開け」の状態です。
「買いが殺到」して、上方に「窓」を開け、その後、株価は上昇していきます。
【株価下落時の窓開け】
以下は最近業績不振な、大塚家具(8186)の株価の動きです。「丸」で表示させているのが「窓開け」の状態です。
見てお分かりのように「売りが殺到」し、大きな「窓」を開けた後、株価は大きく下落しています。
このように「窓開け」というのは、短期的な株価の方向を読みやすく、利益を狙えるチャンスがあるのです。
窓理論に基づくトレード手法は有効なのか検証してみよう
では、もう少し深く「窓開け」を活用したトレード手法は、本当に有効なのかどうかを確認していきたいと思います。
実際の例を見てをいきたいと思います。
以下の図は、2017年4月からの1年間の日経平均株価の日足チャートですが、以下のように「窓開け」が出現した後、日経平均株価がどのように動いたかを検証してみました。
- 20円以上の幅を持つ上窓が13回(→部分)
- 20円以上の幅を持つ下窓が7回(→部分)
こうしてみてみると、かなりの確率で日経平均株価の場合、「20円以上の窓開け」が起きた特、短期的に株価は「窓開け」が起きた方向に株価が動いているのがお分かりいただけると思います。
ということは、日経平均株価で「20円以上の窓開け」が起きたとき、日経平均採用銘柄もその方向に動く可能性が高いことから、個別銘柄の売買戦略に活用できるのです。
もちろん個別銘柄単体でも、同じようなことが起こりますので、短期トレード戦略としては非常にやりやすいのではないでしょうか。
ではこれから、個別銘柄での具体的な短期トレード手法についてみていきましょう。
具体的な「窓明け」を使った短期トレード手法
ではこれから具体的に「窓開け」を使った短期トレード手法ついて解説していきたいと思います。
上昇トレンドの時の「窓開け」トレード戦略
まずは、上昇トレンド時の「窓開け」を使った、短期トレード手法をお伝えしていきます。
以下は先ほど事例として紹介した、ソフトバンク(9984)のチャートです。
同社の株価は「下落から持ち合い相場」に移行したのですが、1回目の上昇の「窓開け」後、株価は上昇トレンドに変わり、株価は上昇していきました。
ということは、過去の株価が「下落から持ち合い相場」を経過した後、1回目の上昇の「窓開け」は「買い」という戦略になります。
株価が上昇の「窓開け」が起きたときは、株価がものすごく上がっていて、エントリーするのが怖くなる心理状況に陥りがちです。
しかし先ほどもお伝えしたように、上昇の「窓開け」が起きるということは、それだけ多くの投資家が「買いを入れている」ということの証明です。
したがって、最悪の場合の損切りを事前に決めながら、1回目の上昇の「窓開け」は思い切って「買いエントリー」することを検討してみてください。
下落トレンドの時の「窓開け」トレード戦略
では今度は逆に、下落トレンド時の「窓開け」を使った、短期トレード手法をお伝えしていきます。
以下は大塚家具(8186)の株価チャートです。
同社は業績不振から悪い決算発表を発表したことで、株価は下落方向に大きな「窓開け」を起こします。
その後、株価は半値以下の水準まで大きく下げることになります。
このように下落方向に大きな「窓開け」が起きるということは、大口投資家の売り注文によって起きる現象です。
大口投資家が売りに回るということは、当面、株価の上昇は見込めないという「コンセンサス(市場の一致した見解)」ということから、同社株を積極的に買いたいという投資家はいないということを意味します。
それよりは、「これ以上損をしたくないので早く売ろう」という投資家が多くなるため、株価は大きく下げることになります。
したがって、もしこのような銘柄を保有していたのなら、一刻も早く売却しなければなりません。
また株価下落を利益に変える「空売り」という手法を使って、利益を狙うことも検討してみてはいかがでしょうか。
出来高を急増させ、下落方向に大きな「窓開け」を起こしたとき、大口投資家が売りに回ったサインになるので、このサインを見逃さず「空売り」を仕掛けることで、短期的な利益を狙うことができるのです。
「空売り」については、以下の記事で紹介しているので、ぜひ読んでみて下さい。
「持ち合い相場時」のトレード戦略
株価チャートで、上下の狭い値幅で動いているチャートをよく見かけると思いますが、このような相場のことを「持ち合い相場」、「レンジ相場」といいます。
この「持ち合い」の範囲を「窓開け」して株価の範囲を突破したことを活用してエントリーする方法です。
持合い相場でのサポートラインとレジスタンスラインまで株価が近づくと、そこで勢いが減速して止まる傾向があります。このため、これらのライン(レンジ)を上下に突破するには、かなりのエネルギーが必要となります。
したがって「突破」する動きを確認したら、思い切ってエントリーすることを検討していただきたいと思います。
このような場合のトレード戦略は、極めてシンプルで、
レンジ相場のレジスタンスラインを上窓で抜いてきた時 ⇒ 買い
レンジ相場のサポートラインを下窓で抜けてきた時 ⇒ 売り
という戦略が有効になると考えられます。
もちろん絶対成功すると言うことではありませんが、多くの投資家が動いた方向には、それなりの「根拠」がありますので、短期的にはその方向に株価が動く傾向が強く現れるるということを覚えておいてください。
「レンジ相場」については以下の記事で解説しているので、ぜひ読んでみて下さい。
『相場は「トレンド」と「レンジ」によって形成される』
まとめ
今回の記事で一番言いたいことは、
- 「窓開け」が起きるという現象は、多くの投資家の意図が働いている
- 特に大口投資家の影響は大きい
- 上昇でも下落でも、短期的には「窓開け」が起きた方向に株価は動く傾向にある
- その傾向を利用して短期的トレードで収益を上げる
ということです。
株価チャートを見れば、誰でも判別できるので、株初心者でも十分、活用できる手法です。
ぜひ一度、試してみていただきたいと思います。
紫垣 英昭
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