紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
株の投資スタイルのひとつである「スイングトレード 」は、数日から数週間という比較的 短期間で利益を確定する手法のことです。
デイトレードのように日中の値動きに振り回されることがないので、熟考してトレードし たい方や仕事中チャートが見られないサラリーマンの方に向いている手法です。
今回はスイングトレードの基本知識から、スイングトレードに適した銘柄の選び方、スイ ングトレードで狙うべきチャートパターンなどを紹介します。
スイングトレードにおすす めの証券会社も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
- スイングトレードの基本知識がわかる
- スイングトレードに適した銘柄の選び方がわかる
- スイ ングトレードで狙うべきチャートパターンがわかる
株のスイングトレードとは?
株のスイングトレードとは「2、3日から数週間の短期間で取引を完結させる売買方法」のことです。
トレンドラインや手法に応じて逆張りか順張りなのかは異なります。
株のスイングトレードとデイトレードの違い
デイトレードもスイングトレードと同じく短期トレードに分類されますが、スイングトレードとの大きな違いは「保有株を即日決済する」という点です。
スイングトレードは2、3日から数週間ほど株を保有しますが、デイトレードは必ずその日のうちに決済します。
なお、デイトレードの中でも、小さな値幅で利益を稼ぐトレード手法は「スキャルピング」と呼ばれます。
デイトレードと比べた場合の、スイングトレードのメリットとデメリットを見てみましょう。
スイングトレードのメリット
デイトレードは株価の動きに対して素早く反応する必要があるため、場中は市場を注視し続ける必要があります。
一方、スイングトレードは、数日~数週間の変動を気にすればよいので、場中に時間が取れない人でもトレードをすることが可能です。
スイングトレードのデメリット
デイトレードは当日中に取引を完了できますが、スイングトレードは利益の確定までに日数を要します。
株価の動き次第では、長期保有になる可能性も否定できません。
株のスイングトレードの銘柄選びは何を基準にする?
株のスイングトレードで銘柄を選ぶときのポイントを3つご紹介します。
・売買しやすい「流動性の高い株」
・大きな利益が狙える「テーマ株」
・日経平均株価やTOPIXに連動しない銘柄
・ハイリスクハイリターンを狙うなら「マザーズ銘柄」
それぞれ詳しく見ていきましょう。
売買しやすい「流動性の高い株」
流動性の高い株とは「出来高が多い銘柄」のことを指します。
簡単に言うと「取引が活発な銘柄」ということです。
出来高が多い銘柄は常に売買チャンスがあるため「買いたいときに買え、売りたいときに売れる」ので利益を出しやすく、株価急変のリスクも押さえられます。
逆に流動性の低い株は、自分が出した注文でも大きく値が動くケースもあるので注意が必要です。
成行注文を出した場合は、約定した瞬間に株価が大きく変動するリスクがあります。
大きな利益が狙える「テーマ株」
テーマ株とは「旬の銘柄」や「話題の銘柄」のことです。
テーマ株は短期間に大きな値動きをする可能性が高いので、スイングトレードに最適な銘柄となります。また、テーマが明確でわかりやすいため、初心者でも銘柄を選択しやすいというメリットもあります。
話題を集めている産業や分野、それに関連する銘柄はすべてテーマ株です。直近の例でいえば、スーパーコンピューター「富岳」に絡んだ量子コンピューター関連銘柄が挙げられるでしょう。
- 6702 富士通:量子コンピューターのソフトウェア開発会社「1QBit」と協業。
- 6701 NEC(日本電気):量子ビットの読出し精度90%を達成。
- 6902 デンソー:量子コンピューターの応用研究を進める
など
上記のように、テーマ株を対象にするときには、連想力を働かせると選ぶべき銘柄がより明確になります。
ただし、テーマによっては短期間で話題が途切れてしまうこともあるため、話題の持続性も検討したうえで保有期間を決めなければいけません。
日経平均株価やTOPIXに連動しない銘柄
日経平均株価やTOPIXが示す市場全体の流れに連動していない銘柄でも、後になって市場の流れを汲んで値動きをすることが多々あるので、短期間で大きな値動きが期待できるスイングトレード向きの銘柄になることがあります。
ハイリスクハイリターンを狙うなら「マザーズ銘柄」
ハイリスクハイリターンを狙うのであれば、マザーズ銘柄から選んでみるのもひとつの方法です。
ただし、総じて値動きが激しいため、保有期間は超短期に設定してください。
流動性の低さを考慮して保有株数は最小限にしましょう。
株のスイングトレードではトチャートパターンも確認してみる
チャートパターンは、「群集心理」によって形成されます。
群集心理によって、「多くの人が、同じように考え、同じように行動する」ことから、「同じような状況下では、同じような値動きになる」ために、チャートパターンが形成されやすくなります。
いくつか例を挙げて、どのような心理が働いているのか見てみましょう。
レンジ相場
レンジ相場では、ある一定の値幅の間を上下に動くような値動きをしますが、上値抵抗線、および下値支持線付近では、下図のような心理が働いています(緑色の線が株の値動きです)。
ブレイクアウト
ブレイクアウトとは、上値抵抗線を上抜けたときに、一気に上昇していく値動きのことを言いますが、上値抵抗線付近では、下図のような心理が働いています(下値支持線を下抜けたときも同様です)。
上昇トレンド
ダウ理論における上昇トレンドの定義は、「高値・安値が、その前の高値・安値よりも上にある」となっていますので、上昇トレンド中は、下図のような心理が働いています(下降トレンドでは上下が反転します)。
株のスイングトレードでチェックしたいエントリーポイント
前項では、どのような場面でどのような心理が働いているのかを見てきましたが、ここからは、いよいよチャートパターンについて説明していきたいと思います。
チャートパターンは、
- トレンドの転換
- トレンドの継続
この2種類のサインに分けることができます。
まずは、トレンドの転換を示すチャートパターンについてご紹介していきますが、天井を示すパターン(上昇トレンドからの転換)と底値を示すパターン(下降トレンドからの転換)は、形が上下に反転しただけですので、ここでは、天井を示すパターンをご紹介します。
どのような心理が働いているのかも合わせて見ていきましょう。
ヘッドアンドショルダー
ヘッドアンドショルダーとは、漢字の「山」のように3つの高値が出来上がった形をしており、真ん中の一番高い高値が「頭(ヘッド)」、その両側の少し低くなった高値が「肩(ショルダー)」のように見えることから、このように呼ばれています。
日本では、「三尊天井」とも呼ばれています。
高値・安値を切上げながら上昇トレンドがしばらく続き、上図のように「頭」が出来上がった後、切上がるはずの安値が切上がらなかったことで、少し異変を感じます。
その後、「右肩」の高値が「頭」の高値を切下げたことで、上昇トレンドの根拠が2つも崩れたことになり、トレンドの転換を疑います。
そして、最後に安値を下抜けたことで、上昇トレンドの根拠が3つも崩れたことにより、トレンドの転換を確信するのです。
ダブルトップ
ダブルトップとは、名前のとおり「トップ(高値)」が2つあることから、このように呼ばれています(「W」の字を逆さまにしたとも言われています)。
こちらも、高値・安値を切上げながら上昇トレンドがしばらく続いた後、上図のように高値を切上げなかったことで、異変を感じます。
そして、安値を下抜けたことで、トレンドの転換を疑います。
先ほどの「ヘッドアンドショルダー」よりも根拠の数が少ないため「トレンド転換のサイン」としては弱くなりますが、ほとんどの人が安値を下抜けた時点で「売り目線」に変わるため、一気に値下がりしていくのです。
V字トップ
V字トップとは、「V」の字を逆さまにしたような形になっていることから、このように呼ばれています(シングルトップとも呼ばれています)。
ヘッドアンドショルダーやダブルトップのように、「上昇トレンドが崩れた」という明確な根拠がないため、チャートの形を見ただけではトレンドの転換を判断することは難しいかもしれません。
上図のように、急騰した後の急落で出来やすいチャートパターンと言われていますので、トレンドラインなどの下値支持線を下抜けたら「トレンドが転換した」と判断しても良いでしょう。
この他にもいろいろありますが、ポイントは「上昇トレンドが崩れた」という根拠がしっかりしていることです。
そして、その根拠の数が多いほど、信頼性の高いサインとなりますので、他の指標などと合わせて使うと、より効果が高まります。
三角形型
まずは、三角形型のチャートパターンになりますが、上値抵抗線が横一線になっているのが特徴です。
横一線になっているということは、同じ価格で売られているということになりますので、強い抵抗線として意識されることになります。
さらに、上値抵抗線が切りの良い価格であったり、過去にも同じ価格の抵抗線がある場合は、より強い抵抗線として意識されますので、これを上抜けると、上昇トレンドが継続するという判断が強まり、一気に上昇していくでしょう。
ペナント型、ウェッジ型、フラッグ型
次に、ペナント型、ウェッジ型、フラッグ型のチャートパターンですが、これらは、いずれも上値抵抗線が右下を向いています。
上値抵抗線を上抜けるので、「トレンドが継続」するという判断には変わりないのですが、抵抗線の引き方は人それぞれなので、どの価格で「上抜け」と判断していいのかがはっきりしていません。
また、抵抗線を上抜けたとしても、下図のように「前の高値」がすぐ近くにあるので、「ここで売られるかも」という不安もあり、積極的に買いに行けないのです。
そのため、三角形型と比較すると、「トレンドが継続」するという判断が少し曖昧になってしまいます。
トレンド転換のチャートパターンと同様に、ポイントは「上昇トレンドが継続する」という根拠がしっかりしていることなので、他の指標なども参考にしながら判断すると良いでしょう。
スイングトレードで勝てないときに意識したいポイント4つ
スイングトレードでなかなか勝てないときには、次の3つのポイントを意識してみましょう。
- 手法を確立する
- スクリーニングも活用する
- リスクの分散も重要
それぞれ詳しく解説していきます。
1.手法を確立する
スイングトレードで勝つためには、手法を確立することが何よりも大切です。
株式市場は勘や感覚で勝てるほど甘くありません。
先に紹介したエントリーポイントやトレンドパターンなどを何度もチェックして研究を重ね、再現性と優位性が高い手法を確立しましょう。
一度手法を決めたら、簡単に変えてはいけません。
「思っていたよりも値動きが激しい」などという理由で、場中に手法を変えてはいけないのです。
エントリーポイントと損切りポイント、利益確定ポイントは、必ず「株を購入する前」に決めておきましょう。
2.スクリーニングを活用する
銘柄選びで迷ったときには、証券会社のスクリーニングツールも活用してみましょう。
証券会社によって使い方は異なりますが、さまざまな条件を設定することによって、投資スタイルに適した銘柄を抽出することができます。
初心者は抽出された銘柄のなかから、時価総額が高く流動性の高い「TOPIX100」や「TOPIX Core30」の構成銘柄を選択しましょう。
なお、口座を開設しなくてもスクリーニングが使える証券会社も多いので、チェックしてみてください。
3.リスクの分散も重要
投資資金にもよりますが、1度に保有できるのは3~5銘柄が限界です。
保有銘柄が多くなりすぎると、ルールに従ってトレードをするのが難しくなってしまいます。
逆に、1銘柄に絞るとリスクの分散ができません。
業種の異なる銘柄を組み込むことも重要です。
同業種の株価は似たような動きをするケースが多いため、複数保有のメリットが生かせません。
下記の鉄道関連銘柄の事例を見てください。
9006 京浜急行電鉄
9007 小田急電鉄
9008 京王電鉄
このように、鉄道3社は同じような動きをしています。
スイングトレードで上記3銘柄を保有した場合、上がるときには3社揃って上がる可能性が高いため大きな利益を期待できます。
しかし、下がったときには損失も3倍になる恐れがあるのです。
銘柄を複数保有する場合は、それぞれ異なる業種から選ぶようにしましょう。
スイングトレードは数週間の保有になるケースもあるため、リスクの分散は大変重要です。
株スイングトレードのオススメのネット証券
ここからは、株のスイングトレードにおすすめのネット証券をご紹介します。
各証券会社の特徴や手数料、トレーディングツールなどを解説して行きますので、これからスイング
トレードを始めるという方や、今の証券会社が使いづらいという方は、ぜひ参考にしてください。
SBI証券
手数料の安さを重視したいなら、SBI証券がおすすめです。
現物取引のスタンダードプランは1注文の約定代金10万円まで99円、50万円までなら275円という安さを実現しています。
スイングトレードで利用する機会が多い信用取引のスタンダードプランなら、1注文の約定代金50万円まで198円、50万円超えは385円です。
トレーディングツールは、ワンクリックで注文が完了する「HYPER SBI」を利用できます。
パソコンでの注文ならマウスでドラッグ&ドロップするだけなので売買タイミングを逃しません。
スマートフォンからでも最小タップ数で取引が完了します。
楽天証券
楽天証券は、利用しやすい手数料体系が特徴のネット証券です。現物取引手数料は、1注文
の約定代金10万円まで99円、50万円までなら275円となっています。
信用取引は1注文の約定代金が50万円まで198円、50万円超えは385円です。
トレーディングツールには、20種類以上の分析チャートや、リアルタイムのランキングを閲覧できる「マーケットスピード」が用意されています。
自動売買に対応した「マーケットスピードII」や、エクセルから発注できる「マーケットスピードII RSS」などが使えるのも魅力です。
松井証券
松井証券 は、現物取引も信用取引も、1日の約定代金合計額が50万円まで無料という老舗ネット証券です。
トレーディングツールは、最短ワンクリックで注文できる「ネットストック・ハイスピード」が使えます。
ランキング情報や投資情報のチェックがツールだけで完結するのも魅力です。
GMOクリック証券
GMOクリック証券は、取引回数の少ないスイングトレード向けの「1約定ごとプラン」が用意されているネット証券です。
現物取引の手数料は1約定50万円まで265円、信用取引なら50万円まで187円という安さも注目したいポイントと言えるでしょう。
トレーディングツールには、使いやすさを追求した「スーパーはっちゅう君」が用意されています。
シンプルなツールなので、初めての方でも使いやすいでしょう。
まとめ
チャートパターンには、たくさんの種類があるので、他のサイトや書籍でもいろいろ紹介されていますが、実際のチャートを見ると、きれいな形が出来上がっているチャートはなかなか無いことが分かると思います。
しかし、チャートパターンが形成される心理を理解していれば、「形は少し違うけど、この値動きはこのチャートパターンと同じかも」と判断することができ、今後の値動きも予測することができるようになってきます。
チャートパターンから自分だけの手法を確立したり、論理的な利益率を計算して勝ちパターンを見つけたりすることも重要です。
トレードの期間や保有銘柄数によっては手数料が利益率に関わってくることもあるため、できるだけ手数料が安く使いやすいネット証券会社を選びましょう。
今回おすすめしたネット証券会社の中で自分に適した証券会社があれば、ぜひ口座の開設を検討してみてください。
紫垣 英昭
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