紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
「FXは、少ない資金でも始められるらしいけど、FXで○千万の借金を負ったなんて話も聞く。なぜそんなことになるの?リスクが高いんじゃないの?」
FXも資産運用の1つなので、当然「元本割れ」などのリスクはあります。
一番怖いのが、価格の急落等により、含み損が膨らんで、ポジションが強制決済され、大きな損失が確定してしまうロスカットです。
これにより、元本以上の損失を負ってしまうこともあります。
しかし、FXや株式投資は、ギャンブルとは違い、リスクを自分でコントロールすることができます。
しっかりと学んでいれば、それほど心配する必要はありません。
本記事では、レバレッジの仕組みや証拠金の計算、ロスカットが起こる仕組みと、その対処法など、FXを始める前におさえておかなければならない基本的な知識を、初心者でも分かるようにまとめてみました。
もし、「資金は少ないけど、銀行に預けるよりは自分で運用してみたい」と思っているのであれば、まずは本記事を読んでみてください。
ぜひ、この機会にFXについて学んでいきましょう。
- FX取引とは何かがわかる
- 「レバレッジ」「証拠金」「含み損」「含み益」について理解できる
- 強制ロスカットが起こる仕組み、強制ロスカットされないためのコツがわかる
FXの取引について
まずはじめに、FX(外国為替証拠金取引)の取引について、ご説明します。
世界各国の通貨の価値は常に変動していますので、買った時の価格と売った時の価格の差額で利益を得ようとするのがFXです。
したがって、FXの取引の流れは
- 通過ペアを選ぶ
- 購入する(空売りする)
- 売却する(買戻しする)
- 利益を受取る/損失を支払う
となります。
通常の取引では、「購入する」時に代金を払いますが、FXでは、購入する時は代金を払わずに、売却した時に購入金額との差額だけを受取る(支払う)システムになります(これを差金決済と言います)。
また、購入する時に代金を払わないため、購入金額分の資金を用意する必要もありません。
ただし、資金がまったくない状態で取引することはできないので、「証拠金」と呼ばれる担保のようなものを取引口座に入金しておく必要があります。
証拠金の額は、取引しようとする金額に対して小さいので、少ない資金でも取引が始められるという特徴があります。
ここからは、証拠金についてもう少し詳しく説明していきましょう。
レバレッジについて
レバレッジ(leverage)とは「てこ(lever)の作用」のことです。
てこを使えば、小さな力で大きなものを動かすことができますよね?
つまり、レバレッジとは少ない資金(証拠金)で大きな金額の取引ができることを意味します。
FXでは、レバレッジが最大で25倍になりますので、資金(証拠金)の25倍の金額まで取引ができるということになります。
「レバレッジ」と「証拠金」「含み損」「含み益」の関係
FXで取引をする場合、例えば「1ドル=110円」であれば、1通貨(1ドル)取引するのに110円が必要になります。
多くの証券会社では、最低取引単位(1枚と言います)が1,000通貨になっていますので、1枚取引するのに
110円×1,000通貨=110,000円
が必要です。
ただし、ここでレバレッジを最大(25倍)で活用すると、
110,000円÷25=4,400円
になりますので、最低でも4,400円の証拠金があれば取引ができます。
文章だと理解しにくい部分がありますので、ここからは、図解で解説していきます。
必要証拠金の計算
先ほどの説明で「110,000円の取引をするのに最低4,400円の証拠金が必要」とのことでしたが、このように、その取引をする(ポジションを持つ)のに必要な証拠金のことを「必要証拠金」と言います。
計算式で表すと
「必要証拠金」=「取引評価額」÷「レバレッジ倍率」
※「取引評価額」=「為替レート×取引数量」
となります。
自分が持っている証拠金に対して、必要証拠金の方が多い場合は、そのポジションを持つことはできません。
有効証拠金の計算
ここから複雑になってくるのですが、取引を始めてポジションを持つと為替レートが変動して含み益になったり含み損になったりしますよね?
この含み益や含み損を証拠金として加味したものを「有効証拠金」と言います。
計算式で表すと
「有効証拠金」=「証拠金」+「含み益(損)」
※「証拠金」は取引口座にある資金です(必要証拠金ではありません)。
となります。
証拠金維持率の計算
最後に「証拠金維持率」ですが、これは自分が持っている資金(証拠金)に対して「余裕を持って取引をしているか」「ギリギリで取引をしているか」を表したもので、「比率が高いほど安全」「比率が低いほど危険」になります。
計算式で表すと
「証拠金維持率」=「有効証拠金」÷「必要証拠金」×100%
となります。
それぞれの数値の計算例
言葉や計算式だけでは分かりづらいと思いますので、例を挙げて説明していきます(手数料などは考慮していません)。
まず、証拠金が10,000円あるとします。
為替レートが1ドル/110円の時に1,000通貨購入した場合、レバレッジを25倍にすると
「必要証拠金」=110円×1,000通貨÷25=4,400円
になります。
「必要証拠金」=4,400円 ※変わらず
「有効証拠金」=10,000円+0円=10,000円
「証拠金維持率」=10,000円÷4,400円×100%=227%
「必要証拠金」=112円×1,000通貨÷25=4,480
「含み益」=(112円-110円)×1,000通貨=2,000円
「有効証拠金」=10,000円+2,000円=12,000円
「証拠金維持率」=12,000円÷4,480円×100%=268%
「必要証拠金」=105円×1,000通貨÷25=4,200
「含み損」=(105円-110円)×1,000通貨=-5,000円
「有効証拠金」=10,000円-5,000円=5,000円
「証拠金維持率」=5,000円÷4,200円×100%=119%
ちなみに、取引を終了してポジションを解消すると、その損益が証拠金に加減されます。
強制ロスカットについて
ロスカットとは、「含み損になったときにポジションを解消する(損切り)」ことですので、強制ロスカットは、強制的に損切りすることを意味します。
通常であれば、「利食い」も「損切り」も自分の意思で行うものですよね?
しかし、FXでは、株のようにストップ高やストップ安などの「値幅制限」がなかったり、レバレッジを効かせて自分の資金以上の金額で取引ができてしまうため、損失が大きくなり過ぎてしまう可能性があります。
そうならないように、含み損が、証券会社が定めた範囲を超えた場合、強制的に損切りする仕組みになっているのです。
どのようなときに強制ロスカットが起きるのか
強制ロスカットのルールについては証券会社によって異なりますが、多くの場合、証拠金維持率をもとに設定されています。
分かりやすく、証拠金維持率100%で考えてみましょう。
証拠金維持率100%とは、「必要証拠金」=「有効証拠金」の状態です。
つまり、証拠金維持率が100%を下回ると、「必要証拠金」>「有効証拠金」となり、証拠金が足りない状態になります。
証拠金が足りないということは、本来であれば取引をすることができない状態です。
このとき、口座に資金を追加で入金して証拠金を増やし、証拠金維持率が100%を超えるようにすれば、取引を継続することができます。
これを「追証(追加証拠金)」と言います。
しかし、証拠金を追加しないままでいると、必要証拠金不足ということで強制ロスカットされてしまうのです。
※証券会社によっては、証拠金維持率100%未満に設定しているところもありますので、各証券会社に確認してみてください。
強制ロスカットがあるのに借金を背負ってしまうケース
必要証拠金が足りないと強制ロスカットされるのであれば、「資金が底をついて借金を背負ってしまうようなことにはならないのでは?」と思った人もいるかもしれません。
先ほどの例では、強制ロスカットが証拠金維持率100%で説明しましたが、証券会社によっては50%のところもあります。
借金になってしまうのは、「証拠金」<「含み損」になったときなので「有効証拠金」がマイナスの状態です。
仮に、証拠金維持率が50%で強制ロスカットされても、有効証拠金はプラスの状態なので、普通に考えれば借金になることはありません。
ただし、ごく稀に、相場が急変したりして休日明けに為替レートが大きく開いて寄付いたりすると、本来、強制ロスカットするはずだったレートよりもズレて約定し、設定よりも損失が大きくなってしまい、借金になる可能性もありますので、注意しましょう。
強制ロスカットされないようにするためには
以上のように、強制ロスカットは、自分の意思で損切りできないだけでなく、想定以上の損失を出してしまう可能性もありますので、強制ロスカットにならないような取引を心掛ける必要があります。
強制ロスカットを避ける方法は、主に2つありますので、取引する際の参考にしてみてください。
証拠金維持率が高くなるようにポジション量を調整する
証拠金は、FXを始めるにあたって用意した大切な資金。
したがって、証拠金維持率を高く保つためには、必要証拠金が有効証拠金よりも小さくなるようなポジション量で取引することが重要です。
具体的には「資金管理」のページでも説明していますが、総資金(FXでは証拠金)、勝率、損失額などからポジション量を決めます。
また、取引を始めたら、その時に決めた損失額に達した場合、必ず損切りするようにしましょう。
「もう少し待てば戻ってくるかもしれない」と思って損切りしないでいると、含み損がどんどん大きくなって、強制ロスカットになりかねません。
休日や連休の前にポジションを解消する
「4-2」のところでも少し説明しましたが、休日などで取引時間が空いてしまうと、その間に相場環境が急変して為替レートが大きく開いて値を付けるというリスクがあります。
どんなに損失額をしっかり計算して損切りを徹底していたとしても、このようなリスクを避けることはできませんので、できるだけ、休日や連休の前にポジションを解消しておくことをオススメします。
特に、証拠金維持率に余裕がない時などは、必ず解消しておいた方が良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
FXは、少ない資金から始めることができ、レバレッジを活かして上手に取引すれば、大きな利益を得ることもできますが、その分、損失も大きくなってしまうというリスクがあります。
大事な資金を、投資によって確実に増やしていくためには、自分の資金量に応じた取引を行うことが大切です。
資金管理については、こちらの記事でも解説しています。
毎月20万円以上稼ぐ個人投資家が必ず行う「資金管理」方法とは
今回の記事は、FXを始めるにあたっての準備段階とも言える内容です。FX取引については、他にも学ぶべきことはたくさんあります。
いきなり取引を始めようとはせず、まずは、しっかりと知識やスキルを身に付けることから始めましょう。
紫垣 英昭
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