紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
G7広島サミットが、2023年5月19日から5月21日に掛けて開催されます。
G7広島サミットは、岸田政権にとっても重要なイベントとなることから、マーケットでも注目イベントの一つになりそうです。
G7広島サミット関連銘柄としては、インバウンド需要も見込まれる広島を地盤とする銘柄や、海外要人を守るための警備株、環境問題やウクライナ情勢などサミットの重要課題に関する銘柄などが挙げられます。
今回は、G7広島サミットの概要や重要課題について解説した上で、G7広島サミット関連銘柄として注目されそうなテーマ株や銘柄についてご紹介していきます。
- G7広島サミットの概要や重要課題についてわかる
- G7広島サミット関連銘柄として注目されそうなテーマ株や銘柄について学べる
- 広島県に地盤を持つ銘柄の中でもどのような銘柄に注目するべきなのかがわかる
G7広島サミットとは?
G7サミット(主要国首脳会議)は、フランス、米国、英国、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7ヶ月及び欧州連合(EU)の首脳が参加して毎年開催される国際会議です。
G7サミットでは、世界経済や地域情勢、地球規模課題といった国際社会における重要課題について、G7各国の首脳が自由闊達な意見交換を行い、その成果を文書にまとめて公表します。
2023年のG7サミットは、岸田総理の地元である広島で開催されます。
G7広島サミットは2023年5月19日~5月21日に開催される
2023年のG7広島サミットは、2023年5月19日(金)から5月21日(日)の3日間に渡って、広島県広島市のグランドプリンスホテル広島で開催されます。
日本では、これまで下記6回のサミットが開催されており、今回のG7広島サミットは7回目のサミット開催地となります。
開催年 |
サミット名 |
1979年 |
東京サミット |
1986年 |
東京サミット |
1993年 |
東京サミット |
2000年 |
九州・沖縄サミット |
2008年 |
北海道洞爺湖サミット |
2016年 |
伊勢志摩サミット |
今回、広島でサミットが開催される意義として、広島が原爆の被爆地であることは、ロシアによるウクライナ侵攻が現在進行形で行われており、核兵器使用リスクもある中では大きな意味を持つことでしょう。
G7広島サミットでは、各国首脳が原爆ドームを訪れるなど、平和への思いを共有することにより、ロシアに対する強いメッセージが送られることは間違いないものとみられます。
また、国政においては、G7広島サミットの成功は岸田政権にとって成果となることから、長期安定政権への期待からマーケットでも注目が集まります。
G7広島サミットの重要課題
外務省のG7広島サミット公式ページ「【公式】G7広島サミット2023」から、今回のG7広島サミットの重要課題について押さえておきましょう。
まず、次の「2つの視点」が重要課題として述べられています。
-法の支配に基づく国際秩序の堅持
-グローバル・サウスへの関与の強化
ロシアによる力による一方的な現状変更の試みや核兵器による威嚇について強いメッセージを送ると同時に、台湾情勢で強硬姿勢を強める中国に対しても同様のメッセージを送る意図がうかがえます。
具体的な重要課題としては、下記のテーマが挙げられています。
-地域情勢(ウクライナ、インド太平洋)
-核軍縮・不拡散
-経済的強靱性・経済安全保障
-気候・エネルギー
-食料
-保健
-開発
重要課題を見てみると、今回のG7広島サミットの最大の課題は、ウクライナ情勢における対ロシア、今後の台湾情勢を巡る対中国であることは明らかです。
株式市場においては、エネルギーや食料といった資源に関する重要課題が連想されるかもしれません。
G7広島サミット関連銘柄として注目されそうなテーマ株
G7広島サミット関連銘柄として注目されそうなテーマ株について押さえておきましょう。
広島を地盤とする銘柄
開催地の広島を地盤とする銘柄は、G7広島サミット関連銘柄の最有力候補となります。
関西大学の宮本勝浩教授の試算によると、G7広島サミットの経済効果は約924億円に上るとのことです。
特に、広島県内の観光についてはサミット後1年間で国内外から42万人程度の観光客が増え、その消費金額は約81億円余りになると見込まれています。
2022年からインバウンドが解禁され、インバウンド回復は株式市場にとって重要なテーマとなっていますが、広島を地盤とする企業はサミット+インバウンド効果で物色されることになるかもしれません。
なお、2016年に三重県で開催された伊勢志摩サミットでは、三重県に地盤を持つ企業が注目されました。
地域限定ブランド菓子を展開し、子会社の三重寿庵が「伊勢えびせんべい」など伊勢にちなんだ菓子を販売している【2222】寿スピリッツは、サミットが開催された2016年以降も長期的に買われています。
【2222】寿スピリッツの月足チャート
ただ、2016年に伊勢志摩サミット関連銘柄として注目された銘柄も、三重県に地盤を持つ銘柄だからといって全ての銘柄が買われたわけではないことには注意が必要です。
三重県地盤の交通会社【3232】三重交通グループホールディングスや、三重県地盤の地方銀行【8368】百五銀行などは上昇しませんでした。
【3232】三重交通グループホールディングスの月足チャート
2023年のG7広島サミットでも、広島を地盤とする銘柄には注目ですが、インバウンドによって今後も成長するかどうかがポイントとなりそうです。
警備関連銘柄(警備株)
G7広島サミットの経済効果を約924億円と試算した宮本勝浩教授によると、警備費については過去最大規模の4万人の警備体制で費用は400億円と推定されるとのことです。
警備については、2022年7月8日に発生した安倍元首相への銃撃事件、2023年4月15日に岸田総理が和歌山市の漁港で爆発物を投げ込まれた事件など、重大事件が相次いでいます。
2022年から2023年に掛けて相次いだ2つの重大事件を受けて、海外でも日本の安全神話に疑問符が投げ掛けられていることから、日本の治安の名誉回復のためG7広島サミットでは厳重な警備体制が敷かれることは間違いありません。
株式市場でも、G7広島サミット関連銘柄の一角として、また2025年大阪万博に向けても、警備関連銘柄(警備株)が注目されてもおかしくはないでしょう。
環境問題やウクライナ情勢など重要課題に関する銘柄
今回のG7広島サミットでは、ウクライナ情勢による対ロシア、今後の台湾情勢をにらんだ対中国へのメッセージが強くなっており、環境問題も重要課題の一角となっています。
2022年には日本でも防衛費倍増議論を受けて三大重工株(【7011】三菱重工業、【7012】川崎重工業、【7013】IHI)を中心とする防衛株が買われ、脱炭素や再生可能エネルギーといった環境株も依然として重要なテーマです。
G7広島サミットで重要課題となっている環境問題やウクライナ情勢などは、世界経済や株式市場にとっても重要なテーマとなっているため、サミットを抜きにしても押さえておくべきトピックです。
G7広島サミット関連銘柄として注目されそうな銘柄10選!
G7広島サミット関連銘柄として注目されそうな具体的な銘柄について見ていきましょう。
【9033】広島電鉄
広島で路面電車やバスを運行している【9033】広島電鉄は、広島を地盤とする代表的な銘柄であり、G7広島サミット関連銘柄としても注目です。
同社は、鉄道セクターということで、インバウンド回復においても期待される銘柄です。
【9033】広島電鉄の月足チャート
広島電鉄の株価は、新型コロナの影響を大きく受けており、2022年以降のインバウンド回復情勢においても株価は沈んだままの状況となっています。
【9042】阪急阪神ホールディングス
関西圏の鉄道大手グループ【9042】阪急阪神ホールディングスは、インバウンドの主力銘柄でありかつG7広島サミット関連銘柄としても期待されます。
同社は、阪急電鉄・阪神電気鉄道で関西エリアのインバウンド恩恵を受けることに加えて、広島県呉市で「呉阪急ホテル」を運営していることでも知られています。
阪神タイガースの親会社として有名であるなど広島より大阪のイメージが強いですが、広島経済圏にとっても重要な企業です。
また、2025年の大阪万博に加えて、2023年4月には大阪府・市にカジノ誘致が正式に決まったことでも注目される銘柄です。
【9042】阪急阪神ホールディングスの月足チャート
阪急阪神ホールディングスの株価は、インバウンド株が大きく上げた2022年から回復してきています。
【8273】イズミ
中国・四国・九州でショッピングセンター「ゆめタウン」を展開する【8273】イズミは、広島市に本社を置いていることでも知られており、G7広島サミット関連銘柄にも位置付けられます。
グループ会社のイズミ・フード・サービスは、広島お好み焼き「お好み一番地」や「たこ焼き一番」などを展開しています。
【8273】イズミの月足チャート
イズミの株価は、コロナ前の2018~2019年から大きく下落しており、以後も株価は戻していません。
百貨店やドラッグストアは、外国人にも人気でインバウンド株の一角となっていますが、同社のようなスーパーはインバウンドの恩恵を受けるというコンセンサスはないように思われます。
【7601】ポプラ
中国地方を地盤にコンビニエンスストア「ポプラ」を展開する【7601】ポプラは、広島県広島市に本社を置く広島地盤の企業です。
【7601】ポプラの月足チャート
ポプラの株価は、長期的に見ると下落が続いています。
2023年4月から5月に掛けては大きく反発しましたが、これはG7広島サミット効果ではなく、決算で黒字転換を発表したことが背景です。
【7018】内海造船
中型バラ積み船やフェリーなどを手掛ける日立造船系の造船会社【7018】内海造船は、広島県広島市に本社を置くことで知られています。
グループ会社の内海エンジニアリングが、尾道市にホテル「ナティーク城山」を運営していることから、インバウンド需要が期待できるG7広島サミット関連銘柄にも位置付けられます。
【7018】内海造船の月足チャート
内海造船の株価は、2023年に入ってから反発してきていますが、出来高が小さいことには注意が必要です。
【7261】マツダ
広島と言えば、プロ野球の広島カープや、カープの本拠地であるマツダスタジアムを連想する人は少なくありません。
広島カープのオーナー企業は自動車メーカー【7261】マツダで、広島県に本拠地を置いていることでも知られています。
【7261】マツダの月足チャート
マツダの株価は、コロナショックから回復してきています。
ただ、広島経済や広島カープは、マツダの業績や株価に影響するほどではなく、円安やEVシフトなど海外経済要因や自動車産業を巡るトレンドといった大きな影響力に比べると、広島要因は微々たるものというのが実際の所です。
【9735】セコム
ここからは、G7広島サミットでも厳重になる警備株を見ていきましょう。
警備最大手の【9735】セコムは、代表的な警備株であり、G7広島サミットでも活躍が期待されます。
【9735】セコムの月足チャート
セコムの株価は、この7年間ほどは横ばいが続いていますが、2023年に入ってからは4ヶ月連続で上昇中です。
【2331】綜合警備保障(ALSOK)
警備大手の【2331】綜合警備保障(ALSOK)も、安倍元首相銃撃事件や岸田総理への爆弾事件などを受けて物色された銘柄です。
【2331】綜合警備保障(ALSOK)の月足チャート
綜合警備保障の株価は、安倍元首相銃撃事件や岸田総理爆弾事件などを受けて物色されたものの、あくまでニュース止まりになっており、長期では厳しい展開です。
【9740】セントラル警備保障
JR東系の警備サービス大手【9740】セントラル警備保障も、警備大手株の一角です。
【9740】セントラル警備保障の月足チャート
セントラル警備保障も、他の大手警備株と同じく、長期的に買われているとは言えません。
警備株大手3銘柄について見てきましたが、安倍元首相銃撃事件や岸田総理爆弾事件のニュースでは一時的に物色されたものの、いずれも長期的な上昇には繋がっていないことが分かります。
【3856】Abalance
G7広島サミットでも注目される環境問題やエネルギー問題は、株式市場においても重要テーマの一つとなっています。
太陽光発電事業者の【3856】Abalanceや、企業向け電気・ガスの小売事業者【7692】アースインフィニティといったエネルギーに関連する一部の銘柄は非常に強い動きとなっています。
【3856】Abalanceの月足チャート
ただ、このように非常に強い環境株はハイリスク・ハイリターンであるため注意が必要です。
脱炭素や再生可能エネルギー、EVシフト、水素、原発など、環境やエネルギーに関する話題はG7広島サミットでも重要課題となりますが、これらは株式市場においても非常に重要なテーマであるため、G7広島サミット抜きにしても押さえておきましょう。
まとめ
今回は、G7広島サミットの概要や重要課題について解説した上で、G7広島サミット関連銘柄として注目されそうなテーマ株や銘柄についてご紹介してきました。
G7広島サミットは、2023年5月19日から5月21日に掛けて開催される主要国による国際会議です。
日本で開催されるサミットとしては7回目となり、前回2016年に開催された三重県・伊勢志摩サミットでは、三重県に地盤を持つ企業が注目されました。
今回も広島県に地盤を持つ銘柄、特にインバウンドの恩恵を受ける銘柄には注目が集まる期待があります。
G7広島サミットの重要課題は、対ロシア・対中国におけるメッセージが強くなっていますが、環境問題やエネルギーといった株式市場でも重要なテーマとなっていることについても話し合われます。
岸田総理の地元で開催されるG7広島サミットは、岸田政権が長期安定政権となるための地固めとしても重要となりそうなイベントとなるため、注目しておくようにしましょう。
紫垣 英昭
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