【2023年最新版】5月相場の投資アノマリー「セルインメイ」は本当?売られやすい銘柄は?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

株式市場では、5月相場は「セルインメイ(Sell in May)」で売られやすいと言われています。

ただ、5月相場の投資アノマリー「セルインメイ」は広く知られていますが、近年のNYダウや日経平均株価の動向を見てみると、5月相場はむしろ上昇している月の方が多くなっています

とはいえ、2013年や2019年の5月相場は暴落となり、一部の銘柄では転換点となりました。

2023年の5月相場は、米国利上げや資源高、インフレは収まってきたものの、シリコンバレーバンク破綻の余波や米国のリセッション入りなどには注意が必要です。

今回は、5月相場の相場格言「セルインメイ」について解説した上で、過去の5月相場について検証し、2023年の5月相場で売られるかもしれない銘柄についても取り上げていきます。

この記事を読んで得られること
  • 5月相場の相場格言「セルインメイ」についてわかる
  • 過去の5月相場について検証できる
  • 2023年の5月相場で売られるかもしれない銘柄について学べる

5月相場の相場格言「セルインメイ」とは?

5月相場の相場格言「セルインメイ(Sell in May)」について押さえておきましょう。

5月の相場格言「セルインメイ」

5月の投資アノマリーとしても知られる「セルインメイ(Sell in May)」は、アメリカの株式市場で生まれた投資格言です。

アメリカを代表する株価指数であるNYダウ(ダウ平均株価)は、5月を境に下落していく傾向があることから生まれた相場格言とされています。

また、この相場格言は「Sell in May」の部分が有名ですが、相場格言の全文は次のようになっています。

「Sell in May, and go away; don’t come back until St Leger day.」

これを翻訳すると、「5月に売りなさい。9月の第二土曜日までは市場に戻ってきてはいけない」となります。

※なお、「St Leger Day(セント・レジャー・デイ)」とは、英国のドンカスター競馬場で毎年9月第2土曜日に行われる競馬レース「セント・レジャー・ステークス(St Leger Stakes)」が開催される日のことです。

つまり、5月の相場格言「セルインメイ」とは、5月に暴落が起こりやすいという意味ではなく、5月以降の夏場に掛けて市場が軟調となる傾向を意味するものです。

5月相場が売られやすい理由

5月相場が売られやすい理由としては、下記のようなさまざまな理由が挙げられています。

・ヘッジファンドの決算は5月に多く、ヘッジファンドが利益確定するための売りが出やすい。

・5月以降の夏場に入ると、原油の需要が下がるため、石油メジャー株を中心に売られやすくなる。

・個人投資家が年末に信用買いした売りが出る(信用買いの期限は半年であり、5月は年末から約半年後にあたる)。

・アメリカの税制度では、還付金が1月から5月まで続く。また、ボーナスが出るのもこの時期が多い。還付金・ボーナスによる買いが5月以降はなくなるため、5月以降の市場は弱くなる。

・相場格言「セルインメイ」のアノマリーを信じて、投資家が5月に売りやすくなる。

このように5月相場のアノマリーを裏付けるさまざまな説が言われていますが、どの説も決定的ではなく、特にこれといった裏付けがあるわけではありません。

過去の5月相場を徹底検証!

5月の相場格言「セルインメイ」は本当なのでしょうか?

NYダウと日経平均株価について過去の5月相場を検証してみましょう。

NYダウの5月相場

次のチャートは、NYダウに連動するETF【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信の株価チャートとなります(株価チャートとして見やすいため連動ETFのチャートを参照しています)。

【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信の月足チャート

2015年5月から2022年5月までの8年分の5月相場を見てみると、2019年5月には陰線となり大きく下げましたが、上昇している月の方が多いことが分かります。

NYダウの5月の値動きについて表にしてみると次の通りです。

※上記チャートは連動ETFですが、こちらの表はNYダウのものとなります。

5月始値

5月終値

値動き

2015年

17,859.27

18,010.68

+151.41

2016年

17,783.78

17,787.20

-3.42

2017年

20,962.73

21,008.65

+45.92

2018年

24,117.29

24,415.84

+298.52

2019年

26,639.06

24,815.04

-1,824.02

2020年

23,932.10

25,408.14

+1,476.02

2021年

33,904.89

34,529.45

+624.56

2022年

32,978.49

32,990.12

+11.78

 

直近8年間の5月のNYダウの値動きを見てみると、上昇が6回、下落が2回となっており、上昇の方が多くなっています。

ただ、「セルインメイ」の相場格言が真に意味する5月~9月第二週という観点で見てみると、暴落とまではいかないものの多くの年で5月から9月まで停滞しており、9月以降に上昇トレンドが始まっている傾向が見てとれます。

日経平均株価の5月相場

続いて、日経平均株価の過去の5月相場を見ていきましょう。

日経平均株価の月足チャート

日経平均株価は、NYダウ同様に、5月は陽線が多く、上昇が目立っています。

ただ、NYダウが大きな下落となった2019年は大きな下落となりました。

また、チャートには表示されていませんが、アベノミクス相場の調整相場となった2013年5月は大乱高下の展開となりました。

日経平均株価の5月の値動きについて表にしてみると次の通りです。

5月始値

5月終値

値動き

2015年

19,531.63

20,563.15

+1,031.52

2016年

16,147.38

17,234.98

+1,087.60

2017年

19,310.52

19,650.57

+340.05

2018年

22,508.03

22,201.82

-306.21

2019年

21,923.72

20,601.19

-1,322.53

2020年

19,619.35

21,877.89

+2,258.54

2021年

29,331.37

28,860.08

-471.29

2022年

26,818.53

27,279.80

+461.27

直近8年間の5月の日経平均株価の値動きを見てみると、上昇が5回、下落が3回となっています。

2015年、2016年、2020年には大きな上昇となり、2019年には大きな下落となりました。

過去に大きく売られた5月相場ではどうなっていた?

日経平均株価が特に大きく売られた2013年5月、2018年5月、2019年5月、2021年5月について見ていきましょう。

※2013年、2018年、2019年、2021年の画像は元記事と同じものです。

2013年の5月相場

2013年の5月相場は、2012年12月から始まったアベノミクス相場が調整入りとなり、大荒れの相場展開となりました。

日経平均株価の週足チャート(2013年)

特に、2013年5月23日には、日経平均株価は1日で-1,123円の大暴落に。

アベノミクス相場で大きな上昇となっていた銘柄を中心に暴落銘柄が続出することになりました。

特に、アベノミクス相場で100倍近い暴騰となった【3765】ガンホーの暴落が始まった月となりました。

【3765】ガンホーの週足チャート(2013年)

ガンホーが代表的ですが、新興銘柄の中には、2013年5月に上場来高値を付けてから、2023年時点でも停滞が続いている銘柄は少なくありません。

【3765】ガンホーの月足チャート

2018年の5月相場

2018年の5月相場は、月間ではマイナスとなりました。

日経平均株価の週足チャート(2018年)

2018年5月は中旬までは上昇しており、下旬以降から下げに転じました。

週足チャートで見てみると、そこまで大きな暴落となったわけではありません。

2019年の5月相場

平成から令和に変わった直後の2019年の5月相場は、一方的な下落相場となりました。

日経平均株価の週足チャート(2019年)

令和改元へのご祝儀相場とはならず、日経平均は大きく落とすことになりました。

ただ、週足チャートで見てみると、2019年に入ってから4ヵ月続いた上昇の調整になっていたことが分かります。

2019年5月には、代表的な景気敏感株である半導体関連銘柄などが売られる展開となりました。

【7735】スクリーンホールディングスの週足チャート(2019年)

2021年の5月相場

2021年の5月相場は、月間ではマイナスとなりました。

日経平均株価は新型コロナ相場によって、2020年5月始値の19,619.35円から2021年5月始値は29,331.37円と、1年で10,000円近くの上昇となっていたことから、「セルインメイ」をきっかけとした利益確定売りが出ることも懸念されましたが、大きく売られることはありませんでした。

日経平均株価の週足チャート(2021年)

なお、当時の社会的なトレンドとしては、新型コロナの感染状況が読めない中で、東京オリンピックの開催ができるかどうかが不透明な時期でした。

2023年の5月相場で売られるかもしれない銘柄は?

過去の日経平均株価の動向を見てみると、5月相場で大きく売られる展開となった2013年と2019年は、それまでの上昇の反動から売られていたことが分かります。

2022年の5月相場は、ウクライナ情勢による資源高や米国利上げによる円安・インフレが懸念されていましたが、月間では+400円以上の上昇となりました。

2023年の5月相場は、2022年に比べると米国利上げや資源高、インフレも一服し、急激な円安も落ち着いてきていますが、シリコンバレーバンク破綻の余波や米国のリセッション入りなどには注意が必要です。

2023年の5月相場が「セルインメイ」になった場合に備えて、どのような銘柄が売られるかもしれないかを押さえておきましょう。

2023年4月に大きく上げている銘柄

2023年の日経平均株価は、1月初めの大発会には25,716.86円の安値を付けたものの、以降は順調に持ち直してきています。

日経平均株価の日足チャート

2023年3月には、アメリカの商業銀行シリコンバレーバンクが破綻したことが懸念されて一時は世界株安となりましたが、アメリカ財務省が預金保護などの積極的な救済策を講じたことで2023年4月には株価は戻ってきています。

また、アベノミクスの異次元金融緩和からちょうど10年の節目となり、日銀も黒田総裁に代わって、植田新総裁のもとで新たなスタートとなりましたが、少なくともマーケットからは否定的な動きは出ていません。

特に大きく売られる材料も見当たらない状況ではありますが、中期的に見ると日経平均株価は2023年1月から上がり続けているため、そろそろ調整が入ってもおかしくないかもしれません。

例えば、アパレル大手で「ユニクロ」を展開し、日経平均株価への寄与度も大きい【9983】ファーストリテイリングは2023年の年初から上がり続けています。

【9983】ファーストリテイリングの日足チャート

これまで5月相場で売られてきた銘柄としては、そこまでに大きく上げていた銘柄が多いため、2023年に入ってから上げてきている銘柄には注意が必要かもしれません。

シリコンバレーバンク破綻で銀行株が再度売られる可能性も

2023年3月10日には、アメリカの銀行シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したことを受けて、世界の株式市場に動揺が広がりました。

シリコンバレーバンクの破綻から1ヶ月、株式市場は平穏を取り戻したように見えますが、今後、第二第三のシリコンバレーバンクが出てくる可能性もゼロではありません。

特に、シリコンバレーバンクの破綻を受けては、2022年から好調だった銀行株が大きく売られました。

【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループの週足チャート

上図は中期的な週足チャートとなります。

銀行株は、2022年には米国利上げを受けて、日銀の利上げを期待する金利上昇メリット関連銘柄として大きく買われていましたが、シリコンバレーバンクの破綻を受けて上昇トレンドが調整入りした形となっています。

日経平均株価やTOPIXはシリコンバレーバンク破綻から値を戻していますが、最も大きく下げた銀行株はまだ値を戻していません。

もしもシリコンバレーバンク破綻のような銀行危機が再燃する事態になれば、銀行株は再度大きく売られることも懸念されます。

まとめ

今回は、5月相場の相場格言「セルインメイ」について解説した上で、過去の5月相場について検証し、2023年の5月相場で売られるかもしれない銘柄についても取り上げてきました。

5月相場の相場格言として知られる「セルインメイ(Sell in May)」は、正確には5月に暴落が起こりやすいという意味ではなく、5月以降の夏場から9月第二周目に掛けて市場が軟調となる傾向があることを意味するものです。

NYダウを見てみると、5月に暴落している傾向はなく、相場格言が意味する通り、5月から9月初めに掛けて軟調になっている傾向を見て取ることができます。

過去の日本株の5月相場を振り返ってみても、近年は上昇している傾向が見てとれます。

ただ、2013年5月はアベノミクス相場の調整で大乱高下の展開となり、2019年にも大きな下落となりました。

2023年の5月相場は、ウクライナ情勢や米国利上げによる資源高・円安・インフレが一服しつつある中で、シリコンバレーバンク破綻の余波や米国のリセッション入りなどには注意が必要です。

2023年に入ってから買われている銘柄や、シリコンバレーバンク破綻の影響を受けて売られた銀行株などには、注意が必要な5月相場になるかもしれません。

紫垣 英昭