シリコンバレーバンク(SVB)破綻の株式市場への影響について解説!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

アメリカの銀行シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したことを受けて、世界の株式市場に動揺が広がっています。

シリコンバレーバンクは、資産規模ではアメリカで第16位の銀行となっており、アメリカで起きた銀行破綻としては史上2番目の規模であることから、リーマンショックのような金融危機に繋がる懸念もあります。

アメリカ財務省はシリコンバレーバンクの全ての預金者を保護すると発表するなど対応を進めていますが、日銀が金融緩和修正による利上げに踏み込みそうな日本でも銀行株が大きく売られました。

今回は、シリコンバレーバンク破綻のニュースと株式市場への影響について解説した上で、日本株で注意が必要な銘柄についても紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • シリコンバレーバンク破綻のニュースと株式市場への影響についてわかる
  • 日本株で注意が必要な銘柄について学べる
  • チャート付きの解説でこれまでの株価状況から考えることができる

アメリカのシリコンバレーバンク(SVB)が破綻した

アメリカの銀行シリコンバレーバンク(SVB)が破綻したニュースが世界経済に動揺を与えています。

2023年3月10日シリコンバレーバンクが経営破綻したと発表

アメリカ連邦預金保険公社(FDIC)は2023年3月10日、シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したと発表しました。

シリコンバレーバンクは、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタクララに本社を置く銀行です。

シリコンバレーは、シリコンバレーでスタートアップへの積極的な融資を手掛けているシリコンバレー最大の投資銀行で、全米では16位の規模の銀行でした。

シリコンバレーバンクは、持ち株会社である【SIVB】SVBファイナンシャル・グループが、アメリカの新興市場NASDAQに上場していましたが、この発表を受けて株価は暴落し、取引停止になっています。

【SIVB】SVBファイナンシャル・グループの月足チャート

2023年3月14日時点では、【SIVB】SVBファイナンシャル・グループの株価は106.04ドルを付けて取引停止となっていますが、経営破綻したため上場廃止になることは必至の情勢です。

アメリカ財務省は預金の全額保護を発表するなど対応を進めている

アメリカ連邦準備理事会(FRB)によると、シリコンバレーバンクの総資産は2022年末時点で約2,090億ドルとなっており、これは全米16位となっていました。

この規模の銀行破綻では、2008年9月の金融危機で経営破綻したワシントン・ミューチュアルに次いで史上2番目の規模となり、一部ではリーマンショックの再来も懸念されています。

また、シリコンバレーバンクは、アメリカのハイテク企業の競争力の源泉であるシリコンバレーのスタートアップやベンチャーキャピタルにとって重要な銀行だったことから、アメリカの技術革新(イノベーション)に影響を及ぼしかねない点も指摘されています。

シリコンバレーバンクの預金をめぐって取り付け騒ぎなどの信用不安も起こっていることから、アメリカ財務省は3月12日、預金の全額保護を発表しました。

当初は、シリコンバレーバンクの預金残高の90%近い約1,560億ドルが預金保護の対象外となるであろうことから懸念されていましたが、ひとまずは懸念材料の一つがなくなった形です。

また、3月12日には、ニューヨークに拠点を持ち、暗号資産(仮想通貨)関連企業への融資を手掛けていたシグネチャーバンクも経営破綻したと発表されましたが、こちらも預金保護されると発表しています。

アメリカのバイデン大統領は、シリコンバレーバンクとシグネチャーバンクの経営破綻を受けて「アメリカ国民とアメリカの企業は、必要な時に銀行預金が口座にあると安心していい」という声明を発表しました。

シリコンバレーバンクの経営破綻は世界の株式市場に影響を与えた

シリコンバレーバンク(SVB)経営破綻のニュースは、世界の市場にも影響を与えました。

米国市場は大きく下げた

2023年3月10日付のアメリカ市場は、シリコンバレーバンクの経営破綻を受けて3指数(S&P500指数、ダウ平均株価、NASDAQ100指数)ともに下落しました。

S&P500指数の日足チャート

 

S&P500指数やダウ平均株価は、2023年3月に入ってから、再び利上げ懸念が再燃したことから売られていましたが、シリコンバレーバンクの破綻というネガティブ材料が加わってしまった形となっています。

また、シリコンバレーバンクの持ち株会社【SIVB】SVBファイナンシャル・グループも上場するNASDAQの株価指数「NASDAQ100指数」も下げました。

NASDAQ100指数の日足チャート

 

「NASDAQ100指数」も、2021年11月以降の米国利上げで下げていますが、少なくともシリコンバレーバンクの経営破綻が良い材料になることはないでしょう。

週明けの日本市場にも大きな影響を及ぼした

シリコンバレーバンクの経営破綻を受けて、週明けの日経平均株価は全面安の展開となっています。

日経平均株価の日足チャート

なお、3月10日金曜日時点では、まだシリコンバレーバンクの経営破綻は発表されていませんでしたが、米国利上げ再燃が懸念されて全面安となっていました。

週明けには、シリコンバレーバンクの経営破綻を受けて全面安が続いている形です。

日経平均株価・TOPIXともに、2023年1月から反発していただけに、シリコンバレーバンクの経営破綻が利益確定の売りのきっかけになった面もあるかと思われます。

アメリカはリーマンショックの再発とならないように預金保護を実施するなど対策を打っているため、株式市場への影響は一時的なものに留まる可能性も考えられますが注意が必要です。

為替市場は円高ドル安となった

シリコンバレーバンクの経営破綻の影響は、株式市場に留まらず、為替市場と債権市場にも出ています。

為替市場では、ドルを売って円を買う動きが強まり、3月10日には136円台だったドル円相場は、3月13日には一時133円台まで円高ドル安が進みました。

ドル円相場の日足チャート

ドル円相場は、アメリカで再度の利上げ懸念が出たことから再び円安基調となっていましたが、シリコンバレーバンクの経営破綻を受けて円安が一服した形となりました。

アメリカ財務省が預金者保護を発表したこと受けて一時135円台にまで戻るなど、為替相場も荒い値動きとなっています。

債券市場では日本国債を買う動きが広がり長期金利は低下

植田新総裁が就任し、日銀のYCC(イールド・カーブコントロール)修正などでも注目される債券市場にも、シリコンバレーバンクの経営破綻の影響が出ています。

日本国債(10年物)の日足チャート

長期金利の目安となる日本国債(10年物)は、日銀とヘッジファンドの攻防が続いています。

3月10日に行われた黒田総裁最後の金融政策会合では、長期金利の上限を0.5%にするYCCの修正は行われず、長期金利は0.5%に張り付いていました。

3月13日にはシリコンバレーバンクの経営破綻を受けて、リスク回避の動きが広まったことで、日本国債を買う動きが強まり、長期金利は0.3%にまで急落。

日銀が金融緩和策の修正を発表した2022年12月20日以来の水準にまで低下しています。

シリコンバレーバンク破綻のニュースで注意が必要な銘柄

シリコンバレーバンクの経営破綻は今後、株式市場にどのような影響を与えていくかは不透明ですが、注意が必要な銘柄について押さえておくようにしましょう。

日銀利上げにより日本の銀行株にも注意が必要

メガバンクや地方銀行といった銀行株は、2022年以降、日銀が利上げすることへの期待から大きく買われていました。

【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループの月足チャート

ただ、シリコンバレーバンクの経営破綻を受けて、3月13日から3月14日に掛けては大きく売られており、月足で見ると大きな出来高を伴った陰線となっていることが分かります。

銀行株は、日銀の利上げ期待から金利上昇メリット関連銘柄として買われていましたが、今後、日銀が利上げに踏み切った場合には保有している日本国債に大きな含み損が出るリスクが懸念されるかもしれません。

銀行株は、【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループ、【8316】三井住友フィナンシャルグループ、【8411】みずほフィナンシャルグループの3大メガバンク、大手地方銀行としては【8308】りそなホールディングスや【7186】コンコルディア・フィナンシャルグループなどが挙げられます。

これらのメガバンクや大手地方銀行が経営破綻するリスクはほとんどないと思われますが、体力が弱っている地方銀行には注意が必要かもしれません。

ハイテク株にも影響を及ぼす可能性がある

シリコンバレーの投資銀行であったシリコンバレーバンクの経営破綻を受けて、NASDAQなどのハイテク株にも注意が必要かもしれません。

NASDAQの銘柄は、2021年11月以降の米国利上げで大きく下げており、「NASDAQ100指数」にレバレッジを掛けて取引する「レバナス」を手掛けていた投資家は大きな含み損を抱える状況となっています。

日本株においては、【8035】東京エレクトロンや【6857】アドバンテスト、【6920】レーザーテック、【6723】ルネサスエレクトロニクスといった半導体株が、NASDAQと連動しやすいテーマ株となっています。

【8035】東京エレクトロンの月足チャート

また、NASDAQが大きく売られることになると、近年はハイテクスタートアップへの投資会社としての性質を強めている【9984】ソフトバンクグループにとっても苦しい状況になりそうです。

【9984】ソフトバンクグループの月足チャート

最悪の場合にはリーマンショックの再来となる可能性も?

シリコンバレーバンクの経営破綻が、世界の株式市場にどの程度の影響を及ぼすかは未知数です。

アメリカ財務省は預金保護を徹底するなど、リーマンショックの再発を防ぐ取り組みを進めていることから、それほど大きな問題とはならず株式市場の下落も一過性になる可能性もあります。

ただ、最悪の場合には、リーマンショックの再来となる可能性もゼロではありません。

日経平均株価の月足チャート

2008年9~10月に掛けてのリーマンショックでは、世界中の株式市場が大暴落となりました。

まだ記憶に新しい2020年2~3月のコロナショックも大暴落となりましたが、その後は新型コロナ相場となりすぐに回復しました。

リーマンショック後、リーマンショック前の株価水準を回復するまでには5年以上の歳月が掛かっており、株式市場に与えたダメージはコロナショックより大きかったと言えます。

まとめ

今回は、シリコンバレーバンク破綻のニュースと株式市場への影響について解説した上で、日本株で注意が必要な銘柄についても紹介してきました。

2023年3月10日、アメリカの商業銀行シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻が発表され、世界中のマーケットに動揺が広がりました。

アメリカ財務省は預金者保護を徹底するなど、リーマンショックの再発を防ぐ取り組みを進めていますが、今後の株式市場に与える影響は不透明なままです。

日本でも、日銀の植田新総裁のもとで利上げに舵を切ることで地方銀行に同様の懸念が広がる可能性があることから銀行株が大きく売られており、NASDAQが崩れた場合には半導体株などのハイテク株が売られる可能性もあります。

シリコンバレーバンク経営破綻の影響は未知数ですが、今後の相場展開には注意しておくようにしましょう。

紫垣 英昭