紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
新型コロナ禍のステイホームでは、巣篭り需要が高まり、動画配信サイトYouTubeでお家時間を過ごす人が急増しました。
今や、YouTubeは地上波テレビも凌駕するメディアとなっており、人気芸能人がユーチューバーデビューすることも少なくありません。
また、CGやアニメのVチューバー(バーチャル・ユーチューバー)は、日本独自に発展したYouTube文化になりつつあります。
今回は、YouTubeやユーチューバー、Vチューバーについて解説した上で、代表的なYouTube関連銘柄をチャート付きでご紹介していきます。
- YouTubeやユーチューバー、Vチューバーとは何かがわかる
- YouTube関連銘柄がチャート付きでわかる
- YouTube関連銘柄で抑えておきたい銘柄がわかる
YouTube関連銘柄とは?
動画配信サイトYouTubeとYouTubeで大きな影響力を持つユーチューバー・Vチューバーについて抑えておきましょう。
YouTubeの基本概要
YouTubeは、アメリカの検索大手Googleが提供する世界最大の動画共有サービスです。
YouTubeの動画は誰でも無料で視聴することが可能となっており、2020年時点で全世界のユーザー数は20億人以上、日本国内のアクティブユーザー数は6,000万人以上と推測されています。
YouTubeは2005年2月にPayPalの従業員だったチャド・ハーリー氏やスティーブ・チェン氏、ジョード・カリム氏らによって設立され、2006年10月にGoogleがスピード買収して現在に至ります。
Googleの親会社であるAlphabetの2020年第3四半期(7~9月)決算によると、YouTubeの広告収入は50.37億万ドルとなっており、Google全体の売上46.173億万ドルに対して10.90%の売上比率となっています。
なお、Googleの前年同期(2019年第3四半期)のYoutube広告収入は38.04億万ドルであり、この1年でYouTube事業は+32%成長したということです。
Google全体の売上から見れば、YouTube事業はわずか10%に過ぎませんが、第3四半期だけで日本円換算して約5,000億円の巨大事業であり、Googleの成長エンジンとなっています。
(出典:Alphabet Announces Third Quarter 2020 Results: https://abc.xyz/investor/static/pdf/2020Q3_alphabet_earnings_release.pdf)
YouTubeを展開するGoogle(Alphabet)の株価チャートを見てみましょう。Alphabet(GOOGL)の月足チャート
(引用 : https://jp.tradingview.com/symbols/NASDAQ-GOOGL/)
GAFAの一角であるGoogle株は成長しており、コロナショックでは大きく落としたものの、2020年11月には上場来高値を更新していることが分かります。
ユーチューバー・Vチューバーが増えている
YouTubeは2010年代に大きく発展しましたが、YouTubeの発展とともにYouTubeで大きな影響力を持つインフルエンサーが多数出現することになりました。
YouTubeへの動画投稿で生計を立てる人はユーチューバー(YouTuber)と呼ばれ、今や小学生の将来なりたい職業ランキングで上位に位置するまでになっています。
日本の人気ユーチューバーとしては、ヒカキンやはじめしゃちょー、東海オンエアなどが有名です。
また、近年は、元SMAPの草彅剛さんや雨上がり決死隊の宮迫博之さん、とんねるずの石橋貴明さんなどの一流芸能人がユーチューバーになる事例も増えています。
そして、日本特有のユーチューバーとしては、CGやアニメキャラが動画配信するVチューバー(ブイチューバー)こと「バーチャル・ユーチューバー」が挙げられます。
YouTubeには「投げ銭機能」という、ユーザーが直接お金を払える仕組みがありますが、日本の人気Vチューバーである、桐生ココ、潤羽るしあ、兎田ぺこらの3人が世界の累計獲得額トップ3を独占していることが分かったと、2020年11月17日付の日本経済新聞で報じられました。
今回は、日本株のYouTube関連銘柄をご紹介していきますが、その多くはユーチューバーやVチューバーに関連した銘柄となります。
ユーチューバー関連銘柄
ヒカキンやはじめしゃちょーで知られるユーチューバーは、SNS時代を代表するインフルエンサーです。
【3990】UUUM
ユーチューバーマネジメントや動画制作サポートなどを手掛けるユーチューバー専属事務所の【3990】UUUM(ウーム)は、日本株を代表するYouTube関連銘柄です。
同社には、ヒカキンやはじめしゃちょーといったトップユーチューバーが多数所属しています。
【3990】UUUMの月足チャート
UUUMの株価は、2018年から2019年に掛けては大きく上昇していましたが、2020年には苦戦しています。
同社はYouTube関連銘柄の代名詞的銘柄であり、日本株のYouTube関連銘柄としてはこちらの銘柄さえチェックしておけば問題ありません。
【6177】AppBank
スマホ向けアプリ記事などを掲載する「AppBank.net」を運営する【6177】AppBankは、人気ユーチューバーであるマックスむらい氏が代表を務める上場企業です。
【6177】AppBankの月足チャート
AppBankの株価は、2015年10月のIPO以降は大暴落となっています。IPO直後には5,000円を超えていた瞬間もありましたが、2020年11月時点の株価はついに200円台を割り込み、低位株からボロ株の領域に入ってきてしまいました。
マックスむらい氏は、ユーチューバーが脚光を浴び始めた2010年代前半には人気ユーチューバーとして知られていましたが、近年は人気に陰りが出てきていることは否めず、株価にも反映されていると言わざるを得ません。
【7860】エイベックス
YouTubeは広告効果が高いことから、公式チャンネルを開設している企業も増えています。
音楽ソフト大手の【7860】エイベックスは、YouTubeチャンネル「avex」を開設しており、2020年11月時点のチャンネル登録者数は548万人と、日本の企業チャンネルの中ではトップとなっています。
日本のYouTubeチャンネル全体で見ても10位に位置している大人気チャンネルです。
【7860】エイベックスの月足チャート
エイベックスはYouTubeで人気チャンネルとなっているものの、株価は厳しい状況が続いています。
かつては浜崎あゆみや倖田來未、EXILEといった国民的アーティストを輩出していましたが、近年は爆発的ヒットを生む人気アーティストを輩出できていないことが影響していると思われます。
また、直近では、新型コロナの影響でライブが中止になっていることが大きな売り要因となっている状況です。
【7974】任天堂
世界的ゲーム会社の【7974】任天堂は、YouTubeを効果的に宣伝に活用していることで知られています。
ポケモン公式チャンネル「The Official Pokémon YouTube channel」はチャンネル登録者数377万人、任天堂の公式チャンネル「Nintendo 公式チャンネル」はチャンネル登録者数165万人となっており、企業チャンネルとしては日本最大級です。
【7974】任天堂の月足チャート
任天堂の株価は、新型コロナ下の巣ごもり消費で「ニンテンドースイッチ」や「あつまれ どうぶつの森」が世界的ブームとなったことからも絶好調です。
【9783】ベネッセホールディングス
YouTubeでは教育動画も人気コンテンツの一つとなっています。
こどもちゃれんじ公式チャンネルである「しまじろうチャンネル(YouTube)」は、チャンネル登録者数163万人の人気コンテンツです。
こどもちゃれんじを展開する【9783】ベネッセホールディングスの株価を見ていきましょう。
【9783】ベネッセホールディングスの月足チャート
ベネッセホールディングスの株価は、この数年間はほぼ横ばいとなっています。
【7832】バンダイナムコホールディングス
おもちゃメーカー最大手の【7832】バンダイナムコホールディングスは、ガンダム情報を配信する「GundamInfo」がチャンネル登録者数160万人の人気チャンネルとなっています。
【7832】バンダイナムコホールディングスの月足チャート
バンナムホールディングスの株価は絶好調で、新型コロナ相場でも上場来高値を更新しています。
ここまでユーチューバー関連銘柄を6銘柄見てきましたが、エイベックスや任天堂、ベネッセ、バンナムはあくまでYouTubeを使った広告に積極的な企業の代表格ということであり、YouTubeが株価にまで影響を及ぼすほどではありません。
ユーチューバー関連銘柄と言えるのはユーチューバー専属事務所の【3990】UUUMだけというのが現状です。
Vチューバー関連銘柄
日本独自に発展しているバーチャル・ユーチューバーことVチューバー関連銘柄を抑えておきましょう。
【8001】伊藤忠商事
大手商社の【8001】伊藤忠商事は、Vチューバーが多数所属するグループ「にじさんじ」と提携していることで知られています。
同社は、アニメ文化という日本特有の強みを活かしたVチューバーの商品化、音楽展開、リアルイベント実施などの複合的な展開をサポートし、海外向けに新たなアニメコンテンツ市場の創出を目指していくとのことです。
【8001】伊藤忠商事の月足チャート
伊藤忠商事の株価は長期的な右肩上がりのチャートとなっています。配当利回りも3%以上ある高配当銘柄であり、長期投資に有力な商社株です。
【2587】サントリー食品インターナショナル
飲料大手の【2587】サントリー食品インターナショナルは、企業自身がVチューバーに参入しています。
同社は、サントリー製品のPRを行うサントリー公式Vチューバー「燦鳥(サントリ)ノム」を展開しています。
【2587】サントリー食品インターナショナルの月足チャート
サントリー食品インターナショナルの株価は、この数年間は横ばいとなっており、典型的なディフェンシブ銘柄の値動きです。
Vチューバーは日本独自の文化として発展していますが、まだ株価に影響するほどではありません。伊藤忠商事にせよサントリー食品インターナショナルにせよ、Vチューバーが株価を動かすことはないというのが現実的な評価でしょう。
動画サイト運営
YouTube関連銘柄の一角として、YouTubeのような動画サイトを運営する銘柄を抑えておきましょう。
【9468】KADOKAWA
出版大手の総合メディア企業【9468】KADOKAWAは、動画投稿サイト「ニコニコ動画」を展開していることで知られています。
ただ、「ニコニコ動画」は、かつては国内ではYouTubeと二部するほどの動画投稿サイトでしたが、近年はその勢いに陰りが見えてきている点は否めません。
【9468】KADOKAWAの月足チャート
KADOKAWAの株価は直近では絶好調となっていますが、これは巣ごもり消費などでゲーム事業がけん引したためです。「ニコニコ動画」が株価をけん引したとは言えません。
【4751】サイバーエージェント
ネット広告代理店大手の【4751】サイバーエージェントは、ネットテレビ「AbemaTV」を運営していることで知られています。
【4751】サイバーエージェントの月足チャート
サイバーエージェントは、東証を代表する成長企業として株価も好調です。ネットテレビ「AbemaTV」が今後どれだけ発展していくかにも注目です。
まとめ
今回は、YouTubeやユーチューバー、Vチューバーについて解説した上で、代表的なYouTube関連銘柄をチャート付きでご紹介してきました。
YouTubeの発展は目覚ましく、今やGoogleの成長エンジンとなっています。
日本株のYouTube関連銘柄としては、ユーチューバー事務所の【3990】UUUM1銘柄のみというのが実態です。
エイベックスや任天堂、バンナムホールディングスなど人気企業チャンネルを運営する企業も多いですが、あくまで広告の一環としてYouTubeを活用しているに過ぎず、株価に影響を及ぼすほどではありません。
また、日本独自に発展したVチューバーからもインフルエンサーが出てきていますが、株式市場ではまだ注目される段階にはない状況です。
日本株のYouTube関連銘柄としては、【3990】UUUMを抑えておきましょう。
紫垣 英昭
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