紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
投資や経済に関するニュースで、「ESG(イーエスジー)投資」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
ESG投資とは、環境保護や労働者保護といった環境・社会・企業統治を重視する投資のことです。
ESG投資の概要を聞くと、「そんな要素を重視しても、株価には全く関係ない!」と思ってしまう人は少なくありません。
ただ、近年、ESG投資で注目される銘柄を取引している機関投資家が増えており、実際に高い投資パフォーマンスを出していることも事実です。
今回はESG投資について知り、自身の株式投資に役立てていきましょう。
- ESG投資とは何かがわかる
- なぜESG投資が初心者にもおすすめなのかがわかる
- ESG投資をするのにおすすめの銘柄の選び方、ETF、投資信託がわかる
ESG投資とは?
機関投資家を中心に広まっているESG投資について理解しておきましょう。
そもそもESG投資とは?
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3点を重視している企業に投資することです。
環境への取り組みとしては、二酸化炭素の排出が少ない、再生可能エネルギーの利用に積極的といった要素が重視されます。
社会への取り組みとしては、育休が取りやすく女性も活躍できるといった労働環境の整備、地域活動への貢献などが評価されるポイントです。
企業統治への取り組みとしては、不祥事がなく安定した収益を上げていることが重視されます。
環境・社会・企業統治に力を入れている上で、安定した収益を上げている企業
また、ESG投資と同時に、SDGs(エスディージーズ)投資というキーワードもよく聞かれると思います。
SDGs投資については、以下の記事で詳しく解説しています。
ESG投資をするメリット
ESG投資について聞くと、「環境・社会・企業統治が優れている企業に投資するなんて、きれいごとに過ぎない!」と反発する人は少なくありません。
個人投資家であれ機関投資家であれ、投資を行う際には売上や利益といった財務指標を重視します。
ただ、労働問題や不祥事などのリスクは、財務指標から読み取ることはできないのもまた事実です。
例えば、東芝の不正会計問題やスルガ銀行の不正融資などは、財務指標を見ていて予測できたでしょうか?
近年、機関投資家の間でESG投資が広まっているのは、このように財務指標だけを見ていては分からない点が多数あるためです。
そもそも、東芝やスルガ銀行が不祥事に手を染めた理由は財務指標を良くすることにありました。
しかし、財務指標を重視し過ぎたあまりに不祥事に手を染め、株価は大暴落。多くの投資家に迷惑を掛けることになってしまいました。
【8358】スルガ銀行の月足チャート
機関投資家が財務指標に加えてESGも重視して投資するようになれば、このような不祥事も減り、結果的に投資家も企業も長期的な利益を得られるようになることが実現されます。
個人投資家にとって重要なことは、ESG投資をしている機関投資家が増えているという事実に集約されます。
機関投資家に買われるということは、ESG投資される銘柄は上昇しやすいということ
ESG投資で抑えておきたいESG指数
ESG投資が注目の投資法だとわかったところで、ESGを重視している銘柄はどのようにして選べばよいでしょうか?
ESG投資をする上で抑えておきたいESG指数について理解しておきましょう。
「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」
ESG投資をする上で最も広く使われているのが、投資格付け会社のMSCIが公表している「MSCI ESG格付け指数」です。
MSCIは、企業のESGへの取り組みを最高位の「AAA」から最低の「C」までの間で格付けしています。
特に、日本株の中でも時価総額が高い大型銘柄かつESG格付けが高い銘柄で構成されている「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の構成銘柄は、ESG投資をする上で必ずチェックしておきましょう。
なお、「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」は、世界最大の機関投資家である日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が投資判断に採用していることを発表しています。
「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の採用銘柄は、MSCIのホームページから確認することが可能です。
引用)MSCI
特に、ESG格付けが高い「AAA」や「AA」の銘柄については要チェックしておきましょう。
「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」
日本取引所も、「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」というESG指数を発表しています。
この指数は、東証株価指数TOPIXをユニバースとして、環境情報の開示状況や炭素効率性の水準に着目して、構成銘柄のウエイトを決定する指標です。
「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」に比べると、環境分野に特化した銘柄が多くなる傾向があります。
「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」の概要や構成銘柄については、日本取引所のホームページから確認することができます。
「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」は環境に特化したESG指数であるため、本格的なESG投資をする上では「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」の方を参考にすることをおすすめします。
代表的なESG関連銘柄
2020年1月現在、「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」で最高位の「AAA」を獲得している銘柄は【1605】国際石油開発帝石、【4005】住友化学、【4062】イビデン、【4204】積水化学工業、【4665】ダスキン、【6645】オムロン、【9433】KDDI、【9437】NTTドコモの8銘柄となっています。
2015年1月から2020年1月までの5年間で見てみると、この8銘柄の内、国際石油開発帝石を除く7銘柄の株価が上昇しています。
ESG格付けが最高位の「AAA」を付けている代表的な銘柄の月足チャートを見ていきましょう。
【9437】NTTドコモの月足チャート
携帯キャリア大手のNTTドコモは、成長株・ディフェンシブ・高配当と日本株の中でも長期投資に最も適する銘柄の一つであると言えますが、ESG格付けも最高位の「AAA」となっています。
【4204】積水化学工業の月足チャート
大手化学メーカーの積水化学工業は、配当利回りが2%強あるディフェンシブ銘柄です。ESG格付けも最高位の「AAA」となっており、株価も右肩上がりとなっています。
「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」で最高位の「AAA」を獲得している全8銘柄をもう一度見てみましょう。
ESG格付けAAA銘柄 |
業種 |
【1605】国際石油開発帝石 |
資源開発大手 |
【4005】住友化学 |
化学大手 |
【4062】イビデン |
電子部品大手 |
【4204】積水化学工業 |
化学大手 |
【4665】ダスキン |
清掃用具レンタル |
【6645】オムロン |
電子部品大手 |
【9433】KDDI |
携帯電話キャリア |
【9437】NTTドコモ |
携帯電話キャリア |
ESG格付けで最高位「AAA」を獲得している銘柄は、いずれも成長企業であることが分かるかと思います。
ESG格付けが高い銘柄は、成長企業で業績も良いからこそESGに力を入れることができると考えられます。
つまり、ESG格付けが高い銘柄を選ぶことは、成長企業を選ぶことと同じであると言えるのです。
ESG投資ができる投資信託
それでは最後に、ファンドを通してESG投資ができる投資信託を抑えておきましょう。
ニッセイ日本株ESGフォーカスファンド(ESGジャパン)
ESGに優れる日本株に投資したい場合には、ニッセイアセットマネジメントが運用する「ニッセイ日本株ESGフォーカスファンド(ESGジャパン)」がおすすめです。
同ファンドは、ESGに対する取り組みに優れ、持続的な企業価値の向上が期待される銘柄を選定して運用しています。
同ファンドには、SBI証券か楽天証券から投資することが可能です。
日本株のESGファンドとしては最もおすすめですが、手数料である信託報酬が年率1.573%とやや高いのがネック
りそなAM-Smart-i 先進国株式ESGインデックス
ESGに優れる外国株で運用したい場合には、りそなアセットマネジメントが運用する「りそなAM-Smart-i 先進国株式ESGインデックス」がおすすめです。
同ファンドは、日本を除く先進国株からESG評価の高い銘柄を選定することで構築される「MSCI-KOKUSAI ESG リーダーズ指数」に連動するインデックス型外国株投資信託です。
SBI証券で取り扱っており、手数料である信託報酬も年率0.286%と非常に安くなっています。
ESG投資ができるETF
ESG投資ができるETF(上場投資信託)について抑えておきましょう。
【1653】MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数
日本株でESG投資をする上で最も広く使われている「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」には連動するETFがあります。銘柄コードは【1653】です。
【1653】MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の月足チャート
ESG投資をしたいけど個別銘柄に投資するのは不安という場合には、こちらのETFを最もおすすめします。
まとめ
今回は、経済・投資ニュースで耳にすることが増えているESG投資について解説してきました。
ESG格付けが高い銘柄は、安全な大型株で長期投資におすすめの銘柄が多く、ESG投資は株初心者にこそおすすめの投資手法と言えるのではないでしょうか?
ESG投資について理解して、自身の資産形成に役立てていきましょう!
紫垣 英昭
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