投資信託の為替ヘッジとは?あり・なしのメリットとデメリットを徹底解説!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

海外の株式や債券を組み入れた投資信託には、為替ヘッジありとなしの商品が存在します。 為替ヘッジの有無の選択は外貨建て投資信託を行なう際の大切なポイントとなりますが、投資初心者であれば「為替ヘッジがよくわからない」と感じる方も多いのではないでしょうか。 そこで本記事では、投資信託の為替ヘッジとは何か、ありとなしそれぞれのメリットやデメリットについて解説します。

この記事を読んで得られること
  • 初心者が知っておきたい為替ヘッジの基本的な情報や仕組みがわかる
  • 為替ヘッジのメリット・デメリットがわかる
  • 為替ヘッジの有無を選択するうえで重要な「リスク許容度」について理解できる

投資信託の為替ヘッジとは?あり・なしでなにが違うのか

ここでは投資信託の為替ヘッジとは何か、仕組みや費用について見ていきましょう。

為替ヘッジは外貨建て投資信託のリスク軽減対策

外貨建てで投資信託を行なう場合、日々の為替レートの変動によって結果に影響が出ます。 基準価額は日本円で出されるため、為替ヘッジなしの場合、円安になれば基準価額はプラス方向、円高ならマイナス方向というように直に為替変動リスクの影響を受けるのです。 為替ヘッジは、この為替レートの変動によるリスクを抑える仕組みであり、外貨建て投資信託において保険のような機能を果たします。 ただ為替ヘッジは為替変動の影響を抑制する効果が期待できますが、必ずリスクを回避できると断言できるものではありません。

為替ヘッジは「為替予約取引」を活用

為替ヘッジがリスク低減のために、おもに活用しているのが為替予約取引です。 為替予約取引は、将来の為替レートや数量を予約する取引で、日本と相手国の金利差を考慮して出された為替予約レートが使われています。 為替予約取引を活用して為替ヘッジを利用すれば、将来どのように動くかわからない為替レートでも、約束した時点でのレートの活用で円高になった際のリスクを抑えることが可能です。

為替ヘッジには費用がかかる場合が多い

為替ヘッジにかかる費用を「ヘッジコスト」といい、費用は信託財産から引かれるため基準価額が目減りします。 ヘッジコストは外貨と日本円の短期金利差に相当し、定められた金額でなくその時々で変動するものです。 そのため、投資先の金利が高いと自ずとヘッジコストも高くなり、逆の場合は費用ではなく収益として加算されます。 したがって外貨建ての投資信託では、日本と相手国の金利差を踏まえて購入する必要があるでしょう。

投資信託の為替ヘッジあり・なしのメリットとデメリットは?

為替変動リスクを避けるためには、一見「為替ヘッジあり」を選んだほうが良さそうに思えますが、一概にそうともいえません。 為替ヘッジのありとなしでは、それぞれにメリットとデメリットがありますので確認しておきましょう。

為替ヘッジありのメリット・デメリット

為替ヘッジありでは、円高になったときの影響が限定的であるため、為替の値動きを心配せずに投資信託に挑めるのがメリットです。 対してデメリットは、ヘッジコストの負担による利益の減少、円安になったときに利益を享受できない点にあります。 また投資信託ではリスク低減のための分散投資が重要ですが、景気の良い国への投資をしたさいに通貨分散の効果が得られず、為替差益の恩恵を期待できなくなる点も覚えておきましょう。 為替ヘッジありは、これから経済状況が円高に進むと予想する人、為替変動の影響を受けずに投資信託をしたい人に向いています。

為替ヘッジなしのメリット・デメリット

為替ヘッジなしのメリットは、円安に進んだ場合にダイレクトに為替差益が出ることや、分散投資効果が期待できる点にあります。 基準価額が変動しなくても円安に進めば為替差益が出るだけでなく、同時に基準価額も上がればその値上がり益と為替差益を一緒に受け取るのが可能です。 ただし円高に進んだ場合は為替変動リスクの影響を直接受けるため、為替差損の発生につながり、基準価額が下がった場合はダブルのリスクを考慮しなければなりません。 為替ヘッジなしは、これから円安に進むと予想する人、ヘッジコストを負担したくない人に向いています。

投資信託の為替ヘッジは投資への考えと今後経済状況を考慮!

投資信託で為替ヘッジのあり・なしを選択するには、まずは自分の投資への考えの確立と、経済状況を考慮してからの決定をおすすめします。

為替ヘッジの選択は投資への考え方を反映させる

為替ヘッジのあり・なしの選択では損得を考える前に、投資スタンスの確立と投資プランの目標設定が重要ですので、以下のような項目について考えておきましょう。

  • 投資スキル、知識、人脈などの現状を認識
  • なぜ投資を行うのか
  • 投資期間はどれくらいか(中長期・長期など)
  • 投資金額はいくらにするか
  • いつまでにいくらの利益を出したいか
  • リスク許容度はどれくらいか

投資信託は短期間で大きな利益を出すものではなく、長い時間をかけて小さな利益をどれだけ積み上げるかが重要です。 なかでもリスク許容度は、投資スタンスを考えるうえで必ず考えておかなければならない項目です。 例えば、ヘッジコストありでリスクを避けながら資産形成するか、ヘッジコストをかけずに円安でハイリターンを狙うのかなど、あらゆるパターンをシミュレーションして考えておきましょう。

日本の今後の経済状況もデフレが続くと予想

2021年現在、日本においてはデフレの脱却は難しく、この先も当面低金利の時代が続くと予想されます。 コロナ禍を脱却して物価とGDPの上昇率が上向き、日本経済がインフレに進み、日銀の政策金利が変更されるのは、日本の根深いデフレ体質から見ても、すぐには困難と考えてよいでしょう。 現段階において投資信託でヘッジありとなしの選択で迷うなら、他国との金利差やヘッジコストの推移の十分なチェックも重要です。

まとめ

投資信託は、経験や知識の不足から躊躇しがちな投資初心者でも、おすすめしやすい投資手法です。 投資信託の為替ヘッジのありとなしでは、それぞれにメリットとデメリットがあるので、十分な事前の把握が重要です。 外貨建て投資信託をはじめるなら、まずは自己の投資スタンスや目標設定を決め、今後の経済状況の移り変わりを見ながらヘッジの有無を判断しましょう。