e-sports関連銘柄について解説!ゲーム株の成長テーマを押さえておこう。

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

e-sportsは世界中で大会が開かれるなど注目を集めており、国際オリンピック委員会(IOC)が五輪での採用に向けた取り組みも推進しています。

日本はゲーム大国でありながらe-sportsでの遅れが指摘されていますが、政府はe-sportsの五輪採用に向けた取り組みを活発化させるようです。

株式市場においてもe-sports関連銘柄はゲーム株の一角として注目を集めており、2022年11月30日に新規上場(IPO)したeスポーツ専業企業【9565】ウェルプレイド・ライゼストは5倍以上のIPO初値を付けました。

今回は、e-sportsの概要や市場規模、e-sports関連銘柄について解説した上で、代表的なe-sports関連銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • e-sportsの概要や市場規模についてわかる
  • e-sports関連銘柄についてわかる
  • 代表的なe-sports関連銘柄についてチャート付きで学べる

e-sports(eスポーツ)とは

e-sports(eスポーツ)の概要や市場規模について押さえておきましょう。

e-sportsの概要

「e-sports(イースポーツ)」とは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略語で、コンピューターゲームを使って行う競技のことです。

コンピューターゲームをスポーツ競技に見立てて行うことから、e-sportsと呼ばれています。

e-sportsで競われるゲームは、格闘ゲームやシューティングゲーム、戦略ゲームといった、人と人が競い合う対人ゲームが中心となっています。

e-sportsで生計を立てている人は「プロゲーマー」とも呼ばれており、日本でも、ウメハラこと梅原大吾氏、ときど氏、ふぇぐ氏といった世界的プロゲーマーが有名です。

e-sportsのプロゲーマーは、大会で優勝した賞金や、大会のライブ配信、スポンサー収入などで収入を得ており、その収益構造は一般的なスポーツと同様です。

ただ、日本はゲーム大国として知られていますが、e-sportsにおいては遅れが指摘されています。

世界のe-sportsはPC(パソコン)ゲームを主流に発展してきましたが、日本では家庭用ゲームやスマホゲームといったe-sportsで競うことが難しいゲームが人気となっていることが、遅れの要因の一つとされています。

e-sportsは世界的な成長エンタメ市場

e-sportsは世界的に人気があり、幅広い世代に人気を見せていることから、世界中で大会が開かれるなど注目されています。

ゲーム総合雑誌「ファミ通」を刊行する角川アスキー総合研究所によると、2022年の世界のeスポーツ市場規模は13億8,400万ドルに達する見込みとなっており、2025年には18億6,620万ドルに達する予測となっています。

※出典:角川アスキー総合研究所

日本でもe-sportsの市場規模は拡大しており、一般社団法人日本eスポーツ連合の「日本eスポーツ白書2022」によると、2021年の国内eスポーツ市場は前年比115.5%の78.4億円となり、2025年には約180億円規模まで拡大する予測とのことです。

※出典:一般社団法人日本eスポーツ連合

2021年の日本のeスポーツファン数(試合観戦、動画視聴経験者、地上波番組等の関連放送視聴経験者)は前年比108%の743万人となり、2025年には1,200万人を超えると予測されています。

日本のeスポーツ市場の収益構造を見てみると、「スポンサー収入」が62.7%で最多となり、「放映権」(19.8%)、アイテム課金・賞金(10.7%)、ストリーミング(5.1%)、チケット(1.1%)、著作権許諾(0.4%)、グッズ(0.2%)となっています。

日本のeスポーツ市場は拡大しているとはいえ、無料で見るユーザーが大半であり、プロスポーツのようにお金を払ってまで見たい人を拡大できるかどうかが今後の課題と言えそうです。

e-sportsは五輪に採用される動きもあり、日本政府も推進する流れ

e-sportsはその世界的人気から、五輪に採用される動きも出てきています。

国際オリンピック委員会(IOC)は五輪でのe-sports採用に向けた取り組みを推進しており、「オリンピックeスポーツシリーズ(OES)」と題したIOCによる公式大会の決勝戦が、2023年6月22日~25日に掛けてシンガポールで開催されます。

日本政府もe-sportsに注力する方針を示しており、2023年5月23日付けの共同通信によると、「政府がeスポーツの五輪採用を見据え、研究や情報収集、医科学支援に乗り出す方向で検証に入った」と報じられ、e-sports関連銘柄に資金が入ってきました。

報道によると、文武科学省所管の日本スポーツ振興センターや関連団体、企業などが連携し、選手強化を後押しするようです。

また、日本政府のe-sports推進の背景には、高齢化対策もありそうです。

首都圏で高齢者のフレイル(高齢によって身体的・精神的様々な機能が徐々に衰え心身のストレスに脆弱となった状態のこと)予防に、テレビゲームなどのe-sportsを導入する施設が増加傾向にあります。

e-sportsを楽しむ高齢者の増加には、認知機能や社会的なつながりの回復も期待されており、ゲームは健康に悪いという昔のイメージもe-sportsによって払拭されることでしょう。

e-sports関連銘柄はゲーム株の成長テーマ株

e-sportsは、株式市場においてもe-sports関連銘柄というゲーム株の一角として注目を集めています。

e-sports関連銘柄はゲーム株の中でもPCゲームを手掛けている銘柄が中心

e-sports関連銘柄は、その多くがゲーム事業を手掛けるゲーム株で構成されているテーマ株となっています。

なお、ゲーム株というと、任天堂やソニーグループ、バンダイナムコホールディングスやカプコン、スクウェア・エニックスといった大手家庭用ゲーム企業や、ガンホーやミクシィといったスマホゲーム(ソーシャルゲーム)株の名前が思い浮かぶかと思います。

e-sports関連銘柄は、家庭用ゲームやスマホゲームよりも、PCゲームが主流となっている傾向があることは押さえておきましょう。

e-sportsは成長産業であるため、任天堂やカプコンといった大手ゲーム会社も力を入れていますが、e-sports関連銘柄のメインセクターではないということを認識しておくようにしましょう。

2022年11月末にはe-sports専業【9565】ウェルプレイド・ライゼストの上場が注目を集めた

e-sports関連銘柄は、ゲーム株のテーマ株として長らく注目を集めてきましたが、専業のe-sports関連銘柄と言える銘柄はありませんでした。

2022年11月末には、e-sports専業企業である【9565】ウェルプレイド・ライゼストが新規上場(IPO)したことで注目を集めました。

【9565】ウェルプレイド・ライゼストは、公募価格1,170円に対して、上場1日目には買いが殺到して値が付かず、翌12月1日には公募価格の5.29倍となる6,200円の初値を付けました。

2023年のIPOにおいて公募価格の5.29倍は最も高いIPO初値であり、【9565】ウェルプレイド・ライゼストは2023年のIPO投資において最も注目されたIPO案件の一つとなりました。

【9565】ウェルプレイド・ライゼストのIPOは、株式市場におけるe-sports関連銘柄への注目度の高さを示していたと言えます。

e-sportsはVRやメタバースなど最新テクノロジーとの関わりも

e-sportsは、最新テクノロジーとの関わりでも注目されやすいテーマと言えます。

例えば、VRヘッドセットを装着してプレイする「VRゲーム」や、仮想空間で注目される「メタバース」、「ブロックチェーンゲーム」といったキーワードから、e-sports関連銘柄が連想されて物色されることも考えられます。

e-sports関連銘柄のおすすめ銘柄10選!

e-sports関連銘柄として注目される銘柄について見ていきましょう。

【9565】ウェルプレイド・ライゼスト

e-sportsイベントの企画・運営からインフルエンサー・実況などのサポートも提供している【9565】ウェルプレイド・ライゼストは、代表的なe-sports関連銘柄です。

同社は、e-sports黎明期からコミュニティイベントや国内最大級のeスポーツ大会の企画・運営の実績があるe-sports専業企業です。

東証唯一の純粋なe-sports関連銘柄と言えます。

【9565】ウェルプレイド・ライゼストの月足チャート

ウェルプレイド・ライゼストの株価は、2022年11月末のIPOでは大きく買われましたが、その後は大きく下げており、“IPOゴール”の値動きとなっていると言わざるを得ません。

ただ、2023年5月23日に、日本政府によるe-sports注力方針が報道されたことを受けて2日連続ストップ高となるなど、直近では反発してきていることに注目です。

【3904】カヤック

ネット広告などの受託制作や簡易ゲームアプリの広告収入が柱の【3904】カヤックも、e-sports関連銘柄を代表する銘柄です。

同社は、e-sportsのトーナメントプラットフォーム「Tonamel」を展開しているほか、e-sports専業の【9565】ウェルプレイド・ライゼストを傘下に持つことでも知られています。

なお、2023年4月中期決算時点では、カヤックは【9565】ウェルプレイド・ライゼストの株式を52.97%保有しています。

※出典:ウェルプレイド・ライゼスト 四半期報告書-第8期第2四半期(2023/02/01-2023/04/30)

【3904】カヤックの月足チャート

カヤックの株価は、大株主となっているウェルプレイド・ライゼストの上場前の2022年11月に大きく買われましたが、以降は乱高下となっています。

【6552】GameWith

スマホゲーム情報サイト「GameWith」を運営している【6552】GameWithも、e-sports関連銘柄の一角です。

同社は、プロe-sportsチーム「TEAM GAMEWITH」を運営していることでも知られています。

【6552】GameWithの月足チャート

GameWithの株価は、2017年6月のIPO以降は下落し続けており、典型的な“IPOゴール”になってしまっていると言わざるを得ません。

【3659】ネクソン

PC向けオンラインゲームの開発を手掛ける【3659】ネクソンは、大手ゲーム株の中では最もe-sports関連銘柄として注目の銘柄と言えます。

同社は、e-sportsとの親和性が高いPCゲームに強く、e-sportsが盛んな韓国発祥の企業であり、韓国最大規模のe-sports専用施設「ネクソンアリーナ」を運営していることでも知られています。

【3659】ネクソンの月足チャート

ネクソンの株価は、ゲーム株として長期的に買われている傾向にあります。

【9697】カプコン

「モンスターハンター」や「バイオハザード」、「ストリートファイター」などの人気ゲームソフトで知られる【9697】カプコンは、大手家庭用ゲーム会社の中では最もe-sportsとの関係が深いe-sports関連銘柄と言えます。

同社は、世界的に人気の格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズを手掛けており、e-sports大会も数多く開催している実績があります。

【9697】カプコンの月足チャート

カプコンの株価は、右肩上がりの成長を続けています。

【4751】サイバーエージェント

ネット広告代理店大手で、ゲーム事業も手掛ける【4751】サイバーエージェントは、e-sports関連銘柄としても注目されます。

同社は、ゲーム制作会社「Cygames」を傘下に持ち、2016年からは国内最大級のe-sports大会「RAGE」を主催し続けている実績があります。

【4751】サイバーエージェントの月足チャート

サイバーエージェントの株価は、2021年までは上昇していましたが、2022年以降は売られています。

【2121】MIXI

国民的スマホゲーム「モンスターストライク」を運営している【2121】MIXIは、e-sportsにも力を入れているe-sports関連銘柄です。

同社は、「モンスターストライク」のプロチームが頂点を争うe-sports大会「モンスト プロツアー 2022」を開催するなどの実績があります。

【2121】MIXIの月足チャート

MIXIの株価は、2017年に付けた高値からは半減以下の水準で推移し続けています。

【3765】ガンホー

スマホゲーム「パズル&ドラゴンズ」を運営する【3765】ガンホーも、e-sportsとの関わりがあるe-sports関連銘柄です。

「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」は、「モンスターストライク(モンスト)」と並ぶ、国民的なスマホゲームとして知られています。

特に、ガンホーは2012年から2013年に掛けては100倍以上の上昇となり、ソーシャルゲーム株が株式市場で注目されるきっかけとなった「ガンホーバブル」も有名です。

パズドラは、「パズドラチャレンジカップ2023」を開催するなどe-sportsにおいても人気ゲームとなっています。

【3765】ガンホーの月足チャート

ガンホーの株価は、長らく横ばいが続いています。

なお、アベノミクス相場で100倍以上の上昇となった2013年5月に付けた高値は16,330円であり、その水準からすると5分の1程度で横ばいが続いている状況です。

【9766】コナミグループ

野球ゲーム「実況パワフルプロ野球」やサッカーゲーム「ウイニングイレブン」などのスポーツゲームに強い【9766】コナミグループは、e-sports関連銘柄にも位置付けられる大手ゲーム株です。

スポーツゲームはe-sportsとの親和性が高く、コナミと日本野球機構(NPB)はプロ野球eスポーツリーグ「eBASEBALLプロスピAリーグ」を共同で開催しています。

また、2023年4月1日には高校生のeスポーツ人材を育てる「KONAMI eスポーツ学院」を設立しています。

【9766】コナミグループの月足チャート

コナミグループの株価は、右肩上がりの成長を続けているゲーム株となっています。

【9468】KADOKAWA

出版の角川グループと動画配信「ニコニコ動画」のドワンゴが経営統合した総合エンタメグループの【9468】KADOKAWAは、e-sports関連銘柄の一角です。

角川グループというと出版のイメージが強いですが、同社の傘下であるゲーム制作会社フロム・ソフトウェア社は、世界的大ヒットとなった「SEKIRO」や「エルデンリング」の開発実績を持つことからゲーム株としての性質を強めています。

フロム・ソフトウェアのゲームクリエイターである宮崎英高氏は、TIME誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に選ばれました。

また、プロゲーマーのマネジメントなどeスポーツ事業を主業務とする「KADOKAWA Game Linkage」も傘下に持つことで知られています。

【9468】KADOKAWAの月足チャート

KADOKAWAの株価は、フロム・ソフトウェア効果で、この3年間で3倍以上の上昇となり、現在進行形で上場来高値を更新しています。

まとめ

今回は、e-sportsの概要や市場規模、e-sports関連銘柄について解説した上で、代表的なe-sports関連銘柄についてチャート付きでご紹介してきました。

e-sportsは世界的に人気のエンタメとなっており、国際オリンピック委員会(IOC)が五輪での採用に向けた取り組みも推進しています。

e-sportsはPCゲームが中心となっていることから、日本では遅れも指摘されていますが、日本のe-sports市場も確実に成長しており、日本政府も推進する動きが出てきました。

東証のe-sports関連銘柄としては、2022年11月末に上場したe-sports専業企業の【9565】ウェルプレイド・ライゼストが代表的な銘柄となっています。

また、【3904】カヤックや【6552】GameWithといった新興株のほか、PCゲームに強い【3659】ネクソンなども有力銘柄です。

紫垣 英昭