遠隔医療関連銘柄は高齢者医療費改革でも注目の医療DXテーマ株!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

遠隔医療(オンライン医療)は、今後高齢化が急速に進む日本で医療費削減という文脈においても注目されてくるかもしれません。

日本の遠隔医療は厚労省や医師会の抵抗もあり進んでいませんでしたが、新型コロナによって、初診からのオンライン診療が認められるようになり、診療報酬が引き上げられるなど進展がありました。

遠隔医療関連銘柄は、2020年新型コロナ相場ではテレワークやオンライン教育とともに注目テーマ株の一角となり急騰が相次ぎましたが、2021年以降はその反動から調整が続いています。

今回は、遠隔医療の概要や今後の展望について解説した上で、遠隔医療関連銘柄の株価動向や具体的な銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 遠隔医療の概要や今後の展望についてわかる
  • 遠隔医療関連銘柄の株価動向や具体的な銘柄についてチャート付きで学べる
  • 高齢化の進展による医療費の増大から、どのような銘柄関連に注目するべきかを考えることができる

遠隔医療(オンライン医療)とは

遠隔医療の概要や、日本における遠隔医療の今後の展望について押さえておきましょう。

遠隔医療の概要や社会的メリット

遠隔医療とは、日本遠隔医療学会の定義によると「通信技術を活用した健康増進、医療、介護に資する行為」のことです。

具体的には、医師がインターネットやテレビ電話、スマートフォンなどを活用して遠隔地の患者に対して行う診療・医療行為のことを指します。

遠隔医療のメリットとしては、患者は自宅から診療を受けられるため、病院まで通院してわざわざ待つ必要がなく、患者の負担を軽減することができます。

また、病院に来ると、新型コロナやインフルエンザなどに感染するリスクもありますが、遠隔医療で診療を受ければこれらの感染リスクをなくすことが可能です。

遠隔医療を導入することは社会的にもメリットがあり、効率的な診察ができることによって医師不足を緩和することができ、医療費削減効果も期待できます。

一方、どうしても遠隔医療では、対面で患者を診察できる対面医療に比べて情報が少なくなってしまう点は否めません。

ただ、将来的には、高速・大容量・安定通信が可能な5G通信などのさらなる普及や発展で、より正確な診療を行えるようになり、外科医が遠方からロボットアームを操作して手術を行えるようになることなども期待されます。

日本の遠隔医療は厚労省や医師会の抵抗で進まなかったが新型コロナで進展

遠隔医療は、世界的には徐々に普及が進んできていますが、日本において遠隔医療はほとんど普及してこなかったということが実態です。

アメリカでは、新型コロナの影響で2020年のオンライン診療の件数は、2019年と比較して63倍の5,270万件に急増しました。

なお、米国企業【TDOC】テラドック・ヘルスは、遠隔医療プラットフォームの世界最大手企業として知られています。

中国でも「平安グッドドクター(平安好医生)」や「WeDoctor(微医)」といった遠隔医療プラットフォームが普及しており、欧米各国でも遠隔医療が進展しています。

一方、日本では、医師会や厚労省が遠隔医療に反対してきた歴史があり、過疎地医療に限定されるなど、あくまで例外的な診療に留まっていました。

初診では遠隔医療は認められないため必ず病院に通う必要があり、診療報酬も低く据え置かれていました。

医師会や厚労省が遠隔医療に反対する理由としては、安全性などが挙げられていますが、先進各国での普及具合を見ると、既得権益の壁と見ざるを得ません。

ただ、新型コロナをきっかけに、厚労省も遠隔医療を規制緩和せざるを得なくなり、初診からのオンライン診療が2020年4月から解禁され、2022年度から恒久的に認められることになりました。

また、これまで対面医療に対してのみ認めてきた診療報酬の加算についても、遠隔医療に対して認められることになっています。

※出典:日本医師会

高齢者医療費が問題になる中で遠隔医療も改革を迫られる?

遠隔医療の普及は、医師の人手不足を緩和し、医療費削減に繋がることが期待されています。

今後の日本では、少子高齢化のさらなる進展によって、高齢者の医療費増加および現役世代の社会保障費負担増は避けられない見通しです。

日本の社会保障費展望

※出典:厚生労働省

75歳以上の高齢者医療費は原則1割となっていますが、現役世代の負担が重く、持続可能な医療制度を維持できないことは必至です。

2023年5月29日、財政制度等審議会は、政府の少子化対策の財源確保に向けて、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を原則2割に引き上げるよう検討すべきとするなど、医療費削減に取り組んでいます。

日本の遠隔医療は、これまでは医師会や厚労省の抵抗にあってきましたが、医療費削減という文脈においてさらなる改革に繋がることも期待できるかもしれません。

遠隔医療関連銘柄の株価動向

遠隔医療関連銘柄の株価動向について押さえておきましょう。

遠隔医療関連銘柄は2020年新型コロナ相場で急騰も、その後は厳しい展開が続く

遠隔医療関連銘柄は、2020年新型コロナ相場では、「テレワーク」や「オンライン教育」と並んで、デジタルトランスフォーメーション(DX)で注目のテーマ株となりました。

代表的な遠隔医療関連銘柄である【2413】エムスリーはコロナショックから5倍弱の急騰となり、新興の遠隔医療関連銘柄【2150】ケアネットはテンバガー(10倍株)を達成するなど注目を集めました。

株式市場においても、日本での遠隔医療は厚労省・医師会の抵抗で進まないと見られてきましたが、新型コロナが一つのきっかけになって遠隔医療が進むとの期待があったものと見られます。

ただ、遠隔医療関連銘柄は、2020年新型コロナ相場で急騰し過ぎてしまった反動から、2021年以降は調整が続く厳しい展開が続いています。

遠隔医療関連銘柄は医療費改革で注目のテーマ株となるか

遠隔医療関連銘柄にとって、新型コロナは大イベントでした。

新型コロナは、2023年5月8日から感染症法上の位置付けが5類感染症となり、実質的に終了となっています。

ただ、遠隔医療での初診が認められる、診療報酬の加算も認められるといった、新型コロナで進んだ遠隔医療の規制緩和は残るため、皮肉なことにも新型コロナが医師会・厚労省の壁を崩した形となりました。

今後、遠隔医療関連銘柄が注目されるとしたら、医療費削減という文脈においてではないでしょうか。

社会保障費の増加による現役世代の負担増は大きな問題となっており、今後も急速に進む高齢化を前に、医療費削減に取り組むことは日本社会として急務となっています。

医師会・厚労省は遠隔医療の普及に抵抗するとしても、財務省などは遠隔医療の普及を後押ししたいものと思われます。

遠隔医療関連銘柄のおすすめ銘柄10選!

遠隔医療関連銘柄のおすすめ銘柄10選を見ていきましょう。

【2413】エムスリー

医師向け情報サイト「M3.com」の運営や医療向けマーケティング事業を手掛ける【2413】エムスリーは、代表的な遠隔医療関連銘柄であり、日経平均株価構成銘柄でもあります。

同社は、オンライン健康相談サービス「アスクドクターズ」を運営しているなどで知られています。

【2413】エムスリーの月足チャート

エムスリーの株価は、2020年にはコロナショックから5倍弱となりましたが、以降は調整が長らく続いていることが分かります。

エムスリーの株価はマーケットにおける遠隔医療関連銘柄の注目度を象徴しているとも言え、多くの遠隔医療関連銘柄はほぼ同じ形の値動きとなっています。

【6095】メドピア

医師コミュニティサイト「MedPeer」を運営する【6095】メドピアも、遠隔医療関連銘柄の代表的な銘柄です。

同社は、傘下のMediplat社が遠隔診療プラットフォーム「first call」を手掛けていることでも知られています。

【6095】メドピアの月足チャート

メドピアの株価もエムスリーと同じく、2020年新型コロナ相場ではコロナショックから9倍の上昇となったものの、その後は調整が長らく続いている状況です。

【2150】ケアネット

医療ウェブサイト「CareNet.com」を運営する【2150】ケアネットは、2020新型コロナ相場では最も大きく買われた遠隔医療関連銘柄となりました。

同社は、医薬DX事業を事業に中核に据えるなど、医療におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に手掛ける企業の一つです。

【2150】ケアネットの月足チャート

ケアネットは、2020年コロナショックから2021年6月に掛けては134.3円→2,525円と最大18.8倍の急騰となりましたが、高値を付けて以降は暴落からの横ばいが続いています。

【4480】メドレー

医療ヘルスケア人材採用システム「ジョブメドレー」を運営する【4480】メドレーも、遠隔医療関連銘柄の一角として注目される銘柄です。

同社は、日本最大級のオンライン診療システム「CLINICS オンライン診療」を運営していることでも知られています。

【4480】メドレーの月足チャート

メドレーの株価は、2019年12月のIPOから2020年新型コロナ相場では約7倍にまで上げましたが、以降は大きく下げています。

ただ、2022年以降は反発している点では、下げ止まらない他の遠隔医療関連銘柄と違いがあるとも見られます。

【4483】JMDC

医療データベースや調剤薬局へのデジタルソリューション提供を行う【4483】JMDCは、遠隔医療関連銘柄の一角です。

同社は、遠隔画像診断のドクターネット社をグループ会社に持つことでも知られています。

【4483】JMDCの月足チャート

JMDCの株価は、2019年12月IPO後に新型コロナ相場で大きく上昇と、同時期にIPOとなったメドレーとほぼ同じ値動きを辿っています。

【3902】メディカル・データ・ビジョン(MDV)

医療・健康領域のデータネットワークサービスとデータ利活用サービスの2事業を柱とする【3902】メディカル・データ・ビジョン(MDV)も、遠隔医療関連銘柄として注目の銘柄です。

同社は、オンライン診療プラットフォーム「オンラインドクターバンク」を運営していることでも知られています。

【3902】メディカル・データ・ビジョン(MDV)の月足チャート

メディカル・データ・ビジョン(MDV)の株価は、コロナショックから一時は8倍以上まで急騰しましたが、以降は厳しい展開が続いており下げ止まっていません。

【6034】MRT

非常勤医師紹介サイト「Gaikin」や医師転職サポート「career」を手掛ける【6034】MRTは、遠隔医療関連銘柄として名前が挙がりやすい銘柄です。

同社は、日本初のスマホでできる遠隔診療アプリ「ポケットドクター」を提供していることでも知られています。

【6034】MRTの月足チャート

MRTの株価は、遠隔医療関連銘柄の中では特殊な動きとなっており、2016年2~4月に10倍弱の急騰となって以降は低迷し、新型コロナ相場では最大3倍に留まりました。

【3681】ブイキューブ

ネット会議システムやセミナー配信などのコミュニケーションツールを提供する【3681】ブイキューブは、遠隔医療関連銘柄の一角としても注目される銘柄です。

同社は、遠隔集中治療にも力を入れており、新型コロナ禍ではケアネットと共同で「期間限定オンライン外来代行」を提供したことでも知られています。

2020年新型コロナ相場においては、テレワーク・オンライン教育・遠隔医療のDXテーマ株として注目され、一時は東証最大の人気銘柄にもなっていました。

【3681】ブイキューブの月足チャート

ブイキューブの株価は、2020年新型コロナ相場では大きな出来高も伴って急騰しましたが、2021年以降は出来高も急減しての株価暴落が続いています。

【3694】オプティム

クラウドに強い遠隔操作ソフトの開発を手掛ける【3694】オプティムも、遠隔医療関連銘柄の一角となっています。

同社は、MRTと共同で遠隔診療サービス「ポケットドクター」を開発したことでも知られているなど、医療DXも手掛けています。

2020年新型コロナ相場では、ブイキューブと並んでテレワーク・オンライン教育・遠隔医療のDXテーマで注目された銘柄となっていました。

【3694】オプティムの月足チャート

オプティムの株価は、2018年から2020年までは成長株となっていましたが、2021年以降は暴落となっています。

【7047】ポート

学生向け就活サイト「キャリアパーク」を運営する【7047】ポートは、遠隔医療関連銘柄として位置付けられることもあります。

同社は、就活サイトがメインですが、患者と医師をつなぐ診療プラットフォーム「ポートメディカル」や高血圧オンライン診療プラットフォーム「テレメディーズBP」といった医療プラットフォームを提供していることでも知られています。

【7047】ポートの月足チャート

ポートの株価は、上昇傾向にあると見てとれます。

まとめ

今回は、遠隔医療の概要や今後の展望について解説した上で、遠隔医療関連銘柄の株価動向や具体的な銘柄についてチャート付きでご紹介してきました。

日本の遠隔医療は、厚労省や医師会の抵抗で進みませんでしたが、新型コロナをきっかけにオンライン診療が初診でも認められ、診療報酬も加算されるなど進展がありました。

遠隔医療関連銘柄は、2020年新型コロナ相場では、テレワーク・オンライン教育と並ぶ医療DXテーマ株として注目され、多くの銘柄が10倍近い急騰となりました。

ただ、遠隔医療関連銘柄の多くは、その急騰の反動から2021年以降は厳しい値動きが続いています。

日本では高齢化の進展による医療費の増大が、社会保障費による現役世代の負担増となっており、医療費削減という文脈から遠隔医療関連銘柄が再注目される可能性があるかもしれません。

紫垣 英昭