紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
ペロブスカイト太陽電池は、曲がる太陽電池として、従来の太陽電池では設置できなかった場所に設置できる点で注目されている次世代太陽電池です。
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄は、株式市場において、エネルギー株の一角として期待されています。
ペロブスカイト太陽電池の主原料となる「ヨウ素」は、日本が世界2位の生産量を誇っており、ヨウ素関連の一角としても注目されるテーマ株となりそうです。
この記事では、ペロブスカイト太陽電池の特徴やメリット、株式市場で注目される背景について解説した上で、おすすめのペロブスカイト太陽電池関連銘柄について紹介しています。
- ペロブスカイト太陽電池の特徴やメリットがわかる
- 株式市場で注目される背景について学べる
- おすすめのペロブスカイト太陽電池関連銘柄がわかる
ペロブスカイト太陽電池とは?
ペロブスカイト太陽電池は「曲がる太陽電池」として注目されている次世代太陽電池です。
ペロブスカイト太陽電池は「曲がる太陽電池」
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト構造を持つ材料で製造される太陽電池です。
そもそも「ペロブスカイト」とは、ペロブスカイト構造という結晶構造を持つ鉱物です。
ペロブスカイトは、高温超伝導、高い磁気抵抗、イオン伝導性、負の熱膨張といった多種多様な物性を持っています。
ペロブスカイトの特徴として特に注目されていることは、薄く軽く、曲げられる点です。
ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽電池が設置できない場所にも設置できるため、再生可能エネルギーによる発電効率が飛躍的に上昇すると期待されています。
また、ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素は、日本が世界産出量の30%を誇っており、国産エネルギー源としても注目されています。
ペロブスカイト太陽電池と従来の太陽電池の違いやメリット
ペロブスカイト太陽電池と従来の太陽電池の違いについては、次の表のようになっています。
ペロブスカイト |
有機薄膜 |
シリコン |
CIGS |
|
変換効率(セル) |
~25% |
~17% |
~27% |
~23% |
コスト |
〇→◎ |
〇 |
◎ |
〇 |
耐久性 |
△→〇 |
〇 |
◎ |
◎ |
軽量 |
◎ |
◎ |
△ |
〇 |
フレキシブル |
◎ |
◎ |
〇 |
〇 |
ローラブル |
◎ |
◎ |
× |
△ |
シースルー |
◎ |
◎ |
△ |
△ |
※出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所「ペロブスカイト太陽電池の研究開発動向」
ペロブスカイト太陽電池は、変換効率やコスト、耐久性については、「シリコン太陽電池」に比べると低いものの、軽量性やフレキシブルといった曲げられる特性を生かした設置性においては有利となっています。
従来の太陽電池の中では、「有機薄膜太陽電池」は軽量性やフレキシブルにおいては優れていますが、変換効率やコストではペロブスカイト太陽電池が有利です。
また、ペロブスカイト太陽電池はコストや耐久性が課題とされていますが、今後は大量生産によるスケールメリットを生かすことで、コスト低減や耐久性の向上が期待されています。
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄はエネルギー株として注目が集まる可能性
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄はエネルギー株として、マーケットでも注目が集まる可能性があります。
エネルギー株は有力テーマ株を数多く輩出してきた
エネルギー株は、マーケットにおいて重要テーマ株となることが多い傾向があります。
2020年秋には、「脱炭素」による再生可能エネルギー(再エネ)・水素・EV(電気自動車)などが大きく注目され、再エネ大手の【9519】レノバ、太陽光発電事業者の【3856】Abalanceといった銘柄が大相場を形成しました。
【9519】レノバの月足チャート
2022年以降は、ウクライナ情勢を受けた世界的な原発回帰の動きにより、【9501】東京電力ホールディングスや【7711】助川電気工業といった原発株が注目されています。
【7711】助川電気工業の月足チャート
再生可能エネルギーは政府も力を入れている領域であるため、ペロブスカイト太陽電池関連銘柄が、注目テーマ株となる可能性は十分にあると言えます。
主原料の「ヨウ素」はマーケットで注目度が高い
ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素は、日本が世界生産量の30%を占めており、チリに次いで世界第2位の産出国となっています。
日本は、エネルギーや資源の大半を輸入に頼っていますが、ヨウ素は数少ない国産エネルギー資源です。
ヨウ素は、その大半が千葉県で生産されています。
ヨウ素関連銘柄ことヨウ素株は、2022年から株式市場で注目されているテーマ株です。
甲状腺被曝を抑えるためには安定ヨウ素剤が使われるため、ロシアのウクライナ侵攻によって核戦争リスクが連想されたことから、ヨウ素生産世界大手【4107】伊勢化学工業が強く買われています。
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄は、ヨウ素株の一角としても注目されそうなテーマ株と言えるでしょう。
注目のペロブスカイト太陽電池関連銘柄10選!
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄として注目される銘柄を見ていきましょう。
【5216】倉元製作所
【5216】倉元製作所は、FPD基板加工や半導体製造装置部品加工を手掛ける半導体部品企業です。
同社は、ペロブスカイト太陽電池に注力すると発表しており、装置メーカーや材料メーカーと協力して、材料成膜や材料塗布、パターニング、封止の生産技術を確立することで、2030年までに1GW/年量産の体制を目指すとしています。
【5216】倉元製作所の月足チャート
倉元製作所の株価は、2024年2月から6月に掛けて73円→658円と10倍近い急騰となりました。
この背景には、2024年2月に黒字転換の決算を発表したことがあります。
ペロブスカイト太陽電池に直接関連する急騰ではありませんが、ペロブスカイト太陽電池関連銘柄としては最も大きく上昇している銘柄の一つです。
【6255】エヌ・ピー・シー
【6255】エヌ・ピー・シーは、太陽電池製造装置の大手で、薄膜系太陽電池製造装置に強みを持っていることで知られています。
ペロブスカイト型太陽電池の製造工程は、同社が強みを持つ薄膜系太陽電池の製造工程と共通する部分があり、同社はペロブスカイト型太陽電池の製造装置も手掛けています。
【6255】エヌ・ピー・シーの月足チャート
エヌ・ピー・シーの株価は、右肩上がりとなっています。
2020年秋の脱炭素相場で短期間に3倍の急騰となった後は厳しい展開となりましたが、2023年以降は堅調に上昇しており、脱炭素相場で付けた高値を一時超えました。
【3132】マクニカホールディングス
【3132】マクニカホールディングスは、独立系半導体商社です。
同社傘下のマクニカが、ペロブスカイト太陽電池を実装した空気質センサを開発しています。
マクニカは、ペロブスカイト太陽電池の開発者である宮坂力氏が代表を務めるペクセル・テクノロジーズと、ペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けた実証や普及啓発に関しての連携協定を締結したと発表しており、横浜市の大さん橋での実証事業を開始しています。
【3132】マクニカホールディングスの月足チャート
マクニカホールディングスの株価は、半導体株だけあって、2020年コロナショックから見ると一時7倍以上の値上がりとなっています。
2023年以降は生成AI向け半導体に強みを持つことからも一段高となりましたが、2024年は半導体株が売られていることもあり厳しい展開となっています。
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄としても挙げられますが、やはり半導体株としての性格が強い銘柄と言えそうです。
【6804】ホシデン
【6804】ホシデンは、コネクターやスイッチといった情報通信部品大手です。
同社は、2021年4月からペロブスカイト太陽電池へ事業参入しており、2024年度後半までにペロブスカイト太陽電池の量産を目指すとしていることから、ペロブスカイト型太陽電池関連銘柄に位置付けられています。
【6804】ホシデンの月足チャート
ホシデンの株価は、2020年コロナショックから堅調に上昇し続けています。
【4362】日本精化
【4362】日本精化は、樟脳・脂肪酸誘導体で高いシェアを持つ化学企業です。
同社は、ペロブスカイト太陽電池に必要な正孔輸送材料「Spirokite」を開発・製造していることから、ペロブスカイト太陽電池関連銘柄として名前が上がりやすい銘柄となっています。
【4362】日本精化の月足チャート
日本精化の株価は、堅調に上昇し続けています。
【4633】サカタインクス
【4633】サカタインクスは、インキ大手です。
同社は、新規事業として次世代型太陽電池材料の開発に取り組んでいることから、ペロブスカイト太陽電池関連銘柄として連想される可能性がある銘柄となっています。
同社の基盤技術である塗工技術を生かして、京都大学の「フィルム太陽電池研究コンソーシアム」にも参画しています。
【4633】サカタインクスの月足チャート
サカタインクスの株価は、2023年以降は反発となっています。
【6387】サムコ
【6387】サムコは、薄膜加工の化合物半導体向けの電子部品製造装置を中心に手掛けている半導体部品企業です。
同社は2021年5月、ペロブスカイト太陽電池向けALD(原子層堆積)装置を京都大学に納入した実績があることから、ペロブスカイト太陽電池関連銘柄として名前が上がっています。
【6387】サムコの月足チャート
サムコの株価は、半導体株として2019年から大きく上がり続けていますが、2024年には売られています。
【4204】積水化学工業
大型株のペロブスカイト太陽電池関連銘柄としては、化学大手の【4204】積水化学工業が注目されています。
同社は2023年10月、大阪本社が入居する堂島関電ビルでフィルム型ペロブスカイト太陽電池を実装するなど、ペロブスカイト太陽電池に積極的な企業として知られています。
【4204】積水化学工業の月足チャート
積水化学工業の株価は、緩やかに上昇しており、配当利回りも3.13%(2024年12月10日終値時点)の高配当銘柄となっています。
大型株だけあって、ペロブスカイト太陽電池を材料に大きく買われることはないと見られるものの、投資初心者の長期投資にもおすすめの銘柄です。
【4107】伊勢化学工業
ペロブスカイト太陽電池の主原料としても注目される「ヨウ素」に関連する銘柄を見ていきましょう。
【4107】伊勢化学工業は、ヨウ素生産において世界トップクラスの企業として知られています。
【4107】伊勢化学工業の月足チャート
伊勢化学工業の株価は急騰しており、2022年ロシア・ウクライナ情勢でヨウ素が注目テーマ株となって以降は、2023年、2024年と加速度を強めて買われています。
ただ、2024年6月に40,500円の高値を付けてからは乱高下の展開が続いています。
【1663】K&Oエナジーグループ
【1663】K&Oエナジーグループは、千葉県沖でヨウ素生産を手掛けている、代表的なヨウ素関連株です。
ヨウ素関連の銘柄としては、【4107】伊勢化学工業とともに名前がよく上がる銘柄となっています。
【1663】K&Oエナジーグループの月足チャート
K&Oエナジーグループの株価は、【4107】伊勢化学工業ほど大きく上げてはいないものの、チャートの形としてはほぼ連動した上昇となっています。
まとめ
この記事では、ペロブスカイト太陽電池の特徴やメリット、株式市場で注目される背景について解説した上で、おすすめのペロブスカイト太陽電池関連銘柄について紹介してきました。
ペロブスカイト太陽電池は「曲がる太陽電池」として、従来の太陽電池では設置できない場所に設置できるようにと期待されています。
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄の注目銘柄を見てみると、半導体や太陽電池、ヨウ素といった注目テーマ株が多いこともあり上昇銘柄が多くなっています。
ただ、「ペロブスカイト太陽電池関連銘柄として急騰した」と言えるほどの決定的な銘柄は、特に見当たらない状況です。
ペロブスカイト太陽電池関連銘柄は、エネルギー株の一角として注目テーマ株になる余地は十分にあるため、押さえておくようにしましょう。
紫垣 英昭
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