株のデイトレ|「ランキング銘柄」で稼ぐための正しい活用法とは

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

株式投資のデイトレードは、1日の時間の中で「買い」と「売り」を完結させるそのシンプルさから、投資家の方々に広く人気があるトレード方法の1つです。

しかし、いざデイトレードをやってみようと思っても、多くの方は以下のような問題や疑問に直面するのではないでしょうか。

「これからデイトレードを始めようと思っているけれど、どんな株を買うのがいいんだろう?」
「どうやって投資する銘柄を選べば良いのかわからない」
「株価が上昇しているときに買って相場の流れに乗るような、順張りの手法は安全なのかな?」

銘柄を選ぶ際に「値上がり率ランキング」がよく活用されますが、ランキング上位株でも安易に飛び乗ると、その後の下落に巻き込まれて大きな損失を負ってしまうことがあります。

今回は「値上がり率ランキング」にランクインした銘柄が、その後上がり続けるのかを検証してみました。

値上がり率ランキングを活用した投資法もご紹介していますので、ぜひ有効活用できるようになってください。

この記事を読んで得られること
  • 株をデイトレを行う上での基本がわかる
  • 値上がり率ランキングにランクインした銘柄がその後も株価上昇するのかを検証
  • デイトレでの値上がり率ランキングの活用法を伝授

株デイトレの基本は、上がる株を見つけ出す事

「値上がり率ランキング」の検証に入る前に、まず、デイトレを行う上での心構えをお伝えしておきます。

デイトレードはその特性上、1日という短い時間の中で「買い時」と「売り時」の判断をしなければならないため、余裕をもってトレードするためには前もってその日の方針を決めておく必要があります。

実際に投資をするにあたって自分のトレードスタイルが定まっていない状況では、デイトレードはとても難しく感じてしまうかも知れません。

デイトレードにおけるコアタイムは市場が開いてからの30分間

デイトレードでは、利益を上げるために株価の上昇と下落の波から生まれる変動幅を狙って仕掛ける必要がありますが、そうなると株価が横ばいであんまり値動きがしないような時間帯よりも、値動きが活発な時間帯こそ、大きな利益が見込める勝負時になるのです。

特に、株式市場の取引がもっとも活発になる時間の1つに、市場が開いた直後の30分間があります。
午前9時から9時30分頃までのこの時間は株式市場が開くのを今か今かと待ち構えていた投資家たちが一斉に押し寄せるので、非常に強い株価変動の波が生まれやすいと言えます。

人によってはこの活発な時間帯だけ株のトレードを行い、それ以降はもう手仕舞いをしてしまう方もいるほどです。多くの投資家たちにとって、市場が開いた直後のこの30分間はとても大切な勝負時になっているわけですね。

株のデイトレードでは短期決戦となることが多く、このような短い時間で起こる展開に対して慌てずについていけるように準備をしなければなりません。それでは、前もって投資対象の銘柄を選定する為には、どのような事を考えるべきでしょうか?

銘柄選びのために、参考にしがちな「値上がり率上位」の株

その日のトレードの方針を事前に決めるということは、第一に「明日上がる株は何か?」ということを考える必要があります。

そうなると、身近なところにあって参考にしやすい情報として、ヤフーファイナンスや株探などで掲載されている「値上がり率ランキング」というものがあります。

これを見ると、当日に大きく値上がりした株の情報がたくさん掲載されているので、「今日こんなに株価が値上がりするくらい、この会社は人気が出ているのだから、明日もこの会社の株価は上がるだろう!」という考えが生まれてもおかしくはありません。

「今日大きく値上がりしていた、今もっとも勢いのある株に明日は乗っかってみよう」という行動は、いわゆる順張り手法(みんながその株買って株価が上がっているところに、自分も買いで参加する投資手法)に近い発想になりますね。

「値上り率ランキング」銘柄選びの参考になる?

さて、ここからは、先ほどのような「今日大きく値上がりしたような勢いのある株は、明日も上がるだろう」という発想がはたして本当かどうかを検証し、みなさまと一緒に考えてみたいと思います。

もし本当であれば、値上がり率ランキングの上位に来るような勢いのある株は「お宝銘柄」ということになりますし、もしそれがあまりよくない考え方だとしたら、読者のみなさまの投資判断における良い教訓となるのではないでしょうか。

「値上がり率」ランキングとは

そもそも「値上がり率」ランキングとは、市場ごと(東証1部・東証2部・東証マザーズ・JASDAQなど)または市場全体の株を対象に「前日と比べてどれだけ株価が値上がりしたのか?」ということがランキング形式で見ることができる情報です。

主にヤフーファイナンスなどで誰でも自由に閲覧することが出来ますので、その日の市場の動向を見る上で大変便利です。

(引用先:ヤフーファイナンス 株式ランキング

値上がり率ランキングの1位にもなると、前日比+30%という驚異的な銘柄もよく登場してきます。もしそのような株を持っていたら、たった1日で自分の資産が30%も増加していたことになりますね。

しかし基本的には、前日比で1%~5%前後でじわじわと株価が上昇していく株が多い中、そのように一気に急上昇するような株は珍しく、あっという間に多くの投資家たちが群がってきます。しかしながら、その「買い圧力(その株を買いたい投資家が増えることによって、株価を上に押し上げる力)」がどこまで続くものなのか?ということを冷静に見つめなければ、思わぬ損失を出しかねませんので注意してください。

値上がり率ランキングにあがってくる株の特徴

値上がり率ランキングにあがってくる株は、投資家の予想を良い意味で裏切るようなサプライズ決算、またはその企業の将来的や収益性を大きく向上させるであろうと予想されるニュースの発表などによって、人気が急上昇するようなものもありますが、多くの場合は「仕手株」と呼ばれるものも含まれています。

仕手株とは、企業の業績や将来性などとは関係なく一部の投資家または機関投資家たちによって意図的な株価の吊り上げが行われている株のことです。そのような本質的ではない株価形成は、そう遠くない未来のうちに株価はバブルのように弾けて大暴落が起きることがしばしばあります。

このような株は一時的に値上がり率ランキングの最上位近くにまで上り詰めることがありますが、その翌日には逆に市場で最も値下がりした株になっていた…という光景もよく見られますので、初心者の方であればあまり触れないほうが良い危険な銘柄であると言えるでしょう。

「ランキング」上位銘柄の検証をしてみた

先に述べたように、投資対象として信憑性の低い仕手株のような株も含まれてはおりますが、株式市場全体の中でトップレベルに値上がりをした株を「買う」という投資戦略は、果たして賢い選択なのでしょうか?

実際に過去のデータを分析して見てみましょう。

検証を行うにあたって

図1:銘柄別の値上がり率ランキング上位50位ランクイン日(2019年11月)

この記事の執筆時点で最も直近の1か月間のデータを使用します。2019年11月1日から2019年11月29日までの1か月間における、各日の値上がり率ランキングのデータを分析に使用しました。

検証データ参照元:株探 本日のランキング【値上がり率】(11月1日)~(11月29日)

この期間は合計で18営業日あり、1日あたり値上がり率の上位50銘柄がピックアップされています。
合計900個の銘柄データがあり、異なる日にもランキングに入ってきた同じ銘柄の重複分を除くと、615種類の銘柄が存在します。

このデータを図1のように銘柄別に整理し、何日に値上がり率ランキング上位50位にランクインしていたかをまとめました。青い○印がついている日がランクインをした日です。

同じ行に2つ以上○印がついていれば、その銘柄は上位50位に複数回ランクインしているので、何度も爆発的な株価上昇をした「お宝銘柄」だったということを示します。今回の検証では、この銘柄別のランクイン回数に注目して見てみましょう。

ランキング上位に上がった銘柄は、さらにそこから急騰するのか?

図2. 1か月間で値上がり率ランキング上位50位にランクインした銘柄の数


11月1日から11月29日における1か月間の値上がり率ランキング(上位50位)に1回以上ランクインした銘柄の種類は615個ありましたが、結果は図2で示している分布の通りでした。以下にその内訳を簡潔にまとめます。

値上がり率ランキングに1回しかランクインしなかった:419個(68.1%)
値上がり率ランキングに2回ランクインした:114個(18.5%)
値上がり率ランキングに3回ランクインした:47個(7.6%)
値上がり率ランキングに4回ランクインした:22個(3.6%)
値上がり率ランキングに5回ランクインした:6個(1.0%)
値上がり率ランキングに6回ランクインした:5個(0.8%)
値上がり率ランキングに7回ランクインした:2個(0.3%)

という検証結果になりました。

検証結果の考察:値上がり率ランキングに現れる銘柄は68%の確率で一発屋に終わる

驚くべきことに、11月中の値上がり率ランキング上位50位以内において、実に約68%もの銘柄が11月中において1回しかランクインすることはありませんでした。

これはつまり、あなたが値上がり率ランキングを確認して見つけることができた銘柄というのは、既に1回目のランクインを終えているために、そこからまた値上がり率ランキングの上位に入るほどの上昇をする余地は無いということです。

なぜならば、同じ月に2度以上ランキングの上位50位に入ることのできる確率はたったの32%程度しかないからです。

たかが勝率3割程度の戦略に、あなたの大切なお金を賭けることができますか?

このことから、値上がり率ランキングの上位に入っているからといって、「今日大きく値上がりしたような勢いのある株は、明日も上がるだろう」という発想を持つことがどれほど危険であるか、お分かり頂けたのではないでしょうか。

また、今回の図2の分布をみる限り、1か月間に値上がり率ランキングに複数回も名前が出てくる企業は、その後の展開に注意が必要です。

同じ銘柄が月に何度も何度もランクインするようなことは、上の結果から見てもほとんどあり得ないことであり、どれだけ株価上昇への勢いがあるとしてもせいぜい3回まで、遅くとも4回までには勢いが落ち込んでいます。

ですので、上昇の勢いが3日、4日続いたら、そこで一旦見切りをつけるのが無難だと思われます。

急な上昇が起こるということは、その反動で大幅な下落が起こりうる可能性も高いということです。

「値上がり率ランキング」をデイトレにどう活用するべきか?

投資相場の格言には、「三空踏み上げには売り向かえ」という言葉があります。

日本の伝統的なロウソク足チャートの分析方法「坂田五法」からの格言で、窓を開けた(前日の株価よりもはるかに高い価格で取引がスタートするような状況)大きな株価上昇が3日連続して起きたら、相場の天井打ち(株価がこれ以上上がらない状態)だと判断したりします。

今回の結果からすると、3日連続ではないので厳密にはこの格言とは状況が違いますが、1か月の間に3回も値上がり率ランキングに名前が載るような事態になれば、それは売りサインとして充分に見なせるでしょう。

自分が実際に投資している企業となれば、どうしても愛着がわいてしまうこともあります。
しかしながら、この世にずっと上がり続ける株はありませんので、ある程度の株価上昇を見届けたら感謝の気持ちとともに利益確定をして離れてみることも非常に大切になってくるのではないでしょうか。

株初心者が短期間で儲ける「窓開け」を活用したトレード手法とは

まとめ

上でまとめたように、今回の検証では簡易的ながら1か月間のデータを用いて「値上がり率ランキングの上位50位に入っていた株に投資することは有効な戦略か?」ということを検証しました。

結果的にいうと、高値掴みの可能性があることから、エントリーには十分注意が必要ということです。

しかしながら、今注目を集めている企業や、株価が上昇し始めた機会を見つけることが出来たら、そのチャンスに乗ることが必要な場面は出てくることでしょう。

しかしながら、そのような時に株価の上昇や下落という事実だけにとらわれるのではなく、その裏付けとなる背景の根拠や、その企業の将来性などについても十分に考慮することこそ、一番重要な事だと思います。

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株価が大きく変動した時であっても、慌てて結果だけを追わずに、自分でその裏付けを考えることは、デイトレードをする投資家の方においても、それ以外の投資スタイルを取っている方においても、勝率を高める上でとても大切なことでしょう。

紫垣 英昭