紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
クラウドコンピューティングは、IoTやAIといったITテクノロジー株に投資する上でも重要なテクノロジーです。
2023年には、AI型チャットボット「ChatGPT」をはじめ、生成型AIが世界中でブームとなっていますが、これらのAIはいずれもクラウドコンピューティングを生かしたサービスとも言えます。
クラウドコンピューティング関連銘柄は、2020年新型コロナ相場では「デジタルトランスフォーメーション」をキーワードに最注目テーマ株となりましたが、2021年以降は調整局面が続いています。
今回は、クラウドコンピューティングの基本やIoT・AIとの繋がりについて解説した上で、代表的なクラウドコンピューティング関連銘柄の株価動向についてチャート付きでご紹介していきます。
- クラウドコンピューティングの基本やIoT・AIとの繋がりについてわかる
- 代表的なクラウドコンピューティング関連銘柄の株価動向についてチャート付きで学べる
- AIやIoTとともにクラウドコンピューティングの発展が続く傾向に関心を持てるようになる
クラウドコンピューティングとは
クラウドコンピューティングの概要について、Gmailなどの身近で使われているサービスを通して簡単に押さえておきましょう。
クラウドコンピューティングはSaaS・PaaS・IaaSに分類される
クラウドコンピューティング(cloud computing)とは、インターネットなどのネットワークを通して、ソフトウェアやデータにアクセスできる仕組みのことです。
コンピューターネットワークを「雲(cloud)」のようなイメージで捉えることから、「クラウド」と呼ばれます。
文章作成ソフトのWordや、表計算ソフトのExcelといった従来のソフトウェアサービスは、パソコンにデータやアプリケーションをインストールして、パソコン上で動作させることが一般的でした。
クラウドコンピューティングでは、データやアプリケーションがパソコン上ではなくネットワーク上にあり、ネットワークに接続することで使用します。
具体的には、文章作成のGoogleドキュメントや、表計算のGoogleスプレッドシートなどがクラウドサービス(SaaS)の一例です。
クラウドコンピューティングはSaaS・PaaS・IaaSに分類されますが、特にSaaSはクラウドコンピューティングのキーワードとして重要です。
SaaSは「Software as a Service」の略称で、アプリやソフトをクラウド上で動作させるもので、GoogleドキュメントやMicrosoft 365、オンラインストレージなど数多くのクラウドサービスが該当します。
今回見ていくクラウドコンピューティング関連銘柄はSaaS・PaaS・IaaSの全てを含めたクラウド株のことを指しますが、SaaS事業を手掛けているクラウド株はSaaS関連銘柄としても注目されます。
クラウドコンピューティングはIoTやAIの基盤となる
クラウドコンピューティングは、全てのモノがインターネットに繋がる「IoT(Internet of Things)」や、ChatGPTでも話題の「AI(人工知能)」とも深い関わりがあるテクノロジーです。
IoTやAIの発展とクラウドの普及は急速に進んでいますが、両者が相互補完的な関係にあります。
現在は、多くのIoT家電が登場しており、AI機能をうたう製品も増えています。
これらのIoT家電は、センサーで集めた情報をネットワークを通じて送り、そうして集めた大量の情報群ビッグデータを活用することが可能です。
ビッグデータを活用する上で、ネットワーク上で分析するための手段がクラウドコンピューティングとなります。
イメージとしては、各家庭にあるセンサー内蔵のIoT家電から情報をネットワークで集め、そうして集めたビッグデータからなる“巨大な雲”の上でAIが分析作業をするといったものとなります。
いずれにしても、IoTやAIといった株式投資においても重要なキーワードは、クラウドコンピューティングの発展が基盤になっているということを押さえておきましょう。
クラウドコンピューティングの実例を紹介
クラウドコンピューティングは2010年代後半に急速に発展したことから、多くの人は知らず知らずの内にクラウドサービスを使っているケースが多くなっています。
Googleが提供しているサービスは、そのほとんどがSaaSに分類されるクラウドサービスです。
無料メールサービスの「Gmail」は、代表的なクラウド型のメールサービスとなっています。
また、文章作成の「Googleドキュメント」、表計算の「Googleスプレッドシート」といった業務で使うクラウドサービスも普及してきました。
文章作成ソフトのWordや、表計算ソフトのExcelといった従来のMicrosoft Officeも使われていますが、「Microsoft 365」というクラウドサービスとしても提供されるようになっています。
また、パソコンのバックアップには従来は外付けハードディスク(HDD)を買ってきてバックアップしていましたが、「Googleドライブ」や「Dropbox」といったクラウド型のオンラインストレージも登場しています。
クラウドコンピューティング関連銘柄の株価動向
多くの人が日常的に使っているクラウドコンピューティングサービスは、その多くがGoogleやMicrosoft、Amazonなど世界的IT企業のサービスが中心です。
なお、世界のクラウドサービスのシェアは、1位がAmazonのAWS、2位がMicrosoftのAzure、3位がGoogle Cloudとなっており、AWSとAzureの2社で世界シェアの半分を占めています。
日本株には、残念ながらGoogleやMicrosoft、Amazonクラスのクラウド企業はありませんが、クラウドサービスを提供しているクラウドコンピューティング関連銘柄は数多くあります。
日本株のクラウドコンピューティング関連銘柄の株価動向について押さえておきましょう。
2020年新型コロナ相場では代表的なDXテーマ株に
クラウドコンピューティング関連銘柄は、2020年新型コロナ相場においては非常に強いテーマ株となりました。
2020年新型コロナ相場では、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が株式市場で最注目キーワードとなり、クラウドコンピューティング関連銘柄はその中核となりました。
例えば、GMOグループのクラウド企業である【3788】GMOグローバルサイン・ホールディングス(旧・GMOクラウド)は2020年に10倍以上の上昇(テンバガー)を達成するなど、クラウドコンピューティング関連銘柄の強さを象徴していたと言えます。
ただ、デジタルトランスフォーメーション株全般に言えますが、2021年以降は2020年新型コロナ相場の反動から厳しい展開となっている銘柄が多く、これはクラウドコンピューティング関連銘柄も例外ではありません。
クラウドコンピューティングはIoTやAIと並ぶ成長産業であるため、2021年以降も注目されるテーマではありますが、急騰している銘柄には注意が必要です。
また、IPO上場するクラウドコンピューティング関連銘柄は多く、上場時に大きな初値を付けることも多くなっています。
ただ、クラウドコンピューティング関連銘柄のIPOに限らず、大きなIPO初値を付けて上場した銘柄は、上場時に高値を付けて以降は暴落していく“IPOゴール”になりやすいことには注意が必要です。
2023年はChatGPTブームでAI株を中心に注目が集まる
2023年は、AI型チャットボット「ChatGPT」が人類に衝撃を与え、また画像生成AIなどの生成系AIも世界的ブームとなっています。
株式市場においても、AI型チャットボットに関連したAI株が買われており、またAI特需も背景に半導体需要への期待から半導体株は非常に強くなっています。
クラウドコンピューティングとは直接的には関係はないものの、2023年はChatGPTブームでAI株に注目が集まっているというトレンドは、ITテクノロジー株のトレンドとして押さえておくようにしましょう。
クラウドコンピューティング関連銘柄のおすすめ銘柄10選!
東証のクラウドコンピューティング関連銘柄は、細かい事業まで含めると300銘柄以上が該当するITテーマ株となっています。
クラウドコンピューティング関連銘柄の中でも、特に注目されている代表的な銘柄について見ていきましょう。
【3923】ラクス
中小企業向けにクラウドサービスの開発・販売・支援を提供している【3923】ラクスは、東証を代表するクラウドコンピューティング関連銘柄の一つです。
同社は、クラウド型の交通費・経費精算システム「楽楽精算」や電子請求書発行システム「楽楽明細」といったクラウドサービス(SaaS)を自社開発していることで知られています。
【3923】ラクスの月足チャート
ラクスの株価は、2020年新型コロナ相場で急騰後は他のクラウドコンピューティング関連銘柄と同様に下げていますが、長期的な成長を遂げていることは確かです。
【4443】Sansan
名刺管理サービス最大手の【4443】Sansanも、東証プライム市場のクラウドコンピューティング関連銘柄を代表する銘柄です。
同社が手掛けるクラウド型名刺管理サービス「Sansan」は、名刺管理市場シェア82%を誇る営業DXサービスとなっており、100万件以上の企業情報が登録されています。
【4443】Sansanの月足チャート
Sansanの株価は、2020年から2021年に掛けて買われましたが、2021年末から2022年初めに掛けて大暴落となりました。
【3962】チェンジホールディングス
企業や公共団体のIT構築支援を手掛ける【3962】チェンジホールディングスは、DX全般を手掛けるクラウドコンピューティング関連銘柄の一角です。
同社は、クラウドはもちろん、ロボティクスやAI、IoT、ビッグデータなどデジタルトランスフォーメーション全般を手掛けている企業として知られています。
【3962】チェンジホールディングスの月足チャート
チェンジホールディングスの株価は、2020年新型コロナ相場で急騰後は調整が長引いており、典型的なDX株の値動きとなっています。
【3788】GMOグローバルサイン・ホールディングス
GMO系のクラウド企業でサーバー管理と電子認証を提供する【3788】GMOグローバルサイン・ホールディングスは、クラウドコンピューティング関連銘柄の一角として知られる銘柄です。
同社は、旧社名「GMOクラウド」で知られており、IaaS型次世代パブリッククラウド「ALTUS byGMO」などのクラウドインフラ事業が柱となっています。
【3788】GMOグローバルサイン・ホールディングスの月足チャート
GMOグローバルサイン・ホールディングスの株価は、2020年には東証一部屈指のDX株として10倍以上の値上がりとなりましたが、2021年以降は株価・出来高ともに厳しい展開が続いています。
【3683】サイバーリンクス
流通業・官公庁向けのITクラウド事業を柱とする【3683】サイバーリンクスも、2020年新型コロナ相場で大きく買われたクラウドコンピューティング関連銘柄です。
同社は、流通業や官公庁向けのクラウドサービスを中心に、学校教育機関向けや医療情報システムサービスなども提供するクラウド企業です。
【3683】サイバーリンクスの月足チャート
サイバーリンクスの株価は、2020年新型コロナ相場ではコロナショックの安値334円から2020年12月には高値3,925円まで10倍以上の値上がりとなりましたが、2021年以降は下落が止まりません。
【3915】テラスカイ
クラウドシステムの導入支援・開発を手掛ける【3915】テラスカイは、東証プライム市場の代表的なクラウドコンピューティング関連銘柄です。
同社は、世界的なクラウドプラットフォームSalesforce社のクラウドシステム納入支援を中心に手掛けていることで知られています。
【3915】テラスカイの月足チャート
テラスカイの株価は、2020年新型コロナ相場で大きく上げましたが、2021年以降は上昇分を全て吐き出してしまった形となりました。
【4776】サイボウズ
企業向けグループウエアソフトの開発を手掛ける【4776】サイボウズは、テレワーク支援でも注目されたクラウドコンピューティング関連銘柄です。
同社が手掛けるクラウドサービス「キントーン」は、導入実績25,000社(※2022年6月時点)、毎月500社以上が導入している企業向けクラウドサービスとして知られています。
【4776】サイボウズの月足チャート
サイボウズは長らく成長株となっており、2020年新型コロナ相場で急伸、2021年~2022年に掛けては大きく売られたものの、2022年中盤以降は急反発しています。
【4475】HENNGE
企業向けクラウドセキュリティーサービス「HENNGEOne」を手掛ける【4475】HENNGEは、新興のクラウドコンピューティング関連銘柄です。
同社のクラウドサービス「HENNGEOne」は、セキュリティーソフトとして国内マーケットシェアトップを誇り、約2,300社の多様な業種・業態での導入実績がありま
【4475】HENNGEの月足チャート
HENNGEの株価は、2019年10月のIPOから2020年に掛けては買われましたが、2021年以降は暴落からの低迷が続いています。
【4493】サイバーセキュリティクラウド
AIを使ったサイバーセキュリティサービスを提供する【4493】サイバーセキュリティクラウドも、新興のクラウドコンピューティング関連銘柄です。
同社が提供する主力商品のクラウド型WAF「攻撃遮断くん」は、導入サイト数20,000サイト以上の国内シェアトップを誇るクラウド型Webセキュリティサービスとなっています。
【4493】サイバーセキュリティクラウドの月足チャート
サイバーセキュリティクラウドは、新型コロナ全盛の2020年3月に上場し、翌月には急伸しましたが、以降は低迷しています。
クラウドコンピューティング関連銘柄のIPO銘柄
【4475】HENNGEや【4493】サイバーセキュリティクラウドなど、クラウドコンピューティング関連銘柄はIPOが多いテーマ株です。
ただ、クラウドコンピューティング関連銘柄のIPOは、上場時に初値を付けて以降は暴落する、いわゆる“IPOゴール”が多いことには注意が必要です。
下記チャートは、2020年8月に上場した、事業者向けクラウド型ECプラットフォーム「ebisumart」を手掛ける【4057】インターファクトリーの月足チャートとなります。
【4057】インターファクトリーの月足チャート
このような価格推移を辿るクラウドコンピューティング関連銘柄のIPOは多くなっており、上場初値には大きな値を付けやすいですが、上場後はハイリスクであることは留意しておくようにしましょう。
まとめ
今回は、クラウドコンピューティングの基本やIoT・AIとの繋がりについて解説した上で、代表的なクラウドコンピューティング関連銘柄の株価動向についてチャート付きでご紹介してきました。
クラウドコンピューティングとは、ネットワーク上で操作できるデータやアプリケーションのことで、GmailやGoogleドキュメント、Dropboxなどが代表的です。
クラウドコンピューティングは、IoT・AIとは相互補助的な関係となっており、2010年代後半以降の急速な発展により、知らず知らずの内にクラウドサービスを使っているケースが多くなっています。
クラウドコンピューティングにおいては、アプリやソフトをクラウド上で動作させるクラウドサービス「SaaS」が重要ワードとなっており、「PaaS」「IaaS」も重要です。
クラウドコンピューティング関連銘柄は、2020年新型コロナ相場では代表的なデジタルトランスフォーメーション(DX)株として急伸しましたが、2021年以降は調整が続く銘柄が多くなっています。
とはいえ、今後もAIやIoTとともにクラウドコンピューティングの発展が続く傾向は間違いないため、しっかりとチェックしておくようにしましょう。
紫垣 英昭
この記事が気に入ったら
いいねしよう!
最新記事をお届けします。