紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
新型コロナウィルスは世界経済にも大きな影響を及ぼしており、2020年2月から3月に掛けては世界中の株式市場でリーマンショックを超える大暴落となりました。
ただ、多くの銘柄は新型コロナウィルスの悪影響が懸念されて下げた一方で、マスクやテレワーク、人工呼吸器、ワクチンといった新型コロナで特需が見込まれる銘柄は大きく値を上げています。
今回は、新型コロナ相場で株価が上がる銘柄・下がらない銘柄に焦点を当てて、新型コロナ相場で株価が特に大きく上がった銘柄を10銘柄紹介していきます。
- コロナショックで株価が暴騰した銘柄がわかる
- コロナショックで株価が暴騰したセクターやテーマがわかる
- コロナショックで株価が暴騰した銘柄がわかる
新型コロナ相場で株価が上がる銘柄・下がらない銘柄とは?
新型コロナウィルスは世界経済にとって最大のリスク要因となっており、世界中の株式市場にも大きな打撃を与えています。
ここで、2020年に入ってからの日経平均株価の値動きをおさらいしておきましょう。
日経平均株価の日足チャート(2020年1月~5月)
日経平均株価は、2020年1月6日の大発会には23,319.76円で始まりました(上図青丸)。その後は高値圏で推移したものの、2月下旬から新型コロナウィルスの影響で大きく下落。暴落は止まらず、3月19日には16,358.19円まで下げました(上図赤丸)。その後は反発しており、5月25日には20,741.65円まで戻してきています。
日経平均は3月に安値を付けてからは反発しているものの、年初価格からは約-15%ほど下落していることに変わりません。
日本株のベンチマークである日経平均が下げているということは、多くの日本株は新型コロナウィルスの影響で2020年に入ってから大きく下げていることを意味します。
一方、日本株の中でも、新型コロナウィルスが業績にプラスとなることが期待されるセクターやテーマ株は大きく上げています。
新型コロナ相場で株価が特に大きく上がった銘柄を見ていきましょう。
マスク・アルコール消毒液関連銘柄
品薄が続いているマスクやアルコール消毒液を手掛けている銘柄は、新型コロナウィルスで特需が期待されたことから、2020年1月に大きく買われたテーマ株となりました。
【3604】川本産業
【3604】川本産業は、マスクを始めとする医家用衛生材料の最大手メーカーです。
【3604】川本産業の日足チャート(2020年1月~5月)
川本産業は、2020年1月6日時点では450円の低位株でした(上図青丸)。しかし、中国武漢市で新型コロナウィルスの広がりが伝えられると急騰。1月20日からは8日連続ストップ高となり、2月3日には4,000円まで上昇しました(上図赤丸)。
わずか1ヶ月で450円→4,000円(8.88倍)という歴史的な暴騰相場となり、新型コロナ相場の幕開けを象徴する銘柄となっています。ただ、高値を付けてからは暴落しており、2月以降は乱高下が続いています。
【4364】マナック
2020年1月にマスクと並んで注目されたのが、アルコール消毒液や抗菌スプレーを手掛ける銘柄です。
【4364】マナックは、臭素化合物最大手の化学メーカーで、エーザイの抗菌スプレー「イータック抗菌化スプレー」の主成分を開発していることから大きく買われました。
【4364】マナックの日足チャート(2020年1月~5月)
マナックは、2020年1月6日には631円を付けていました(上図青丸)。マスクを手掛けている銘柄とともに大きく買われていき、1月31日には2,340円まで上昇(上図赤丸)。
川本産業ほどではありませんが、わずか1ヶ月で3.70倍の上昇となりました。ただ、2月以降は暴落しており、その後は乱高下が続いています。
マスクやアルコール消毒液を手掛ける銘柄は、2020年1月に大相場が来た反動から、2月以降は停滞しています。
市中のマスク・アルコール消毒液の品薄は5月に入ってようやく解消されてきていますが、株式市場では2月時点で既にトレンドが終わっていたと見てよいでしょう。
テレワーク・オンライン教育関連銘柄
新型コロナウィルスによって社会に起きた最大の変化は、テレワークの普及であることは間違いありません。テレワークやオンライン教育関連銘柄は、新型コロナ相場でマスク・アルコール消毒液に続いて注目されるようになったテーマ株です。
【3681】ブイキューブ
【3681】ブイキューブは、ネット会議や遠隔治療、セミナー配信などの遠隔操作ソフトの開発に強みを持つIT企業です。テレワーク関連銘柄として大きく買われている銘柄の代表格となっています。
【3681】ブイキューブの日足チャート(2020年1月~5月)
2020年2月から4月に掛けて右肩上がりの上昇となっていることが一目瞭然かと思います。年初の1月6日には654円を付けていましたが、4月1日には1,483円まで上昇。4月1日に高値を付けてからは横ばいになっています。
株価が上がっているのはもちろんですが、新型コロナ相場で注目されるようになり始めた2月前後の出来高の変化にも注目しましょう。
ブイキューブは、新型コロナ相場で最も出来高が急増した銘柄の一つとなっており、社会的にも注目されるテレワークが、マーケットでもいかに注目されているかが分かります。
【2345】クシム(旧・アイスタディ)
テレワークと並んで注目されるのが、オンライン教育です。2月末の一斉休校要請はマーケットでも注目されるニュースとなりました。
【2345】クシム(旧・アイスタディ)は、IT技術者資格向けのeラーニングソフトを手掛けていることで知られます。学校向けの教育支援ツール「SLAP(スラップ)」を展開していることから、一斉休校要請の際は真っ先に買われることになりました。
【2345】クシムの日足チャート(2020年1月~5月)
2月25日には政府による一斉休校要請のニュースでストップ高となり(上図青丸)、4日連続ストップ高後に1,823円まで上昇。一斉休校要請から4日で649円→1,823円まで約3倍弱に暴騰しています。
高値を付けてからは暴落しましたが、暴落後にも再暴騰していることに注目です。
オンライン教育はテレワークと並んで新型コロナ相場で注目されるテーマとなっています。
人工呼吸器を手掛ける医療機器メーカー
欧米で新型コロナウィルスによる医療崩壊が起きたことを受けて、世界株安を経た3月中旬には人工呼吸を手掛ける医療機器メーカー株が買われることになりました。
なお、人工呼吸器メーカーは新型コロナ相場で大きく上がった銘柄というよりは下がらない銘柄に位置付けられます。
【6849】日本光電
【6849】日本光電は、脳波計や生体情報モニターなどに強みを持つ医療用電子機器メーカーです。
マスク型人工呼吸器メーカーとしては国内で唯一無二の企業として知られており、政府からの要請を受けて人工呼吸器を増産することもニュースで話題になりました。
【6849】日本光電の日足チャート(2020年1月~5月)
年初には2,990円を付けており、世界株安でも2,556円までしか下落しませんでした(上図青丸)。世界株安明けには、欧米での医療崩壊を受けて人工呼吸器の重要性が認識されたこともあり大きく買われ、3月30日には4,515円まで上昇(上図赤丸)。ただ、高値を付けてからは売られています。
なお、日本光電は典型的なディフェンシブ銘柄です。短期間にこれだけの上昇をするのは異例のことであると言えます。
【4543】テルモ
【4543】テルモは、日本を代表する医療機器メーカーです。
人工心肺装置やカテーテルで強みを持ちますが、ニュースでもたびたび耳にすることが多い人工心肺装置「ECMO(エクモ)」では国内トップシェアを誇ります。
【4543】テルモの日足チャート(2020年1月~5月)
テルモの2020年の株価チャートを見ると、やや苦戦しているように映るかと思います。確かに、2020年の日足チャートで見ると、下落していると言ってよいでしょう。
ただ、長期投資の視点から見てみると、テルモ株がいかに優秀であるかが分かります。次の図はテルモの月足チャートです。
【4543】テルモの月足チャート
テルモ株はアベノミクス以降、一貫して上昇を続けており、新型コロナによる暴落も調整でしかないことが分かります(新型コロナ暴落は上図赤丸)。
確かに、新型コロナによる世界株安では下げました。ただ、これだけ長い期間に渡って上昇を続けていることからすると、「新型コロナ相場で下がらない株」と言ってよいのではないでしょうか?
スーパー・ドラッグストア株
2020年4月6日には緊急事態宣言が出されましたが、緊急事態宣言でも営業を続けることが許可されたスーパーやドラッグストア株は大きく買われることになりました。
【3038】神戸物産
【3038】神戸物産は、成長著しい格安スーパー「業務用スーパー」を展開する小売企業です。
【3038】神戸物産の日足チャート(2020年1月~5月)
右肩上がりのチャートになっていることは一目瞭然かと思います。特に、緊急事態宣言が出された2020年4月初め(上図青丸)から大きく買われていることが分かります。
同社は小売株の中でも成長株として知られていますが、新型コロナウィルスによって成長がさらに加速することに期待です。
【3349】コスモス薬品
【3349】コスモス薬品は、ドラッグストア「ディスカウントドラッグコスモス」を展開していることで知られます。
ドラッグストア業界の成長企業として注目されており、2019年度は出店攻勢によってドラッグストア業界3位に躍進しました(1位はカワチ薬品、2位はウェルシアホールディングス)。
【3349】コスモス薬品の日足チャート(2020年1月~5月)
2月から3月中旬までは不調だったものの、3月中旬からの反発が顕著となっており、年初来高値を更新し続けていることが分かります。
ドラッグストアはマスクやアルコール消毒液に加えて、日用品の需要も高まっていることから、新型コロナ相場に強い代表的なセクターです。
ワクチン開発を手掛けるバイオベンチャー
2020年4月から5月に掛けては、新型コロナウィルスのワクチン開発を手掛けるバイオベンチャーが暴騰しています。
【4563】アンジェス
【4563】アンジェスは、遺伝子治療薬「コラテジェン」などで知られる創薬ベンチャーです。
大阪大学と共同で新型コロナウィルスの予防用DNAワクチンを開発していることがニュースでもたびたび報道されており、新型コロナのワクチン開発においては日本で最も進んでいる企業の一つです。
【4563】アンジェスの日足チャート(2020年1月~5月)
暴騰していることが一目瞭然です。世界株安では375円まで下落しましたが(上図青丸)、その後は一貫して買われ続けており、5月8日には2,455円まで上昇しました(上図赤丸)。この期間に最大6.54倍の上昇となっています。
ただ、バイオベンチャー株は、期待や夢で買われる部分が大きく、いつ大暴落に見舞われるか分からないリスクがあります。
確かに、2020年5月時点ではまだ高値圏にあるものの、ネガティブニュースが伝えられて、いつ暴落してもおかしくないと見ておきましょう。
【2191】テラ
【2191】テラは、がん免疫療法で注目されるバイオベンチャーです。
【2191】テラの日足チャート(2020年1月~5月)
4月27日に、遺伝子や細胞などを使った先端医療支援を手掛けるセネジェニックス・ジャパンと、新型コロナウィルスの間葉系幹細胞を用いた治療法の開発に関する共同研究契約を締結したことを発表したことから大きく買われています(上図青丸)。
ストップ高を連発して大きく上げていますが、期待感で買われるバイオベンチャー株であるため、いつ暴落してもおかしくありません。今から手を出すのは危険としか言いようがないでしょう。
まとめ
今回は、新型コロナ相場で株価が上がる銘柄・下がらない銘柄に焦点を当てて、新型コロナ相場で特に大きく上がった銘柄を10銘柄紹介してきました。
新型コロナ相場で注目されて大きく買われているセクターやテーマ株は、時々刻々と変化しています。
中国武漢市で新型コロナウィルスが広まった2020年1月には、マスクやアルコール消毒液を手掛けている銘柄が大きく買われていました。
日本でも新型コロナの感染者が報告され始め、自粛要請や一斉休校が行われた2月から3月に掛けては、テレワークやオンライン教育に関する銘柄が買われました。
欧米で医療崩壊が深刻化した3月中旬頃からは人工呼吸器を手掛ける医療機器メーカーが、緊急事態宣言が発令された4月にはスーパー・ドラッグストア株が買われ、4月から5月に掛けてはワクチン開発で注目されるバイオベンチャー株が買われています。
これらのいずれの銘柄についても、大暴騰してからは暴落が起きていることには注意が必要です。
新型コロナ相場で株価が上がる銘柄・下がらない銘柄について抑えておき、今後のコロナ相場にも役立てていきましょう。
紫垣 英昭
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