【空飛ぶ車関連銘柄】大阪万博やトヨタ系テーマ株としても注目の東証銘柄は?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

空飛ぶ車(eVTOL)は、次世代自動車テーマ株として株式市場でも注目されつつあります。

空飛ぶ車は、2025年大阪・関西万博では目玉の一つとなっており、会場の夢洲での体験準備が進められています。

トヨタやスズキ、SUBARUといった自動車メーカー各社が空飛ぶ車に力を入れており、電動化やコネクテッド、自動運転といったテーマからも注目されるかもしれません。

この記事では、空飛ぶ車関連銘柄の概要や株式市場で注目される背景について解説した上で、東証の空飛ぶ車関連銘柄について紹介しています。

この記事を読んで得られること
  • 空飛ぶ車関連銘柄の概要や株式市場で注目される背景についてわかる
  • 東証の空飛ぶ車関連銘柄についてわかる
  • 東証の空飛ぶ車関連銘柄がチャートで学べる

空飛ぶ車とは?

空飛ぶ車の概要について押さえておきましょう。

空飛ぶ車の概要

空飛ぶ車とは、電動や自動操縦、垂直離着陸などが可能な車のことで、イメージとしてはドローンとヘリコプターの中間のような移動体です。

空飛ぶ車は、「eVTOL(イーブイトール、電動垂直離着陸機)」や「UAM」とも呼ばれており、世界各国で新しいモビリティとして開発競争が進められている状況です。

日本でも、都市部での送迎サービスや離島・山間部での移動手段、災害時の救急搬送などでの活用が期待されています。

国土交通省は、定期的に「空の移動革命に向けた官民協議会」を開催しており、空飛ぶ車を実現するための「空の移動革命に向けたロードマップ」を発表しています。

空の移動革命に向けたロードマップ

※出典:国土交通省「空の移動革命に向けたロードマップ(改訂案)」

空飛ぶ車を開発している日本の民間企業としては、SkyDrive(スカイドライブ、旧・CARTIVATOR)が知られており、2023年6月にはスズキと協業することを発表しました。

SkyDriveは、空飛ぶ車の利点について次のような点を挙げています。

・静粛性:地上での体感ノイズはヘリコプターの1/3以下

・利便性:離陸重量がヘリコプターの1/2以下

・経済性:電動化により部品点数はヘリコプターの1/10程度

※出典:SkyDrive

空飛ぶ車関連銘柄は自動車やドローン、航空機部品に注目

株式市場においても、空飛ぶ車は空飛ぶ車関連銘柄という次世代テーマ株として注目されつつあります。

空飛ぶ車関連銘柄の中心になるのは、自動車メーカーやドローン関連企業、航空機部品メーカーです。

自動車メーカーとしては、SkyDriveの製造を手掛ける【7269】スズキ、空飛ぶ車開発企業のJoby Aviationに出資している【7203】トヨタ自動車が、空飛ぶ車に注力しています。

空飛ぶ車はドローンとの関連が大きいため、ドローン専業企業【6232】ACSLなどのドローン関連企業も、空飛ぶ車に注目が集まれば物色される可能性があります。

また、空飛ぶ車のキーワードには「電動化」があり、電動モーターで世界的な【6594】ニデック(日本電産)など、EV(電気自動車)に関連する自動車部品メーカーにも注目が集まりそうです。

ドローンは航空機と被る部分も多いため、【6376】日機装や【7408】ジャムコといった航空機部品メーカーも押さえておきたい所です。

空飛ぶ車は大阪万博やトヨタ系テーマ株としても注目される

空飛ぶ車関連銘柄のテーマ性として、大阪万博やトヨタ系テーマ株について押さえておくようにしましょう。

空飛ぶ車は2025年大阪万博の目玉の一つ

空飛ぶ車は、2025年に開催予定の「大阪・関西万博」の目玉の一つとなっています。

大阪・関西万博は、膨らみ続ける建設費や海外パビリオンの建設遅れなど問題が山積していますが、開催する以上は株式市場でも注目されることになりそうです。

夢洲の会場内北西部に位置する「モビリティエクスペリエンス」で、空飛ぶ車の会場内ポートの準備が進められています。

今後、空飛ぶクルマの運航事業者は、会場内ポートと会場外ポートをつなぐ2地点間運航の実現を目指して準備中とのことです。

運航予定機体は、SkyDrive、Joby Aviation、Volocopter、Vertical Aerospaceの4社となっています。

※出典:EXPO2025「空飛ぶクルマ」

2025年に向けて、大阪万博関連銘柄が盛り上がってきた場合には、空飛ぶ車関連銘柄が物色されることもあるかもしれません。

トヨタも空飛ぶ車に力を入れている

空飛ぶ車は自動車との関わりが深いテーマであるため、トヨタ自動車の動向には注目です。

トヨタ自動車は、空飛ぶ車(eVTOL)を開発する米国企業Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)に出資しており、2025大阪万博でも運航予定となっています。

Joby Aviationは、国土交通省が2022年10月に空飛ぶクルマの型式証明の申請受理を発表しており、これはSkyDriveに続く2例目となりました。

自動車社会の未来を示す「CASE」というキーワードがあり、これは「コネクテッド(Connected)」「自動運転(Autonomous)」「シェアリング(Shared)」「電動化(Electric)」の頭文字を取ったものです。

それぞれIoT、自動運転、カーシェアリング(MaaSなど)、電動化(EV)化と、いずれもトヨタ自動車が力を入れており、株式市場でも注目されるテーマです。

空飛ぶ車の開発・製造においては、コネクテッドや電動化の分野で次世代自動車との共通点が多く、自動車事業との相乗効果を生かした新たなモビリティ事業に発展する可能性が期待されています。

自動車関連のテーマとしては、全固体電池によるEV化や、AIによる自動運転なども注目されますが、この文脈から空飛ぶ車関連銘柄が注目される可能性も十分にあるでしょう。

空飛ぶ車関連銘柄10選!

東証で押さえておきたい空飛ぶ車関連銘柄について見ていきましょう。

【7269】スズキ

軽自動車や二輪大手の【7269】スズキは、自動車メーカーの中でも空飛ぶ車に注力していることで知られている空飛ぶ車関連銘柄です。

同社は、2023年6月に空飛ぶ車開発企業SkyDriveとの協業を発表しており、両社は株式会社Sky Worksを設立し、年間最大100機の製造体制を目指すとのことです。

【7269】スズキの月足チャート

スズキの株価は、2020年コロナショックからは倍になりましたが、より長期に見ると横ばいとなっています。

【7203】トヨタ自動車

世界的自動車メーカーの【7203】トヨタ自動車は、空飛ぶ車の動向を握る企業の一つとなっており、空飛ぶ車関連銘柄としても押さえておく必要があります。

トヨタは、空飛ぶ車(eVTOL)を開発するJoby Aviation社に出資しており、2025年大阪万博でも運航を予定しています。

【7203】トヨタ自動車の月足チャート

トヨタ自動車の株価は、2020年以降に2倍以上となっており、現在進行形で上場来高値および時価総額を更新中です。

全固体電池などトヨタのEV戦略も注目されており、日本株全体をけん引する動きとなっています。

【7270】SUBARU

運転支援システム「アイサイト」で知られる自動車メーカー【7270】SUBARUは、空飛ぶ車の試作機を公開したことでも話題となりました。

同社は、2023年10月のジャパンモビリティショーで、空飛ぶ車(eVTOL)の試作機「エアモビリティ コンセプト」を公開しました。

同社は自動車事業が有名ですが、前身は「中島飛行機」であり、航空宇宙産業で培った技術でも注目されています。

【7270】SUBARUの月足チャート

SUBARUの株価は、チャートにはありませんが2015年12月に付けた高値5,223円から下げ続けており、現在は下落トレンド後の反発フェーズにある状況です。

【6232】ACSL

商業用ドローン製造を手掛ける【6232】ACSLは、東証を代表するドローン株であることから、空飛ぶ車関連銘柄としても注目されます。

同社は、ドローンの自動運転やコネクテッド(IoT)を提供している、東証でほぼ唯一のドローン専業企業です。

空飛ぶ車は、まだ新しい産業のため、【7203】トヨタ自動車や【7269】スズキといった大型株を動かすほどの材料にはなりにくく、同社のような中小株や新興株が注目される可能性があります。

【6232】ACSLの月足チャート

ACSLの株価は、2018年12月に上場し、2019年5月に高値を付けてからは、下落が止まらない状況となっており、典型的な「IPOゴール」の値動きになってしまっています。

【6594】ニデック(日本電産)

HDDや車載用モーターに強い世界的モーター企業【6594】ニデック(日本電産)は、空飛ぶ車の電動化で注目される空飛ぶ車関連銘柄です。

同社はHDD向けの精密小型モーターに強いことで知られていますが、EVシフトをにらんで、車載用中・大型モーターにシフトしており、EV株としても有力な銘柄です。

空飛ぶ車の部品メーカーとしても最有力銘柄の一つと言えるでしょう。

【6594】ニデック(日本電産)の月足チャート

ニデックの株価は、2020年秋には脱炭素やEVシフトで急騰し、一時は時価総額でトヨタの3分の1にまで迫った時期がありましたが、2021年以降の下落で戻しています。

【6376】日機装

化学用精密ポンプや人工腎臓などに強い【6376】日機装は、空飛ぶ車向けの材料を提供している空飛ぶ車関連銘柄の一角です。

同社は、航空機部材に強い企業としても知られており、トヨタも出資しているJoby AviationのeVTOL向けに部品を供給しています。

【6376】日機装の月足チャート

日機装の株価は、長らく700~1,500円のボックス内で横ばいとなっています。

【7408】ジャムコ

航空機用内装品で世界的な【7408】ジャムコも、空飛ぶ車関連銘柄として注目される可能性がある航空機部品メーカーです。

同社は2022年5月に、空飛ぶ車開発企業SkyDriveとの協業を発表しており、航空機内装の設計開発技術や認証技術を提供するとのことです。

【7408】ジャムコの月足チャート

ジャムコの株価は、2019年~2020年に大きく下落しており、その後の反発でも戻しきっていません。

【7409】AeroEdge

航空機エンジン部品の製造・販売を手掛ける【7409】AeroEdgeも、空飛ぶ車関連銘柄として押さえておきたい航空機部品メーカーです。

同社は、eVTOL用部品の受託加工を手掛けていることでも知られています。

【7409】AeroEdgeの月足チャート

AeroEdgeの株価は、IPO直後は大きく買われたものの、典型的な「IPOゴール」の動きをなぞりつつあります。

【4425】Kudan

人工知覚技術の研究開発を手掛けるAIベンチャー【4425】Kudanは、ドローン向けのソフトでも実績があることから、空飛ぶ車関連銘柄としても注目されるかもしれません。

同社は、ドローンや無人航空機向けに、費用対効果の高いセンサーを用いた堅牢で正確な自己位置推定を可能にするソフトを提供しています。

【4425】Kudanの月足チャート

Kudanの株価は、長らく「IPOゴール」の動きで下落が続いていましたが、2024年に入ってから大反発となっています。

【3402】東レ

炭素繊維などに強い合繊最大手【3402】東レは、空飛ぶ車の材料面で注目の空飛ぶ車関連銘柄です。

SkyDrive製の空飛ぶ車には、ボディ/ローターフレームに東レ製の材料が使われています。

【3402】東レの月足チャート

東レの株価は、2020年以降は反発しているものの、まだ戻してきれてはいません。

まとめ

この記事では、空飛ぶ車関連銘柄の概要や株式市場で注目される背景について解説した上で、東証の空飛ぶ車関連銘柄について紹介してきました。

空飛ぶ車(eVTOL)は、2025年大阪・関西万博や、電動化・自動運転といった自動車系のテーマ株として注目される可能性があります。

空飛ぶ車メーカーとしては、スズキと協業を発表したSkyDrive、トヨタが出資する米国企業Joby Aviationの2社が、キーワードとしても重要になってきそうです。

空飛ぶ車関連銘柄としては、自動車メーカーやドローン関連企業、航空機部品メーカーを中心に押さえておくようにしましょう。

紫垣 英昭