「移動平均乖離率」を使った逆張りの短期売買戦略を教えます!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

「移動平均乖離率」は、株価と 移動平均線 がどの程度離れているのかを数値化したテクニカル指標です。

移動平均乖離率は、逆張りの短期売買において特に力を発揮するテクニカル指標となっており、RSIやストキャスティクスなどのオシレーターに似た使い方をすることができます。

ただ、移動平均乖離率は急激なトレンドが発生しているような場合には効果を発揮せず、また移動平均乖離率が横ばいのときも使えないなどの注意点もあります。

今回は、移動平均乖離率の見方について解説した上で、移動平均乖離率を使った逆張りの短期売買戦略についてもご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 移動平均乖離率の見方がわかる
  • 移動平均乖離率を使った逆張りの短期売買戦略がわかる
  • 移動平均乖離率を使う際の注意点がわかる

移動平均乖離率とは?

移動平均乖離率の見方や計算式といった基本について押さえておきましょう。

移動平均乖離率の見方

移動平均乖離率は、現在価格が移動平均線からどの程度離れているのかをパーセンテージにして表したテクニカル指標です。

そもそも移動平均線とは、ある一定期間の価格の平均値を計算してグラフで示したものです。

移動平均線は、投資において最も代表的なテクニカル指標として使われており、短期の5日移動平均線(5MA)、中期の25日移動平均線(25MA)、長期の75日移動平均線(75MA)など、期間が異なる2~3つの移動平均線が同時に使われます。

次の株価チャートは、日経平均株価の日足チャートとなります。

赤い線は5日移動平均線、青い線は25日移動平均線、緑の線は75日移動平均線です。

また、移動平均乖離率は、赤い線が5日移動平均線、青い線が25日移動平均線のものとなっています。

日経平均株価の日足チャート

日経平均株価は、移動平均線を挟んで推移しており、移動平均線より下になったときは移動平均線まで反発していたことが分かります。

直近では日経平均株価は大きく上昇しており、青の25日移動平均線の上に大きく乖離していますが、そう遠くない内に25日移動平均線まで回帰してくるものと思われます。

このように、株価は移動平均線から大きく乖離すると、移動平均線に回帰・収束してくる性質があります。

移動平均乖離率が、短期的な逆張りに使えるテクニカル指標とされるのはこのためです。

株価と移動平均線の距離を目視しても乖離の大小は分かりますが、移動平均乖離率は株価と移動平均線の差を客観的に数値化したものです。

移動平均乖離率がプラスとなると買われすぎを示す「プラス乖離」となり、マイナスとなると売られすぎを示す「マイナス乖離」となります。

移動平均乖離率がプラス乖離となっている場合にはそろそろ売られてくる可能性があり、マイナス乖離となっている場合にはそろそろ買い戻しが入ってくる可能性があると考えられます。

移動平均乖離率の計算式

移動平均乖離率の計算式について確認しておきましょう。

なお、実際にはチャートソフトがリアルタイムの株価で計算をして、グラフとして描写されるため、移動平均乖離率の計算方法は実際に使うことはありません。あくまで知識として捉えておくようにしましょう。

移動平均乖離率は、株価から移動平均線を引いた値を移動平均線で割って、100倍してパーセンテージ表示することで算出されます。

移動平均乖離率の計算式

例えば、株価が1,000円で、移動平均線が980円の場合には、移動平均乖離率は、{(1000-980)÷980}x100=2.04%となります。

移動平均乖離率を確認する方法

移動平均乖離率を確認する方法を見ていきましょう。

株価チャートから確認する

移動平均乖離率は、各証券会社のチャートツールで表示させて使うことができます。

移動平均乖離率で特に使われるのは、「5日移動平均線」と「25日移動平均線」です。

「75日移動平均線」が使われることもありますが、短期売買を手掛ける際には、「5日移動平均線」「25日移動平均線」を使うのが一般的となっています。

次の図は、トヨタ自動車の株価チャートです。移動平均乖離率の赤い線が5日移動平均線、青い線が25日移動平均線のものとなっています。

【7203】トヨタ自動車の日足チャート

5日移動平均線は、すぐに株価に追い付いてしまうため、移動平均乖離率もそこまで大きく変化することはありません。

25日移動平均線はより遅く反応するため乖離しやすく、短期売買において移動平均乖離率を使う際には、25日移動平均線の乖離率を見ていくことが多くなります。

移動平均乖離率ランキングでスクリーニングする

移動平均乖離率が大きくなっている銘柄を調べる方法についても押さえておきましょう。

「Yahoo!ファイナンス」の株式ランキングでは、25日移動平均線・75日移動平均線の高かい離率でスクリーニングすることが可能です。

まず、「Yahoo!ファイナンス」のトップページの上部から、「株式」→「株式ランキング」をクリックします。

「Yahoo!ファイナンス」のイメージ画像

株式ランキングのページに移動後、下にスクロールしていくと、「テクニカル関連ランキング」という項目があり、その中に「高かい離率」ランキングがあります。

「Yahoo!ファイナンス」のイメージ画像

買われすぎの「高かい離率(プラス)ランキング」、売られすぎの「高かい離率(マイナス)ランキング」のいずれでもスクリーニングすることが可能です。

「Yahoo!ファイナンス」のイメージ画像

移動平均乖離率を使った短期の逆張り手法について

移動平均乖離率は、日足チャートを使った短期の逆張りにおいて、特に使われることが多くなっています。

短期売買において移動平均乖離率を使う方法としては、その銘柄の過去半年から1~2年程度の移動平均乖離率のピークを事前に確認しておき、その乖離率のピークに達したときに逆張りのポジションを持つ方法が挙げられます。

以下のチャートは、再生エネルギー株の代表的な銘柄【9519】レノバの半年分の日足チャートです。

【9519】レノバの日足チャート

レノバの移動平均乖離率について、青の25日移動平均線を直近半年分見てみると、プラス乖離は+13程度でピークとなり(上図青線)、マイナス乖離は-13程度でピークとなっていること(上図赤線)が分かります。

レノバの株価は2021年7月にプラス乖離が13以上になってから下がり(上図青丸)、マイナス乖離が-13に近付いた2021年8月末に押し目の底値を付けていたことが分かります(上図赤丸)。

日経平均株価に移動平均乖離率を使って全体相場を読む

移動平均乖離率は、逆張りの短期売買に使う方法が最もポピュラーではありますが、日経平均株価に使って全体相場を読むために使うことも可能です。

次のチャートは、日経平均株価の直近10ヶ月分(2020年11月~2021年9月)の日足チャートと移動平均乖離率です。

日経平均株価の日足チャート

日経平均株価の、25日移動平均線の移動平均線乖離率は、+7~-6で推移していることが分かります。

日経平均株価は、2021年9月には菅総理退陣表明を受けて急騰しましたが、移動平均乖離率で見てみると、2020年11月のプラス乖離水準と同程度となっています。

もちろん移動平均乖離率だけで全体相場を完全に予測することはできませんが、全体相場を読む道具の一つとして移動平均乖離率も見ておいても損はないでしょう。

移動平均乖離率の使い方の注意点

移動平均乖離率を使う際の注意点について押さえておきましょう。

乖離率が高くてもすぐに反発するとは限らない

移動平均乖離率が大きくプラス乖離していたとしても必ずしもすぐに下落に転じるわけではなく、大きくマイナス乖離しているからといって必ずしもすぐに反発に転じるとは限らない点には注意が必要です。

特に、大きなトレンドに乗っている銘柄には、移動平均乖離率はほぼ無力となる場合が少なくありません。

次の株価チャートは、2021年9月から急騰している【6335】東京機械製作所の日足チャートとなります。

東京機械製作所の株価は2021年9月に、過去の移動平均乖離率を大きくオーバーして急騰し、25日移動平均線の移動平均乖離率が152倍になってから急落しました。

移動平均乖離率が過去のプラス乖離水準(マイナス乖離水準)を大きく超えた場合には、どこまで順行するのか予測することはできません。

このため、移動平均乖離率を使って短期売買をする際には、もしもの場合に備えた損切り計画を事前に立てておくことが必要となります。

移動平均乖離率が横ばいのときは使えない

移動平均乖離率は、RSIやストキャスティクス、MACDといったオシレーターと似たテクニカル指標です。

なお、移動平均乖離率がオシレーターと異なるのは、上下の範囲が決まっていないことが挙げられます。

移動平均乖離率が力を発揮するのは、大きく乖離して、買われすぎ・売られすぎを示しているときであり、横ばいとなっているときは使えません。

移動平均乖離率が横ばいとなっているときは、じっと我慢することを心掛けるようにしましょう。

買われすぎ・売られすぎの水準が銘柄ごとに異なる

移動平均乖離率が、RSIやストキャスティクスなどのオシレーターと異なるのは、買われすぎ・売られすぎの水準が、銘柄ごとに異なる点です。

このため、移動平均乖離率のプラス乖離・マイナス乖離の水準は、銘柄ごとに過去のチャートを遡って確認しておく必要があります。

移動平均乖離率はオシレーターのように機械的に使えないという点では、やや上級者向けのテクニカル指標と言えます。

まとめ

今回は、移動平均乖離率の見方について解説した上で、移動平均乖離率を使った逆張りの短期売買戦略についてもご紹介してきました。

移動平均乖離率は、株価が移動平均線に回帰する性質を使ったテクニカル指標となっており、短期の逆張りにおいて特に力を発揮します。

移動平均乖離率が買われすぎの「プラス乖離」となった場合には売られる可能性があり、売られすぎの「マイナス乖離」となった場合には買い戻しの反発が入ってくる可能性が考えられます。

ただ、移動平均乖離率は急激なトレンドが発生しているような場合には使えず、移動平均乖離率が横ばいのときも効果を発揮しないことなどには注意が必要です。

紫垣 英昭