紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
先日、東北で大きな地震がありました。
東京でも停電が起きるなど、被害が報告されていますね。
僕が住んでいえる大阪も少し揺れましたからかなり大きな地震でしたね。
関西では、30年以内にかなり高い確率で「南海トラフ大地震」が来ると予測されかなりの被害が想定されています。
このように日本は災害が多い国であり、インフラの老朽化も叫ばれています。
そこで国は「国土強靭化」を国策として進めており、これはかなり長いテーマになります。
そこで今回は「国土強靭化関連銘柄」を取り上げたいと思います。
「国土強靭化関連銘柄」は、地震や台風が起こると、
復興・防災特需期待から物色される傾向にあることが特徴です。
この記事では「国土強靭化関連銘柄」の特徴や自然災害との関わりについて解説した上で、
「国土強靭化関連銘柄」として注目される建設株についてチャート付きでご紹介していきます。
- 国土強靭化関連銘柄の特徴や自然災害との関わりについてわかる
- 国土強靭化関連銘柄として注目される建設株についてチャート付きでわかる
- 自然災害への備えとして、株式投資の考え方がわかる
国土強靭化とは?
日本政府が進めている「国土強靭化」について簡単に押さえておきましょう。
政府は東日本大震災以降、国土強靭化を進めている
国土強靱化とは、地震や津波、台風などの自然災害に強い国づくり・地域づくりを目指す取り組みのことです。
日本は、地震や台風をはじめ、多くの災害リスクを抱える国です。
政府資料「内閣官房 国土強靱化推進室」によると、日本では震度5以上の地震は年間18.6回、1時間に50ミリ以上の雨は年間334回、活火山の数は111に及びます。
台風・豪雨被害は毎年のように発生しており、将来的に高い確率で起こるとされる首都直下型地震や南海トラフ巨大地震も懸念されています。
これらの自然災害から暮らしを守るためには、行政・企業・地域や個人が一体となって取り組む必要があります。
※※※(図解イメージ):国土強靭化が目指すこと
※出典:内閣官房 国土強靱化推進室
また、国土強靭化では、自然災害対策とともに、高度経済成長期に建設されてから50年以上経過している社会インフラの老朽化対策も課題です。
政府は2020年12月、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を閣議決定しており、今後5年間で15兆円を目途に投じる方針を示しました。
国土強靭化は、巨額の政府資金が投じられる国策テーマとなっています。
国土強靭化関連銘柄は建設株が中心となるテーマ株
国策テーマである国土強靭化関連銘柄の中心となるのは、土木や特殊建設に強い建設株です。
建設株というと、大成建設や大林組といった大手ゼネコンが中心となるセクターですが、国土強靭化で注目されるのは、自然災害に強い建設事業を手掛ける銘柄です。
具体的には、道路舗装大手の【1881】NIPPO(2022年上場廃止予定)や【1882】東亜道路工業、土木大手の【1914】日本基礎技術や【1926】ライト工業、【1929】日特建設といった銘柄が該当します。
国土強靭化関連銘柄は、「防災関連銘柄」や「水害対策関連銘柄」などと呼ばれることもあり、地震や台風などの自然災害が起こると、復興・防災特需が期待されて物色される傾向があります。
自然災害の被害を減らすための国土強靭化であるにも関わらず、自然災害が発生すると物色されやすいというのは皮肉なことではありますが、株式市場にはこのような不謹慎な面があるのは仕方ありません。
国土強靭化関連銘柄は自然災害が発生すると買われやすい
国土強靭化関連銘柄は、自然災害が発生すると、復興・防災特需期待から買われやすくなる傾向があります。
2010年以降に日本で起こってきた自然災害についてまとめておきましょう。
過去の地震・津波・噴火被害
2010年以降に日本で起こってきた地震・津波・噴火被害についてまとめると、次の表のようになります。
年月日 |
地震・津波・噴火被害 |
2011年3月11日 |
東日本大震災 |
2014年9月27日 |
御嶽山噴火 |
2016年4月14日~4月16日 |
熊本地震 |
2018年9月6日 |
北海道胆振東部地震 |
2011年3月11日の東日本大震災は、日本の歴史に残る出来事となり、政治・経済や株式市場にも多大な影響を与えたことは言うまでもありません。
そもそも、政府が国土強靭化を進めることになったのは東日本大震災がきっかけです。
2016年4月に発生した熊本地震、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震も大きな被害を及ぼしました。
今後、高い確率で起こるとされる首都直下型地震や南海トラフ巨大地震も懸念されていますが、4つのプレートが重なる日本列島では、日本全国どこで巨大地震が発生してもおかしくありません。
また、日本は全世界の活火山の7%を占めている火山大国でもあります。
2014年9月に御嶽山で発生した火山噴火では、行方不明者を含む63名が犠牲となる戦後最悪の噴火被害となりました。
過去の豪雨・台風
2010年以降に日本で甚大な被害となった豪雨・台風被害についてまとめると、次の表のようになります。
年月日 |
地震・津波・噴火被害 |
2011年9月 |
紀伊半島豪雨(平成23年台風第12号) |
2014年8月 |
広島土砂災害 |
2017年7月 |
九州北部豪雨 |
2018年7月 |
西日本豪雨 |
2019年9月 |
令和元年房総半島台風(令和元年台風第15号) |
2019年10月 |
令和元年東日本台風(令和元年台風第19号) |
2020年7月 |
熊本豪雨 |
2021年7月 |
伊豆山土砂災害 |
日本では、ほぼ毎年のように、甚大な被害をもたらす豪雨・台風被害が発生しています。
2018年7月の西日本豪雨は、死者200人を超える戦後最悪の水害となりました。
2019年9月から10月に掛けて日本を直撃した台風15号と台風19号は、千葉県や福島県に大きな被害をもたらしました。
2021年7月には、静岡県熱海市で豪雨による大規模な土砂災害が発生したことは、まだ記憶に新しい所です。
地震・津波・噴火対策で注目の国土強靭化関連銘柄5選!
地震・津波・噴火対策で注目される国土強靭化関連銘柄を見ていきましょう。
【1882】東亜道路工業
道路舗装大手の【1882】東亜道路工業は、代表的な国土強靭化関連銘柄です。
道路舗装を手掛ける建設株は、国土強靭化のインフラ整備でも注目される銘柄群となります。
【1882】東亜道路工業の月足チャート
東亜道路工業の株価は、直近5年間では横ばいとなっています。
自然災害でもそこまで大きな値動きにはなっていません。
道路舗装を手掛ける銘柄は再編や上場廃止が相次いでおり、【1882】東亜道路工業と【1884】日本道路の2銘柄に絞られている状況となっています。
ENEOS系で業界トップの【1881】NIPPOは2022年に上場廃止予定となっており、2021年9月には業界2位の前田道路が親子上場廃止の流れで上場廃止となりました。
特に、業界トップのNIPPOは国土強靭化や自然災害で大きく買われていた代表的な銘柄となっていただけに、国土強靭化関連銘柄投資にも影響がありそうです。
【1813】不動テトラ
消波ブロック大手の【1813】不動テトラは、水害対策で注目される国土強靭化関連銘柄です。
同社が手掛ける消波ブロック「テトラポット」は、津波や水害対策の代名詞的な商品として知られています。
【1813】不動テトラの月足チャート
不動テトラの株価は、2016年4月の熊本地震(上図赤丸)、2019年9~10月の台風15号・台風19号(上図青丸)で大きく買われたことが分かります。
【1888】若築建設
北九州地盤で海上土木に強い【1888】若築建設は、2016年熊本地震で買われた実績がある国土強靭化関連銘柄です。
同社は、九州地方で自然災害が発生すると物色される傾向がある銘柄です。
【1888】若築建設の月足チャート
若築建設の株価を見てみると、2016年4月の熊本地震(上図赤丸)で大きく物色されたことが分かります。
国土強靭化関連銘柄と自然災害については、地盤としている地域は要チェックしておくことにしましょう。
ある地域を地盤としている建設株は、その地域で自然災害が発生すると特需期待から買われる傾向があります。
【1929】日特建設
ダム基礎工事や地盤改良を主力とする特殊土木大手の【1929】日特建設は、自然災害で買われやすい国土強靭化関連銘柄です。
同社は、地震だけでなく台風などの水害被害でも買われやすい銘柄となっています。
また、2014年9月に御嶽山噴火が発生したときにも大きく買われました。
【1929】日特建設の月足チャート
日特建設は、自然災害が発生する度に買われており、2014年9月の御嶽山噴火(上図赤丸)や2016年4月の熊本地震(上図青丸)、2019年9~10月の台風被害(上図緑色)で物色されました。
【1870】矢作建設工業
愛知県を地盤とするゼネコン【1870】矢作建設工業は、南海トラフ巨大地震で注目される可能性がある国土強靭化関連銘柄です。
【1870】矢作建設工業の月足チャート
矢作建設工業の株価は横ばいが続いていますが、南海トラフ巨大地震関連で押さえておきたい銘柄の一つです。
豪雨・台風対策で注目の国土強靭化関連銘柄5選!
豪雨・台風対策で注目される国土強靭化関連銘柄を見ていきましょう。
【1914】日本基礎技術
基礎工事大手の【1914】日本基礎技術は、豪雨・台風被害で物色される傾向がある国土強靭化関連銘柄です。
【1914】日本基礎技術の月足チャート
日本基礎技術の株価は、2019年10月の台風19号(上図赤丸)、2021年7月の伊豆山土砂災害(上図青丸)によって大きく買われました。
【1926】ライト工業
地盤改良や薬液注入工事に強い【1926】ライト工業も、水害対策で注目される国土強靭化関連銘柄です。
【1926】ライト工業の月足チャート
ライト工業の株価は右肩上がりとなっていますが、2018年7月の西日本豪雨(上図赤丸)、2019年10月の台風19号(上図青丸)で大きく買われたことが分かります。
【4825】ウェザーニューズ
世界最大の民間気象企業【4825】ウェザーニューズは、豪雨・台風対策で注目される銘柄です。
建設株ではありませんが、自然災害で注目されやすい銘柄として押さえておきましょう。
【4825】ウェザーニューズの月足チャート
ウェザーニューズの株価は直近2年間で大きく上がっており、特に台風シーズンに掛けて大きく上昇している傾向が見てとれます。
【5287】イトーヨーギョー
株式市場では、水害対策において、電線を地中に埋め込む「電線地中化」が注目されています。
特に、2019年9月の台風15号では、千葉県で多数の電柱が倒れる被害が発生したことから「電線地中化」は大きな注目を集めました。
コンクリート製品を手掛ける【5287】イトーヨーギョーは、電線地中化を実現する製品「D.D.BOX」「S.D.BOX」を販売していることから、電線地中化に強い銘柄に位置付けられています。
【5287】イトーヨーギョーの月足チャート
イトーヨーギョーの株価は、2019年9~10月の2つの台風で急騰となりました(上図赤丸)。
【5290】ベルテクスコーポレーション
防護柵やマンホールといったコンクリート製品を手掛ける【5290】ベルテクスコーポレーションは、イトーヨーギョーと並んで電線地中化で注目される国土強靭化関連銘柄です。
同社は、電線地中化を実現する電線共同溝(C・C・BOX)技術を有していることから、電線地中化関連銘柄に位置付けられています。
【5290】ベルテクスコーポレーションの月足チャート
ベルテクスコーポレーションの株価は右肩上がりを続けています。
2019年9~10月の台風でも買われましたが、自然災害によらない上昇を続けている銘柄です。
まとめ
今回は、国土強靭化関連銘柄の特徴や自然災害との関わりについて解説した上で、国土強靭化関連銘柄として注目される建設株についてチャート付きでご紹介してきました。
日本政府は東日本大震災以降、首都直下地震や南海トラフ巨大地震、巨大台風などへの備えを進めるため、国土強靭化の姿勢を打ち出しています。
2020年12月には「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」が閣議決定され、今後5年間で15兆円を目途に投じる方針を示すなど、国土強靭化は国策テーマです。
国土強靭化関連銘柄は、地震や台風といった自然災害対策に強い建設株が中心となっており、自然災害が発生すると復興・防災特需が期待されて買われる傾向があります。
株式投資をする上でも、自然災害への備えとして、国土強靭化関連銘柄を押さえておくようにしましょう。
紫垣 英昭
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