石油関連銘柄は原油高で買われるテーマ株!ウクライナ情勢でどこまで高騰する?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

ウクライナ情勢を背景に原油価格が急騰しており、ウクライナ情勢の長期化とともに原油価格も高止まりが続くことが懸念されています。

日本経済は原油依存度が高いため、原油高は日本経済しいては日本株にとってネガティブ要因となることに注意が必要です。

一方で、石油元売りや資源開発企業、総合商社などの石油関連銘柄は、原油高によって業績が良くなる原油高メリット株として注目されています。

今回は、石油関連銘柄の概要やWTI原油価格について解説した上で、東証を代表する石油関連銘柄や原油価格連動ETFをチャート付きで紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 石油関連銘柄の概要やWTI原油価格についてわかる
  • 東証を代表する石油関連銘柄や原油価格連動ETFをチャート付きでわかる
  • 原油高について、なぜ注目するべきなのかがわかる

石油関連銘柄とは?

原油高の恩恵を受ける石油関連銘柄について押さえておきましょう。

石油関連銘柄は原油高で買われるテーマ株

石油関連銘柄とは、石油に関連する事業を手掛けている銘柄を総称したテーマ株です。

石油関連銘柄の具体的なセクターとしては、石油元売り企業、資源開発企業、総合商社などが挙げられます。

石油関連銘柄の特徴は、原油高になると業績改善が期待されることから買われる傾向にあることです。

石油関連銘柄は「原油メリット関連銘柄」などとも呼ばれ、中東情勢やロシア情勢が混沌化してくると、原油高による株安のリスク逃避として買われる傾向があります。

日本経済は石油依存度が高く、原油高は日本経済しいては日本株にとってはネガティブ要因となります。

日本は、1970年代のオイルショック時には石油依存度が75%を超えていました。

オイルショックを教訓に、脱石油や化石燃料の国際分散調達を進めてきましたが、2018年時点でも日本の一次エネルギー供給に占める石油の割合は37.6%となっています。

日本の一次エネルギー供給構成の推移

※出典:資源エネルギー庁

日本の原油の海外依存度は、2019年時点で99.7%となっており、中東依存度が92%を占めています。

日本の原油海外依存度

※出典:資源エネルギー庁

「WTI原油先物」を要チェックしておこう

経済ニュースなどで「原油価格」と言われる場合は、「WTI原油先物(中心限月)」を指していることが一般的です。

「WTI原油先物(中心限月)」は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)に上場しているWTI原油先物のうち、取引量が最も多い中心限月の価格を表すものです。

世界の原油価格の指標としては、WTI原油先物の他に、北海ブレント原油、ドバイ原油もありますが、マーケットではWTI原油先物が最も注目されている原油価格となっています。

東証には、「WTI原油先物」価格に連動する商品先物ETFがいくつか上昇しており、特に【1671】WTI原油価格連動型上場投信は流動性が大きい代表的な原油ETFとなっています。

原油価格は日本経済や日本株に大きな影響を与えるため、石油関連銘柄に投資するかどうかを抜きにしても、WTI原油先物価格はチェックしておくようにしましょう。

原油価格は2020年以降大きく上昇している

次のチャートは、WTI原油先物価格の長期チャートとなります。

WTI原油先物価格の月足チャート

WTI原油先物価格は、2020年コロナショック時は大きく下げましたが、その後は一貫して大きな上昇となっており、2022年に入ってからは急騰となっています。

原油価格が2020年以降に大きく上昇している背景について押さえておきましょう。

2020年秋以降、脱炭素による供給懸念で原油高に

2020年秋には、世界的な脱炭素(カーボンニュートラル)やEVシフトの動きが広まりました。

脱炭素によって脱石油が進むとなると、需要減から原油価格は下落に繋がりそうなものですが、マーケットで起こったのは原油高でした。

世界各国の企業は、将来的に脱炭素によって化石燃料需要が減る見通しとなったことから、火力発電所など化石燃料への投資を減らすことを発表。

ただ、脱炭素を進めるにしても、世界経済が化石燃料依存の体制であることには変わりません。

化石燃料の需要はあるにも関わらず、将来的な化石燃料への投資を減らすことになったため、供給減が懸念されて原油や天然ガス、石炭などの化石燃料価格が高騰することになりました。

2022年ウクライナ情勢では原油価格の急騰がニュースとなっていますが、原油高トレンドは2020年秋の脱炭素から続く流れであったと理解しておくことが重要です。

2022年ウクライナ情勢で原油価格は急騰

2022年には、ロシアとウクライナを巡る情勢が緊迫化しました。

ロシアは世界第3位の原油生産国であり、原油輸出量ではサウジアラビアに次いで世界2位となっていることから、ロシア情勢は原油価格に大きな影響を与えます。

日本は、ロシアからの原油輸入比率は2.9%に留まっていますが、原油価格の高騰で大きな影響を受ける点では変わりません。

そして、2022年2月24日には、ロシアがウクライナへの侵攻を開始したことを受けて、原油価格は急騰しました。

WTI原油先物価格の日足チャート

WTI原油先物価格は、ロシアがウクライナに軍事侵攻した2月24日からの2週間弱で、約92バレルから120バレル超にまで急騰しています。

世界各国がロシアへの経済制裁を強めることになれば、今後はさらなる原油高が懸念される状況です。

原油高は世界のマーケットにも大きな影響を与えており、日経平均株価も大きく値を下げる展開となっています。

日経平均株価の日足チャート

特に、自動車メーカーや航空会社といった、原油高がネガティブ要因となるセクターは大きく下げている状況です。

ウクライナ情勢は長期化も懸念されており、原油高はマーケットにとって長期的なネガティブ材料となっていきそうです。

石油関連銘柄10選!

ウクライナ情勢の深刻化で株式市場は大きく売られていますが、原油高の恩恵を受ける石油関連銘柄は大きく買われています。

日本株を代表する石油関連銘柄を見ていきましょう。

【5020】ENEOSホールディングス

石油元売り最大手の【5020】ENEOSホールディングスは、東証を代表する石油関連銘柄です。

なお、日本の石油元売り大手は、ENEOS、出光興産、コスモ石油の3企業に統合されています。

【5020】ENEOSホールディングスの月足チャート

ENEOSホールディングスの株価は、脱炭素によって原油価格が上昇し始めた2020年秋頃から反発していることが分かります。

ただ、2022年に入ってからは小幅な上昇に留まっており、ウクライナ情勢による原油高急騰ではそこまで大きく反応はしていません。

【5019】出光興産

石油元売り2位の【5019】出光興産は、2019年に昭和シェルとの経営統合を実施した代表的な石油関連銘柄です。

【5019】出光興産の月足チャート

出光興産の株価は、2022年に入ってから大きく上昇していることが分かります。

【5021】コスモエネルギーホールディングス

石油元売り3位の【5021】コスモエネルギーホールディングスも、原油高の恩恵を受ける石油関連銘柄です。

【5021】コスモエネルギーホールディングスの月足チャート

コスモエネルギーホールディングスの株価は、ENEOS・出光興産と同様に、脱炭素の2020年秋以降から大きく反発しており、2022年ウクライナ情勢を受けて大きく買われています。

【1605】INPEX

世界各地で原油や天然ガスの開発・生産を行っている【1605】INPEX(旧・国際石油開発帝石)は、代表的な石油関連銘柄の一角です。

同社は、原油はもちろん、天然ガス(LNG)価格の高騰でも恩恵を受ける代表的な資源株として知られています。

【1605】INPEXの月足チャート

INPEXの株価は、原油・天然ガス価格が反発し始めた2020年秋以降から大きな反発が続いていることが分かります。

日経平均株価を構成する225銘柄の中では、原油高の恩恵を最も大きく受けた銘柄の一つと言ってよいでしょう。

【1662】石油資源開発

資源開発大手の【1662】石油資源開発は、資源開発企業としてはINPEXと並んで名前が挙がりやすい石油関連銘柄です。

同社は、国内外で石油・天然ガスの探鉱・開発・生産フェーズを手掛けており、北海道内油ガス田や秋田・山形県内油ガス田、アメリカのタイトオイルプロジェクトなどを手掛けています。

【1662】石油資源開発の月足チャート

石油資源開発の株価は、原油高となった2020年秋以降に反発していますが、INPEXほどには原油高で買われてはおらず、コロナショック前の水準はまだ取り戻せていません。

【8031】三井物産

脱炭素やウクライナ情勢による資源高を受けて、総合商社は代表的な資源株として物色されています。

特に、【8031】三井物産は原油に強い総合商社として知られており、2021年度は原油高の恩恵を受けて商社売り上げトップクラスに返り咲いています。

【8031】三井物産の月足チャート

三井物産の株価は、右肩上がりの上昇を続けています。

2022年ウクライナ情勢では、金(ゴールド)や天然ガス、ニッケルといった原油以外の資源価格も大きく上がっていることから、総合商社株はほぼ全面高となっている状況です。

【5017】富士石油

原油精製や石油製品の販売を行う【5017】富士石油も、原油高の恩恵を受ける石油関連銘柄の一角です。

【5017】富士石油の月足チャート

富士石油の株価は、ほぼ原油価格と連動した値動きとなっており、2020年秋以降から反発していることが分かります。

【1671】WTI原油価格連動型上場投信

商品先物ETFの【1671】WTI原油価格連動型上場投信は、代表的な原油ETFです。

同ETFは、「WTI原油先物(直近限月)」の円換算値に連動することを目指すETF(上場投資信託)となっています。

【1671】WTI原油価格連動型上場投信の月足チャート

【1671】WTI原油価格連動型上場投信は、WTI原油価格と連動した値動きとなっています。

【1699】NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信

原油ETFとしては、野村アセットマネジメントが運用する【1699】NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信も上場しています。

同ETFは、「NOMURA原油ロングインデックス」との連動を目指すETF(上場投資信託)です。

「NOMURA原油ロングインデックス」は、世界の原油先物取引の中から、取引量が多く流動性が十分あるものを構成銘柄として採用し、原油価格の値動きに連動するインデックスです。

【1699】NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信の月足チャート

「NOMURA原油ロングインデックス」と連動する同ETFの価格推移は、WTI原油先物と連動するETFとほぼ同じ値動きとなっています。

【2038】NEXT NOTESドバイ原油先物ダブル・ブルETN

原油価格でデイトレードやスイングトレードなどの短期投資をしたい場合には、原油先物ETN【2038】NEXT NOTESドバイ原油先物ダブル・ブルETNが上場しています。

ETNとは、「上場投資証券」または「指標連動証券」と呼ばれ、特定の指標との連動を目指すものの、ETFとは異なり証券に対する裏付資産を持たない金融商品です。

【2038】NEXT NOTESドバイ原油先物ダブル・ブルETNは、日経・JPX原油指数の変動率の2倍に連動するETNとなっています。

【2038】NEXT NOTESドバイ原油先物ダブル・ブルETNの月足チャート

同ETNは、WTI原油価格とほぼ同じ値動きになっていることが分かります。

まとめ

今回は、石油関連銘柄の概要やWTI原油価格について解説した上で、東証を代表する石油関連銘柄や原油価格連動ETFをチャート付きで紹介してきました。

原油価格は、2020年秋の脱炭素以降に大きく上昇しており、2022年ウクライナ情勢を受けて急騰しています。

原油高は、原油依存度が高い日本株にとってネガティブ要因となりますが、石油関連銘柄にとってはポジティブ要因となります。

石油元売り企業や資源開発企業、総合商社といった石油関連銘柄は、ウクライナ情勢による原油高でマーケット全体が売られる中で大きく買われている情勢です。

ウクライナ情勢は長期化も懸念されており、原油高も長期化する可能性が見えてきているため、今後も石油関連銘柄をチェックしておきましょう。

紫垣 英昭