日経平均株価が3万円到達!寄与銘柄やTOPIX値動きとの違いとは?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

2021年2月15日、日経平均株価が1990年8月以来、30年6ヶ月ぶりに3万円を回復しました。

新型コロナで実体経済が落ち込んでいることからするとバブルも指摘される一方、日経平均上昇に寄与している銘柄は今後も成長が期待できる銘柄であることから、さらに上昇する可能性もあります。

今回は、日経平均株価が3万円に到達したニュースについて解説した上で、日経平均を押し上げた銘柄やTOPIXとの違いについて詳しく見ていきます。

この記事を読んで得られること
  • 日経平均株価が3万円に到達したニュースについてわかる
  • 日経平均を押し上げた銘柄やTOPIXとの違いがチャート付きで詳しくわかる
  • 3万円を回復した日経平均について、今後の備えを考えることができる。

日経平均株価が30年ぶりに3万円に到達した

2021年2月15日、日経平均株価が30年6ヶ月ぶりに3万円台を回復しました。翌日の2月16日には一時30,714円まで上げ、終値は30,467円で大引けとなっています。

日経平均株価は、2020年3月19日にはコロナショックで一時16,552円まで下げましたが、コロナショックで付けた安値から1年足らずで2倍弱の上昇になったことになります。

日経平均株価の月足チャート

新型コロナで実体経済の回復も鈍っている中で株価が好調な理由としては、世界中で財政出動・金融緩和されたマネーが株式市場に向かっていることが最大の要因に挙げられます。

また、アメリカ・バイデン新政権の2兆ドルにも及ぶ経済対策が好感されていることや、新型コロナワクチンが期待されていること、決算好調な銘柄が市場をけん引していることなど、複数の好材料が重なったことが株高に寄与していると考えられます。

日経平均株価の直近30年分の株価チャートを見てみましょう。

日経平均株価の30年分チャート(1991年3月~2021年2月16日)

上記チャートは30年分のチャートとなっているため、前回3万円を付けた1990年8月は表示されていませんが、日経平均株価は直近30年間で見ると最高値になっています。

なお、日経平均株価の史上最高値は、1989年12月29日に付けた3万8,915円です。

史上最高値までは、まだ8,000円以上あるものの、バブル絶頂期に付けた最高値を更新する可能性が見えてきたことは間違いありません。

新型コロナ禍で日経平均株価はTOPIXに比べて大きく上げている

日経平均株価はバブル期以来の3万円到達となりましたが、TOPIXはまだその水準には達していません。

日経平均株価とTOPIXの違いついて押さえておきましょう。

コロナ禍では日経平均株価の方がTOPIXより大きく上げている

まずは、日経平均株価とTOPIXのチャートを見てみましょう。

日経平均株価の月足チャート

 

日経平均株価は、コロナショックで2020年3月19日に付けた16,552.83円から、2021年2月16日終値には30,467.75円まで上昇しました。

コロナショック後の上昇率は+84.06%となっています。

TOPIXの月足チャート

TOPIXは、コロナショックで2020年3月16日に付けた1,236.34ポイントから、2021年2月16日終値には1,965.08ポイントで引けています。コロナショック後の上昇率は+58.94%となっています。

コロナショックからの上昇率で見てみると、日経平均株価はTOPIXと比べて大きく上げていることは明らかです。

日経平均株価とTOPIXの違い

日経平均株価とTOPIXの違いについて簡単に押さえておきましょう。

日経平均株価は、東証を代表する225銘柄の株価を単純平均することによって算出されます。

ファーストリテイリングやファナック、ソフトバンクグループといった株価が大きい値嵩株に大きな影響を受けることが特徴です。

一方、TOPIXは東証一部の全上場銘柄を対象に時価総額加重平均することによって算出されています。

トヨタ自動車やソニー、キーエンスといった時価総額が高い銘柄の影響を大きく受けることが特徴です。

構成銘柄の株価・時価総額は常に変動しているため、日経平均株価・TOPIXともに、どの銘柄がどの程度寄与しているのかは一概には言えませんが、投資信託やETFの構成銘柄を見てみると大体の寄与度が見えてきます。

野村アセットマネジメントが運用している日経平均連動型ETF「NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信」の構成銘柄(2020年7月15日時点)は次のようになっています。

なお、このETFは日銀のETF買いでも買われていることで知られている銘柄です。

 

銘柄名

構成比

1

【9983】ファーストリテイリング

9.38%

2

【9984】ソフトバンクグループ

6.12%

3

【8035】東京エレクトロン

4.58%

4

【6954】ファナック

3.31%

5

【9433】KDDI

3.15%

(出典:JPX)

同じく、野村アセットマネジメントが運用しているTOPIX連動型ETF「NEXT FUNDS TOPIX連動型上場投信」の構成銘柄を見てみましょう。

こちらのETFも日銀のETF買いで買われていることで知られている銘柄です。

 

銘柄名

構成比

1

【7203】トヨタ自動車

3.42%

2

【6758】ソニー

2.28%

3

【9984】ソフトバンクグループ

2.27%

4

【6861】キーエンス

1.86%

5

【9432】日本電信電話

1.52%

(出典:JPX)

日経平均株価とTOPIXとでは指標に影響を与える銘柄が異なっており、日経平均株価は【9983】ファーストリテイリング、【9984】ソフトバンクグループ、【8035】東京エレクトロンの上位3銘柄で寄与度20%に達していることが分かります。

日経平均寄与度が大きい銘柄の値動きは?

日経平均への寄与度が大きい銘柄について、コロナ禍での値動きを見ていきましょう。

※下記の上昇率は、2020年3月安値から2021年2月16日終値までの値で算出しています。

【9983】ファーストリテイリング

アパレルチェーン「ユニクロ」を世界中で展開する【9983】ファーストリテイリングの株価チャートは次の通りです。

【9983】ファーストリテイリングの月足チャート

ファーストリテイリングはコロナ禍でも増収増益となっており、コロナショックから+156.82%(39,910円→102,500円)の上昇となっています。

【9984】ソフトバンクグループ

世界的投資ファンドである【9984】ソフトバンクグループの株価チャートを見てみましょう。

【9984】ソフトバンクグループの月足チャート

ソフトバンクグループはコロナ禍での株高の恩恵を受け、日本企業では史上初となる純利益3兆円を達成。

コロナショックからの上昇率は+299.31%(2609.5円→10,420円)となっています。

【8035】東京エレクトロン

世界第3位の半導体製造装置メーカー【8035】東京エレクトロンの株価は次のようになっています。

【8035】東京エレクトロンの月足チャート

半導体はコロナ禍で進むデジタルトランスフォーメーションでパソコン・スマホ・ゲーム機向けが絶好調となっており、同社の上昇率は+169.45%(16,370円→44,110円)となっています。

【6954】ファナック

工場自動化(ファクトリーオートメーション)や産業用ロボットの世界トップ企業である【6954】ファナックの株価を見ていきましょう。

【6954】ファナックの月足チャート

ファナックのコロナショックからの上昇率は+141.26%(12,020円→29,000円)となっています。

【9433】KDDI

携帯キャリアの一角である【9433】KDDIの株価は次のようなっています。

【9433】KDDIの月足チャート

菅政権の目玉政策の一つである携帯電話料金値下げが嫌気されたこともあり、コロナショックからの上昇率は+27.87%(2,658円→3,399円)に留まっています。

日経平均寄与度上位銘柄の値上がり率まとめ

コロナ禍における日経平均寄与度上位銘柄の値上がり率(2020年3月安値→2021年2月16日終値)をまとめると次のようになります。

 

銘柄名

構成比

値上がり率(2020年3月→2021年2月16日)

1

【9983】ファーストリテイリング

9.38%

+156.82%(39,910円→102,500円)

2

【9984】ソフトバンクグループ

6.12%

+299.31%(2609.5円→10,420円)

3

【8035】東京エレクトロン

4.58%

+169.45%(16,370円→44,110円)

4

【6954】ファナック

3.31%

+141.26%(12,020円→29,000円)

5

【9433】KDDI

3.15%

+27.87%(2,658円→3,399円)

参考

日経平均株価

 

+84.06%(16,552.83円→30,467.75円)

参考

TOPIX

 

+58.94%(1,236.34ポイント→1,965.08ポイント)

日経平均寄与度上位3銘柄(【9983】ファーストリテイリング、【9984】ソフトバンクグループ、【8035】東京エレクトロン)の値上がり率を見れば、日経平均株価がTOPIXに比べて大きく上がっている理由が一目瞭然です。

上位3銘柄の寄与度に3銘柄の上昇率平均を乗じると、20.08%×208.52%=+41%となります。

つまり、コロナ禍における日経平均株価の上昇分の半分がこの3銘柄によるものということです。

なお、この上位3銘柄はコロナ禍に適応している企業の代表格でもあります。

現在の日経平均がバブルで暴落することになれば、この3銘柄も下げることになりますが、コロナ禍で、そう簡単に暴落するとは一概に言えないのではないでしょうか?

まとめ

日経平均株価はバブル期以来30年ぶりの3万円台を回復しました。

日経平均株価はコロナ禍においてTOPIXを大きく上回る上昇となっていますが、これは日経平均への寄与度が高い【9983】ファーストリテイリング、【9984】ソフトバンクグループ、【8035】東京エレクトロンの3銘柄が大きくけん引しているためです。

コロナ禍での株高にはバブル懸念もありますが、日経平均を3万円に押し上げた銘柄はコロナ禍でも業績が良いため、そう簡単に暴落するとは一概に言えません。

3万円を回復した日経平均は、バブル最高値を更新するのか、もしくは調整や暴落となるのか、どちらの可能性にも備えておくようにしましょう。

紫垣 英昭