紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
From:紫垣英昭
大阪の事務所から
- 長期金利や実質金利が上昇するときに併せて考えるべきことがわかる
- NY株式市場を考察するときに抑えておきべきポイントがわかる
- NY株式市場を見ていく上で読んでおくべき本を知ることができる
先週末のNY株式市場は、マイナス394ドルの大幅な下落になりました。
報道によれば、長期金利の上昇によって景気、企業業績にマイナスになるとの思惑や、FRB高官の「利上げ前倒し発言」などが相場下落の要因とされています。
しかしながら一方では「長期金利が上昇」するということは、債券が売られていることになるので売却資金はリスク資産に向かうことも考えられることから、「長期金利上昇=株安」という単純な話ではないと僕は考えています。
実は今回のNY株式の大幅下落の“本当の要因”は、別にあります。
それは、「実質金利の上昇」です。
今年2月に行った「第1期投資戦略会議」では、以下のようにお話しました。
「株式バブルは、実質金利の低下によって起こる」
「年初にドルが急落した要因は、日本の実質金利の
上昇が本当の要因である」
「ドルは今年、100円を割り込む」・・・
で、実際はどうかというと、まさにその動きになってきています。
また「第1期投資戦略会議」では、「年末から年始にかけて、NY株式は急落の可能性がある。」ともお話をしました。
その後、NY株式は新高値更新することになりましたが、現在のように「実質金利上昇」となれば、NY株式の下落は、より可能性が高まってくることになるのではないでしょうか。
「第2期投資戦略会議」でも、この実質金利の状況から、日本株、米国株、為替の方向性を読み取って、参加者と共有したいと思います。
そこで、ひとつ本を紹介したいと思います。
「大暴落1929」という本をご存知でしょうか?
この本は、著者ジョン・K・ガルブレイスが、1929年のNY株式の大暴落で、世界金融恐慌に発展したことを検証した内容です。
僕はこの本を5回くらい繰り返し読みましたが、今のNY株式市場の状況と似ているところがあります。
それは、「NY連邦準備銀行による米国債の大量購入」と「景気後退懸念」です。
中央銀行による国債の大量購入は、余剰資金を膨らませバブルを作り、株式や不動産への投機に発展します。
しかし、これらの資産価格がピークになったときに、実体経済の伸びが鈍化し、景気後退懸念につながります。
当時も米国経済の景気後退を懸念する声がありました。
しかしこれらの「危機意識」は、強い株式市場のムードにかき消され、株価はピークに突入します。
ほとんどの人は見たことがないと思いますが、以下が大恐慌直前から大暴落したNY株のチャート(月足)です。
見ていただければお分かりのように、株価指数がピークに差しかかる半年前から2度の大きな急落があります。
ここでのポイントは「大きな急落だ」ということです。
大きな急落は、大口投資家が持っている株を大量に売却しなければ起こりません。
つまり1929年の大暴落直前に、大口投資家は、株式を売却に動いているということです。
しかしその直後、3ヶ月間にわたりNY株は最期の急騰を演じ、1929年9月から“大暴落”が始まったのです。
したがって今後のNY株式を見ていく上で最も重要なのは、
・米国の経済指標の進捗
・実質金利の動き
・原油、金相場の動き
・大口投資家の動き
これらが重要な鍵になってくるのではないでしょうか。
紫垣 英昭
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