株の長期投資で20倍に増やす!ファンダメンタル分析法を伝授

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

まずは、あなたに重要なことをお伝えします!

今、個人投資家の間では「株価チャート」だけを使った売買が主流になりつつあるようです。

もちろん数日で売買を終える短期売買、スイングトレードであれば問題ありませんが、1年前後の長期投資を考えるなら「株価チャート」だけに頼った売買判断は危険であり、まず成功することはありません。

その理由は、株価チャートを食い入るように見つめてみても、相場の上げ下げに対応できず、結局は大きな損失を抱えてしまうことが少なくないからです。

株式の長期投資は、株価変動を見るのではなく「会社そのものを見る」という投資スタンスであり、極端にいってしまうと「株価がいくらであろうが関係ない」ということなのです。

したがって、あなたが株式の長期投資で儲けたいのであれば、年々成長する会社を選び、長期投資をすべきなのです。そうすれば嫌でも株価は上昇し、大きな利益を手にすることが可能になります。

そのためには、絶対に“ファンダメンタルズ分析”を行って、銘柄を選ばなくてはなりません。

特に株の初心者の方は、先行きが読めないチャートなど使わず、業績が年々増加し、企業価値を高めている会社を選んで投資をした方が、よっぽど成功率が高まることでしょう。

“ファンダメンタルズ分析”とは、企業の財務諸表などから今後の成長性を分析したり、現在の株価が割安なのか割高なのかを分析して、これから株価が上がるかどうかを判断する手法です。

しかし株を始めたばかりの人にとって「ファンダメンタルズ分析」は、とてもとっつきにくく、難解に思われることが多いようです、

そこでまず、株初心者でも理解しやすいように“ファンダメンタルズ分析”の中の「損益計算書」を使って、その会社の成長性や収益性の分析をオススメしたいと思います。

そこでこの記事では、株の初心者でもすぐに理解しやすい「損益計算書」を使った、株の長期投資における銘柄選びをお伝えしたいと思います。

この記事を読んで得られること
  • 株初心者でもすぐに活用できる「ファンダメンタルズ分析」がわかる
  • 「ファンダメンタルズ分析」で、長期投資の銘柄を選ぶことができる
  • 会社の「ファンダメンタルズ分析」に対して抵抗がなくなる

長期投資の銘柄選びは“ファンダメンタルズ分析”を使え!

現在、上場している銘柄は約3600社ありますが、僕たち個人投資家はこの数多くの上場企業から銘柄を選び投資を行います。

当然、株価が大きく値上がりすれば、それだけ利益も大きくなるのですが、株価が大きく値上がりするためには、それ相応の“時間”が必要になります。つまり株価が何倍にもなるためには、通常、どうしても1年程度はかかるということなのです。

1年程度の投資を考える場合、エントリーから決済までの期間が長期間になるため、株価チャートだけ売買タイミングを掴もうとするのはほぼ不可能です。日足であっても週足、月足など、どの時間軸をやっても予測は困難です。

しかし、企業の売上、営業利益、経常利益、一株あたり利益など、ファンダメンタルズに関わる部分は、それぞれの上場企業の「IR情報」(上場会社が投資家などに向けて、財務状況、決算状況、経営計画等の情報発信する活動)などでいろんな情報を入手することができます。

これによって企業業績が引き続き好調なのか、不振なのかがわかり、長期的に上昇する銘柄を選ぶことが可能になるのです。

「ファンダメンタルズ分析」で重要な「財務三表」とは

「ファンダメンタルズ分析」では一般的に「財務三表」と呼ばれる「貸借対照表(BS)」、「損益計算書(PL)」、「キャッシュフロー計算書(CF)」で分析を行います。

しかし正直いうと、株の初心者にとっては、貸借対照表?キャッシュフロー?という感じで普段の生活でなかなかなじみがないため、理解するのに困難を極めます。したがって、一目で理解できる「株価チャート分析」が人気を集めているのです。

ただ何度も言うようですが、株価チャートだけで長期投資を成功させることはできませんので、初心者の方は「財務三表」の中でも理解しやすい「損益計算書(PL)」から見るようにしてください。

「損益計算書(PL)」を確認することで、少なくとも業績が黒字なのかどうかは分りますので、まずはここからやってみましょう。

企業の「IR情報」は、ファンダメンタルズの宝庫

会社の業績をどうやって確認すれば良いのかをお伝えしましょう。

まずは長期投資をしようと思っている具体的な企業があるなら、その企業の公式ホームページにアクセスしてみてください。

企業の公式ホームページに「IR」という項目があるのでクリックしてみると、その企業の財務、経営に関する詳細なデータを見ることができます。

以下は、ソフトバンク(9984)の公式ホームページです。

ここでは「有価証券報告書」や「決算短信」など、株価の動きに影響のある財務データがあります。

以下の図はソフトバンク(9984)の四半期ごとに発表される「決算短信」です。

このような「決算情報」では、これまでの売上、利益等の結果や、次回決算の予想数値も掲載されているので、企業業績が順調かどうかを見ることができます。

また多くの企業は、「中期経営計画」と呼ばれる会社の方向性について、プレゼンテーションを行います。

僕たちは「中期経営計画」をしっかり読み解くことで、会社の将来の売上や利益が増え、会社の価値が上がっていくかどうかをイメージします。

会社の価値が引き続き、上がっていくならば当然、株価も長期的に上昇する可能性が高くなるということになります。

このような情報は「株価チャート」をいくら眺めていてもわかりません。企業価値が上がるかどうかは「ファンダメンタルズ分析」でしか測れないのです。

「会社四季報」という企業の財務データとは

上記は個別の企業ホームページを見るという説明でしたが、次に紹介するのが「会社四季報」を使って「ファンダメンタルズ分析」を行うやり方です。

「会社四季報」とは、すべての上場企業の「財務三表」の内容がコンパクトに記載されている、分厚い本のことを言います。

「会社四季報」は、年4回(3,6,9,12月)に発行され、大型書店で販売されます。インターネットでも購入可能です。

下記の画像が、1社あたりの「会社四季報」における企業の情報です。とてもコンパクトにまとめられていますね。

出所:会社四季報CD-ROM

また証券会社によっては、取引用のソフトの中で、個々の企業の「会社四季報」のデータを閲覧することができます。

以下は楽天証券のマーケットスピードでみた「会社四季報」の閲覧画面です。

楽天証券の口座開設はこちら

出所:楽天証券

個別企業の財務、業績について確認する場合、このような形でかなり詳細な情報を取得できますので、まずは「ファンダメンタルズ分析」のことが分らなくても、こんな情報が取れるというところまで理解いただければOKです。

 

損益計算書とは

先ほど、「初心者の方は、財務三表の中でも理解しやすい損益計算書(PL)から見るようにしてください。」とお伝えしましたが、これには理由があります。

「損益計算書」は、≪売上ーコスト=損益≫という簡単な概念なので、会社が儲かっているか?赤字なのか?がすぐ分るからです。したがってまずは分りやすい「損益計算書」から確認してみてください。

損益計算書は「売上高」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」などが記載されており、どれだけの商品(ものやサービス)を売ったのか、そのためにどれだけの費用が掛かり、残った利益はどれくらいになったのかなどを見ることができます。

つまり「損益計算書」とは、企業がどれだけの売上を上げているのか、どれくらいの利益を得ているのかが、一目でわかるものであり、いわば企業の「成績表」と思っていただければ分りやすいと思います。

基本的に株価は会社の売上、営業利益、経常利益が年々増加していくことで、会社の価値が上がるということになり、株価も上昇していくことになります。

それだけ「損益計算書」を理解することは、株の長期投資において重要ということになるのです。

実際の損益計算書を見てみよう

それでは、実際の損益計算書を見てみましょう。下表は、任天堂の平成30年3月期の連結損益計算書です。(連結とは、任天堂単体だけでなく子会社なども含めたグループ全体のことです。)

左側には、それぞれの科目名が記載されており、右側に金額が記載されます。金額の方は2列あり、右側が当期の金額、左側が前期の金額になります。

基本的には、どの会社も同じ書式になりますが、会社によっては各科目の内訳を細かく記載している場合もあります。

損益計算書の科目名を図解で解説

表を見ただけでは分かりにくいと思いますので、図で説明していきます。

下図は左側の売上高からはじまって、橙色の金額を引いていき、緑色の金額を足して、最終的に経常利益になることを表しています。

 

銘柄の探し方については、後ほど解説いたしますが、基本的に長期投資の銘柄を選ぶとき「経常利益」の年々の伸び率が10%を超えてくるような銘柄を探してみてください。

経常利益が毎年、10%以上伸びている企業の株価は長期的に非常に大きく値上がりしている可能性が大です。

では以下でそれぞれの科目について簡単に解説いたします。

「売上高」とは商品を販売した総額を表す

売上高は読んで字のごとく、その会社が本業としている営業活動(ものやサービスの提供)で得た収益のことで、売上高が大きいほど事業規模が大きく、売上高が年々増加していれば成長していると判断できます。

売上が年々拡大するような企業の株価は当然、長期的に上昇することになります。

「粗利益」とは、売上高から原価を引いたもの

売上原価は、営業活動をする上で掛かった費用のことで、売上高から売上原価を引いたものを売上総利益(粗利益)と言います。

粗利益は、営業活動の収益性を表しており、利益率が高いほど、ものやサービスの付加価値が高い、あるいは効率的な営業活動ができていると判断できます。

※利益率とは、売上高に対する利益の割合のことで、粗利益、営業利益、経常利益などから算出します。
例)粗利益率=粗利益÷売上高×100(%)

ただし、利益率は業種によって大きく異なるため、単に「利益率が低いから良くない」というわけではないので注意しましょう。

「営業利益」がプラスなら本業でしっかり利益が出ている証拠

販売費及び一般管理費(販管費)は、営業活動以外で掛かった費用(広告宣伝費や間接部門の費用など)のことで、売上総利益から販管費を引いたものを営業利益と言います。

営業利益は、「本業の儲け」とも言われており、その会社の本業の収益性を表しているため、営業利益を見ることで、本業が好調かどうかが判断できます。

「経常利益」とは、その会社の総合的な収益性を表す

営業外収益、営業外費用は、営業活動以外で発生したもので、利息、配当金、雑費などがあり、営業利益から営業外収益を足して営業外費用を引いたものを経常利益といいます。

経常利益は、本業以外の収益/費用も含んでいますので、その会社の総合的な収益性を判断することができます。

≪補足≫
経常利益から特別利益を足して特別損失を引いたものが税金等調整前当期純利益(税引前当期純利益)になりますが、特別利益/損失は、「通常は発生しない臨時のお金」になります。

また、そこから更に法人税などの税金を支払って、その残りが当期純利益(最終利益)になります。

会社としては、最終的に手元に残るお金である「当期純利益」が重要になりますが、ファンダメンタルズ分析をする際には、会社の総合的な収益性である「経常利益」まで見ておけば大丈夫でしょう。

 

「損益計算書」を使って、大きく上昇する銘柄の分析をしてみよう

ではこれまでお伝えしてきた「損益計算書」を使って、これから長期的に株価が大きく上昇するであろう、銘柄の分析法をお伝えしていきましょう。

下記の株価チャートは、僕の思い出深い銘柄のひとつである「ZOZO(3092)」の株価です。

「ZOZO(3092)」のメインサービスは、あなたもご存知のようにファッション通販サイト「ZOZO TOWN」を運営している会社です。

実は2013年1月、「ZOZO(3092)」の会社の将来性を感じて、この株を買ったのです。

当時はまだ株式分割前だったので、株価は1000円くらいでした。もし今でもこの銘柄を持っていれば、株式分割を経て資産は20倍くらいになった計算です。

もちろん、僕はもっと早く売却して利益確定したので、20倍の利益は得られませんでしたが、それでも投資資金の3倍以上で売却したのを覚えています。

 

以下は「ZOZO(3092)」の「IR情報」のサイトからダウンロードした「損益計算書」です。

この「損益計算書」を見ると直近から前期と比較して、売上高は約28%増の984億3200万円、経常利益は約23%増の327億4000万と大きく増額しています。

直近の数字だけでは、なかなか正確なことはわかりませんので、今度は「会社四季報」の数字を見てみましょう。

過去5期分の「売上高」「営業利益」「経常利益」「一株あたり利益」の進捗です。年々、大幅に増額しているのがお分かりいただけると思います。

出所:楽天証券

このように年々、「売上高」「営業利益」「経常利益」「一株あたり利益」などが増額されると、基本的に会社の「自己資本部分」が拡大していくため、会社の価値がどんどん大きくなっていくのです。

価値が大きくなるということは、「ZOZO(3092)」の株を持つことで、配当や株価上昇によって投資家が利益を得る期待値が拡大することから、どんどん投資家を呼び込むことで株価上昇につながるということになるのです。

まずは、この事実を頭に入れてください。

 

株初心者でも簡単に効率よく、業績好調な銘柄を探す方法を伝授!

ではこれらの業績が好調な銘柄を探すために、株の初心者でも簡単に効率よく、業績好調な銘柄を探す方法を伝授いたします。

今、株式全市場に上場している銘柄数は約3600銘柄ほどありますが、3600もの企業行政をすべてチェックするのはとても大変です。

出所:日本取引所グループHP

先ほど「ZOZO(3092)」の事例でもお伝えしたように、株価が長期間に渡って上昇するためには、売上高、利益の伸び率が、毎年10%程度必要になります。

であれば、まず前期と比較して、売上高、利益が10%以上伸びている企業のスクリーニングから始めましょう。

以下は僕も使っている「トレーダーズWEB」というサイトの「株式スクリーニング」を使ってみてください。

上記の「トップページ」のメニュー「投資ツール」(赤枠)をクリックしていただくと「銘柄スクリーニング」が出てくるのでそれをクリックしてみてください。

すると以下のように、「銘柄スクリーニング」の画面が出てきます。

そしたら、赤枠で示している「売上高成長率」、「経常増益率」にそれぞれ「10」を入力し「実行」ボタンを押してみます。

すると以下のような結果が出てきます。

ここまで絞込みを行ったら、さらにより条件を絞込みます。

銘柄の絞込みが終われば、今度は「会社四季報」や企業の公式ホームページの「IR情報」で、会社の将来性を確認します。

もし、あなたが「この会社はまだまだ伸びる」と判断ができるようなら、実際のその企業の株価を調べて、買うタイミングを計ってみましょう。

「銘柄スクリーニング」はちょっとしたコツがあるので、今からいろんな角度からスクリーニングをして、慣れるようにしてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

損益計算書から、その会社の成長性や収益性を読み取ることができるようになりましたでしょうか?

もちろん、当期の損益計算書だけで判断することはできませんので、過去までさかのぼってチェックしたり、その会社の業界がどのような状況だったのか、その会社は業界内でどのようなポジションなのかなど、その会社を取り巻く環境や、これまでの経緯なども確認しておくと、今後の予測も立てやすくなります。

はじめは大変かもしれませんが、株を購入した後は、株価が上がるのを待つだけですので、購入前のチェックはしっかり行いましょう。

紫垣 英昭