プラスチック加工機関連株10銘柄!脱プラの裏でプラスチック需要は増加中!?

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

脱プラスチックの流れから2020年7月にレジ袋が有料化されるなど、プラスチック需要には逆風が吹いていると思われがちです。

しかし、EVシフトを背景に、プラスチック加工機メーカーの業績は急回復しており、株式市場でもプラスチック加工機関連株は大きく買われているというのが実際の所です。

プラスチックは海洋汚染を引き起こすなど世界的な環境問題の一要因となってはいるものの、プラスチックの利便性は環境問題のデメリットを凌駕しているというのが、市場が出している答えなのかもしれません。

今回は、脱プラの裏で好調なプラスチック需要について解説した上で、代表的なプラスチック加工機関連株10銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 脱プラの裏で好調なプラスチック需要についてわかる
  • 代表的なプラスチック加工機関連株10銘柄についてチャート付きでわかる
  • 今後の脱プラの風潮について考えることができる

プラスチック加工機関連株とは?

プラスチック加工機関連株とは、プラスチック加工機こと射出成型機を手掛けている銘柄のことです。

射出成型機とは、溶かしたプラスチック樹脂を金型へ流し入れ、冷やして固めてから​取り出すことで、様々なプラスチック製品を作る機械です。

プラスチックは海洋汚染問題など環境問題では目の敵にされてはいますが、その利便性は他の製品を寄せ付けません。

そもそも射出成型機でプラスチック製品を容易に作れるのは、プラスチックは熱を加えると変形し、どのような形状に加工するのも簡単であるという性質があるためです。

さらに、プラスチックは軽量で持ち運びやすく、電気や熱にも強く、安全で壊れにくく、透明であるためどのような色にも着色可能、衛生的であるなど、数多くの工業的メリットがあります。

脱プラスチックが叫ばれていますが、世の中にはプラスチック製品が溢れており、プラスチック加工機関連株として上場している銘柄が少なくないということがプラスチックの利便性を物語っています。

脱プラスチックが進む中、プラスチック加工機の業績は絶好調!

レジ袋有料化などの脱プラスチックが進む一方、プラスチック加工機関連株の業績は急回復しています。

社会では脱プラスチックが進んでいる!?

プラスチックごみによる海洋汚染は世界的な環境問題の一つとなっていることから、脱プラスチックは世界的な流れです。

また、プラスチックは、精製所で蒸留された原油(ナフサ)を原料としているため、世界的な脱炭素の動きにも符合します。

日本では2020年7月、プラスチックごみの削減を進めるため、全国でレジ袋が有料化されることになりました。

レジ袋有料化を受けて、多くの消費者はマイバッグを持参するようになり、マクドナルドやケンタッキーなどテイクアウトを手掛ける外食チェーンは環境負荷が少ないバイオマスプラスチックを導入するなど、脱プラの動きが進みました。

小泉進次郎環境大臣は脱プラスチックを積極的に進める方針を示しており、2021年6月4日には”プラスチック新法”こと「プラスチック資源循環促進法」が成立。

「プラスチック資源循環促進法」は2022年4月の施行を目指しており、飲食店やスーパー、コンビニなどで、プラスチック製の使い捨てスプーンやストローなどを有料化し、紙製や木製への変更を促すことを目的とするものです。

今後も、小泉環境大臣の主導のもと、脱プラスチックが社会全体で進んでいくものと見られます。

EVシフトを背景にプラスチック加工機は業績回復!

脱プラが進む中で、プラスチックの需要は減っているのでしょうか?

2020年は新型コロナの影響で、プラスチック加工機メーカーの業績にも影響が出ました。

プラスチック機械大手6社(日精樹脂工業、日精エー・エス・ビー機械、カワタ、ユーシン精機、住友重機械工業、日本製鋼所)の2021年3月期決算では、4社が減収、3社が減益となっています。

とはいえ、これはあくまで新型コロナによる世界経済減速の影響であり、脱プラの影響ではないということです。

新型コロナから世界経済が回復していることで、プラスチック需要の回復は鮮明となっています。

2021年4月19日付けの日刊工業新聞の記事によると、日本産業機械工業会と日本プラスチック機械工業会がまとめた2021年3月の射出成形機受注台数は、前年同月比+60.8%増の1,502台となり7ヶ月連続プラスになったとのことです。

プラスチック需要を支えているのがEV(電気自動車)シフトです。EVシフトが進むことによって、車体軽量化がガソリン車以上に要求されることになるため、プラスチック需要は増加することが期待されています。

EVシフトといった大きな流れの前には、いくらレジ袋や使い捨てスプーンを有料化した所で、ほとんど無力であるというのが実際の所のようです。

市場は合理的であるため、いくら社会が脱プラスチックの風潮に傾いていたとしても、実際にはプラスチックの需要が回復しているとなれば、プラスチック加工機関連株は買われることになります。

プラスチック加工機関連株10選!

代表的なプラスチック加工機関連株10銘柄について見ていきましょう。

【6293】日精樹脂工業

プラスチック加工機メーカー最大手の【6293】日精樹脂工業は、プラスチック加工機関連株の代表的な銘柄です。

同社は、2020年1月に世界的射出成形機メーカーのネグリ・ボッシ社(イタリア)を買収しており、世界的なプラスチック加工機グループとなっています。

【6293】日精樹脂工業の月足チャート

日精樹脂工業の株価は、コロナショック後は停滞していましたが、プラスチック加工機の業績回復が伝わってきた2021年3月以降に大きく反発してきています。

【6284】日精エー・エス・ビー機械

ペットボトルなど食品・飲料容器成形機の世界的メーカー【6284】日精エー・エス・ビー機械も、プラスチック加工機関連株の主力銘柄です。

【6284】日精エー・エス・ビー機械の月足チャート

日精エー・エス・ビー機械の株価は、2020年8月と2020年11月に大きな反発となっており、コロナ前の株価水準を取り戻しています。

【6292】カワタ

乾燥機や配合機、輸送機といったプラスチック成形周辺機器に強い【6292】カワタも、プラスチック加工機関連株として注目される銘柄です。

【6292】カワタの月足チャート

カワタの株価は苦戦しています。

自動車関連にも強いプラスチック加工機関連株ですが、EV関連で買われているとも言えない状況です。

【6482】ユーシン精機

プラスチック射出成型品取り出しロボットの世界最大手【6482】ユーシン精機も、プラスチック加工機関連株として押さえておきたい銘柄です。

【6482】ユーシン精機の月足チャート

ユーシン精機の株価も苦しい状況です。

EV相場となっていた2020年11~12月には反発しましたが、コロナ前の株価はまだ取り戻せていません。

【5631】日本製鋼所

樹脂成形機で高い世界シェアを誇る【5631】日本製鋼所は、EVシフトでも特に注目されるプラスチック加工機関連株です。

【5631】日本製鋼所の月足チャート

日本製鋼所の株価は絶好調です。

特に、世界中でEVシフトが進んだ2020年9月以降の反発は顕著となっており、プラスチック加工機大手6社の中では最も好調な銘柄となっています。

同社は、EVの基幹部品となるリチウムイオン電池用セパレータフィルム製造装置で世界トップシェアであることから、他のプラスチック加工機大手メーカーとは一線を画した株価動向となったものと見られます。

【6302】住友重機械工業

変減速機や射出成形機に強い【6302】住友重機械工業は、大手プラスチック加工機関連株の一角となっています。

【6302】住友重機械工業の月足チャート

住友重機械工業の株価は、2020年12月以降に反発を強めていることが分かります。

ここまでは東証一部上場のプラスチック加工機関連株大手6社について見てきました。

ここからは、直近で特に大きく買われたプラスチック加工機関連株を見ていきましょう。

【6347】プラコー

小型自動車用樹脂タンク成形機などに強みを持つプラスチック加工機専業メーカー【6347】プラコーは、東証ジャスダック上場のプラスチック加工機関連株です。

【6347】プラコーの月足チャート

プラコーの株価は、2020年5月発表の決算で30期ぶりに最高益となったことを受けて、コロナショック後に急反発しました。

ただ、急反発後は乱高下が続いています。

【6400】不二精機

自動車や医療機器向けに強い射出成形用精密金型メーカー【6400】不二精機は、2020年に最も大きく買われたプラスチック加工機関連銘柄です。

同社は、医療機器向けに強いことから、新型コロナワクチン関連の筆頭銘柄として大きく買われました。

【6400】不二精機の月足チャート

不二精機の株価は、ファイザーとモデルナが新型コロナワクチンの開発に成功した2020年11月から12月に掛けて一段高となり、2020年にテンバガー(10倍株)達成となりました。

しかし、テンバガー達成銘柄の宿命として、急騰後は大暴落となっています。

【6776】天昇電気工業

プラスチック成型品専業の【6776】天昇電気工業も、新型コロナワクチン関連で買われたプラスチック加工機関連株です。

同社は、医療廃棄物専用容器を手掛けていることから、新型コロナワクチン関連として急騰することになりました。

【6776】天昇電気工業の月足チャート

天昇電気工業の株価は、ファイザーとモデルナが新型コロナワクチン開発に成功した2020年11月から12月に掛けて急騰後、下落となっています。

【7928】旭化学工業

電動工具や自動車部品向け工業用樹脂の成型・加工メーカー【7928】旭化学工業は、EVシフトを受けて買われたプラスチック加工機関連株です。

【7928】旭化学工業の月足チャート

旭化学工業の株価は、EVシフトを受けて2020年10月以降に大きく買われており、2021年に入ってからも高値圏で推移し続けています。

まとめ

今回は、脱プラの裏で好調なプラスチック需要について解説した上で、代表的なプラスチック加工機関連株10銘柄についてチャート付きでご紹介してきました。

レジ袋有料化など脱プラの社会風潮が強くなっていますが、プラスチックの利便性は大きく、EVシフトや新型コロナワクチンなどを背景にプラスチック加工機の需要は回復しています。

プラスチック加工機関連株としては、大手6社(日精樹脂工業、日精エー・エス・ビー機械、カワタ、ユーシン精機、住友重機械工業、日本製鋼所)が主力銘柄となります。

2020年にはEVシフトや新型コロナワクチンを受けて、【6400】不二精機や【6776】天昇電気工業、【7928】旭化学工業といった新興銘柄が特に大きな動きとなりました。

2021年6月にはプラスチック新法が新たに成立し、社会的には脱プラの風潮がより強くなるかもしれません。

しかし、株式市場は合理的であるため、今後もプラスチック加工機関連株には注目しておきましょう。

紫垣 英昭