2022年のIPO市場はどうなる?2021年IPO関連銘柄の動向から読み解く

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

2021年のIPO(新規上場)銘柄数は125銘柄となり、2007年以来14年ぶりの100社超えとなりました。

マザーズとJASDAQのIPOは好調を維持しており、IPO公募に応募して上場初値で売り抜ける「IPO投資」では大きな利益を出すことも可能となっています。

ただ、2021年のIPOの動向を詳しく見てみると、マザーズ・JASDAQ銘柄であっても、2021年6月以降は、初値が公募価格割れとなる銘柄が出てきている点には注意が必要です。

今回は、2021年IPOの動向について解説した上で、特に注目される2021年IPO関連銘柄について紹介し、2022年のIPO展望についても取り上げていきます。

この記事を読んで得られること
  • 2021年IPOの動向についてわかる
  • 2021年IPO関連銘柄についてわかる
  • 2022年のIPO展望についてわかる

2021年IPOは125銘柄!14年ぶりの100社超えに

2021年にIPO(新規上場)した銘柄は125銘柄となり、2007年の121社以来14年ぶりに100銘柄を超えるました。

東証のIPO銘柄数推移

東証のIPO銘柄数の推移を見てみると、リーマンショックがあった2008年以降は落ち込んでいましたが、2010年代には上昇傾向から横ばいとなり、2021年に2000年代並みの水準に回復したことが分かります。

2021年のIPO銘柄数を市場別に見てみると、次のようになります。

2021年IPO

東証一部

東証二部

東証マザーズ

JASDAQ

 

6銘柄

8銘柄

93銘柄

16銘柄

 

上場要件が緩い東証マザーズのIPO銘柄数が93銘柄と、東証4市場では最も多くなっています。

また、IPO公募価格で取得し、上場と同時に売り抜ける投資手法は「IPO投資」や「IPO初値売り」と呼ばれていますが、市場ごとのIPO投資の勝率および期待値は次の通りです。

2021年IPO投資

東証一部

東証二部

東証マザーズ

JASDAQ

勝率

66.67%(2/6)

62.50%(5/8)

84.95%(79/93)

81.25%(13/16)

期待値

+7.85%

+6.23%

+62.61%

+64.95%

※上記データは、96ut.comのIPOデータから算出した値となります。以降の利益率についても同様となります。

東証マザーズ・JASDAQのIPOは、東証一部・東証二部のIPOに比べて、上場初値に大きな価格を付けやすい傾向は2021年も変わらなかったと言えます。

2021年IPO市況の動向について

2021年のIPO市況の動向について詳しく見ていきましょう。

マザーズ・JASDAQのIPOは好調が続いた

マザーズ・JASDAQのIPO銘柄は、初値に公募価格を大きく上回る値を付けやすい傾向がありますが、この傾向は2021年にも変わりませんでした。

特に、2021年1月から6月18日までのIPO銘柄は、全銘柄が公募価格を上回る展開となりました。

【4173】WACUL(+342%)や【4174】アピリッツ(+374%)、【4498】サイバートラスト(+315%)など、初値が公募価格の4倍を上回る銘柄も出現。

この期間中に、マザーズ・JASDAQのIPO投資をしていれば、公募に当選しさえすれば全ての銘柄で利益になっていたことになります。

2021年1月から6月18日までのIPO投資の利益率を計算すると、36銘柄で勝率100%、期待値は+96.96%となっていました。

2021年6月以降はIPOの勢いに陰りが見えている

IPO市況は、2021年6月上旬までは好況となっていましたが、2021年6月下旬以降から、やや暗雲が立ち込めてくることとなりました。

6月22日に東証マザーズに上場した【7372】デコルテ・ホールディングス(-8.02%)、【4489】ペイロール(-6.52%)の初値が相次いで公募割れに。

8月27日に東証マザーズに上場した【2934】ジェイフロンティアは、初値が公募価格の-15%割れとなりました。

【7345】アイ・パートナーズフィナンシャル(+216%)や【4068】ベイシス(+154%)など、初値が公募価格の数倍になる銘柄もあったものの、東証マザーズ・JASDAQのIPO銘柄ならどの銘柄でも利益になるというIPO市況ではなくなってきました。

2021年6月22日から11月末までのIPO投資の利益率を計算すると、58銘柄で勝率86.20%、期待値は+43.75%と、2021年上半期に比べて減速傾向が鮮明となりました。

2021年12月には異例の32銘柄IPOとなったが…

2021年12月には、異例ともなる32銘柄ものIPOが実施されました。

しかし、その結果は、大きく明暗が分かれる結果に。

【4414】フレクト(+127%)、【9254】ラバブルマーケティンググループ(+284%)、【9211】エフ・コード(+197%)、【4261】アジアクエスト(+130%)、【4264】セキュア(+130%)の5銘柄は、初値が公募価格の2倍以上を付けました。

その一方、【4419】Finatextホールディングス(-23%)、【4255】THECOO (-15%)、【4259】エクサウィザーズ(-10%)、【7134】クルーバー(-16%)、【4262】ニフティライフスタイル(-10%)などは、初値が大きく公募価格を大きく下回ることに。

IPOラッシュとなった2021年12月のIPO投資の利益率を計算すると、32銘柄で勝率62.50%、期待値は+31.07%と、IPOへ向かう資金が大きく分散したことが明らかです。

IPOゴールは多く、セカンダリー投資には注意が必要

IPO銘柄は、上場初値では大きな高値を付けやすい一方で、上場時に高値を付けてその後は暴落していってしまう“IPOゴール”になることが少なくありません。

これは2021年IPO銘柄も例外ではなく、上場時には大きな高値を付けたものの、その後は一方的な暴落展開となる銘柄が多発しました。

IPO投資の最大の難関は、そもそもIPOに公募しても当たらないことです。

しかし、だからといって、IPO銘柄が上場してから投資する「セカンダリー投資」を安易に行うことはおすすめできません。

2021年IPO関連銘柄で大きな初値を付けた5銘柄!

2021年IPO関連銘柄の中でも、特に大きな初値を付けた銘柄を見ていきましょう。

【4174】アピリッツ +374%

ECサイト構築やWebシステム開発、オンラインゲーム開発などを手掛ける【4174】アピリッツは、2021年2月25日にJASDAQスタンダードに上場した銘柄です。

アピリッツの公募価格は1,180円でしたが、上場初値は5,600円を付け、IPO初値は+374.58%となりました。

【4174】アピリッツの月足チャート

【4173】WACUL +342%

アクセス解析データの自動分析を行う「AIアナリスト・シリーズ」を提供する【4173】WACULは、2021年2月19日に東証マザーズに上場した銘柄です。

WACULの公募価格は1,050円でしたが、上場初値は4,645円を付け、IPO初値は+342.38%となりました。

【4173】WACULの月足チャート

【4498】サイバートラスト +315%

SBテクノロジーの子会社で、認証・セキュリティーサービスを手掛ける【4498】サイバートラストは、2021年4月15日に東証マザーズに上場した銘柄です。

サイバートラストの公募価格は1,660円でしたが、上場初値は6,900円を付け、IPO初値は+315.66%となりました。

【4498】サイバートラストの月足チャート

【9254】ラバブルマーケティンググループ

SNSアカウント運用やSNS運用支援ツールの開発を手掛ける【9254】ラバブルマーケティンググループは、2021年12月21日に東証マザーズに上場した銘柄です。

ラバブルマーケティンググループの公募価格は1,260円でしたが、上場初値は4,845円を付け、IPO初値は+284.52%となりました。

【9254】ラバブルマーケティンググループの月足チャート

【6614】シキノハイテック +213%

半導体検査装置の開発・製造やLSIの設計を手掛ける【6614】シキノハイテックは、2021年3月24日にJASDAQスタンダードに上場した銘柄です。

シキノハイテックの公募価格は390円でしたが、上場初値は1,221円を付け、IPO初値は+213.08%となりました。

【6614】シキノハイテックの月足チャート

シキノハイテックは、2021年に最も強かったテーマ株の一つである半導体株であるだけに、IPOゴールとはならず、他の2021年IPO関連銘柄とは一線を画する値動きとなっています。

2021年IPO関連銘柄で上場後も注目されている銘柄

2021年に大きな初値を付けたIPO銘柄の多くは、上場後は下げ続ける“IPOゴール”となってしまっているのが現状です。

ただ、半導体株の【6614】シキノハイテックのように、上場後にも注目されている2021年IPO関連銘柄も少なくありません。

2021年IPO関連銘柄で上場後も注目されている銘柄をいくつか押さえておきましょう。

【5759】日本電解

プリント配線板・半導体パッケージ用電解銅箔の製造を手掛ける【5759】日本電解は、2021年IPO関連銘柄で最も注目されている銘柄と言っても過言ではありません。

同社が手掛ける電解銅箔は、EV(電気自動車)においても重要となるため、EV関連銘柄の一角として注目されています。

【5759】日本電解の月足チャート

【4888】ステラファーマ

ステラ ケミファの子会社でホウ素医薬品の開発・製造を手掛ける【4888】ステラファーマは、2021年IPO関連銘柄の中では最も注目されているバイオベンチャーです。

同社が手掛けるBNCT ホウ素中性子捕捉療法は、最先端のがん治療として注目されています。

【4888】ステラファーマの月足チャート

【4194】ビジョナル

ハイクラス人材に特化した会員制転職プラットフォーム「ビズリーチ」を運営する【4194】ビジョナルは、人手不足や働き方改革でも注目される2021年IPO関連銘柄です。

多くの投資家にとって、日本の人口減少や労働力不足は注目トレンドとなっており、同社のような人材株は、東証でも特に注目されるテーマ株の一つとなっています。

【4194】ビジョナルの月足チャート

【6613】QDレーザ

半導体レーザや網膜走査型レーザアイウェアの開発を手掛ける【6613】QDレーザは、2021年IPO関連銘柄の中でも半導体株に位置付けられる注目銘柄です。

同社は【6614】シキノハイテックの陰に隠れていますが、2021年にIPOした半導体株です。

株価はほぼIPOゴールとなっていますが、半導体株の一角であることから押さえておいても悪くないでしょう。

【6613】QDレーザの月足チャート

2022年IPOに向けた展望や注意点について

2022年IPO市況の展望や注意点について押さえておきましょう。

新興市場のAIベンチャーは強い、DXも鉄板

2021年後半から勢いが落ちてきているとはいえ、マザーズ・JASDAQのAIベンチャーはIPOの鉄板株であるトレンドは変わりません。

ただ、2021年12月には、【4259】エクサウィザーズ(-10%)や【4418】JDSC(+0%)といったAIベンチャーであっても、大きな初値を付けられなくなってきている点には注意が必要です。

AIに代わって、DX(デジタルトランスフォーメーション)は強さを見せています。

IPOで明暗が分かれた2021年12月には、DX事業を手掛ける【9211】エフ・コード(+197%)と【4261】アジアクエスト(+130%)が大きな上昇となりました。

2022年のIPO投資も、新興市場のAI・DXベンチャーを狙うのが鉄板という点は変わらないでしょう。

IPOの勢いが落ちている点には注意が必要

2021年のIPO市況を見てみると、上半期から12月に掛けて、勢いが落ちている点は否めません。

2022年も100社を超えるIPOが期待されますが、IPO全体の勢いが2020年や2021年上半期の頃のようではなくなっていることには注意しておきましょう。

2020年から2021年6月頃に掛けては、マザーズ・JASDAQ銘柄であれば、どの銘柄でもIPO投資は利益になっていましたが、この傾向に黄色信号が灯りつつあります。

東証市場再編によりグロース市場とスタンダード市場に注目しよう

2022年の東証最大のイベントとなるのが、2022年4月に行われる東証の市場再編です。

東証の市場再編によって、東証4市場は基本的に次のように再編されます。

・東証一部→プライム市場

・東証二部、JASDAQスタンダード→スタンダード市場

・東証マザーズ、JASDAQグロース→グロース市場

IPO投資においては、スタンダード市場とグロース市場に注目が集まりますが、特にグロース市場に注目しておきましょう。

IPO投資では、マザーズ・JASDAQ銘柄に注目することが基本ですが、2022年4月以降はグロース市場のIPOに注目することが基本戦略となっていきそうです。

まとめ

今回は、2021年IPOの動向について解説した上で、特に注目される2021年IPO関連銘柄について紹介し、2022年のIPO展望についても取り上げてきました。

2021年には125社のIPOが行われ、2007年以来14年ぶりにIPOが100社を超える展開となりました。

ただ、2021年6月上旬まではIPO市況は絶好調でしたが、6月下旬以降はやや陰りが見え始めており、32銘柄ものIPOが実施された2021年12月には明暗が大きく分かれる展開となりました。

大きな上場初値を付けた2021年IPO関連銘柄の多くは、上場後に大きく下げる“IPOゴール”となってしまっているのが現状です。

ただ、半導体株の【6614】シキノハイテックや、EVでも注目される【5759】日本電解といった注目銘柄は、上場後にも大きく上昇しています。

2022年のIPO市況も、100社以上のIPOが出てくることが期待されますが、IPO市況全体の雲行きがやや怪しくなりつつあることを考慮しておく必要があります。

また、IPO投資ではマザーズ・JASDAQ銘柄を押さえておくことが基本となりますが、2022年4月に行われる東証の市場再編以降は、グロース市場のIPOに注目しておくようにしましょう。

紫垣 英昭