【鉄道株注目銘柄】ワクチン接種で急反発期待!なディフェンシブセクター

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

JR各社を始めとする鉄道株は、景気に影響されにくいローリスク・ローリターンのディフェンシブテーマ株として知られています。

しかし、鉄道株は新型コロナの影響で大きく売られたままの状態が続いており、日経平均株価が一時3万円まで回復したにも関わらず、鉄道株はコロナ前の株価水準を取り戻せていません。

ワクチン接種が加速して、コロナ禍で押さえられていた旅行需要が急回復する過程では、鉄道株も大きく反発することが期待されます。

今回は、鉄道株の特徴について解説した上で、代表的な鉄道株10銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 鉄道株の特徴についてわかる
  • 代表的な鉄道株10銘柄についてチャート付きでわかる
  • 鉄道株をアフターコロナに注目のテーマ株として押さえて置くべき理由を学べる

鉄道株とは?

鉄道株とは、JR各社や私鉄各社など、鉄道事業を運営している銘柄を総称するセクター・テーマ株です。

鉄道株の最大の特徴は、ローリスク・ローリターンのディフェンシブ銘柄(景気に影響されにくい企業からなるセクターの銘柄:薬品、食品、通信、陸運など)であることが挙げられます。

鉄道業の需要は一定しているため業績が安定しやすく、不況期であっても移動需要は減りにくいことが背景にあります。

鉄道会社の多くは、旅客・貨物運送を事業の柱としていますが、ホテルやレジャーなど鉄道事業との相乗効果が見込める分野を手掛けている企業も多くなっています。

その一例としては、東武鉄道の東京スカイツリーや富士急行の富士急ハイランド、西武ホールディングスのプリンスホテルなどです。

また、鉄道株は、多くの人が仕事や旅行で利用している鉄道会社が中心となるため、日常生活で馴染みのある銘柄も少なくありません。

ローリスク・ローリターンのディフェンシブ銘柄が多く、日常生活でも利用している銘柄を選びやすいことから、鉄道株は投資初心者にもおすすめのテーマ株と言えます。

また、鉄道株の成長事業としては、モビリティ革命ことMaaS(マーズ)が注目されます。

MaaSとは「Mobility as a Service」の略称で、ICTを活用して全ての交通をクラウド化する取り組みのことです。

特に、JRはMaaSに力を入れており、電子マネー「Suica」で移動に関するビッグデータを集められることから、日本のMaaS企業としては最右翼の存在となっています。

鉄道株はワクチン接種加速で反発が期待されるアフターコロナ銘柄

鉄道株は、新型コロナで移動が制限されてしまったことから大きく売られている状況が続いていますが、ワクチン接種の加速で反発することが期待されます。

鉄道株は新型コロナ相場で大きく売られた

鉄道株は、不況期にも売られにくいディフェンシブ銘柄の代表的なテーマ株・セクターですが、新型コロナは鉄道株を直撃しました。

新型コロナの影響で移動が制限された影響で、鉄道各社の業績は壊滅的な状況となっています。

JR4社・大手私鉄16社の2020年度決算は、全社が最終赤字に転落。

鉄道各社が力を入れるホテル・レジャー部門も、度重なる緊急事態宣言によって厳しい状況が続いています。

2020年の大手鉄道各社の純損失額は、JR東日本は5,779億円、JR東海は2,016億円、JR西日本は2,332億円、西武ホールディングスは723億円、近鉄グループホールディングスは602億円、東急は562億円と、全滅状態です。

この業績は鉄道株の株価にも反映されており、新型コロナ相場では日経平均が一時3万円を回復するなど多くの銘柄がコロナ前の株価水準をも上回る展開となっていますが、鉄道株はコロナショック後に下落したまま反発せず一人負けが続いている状況です。

鉄道株はワクチン接種の加速で反発が期待される

日本でも新型コロナのワクチン接種が加速していることから、鉄道株にも光明が見え始めています。

日本のワクチン接種は諸外国と比べて遅れているとはいえ、大規模会場での接種や職域接種も進むなど、着実に進んでいることは確かです。

2021年6月7日には、1日の接種回数が発表ベースで109万3,504回となり、菅総理が目標に掲げていた1日100万回を初めて達成しました。

今後、ワクチン接種が順調に進むことで、イスラエルやアメリカのように経済正常化が進むことになれば、旅行やレジャーに特需が発生する可能性が高いと見られます。

特に鉄道株にとっては、鉄道需要が戻るだけではなく、ホテルやレジャーでの特需も期待できるため、業績が急回復することが期待できます。

株式市場では、鉄道株や旅行株を中心に、アフターコロナをにらんだ値動きとなっている銘柄も多く、ワクチン接種が加速すれば、その動きはさらに活発になる可能性は高いでしょう。

鉄道株10選!

アフターコロナにも注目される代表的な鉄道株10銘柄を見ていきましょう。

【9020】JR東日本

東日本(関東、東北、信越)で鉄道事業を展開する【9020】JR東日本は、日本最大の鉄道会社であり、代表的な鉄道株です。

同社は、日本で最も広く使われている電子マネー「Suica」も手掛けており、移動に関するビッグデータを集められることから、モビリティ革命ことMaaS関連銘柄としても注目される銘柄です。

【9020】JR東日本の月足チャート

JR東日本の株価はコロナショック後も下落し続け、2020年10月に安値を付けました。

しかし、以後は反発してきていることが分かります。

【9022】JR東海

東海道新幹線を運営する【9022】JR東海も、代表的な鉄道株です。

同社はドル箱の東海道新幹線を展開するほか、リニアモーターカーでも注目が集まる銘柄となっています。

【9022】JR東海の月足チャート

JR東海の株価は、まだコロナ前の水準には遠いものの、反発基調にあります。

【9021】JR西日本

西日本(北陸・近畿・中国・九州北部)で鉄道事業を手掛ける【9021】JR西日本は、西日本最大の鉄道会社であり、代表的な鉄道株です。

JR西日本の株価は、JR東日本・JR東海と同じく、コロナ前の株価はまだ遠いものの、2020年後半から反発しており、安値は脱した形となりつつあります。

【9142】JR九州

九州全域で鉄道事業を展開する【9142】JR九州は、事業の多角化を進めていることで知られる鉄道株です。

同社は、非鉄道事業での収入が過半数となっており、JR東日本・JR東海・JR西日本に比べると、鉄道事業の比率は落ちます。

【9142】JR九州の月足チャート

JR九州の株価は、大手JR3社に比べて鉄道比率が小さいとはいえ、株価は同じ形となっています。

【9024】西武ホールディングス

東京・埼玉を地盤に、西武鉄道や池袋線、新宿線を運営する【9024】西武ホールディングスは、プリンスホテルも手掛けていることからホテル株としても注目の鉄道株です。

【9024】西武ホールディングスの月足チャート

西武ホールディングスの株価は、長期的には厳しい値動きとなっていますが、2021年に入ってから反発しています。

【9041】近鉄グループホールディングス

近畿・東海地方で、難波線や奈良線、大阪線を運行する近畿日本鉄道を傘下に持つ【9041】近鉄グループホールディングスは、西日本を代表する鉄道株です。

【9041】近鉄グループホールディングスの月足チャート

近鉄グループホールディングスの株価は、2020年までは西日本のインバウンド需要や2025大阪万博決定で買われていましたが、2020年には暴落となり、2021年に入ってからも下落が続いています。

【9005】東京急行電鉄

東横線、目黒線を手掛け、私鉄最大の乗客数を誇る【9005】東京急行電鉄(東急)は、私鉄を代表する鉄道株です。

同社は、東急百貨店や東急ホテルズ、東急ハンズを手掛けていることでも知られています。

【9005】東京急行電鉄の月足チャート

東急の株価は、他の鉄道株と同様に厳しい値動きとなっていますが、2021年に入ってからは反発しています。

【9001】東武鉄道

東武本線、東武東上線を手掛け、私鉄では路線最長を誇る【9001】東武鉄道も、私鉄を代表する鉄道株です。

同社は、東京スカイツリーを運営していることでも有名です。

【9001】東武鉄道の月足チャート

東武鉄道の株価は、東京スカイツリーによるインバウンド需要もあり、2020年までは成長していましたが、コロナ以降は下落が続いており、2021年に入っても下落が止まっていません。

【9010】富士急行

富士急行線を運営する【9010】富士急行は、テーマパーク「富士急ハイランド」でも知られる鉄道株です。

【9010】富士急行の月足チャート

富士急行の株価は、鉄道株の中では一線を画しており、新型コロナ相場で上場来高値を更新しています。

特に、「Go To トラベルキャンペーン」が始まった2020年8月からの上昇が顕著であることが分かります。

同社も他の鉄道株と同じく赤字決算となっていますが、2020年8月に「Go To トラベルキャンペーン」の影響で大きく買われた勢いが続いている形です。

【9048】名古屋鉄道

愛知・岐阜を地盤に名古屋本線を運行する【9048】名古屋鉄道は、コロナ前までは成長株となっていた鉄道株です。

【9048】名古屋鉄道の月足チャート

名古屋鉄道の株価は、2020年までは堅調に上昇していましたが、コロナ後は売られ続けている状況です。

2021年に入ってからも、緊急事態宣言が嫌気されたことなどから下げ止まっておらず、2021年5月には一段安となりました。

まとめ

今回は、鉄道株の特徴について解説した上で、代表的な鉄道株10銘柄についてチャート付きでご紹介してきました。

JR各社や私鉄大手で構成される鉄道株は、業績が安定しやすいローリスク・ローリターンのディフェンシブ銘柄であることが特徴です。

しかし、移動が制限された新型コロナ禍では、業績・株価ともに厳しい状況となっています。

ただ、新型コロナワクチン接種が加速していることもあり、多くの鉄道株は2021年に入ってから反発傾向が確認されます。

今後、新型コロナ禍で押さえられていた旅行需要が爆発することになれば、鉄道株の業績・株価にも反映されてくることが期待されるため、アフターコロナに注目のテーマ株として押さえておきましょう。

紫垣 英昭