レアアース関連銘柄10選!EVでも注目される希少金属テーマ株とは?

執筆者
プロフィール写真

紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

EVシフトや脱炭素を背景にネオジムやジスプロシウムといったレアアース価格が高騰しており、株式市場でもレアアース関連株が買われる展開となっています。

レアアースは世界生産量の大半を中国が握っていることから中国リスクが懸念されていますが、日米政府は連携してレアアースの分散化を図っています。

日本のレアアース関連株としては、レアアースを手掛ける商社株、海洋探査、都市鉱山を手掛ける銘柄に注目です。

今回は、レアアースの概要や注目ニュースについて解説した上で、代表的なレアアース関連株10銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • レアアースの概要や注目ニュースについてわかる
  • 代表的なレアアース関連株10銘柄についてチャート付きでわかる
  • レアアース関連株として注目される銘柄の特徴がわかる

レアアースとは?

レアアースとは、希少金属レアメタルの1種で、17元素の総称です。

「希土類元素」とも呼ばれます。

レアアースに分類される17元素は次の通りです。

Sc

スカンジウム

Y

イットリウム

La

ランタン

Ce

セリウム

Pr

プラセオジム

Nd

ネオジム

Pm

プロメチウム

Sm

サマリウム

Eu

ユウロビウム

Gd

ガドリニウム

Tb

テルビウム

Dy

ジスプロシウム

Ho

ホルミウム

Er

エルビウム

Tm

ツリウム

Yb

イッテルビウム

Lu

ルテチウム

 

 

 

 

 

 

レアアースは、少量を加えることで素材の性能を高める効果があるため「産業のビタミン」とも呼ばれており、スマートフォンやパソコン、次世代自動車などの製造には欠かせません。

代表的なレアアースの産業用途は次のようになっています。

レアアース

産業用途

ネオジム

モーター用磁石、コンデンサ、レーザー

セリウム

ディスプレイ・HDD研磨剤、自動車用排ガス触媒

ジスプロシウム

モーター用磁石

イットリウム

蛍光体、レーザー

レアアースの埋蔵量自体は金や銀よりは多くなっており、全世界の年間消費量15万トンに対して、全世界の埋蔵量は9,900万トンと見積もられています。

レアアースの資源枯渇は危惧されていませんが、世界の生産量には大きな偏りがあることが、レアアースが希少金属とされるゆえんです。

アメリカの米地質調査所(USGS)によると、2020年の世界のレアアース生産量は次のようになっています。

レアアース生産量(2020年)

出典:アメリカ米地質調査所(USGS)(https://pubs.usgs.gov/periodicals/mcs2021/mcs2021-rare-earths.pdf)

世界のレアアース生産量の大半を中国が占めていることから、レアアースには中国リスクが付きまといます。

ただ、2010年には世界のレアアース生産量の95%が中国となっていました。

中国依存度が高い状況には変わらないものの、この10年間で中国のレアアース生産シェアは半分程度まで下がっています。

今回注目していくレアアース関連株は、レアアースを扱っている「商社株」、日本近海に埋まっているレアアース採掘事業を手掛ける「海洋探査」に強い銘柄、家電に使われているレアアースをリサイクルする「都市鉱山」を手掛ける銘柄の3つに大別されます。

レアアース関連の注目ニュース

レアアース関連株の動向にも関わってくる、レアアースの注目ニュースについて押さえておきましょう。

EVシフトを背景にレアアース価格は高騰している

レアアースは、2020年秋から世界で進展した「EVシフト」を背景に高騰しており、特にモーター用磁石に使われるネオジムとジスプロシウムの先物価格は急上昇しています。

ネオジムはEV向けモーターの効率化に使われるほか、脱炭素で注目される洋上風力発電でも需要増が見込まれることから注目が集まりました。

ネオジムの先物価格は、2020年1月に付けていた約38万人民元/1トンから2021年3月には一時85万人民元/1トンを超える水準まで上昇。

2021年7月時点では60万人民元/1トン前後で推移しています。

脱炭素を背景にしたEVシフトは世界的潮流であるため、今後もレアアースの中でも、ネオジムとジスプロシウムには特に注目が集まりそうです。

中国リスク回避のため、日本は独自調達路線を強めている

レアアースは、世界生産量の大半を占める中国の動向は切っても切り離せません。

2010年には、尖閣問題が過熱したことを受けて、中国は日本向けレアアースの輸出を停止する「レアアースショック」が発生。

中国リスクを低減することは、日本の外交上でも重要な課題となっています。

尖閣問題以降、日本政府はレアアースの調達多角化を進めてきましたが、それでも日本はレアアース輸入の約6割を中国に依存している状況です。

また、レアアースを自国生産できるアメリカも、輸入量の約8割を中国に依存しています。

世界的な中国包囲網で苦しむ中国にとっては、レアアースは重要な外交カードとなっており、2020年12月にはレアアースを含む戦略物資の輸出管理を厳しくする「輸出管理法」が施行されました。

日米政府はレアアースの中国リスクを低減させる方向で連携しており、日米豪印の4ヶ国による枠組み「クアッド」では、レアアース調達で協力する方針を示しています。

さらに、日本政府は2021年3月、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が鉱山の探査・開発に過半を出資できるようにするよう規制緩和することを決定。

レアアース調達において民間企業の負担を減らす方針を固めました。

レアアース関連株10選!

日本株のレアアース関連株10銘柄を見ていきましょう。

【8015】豊田通商

トヨタ系総合商社の【8015】豊田通商は、EVシフトでも注目されるレアアース関連株です。

同社は、インド東部のアンドラ・プラデシュ州 ビシャカパトナムにレアアース分離工場を持っており、中国リスクを避けるレアアース調達でも注目されています。

【8015】豊田通商の月足チャート

豊田通商の株価は、EVシフトが株式市場で注目された2020年秋から急伸していることが分かります。

【3036】アルコニックス

アルミや銅、ニッケル、レアメタル・レアアースなどを手掛ける非鉄金属商社の【3036】アルコニックスも、レアアースに強い商社株です。

同社の完全子会社であるアドバンストマテリアルジャパン株式会社が、希土類磁石や電池、触媒、LED、光ガラス用途のレアアース17元素を取り扱っています。

【3036】アルコニックスの月足チャート

アルコニックスの株価は、2018年以降は苦しい値動きとなっています。2020年秋以降のEVシフトでも反応したようには見えません。

【6269】三井海洋開発

浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)のリーディングカンパニー【6269】三井海洋開発は、日本近海のレアアース開発で注目されるレアアース関連株です。

同社は、世界需要の数百年分が分布しているとされる南鳥島のレアアース泥の資源開発プロジェクトに携わっていることで知られています。

【6269】三井海洋開発の月足チャート

三井海洋開発の株価は、苦しい展開が続いています。

脱炭素で注目される洋上風力発電でも名前が挙がる銘柄ですが、コロナ前の株価水準も回復していません。

【6297】鉱研工業

地下資源開発に欠かせないボーリングマシン大手【6297】鉱研工業は、レアアースの資源開発で注目されるレアアース関連株です。

同社も、日本近海のレアアース資源開発ニュースで物色されやすい銘柄となっています。

【6297】鉱研工業の月足チャート

鉱研工業の株価は、コロナ前の水準は取り戻していますが、長期で見ると積極的に買われているとは言えない状況です。

【1662】石油資源開発

石油・天然ガス開発大手の【1662】石油資源開発も、レアアース開発において名前がたびたび挙がるレアアース関連株です。

同社は、日本近海に眠るメタンハイドレートの開発ニュースなどで物色される傾向があります。

【1662】石油資源開発の月足チャート

石油資源開発の株価は、EV相場となった2020年秋以降はやや買われたものの、長期的には苦戦しています。

【5724】アサカ理研

水晶デバイスやLED、パワーデバイスなどの電子部品からの貴金属リサイクルを手掛ける【5724】アサカ理研は、都市鉱山で注目されるレアアース関連株です。

【5724】アサカ理研の月足チャート

アサカ理研の株価は、2020年以降大きく上昇していることが分かります。コロナショックで付けた2020年3月の415円から、2020年12月には2,312.5円を付け、新型コロナ相場では最大5.57倍の上昇となりました。

ただ、同社を始めとする都市鉱山株は、新型コロナ禍で金(ゴールド)や銀、プラチナといった金属価格が上昇した影響が多分にあると考えられるため、一概にレアアース関連で上げたとは言えません。

【5857】アサヒホールディングス

都市鉱山リサイクル事業や北米での金・銀精錬事業を手掛ける【5857】アサヒホールディングスは、配当利回りが高いレアアース関連株です。

【5857】アサヒホールディングスの月足チャート

アサヒホールディングスの株価は、金属価格の上昇やレアアース需要を背景に成長を続けています。

これだけ大きく上昇しながらも、同社の配当利回りは3.99%(2021年7月5日時点)という高配当株となっています。

【7456】松田産業

自動車や電機といったエレクトロニクス産業からの貴金属リサイクルを手掛ける【7456】松田産業も、都市鉱山に強いレアアース関連株です。

【7456】松田産業の月足チャート

松田産業も、他の都市鉱山株と同様に好調な値上がりを続けています。

【5711】三菱マテリアル

銅箔で世界トップクラスなど非鉄大手の【5711】三菱マテリアルも、レアアース関連株に位置付けられる銘柄です。

同社は2016年、リサイクル需要向けの高効率レアアース磁石回収精製技術を開発したことを発表しています。

【5711】三菱マテリアルの月足チャート

三菱マテリアルの株価は、新型コロナ相場では苦戦しています。

金属高の恩恵も受けられていません。

【5713】住友金属鉱山

日本株を代表する鉱山株の【5713】住友金属鉱山は、フィリピンにニッケル鉱石からレアアースを回収する工場を作るなど、レアアース事業を手掛けています。

【5713】住友金属鉱山の月足チャート

住友金属鉱山の株価は、新型コロナ相場で大きく反発しています。

ただ、同社は金(ゴールド)や銀、プラチナなどの金属高が好感されての上昇となったと見られます。同社の事業規模からすると、レアアース事業の業績・株価への影響はほとんどないというのが現実的な見方でしょう。

まとめ

今回は、レアアースの概要や注目ニュースについて解説した上で、代表的なレアアース関連株10銘柄についてチャート付きでご紹介してきました。

レアアースは、EVシフトや脱炭素を背景に、モーターや洋上風力発電に使われるネオジムやジスプロシウムが大きな値上がりとなっています。

また、レアアースは中国が圧倒的な生産シェアを誇っていることから米中摩擦リスクの一つとなっており、日米政府はレアアースの分散化を進めています。

レアアース関連株として注目されるのは、レアアースを扱っている「商社株」、日本近海に埋まっているレアアース採掘事業を手掛ける「海洋探査」に強い銘柄、家電に使われているレアアースをリサイクルする「都市鉱山」を手掛ける銘柄の3つです。

2020年から2021年に掛けては、インドでレアアース事業を手掛けるトヨタ系商社【8015】豊田通商がEVシフト以降大きく上昇しており、都市鉱山を手掛ける銘柄も金属高を背景に大きく上昇しています。

紫垣 英昭