株式市場の季節性サイクルとは?シーズンストック銘柄も徹底解説!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

「○月は株価が上がりやすく、○月は株価が下がりやすい」「夏に上がりやすい銘柄、冬に上がりやすい銘柄」といった季節性サイクルは、株式市場においても有効な場合があります。

ただ、季節性サイクルの情報の中には、イメージ先行で検証されてない情報も少なくないため、「その季節性サイクルは本当かどうか?」については自らの手で検証しなければいけません。

今回は、株式市場における季節性サイクルについて解説した上で、季節性サイクルの影響を受けて上がりやすい代表的なシーズンストック株について紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • 季節性サイクルとは何か、アノマリーとの違いがわかる
  • 季節性サイクルが株式市場に与える影響がわかる
  • 季節性サイクルの影響を受けやすい個別銘柄(シーズンストック株)がわかる

季節性サイクルとは?

季節性サイクルとは、市場全体もしくは特定の銘柄が、毎年ある時期になると特徴的な値動きをする傾向のことです。

季節性サイクルは、季節によって需要が変動する商品先物取引においては顕著ですが、株式市場においても一部のセクターや銘柄で見ることができます。

例えば、「夏になると熱中症対策グッズを手掛けている銘柄が買われやすい」「クリスマス前にはおもちゃ株やケーキ株が買われやすい」といった傾向は典型的な季節性サイクルとなります。

季節性サイクルと似た投資用語としては「アノマリー」があります。

アノマリーとは、現代の相場理論では説明できない、値動き傾向のことです。「日経平均は5月には下げやすい」「低位株は上がりやすい」といったアノマリーは、そのような傾向があることは確かだとしても、その理由については論理的に説明することはできません。

一方、今回注目していく季節性サイクルは、その値動きの理由が論理的に説明できるものです。

例えば、「防災関連銘柄は台風が発生する6~9月に買われやすい」「ビールメーカーは猛暑になると買われやすい」などの季節性サイクルは、「台風は6~9月に発生しやすい」「夏にビールはよく売れる」など論理的に説明できる理由によるものです。

日経平均で見る季節性サイクル

季節性サイクルについて、日経平均株価で見ていきましょう。

株式市場全体の季節性サイクルとしては、「8月はお盆休みに入って市場参加者が少なくなるため、ボラティリティー・出来高が少なくなる」というものがあります。

日経平均株価の月足チャート

この季節性サイクルは、日経平均株価の出来高(売買高)にしっかりと現れており、毎年8月はその前後の月と比較しても出来高が小さくなっている傾向があることが分かります(上図赤丸)。

唯一、2015年8月は世界株安となったことからマーケットが活発化しましたが、その他の年では8月の出来高は前後の月と比べて少なくなっていることは明らかです。

このような季節性サイクルがあることから、流動性が重要となる短期投資を手掛ける場合には、8月は控えめにしておいた方が良いことなどが分かります。

一方で、「○月は買われやすい」「夏(冬)は上がりやすい(下がりやすい)」といった、値動きに関する季節性サイクルは、日経平均株価やTOPIXのような全体相場では特に見受けられません。

重要なことは、季節性サイクルやアノマリーに関する情報を手に入れたら、必ず自分自身の手で検証してみることです。

例えば、「5月は売られやすい(セル・イン・メイ!)」というアノマリーは広く知られていますが、これは実際に検証してみると、近年はそうでもありません。

日経平均株価の月足チャート

日経平均株価の2013年~2020年の5月について見てみると、2014年・2015年・2016年・2017年・2020年の5年間で上昇となっており、近年はむしろ上昇した年の方が多いことが分かります(上図赤丸)。

このように、季節性サイクルやアノマリーに関する情報については、しっかりと自分の手で検証することが重要です。

季節性サイクルに大きく影響されるシーズンストック株とは?

株式市場は、先物相場と比べると季節性サイクルの影響を受けることは少なく、日経平均やTOPIXなど全体相場に影響を与えるような季節性サイクルはほとんどないということが実態です。

ただ、全体相場に影響を与える季節性サイクルはほとんどありませんが、個別銘柄となると話は違ってきます。

例えば、台風対策などの防災事業を手掛けている銘柄は台風シーズンに上がりやすい、猛暑グッズやビールを手掛けている銘柄は夏に上がりやすい、おもちゃメーカーはクリスマスに上がりやすい、お菓子メーカーはハロウィンやバレンタインに向けて上がっていくといった季節性サイクルが株価に現れるケースは少なくありません。

このように季節性サイクルの影響を受けやすい銘柄は「シーズンストック株」と呼ばれます。

ただ、シーズンストック株の季節性サイクルについても、その情報を真に受けず、自分自身の手で検証することが重要であることは変わりありません。

代表的なシーズンストック株

季節性サイクルの要因を受けやすい代表的なシーズンストック株について見ていきましょう。

夏に上がりやすいサマーストック株

夏に上がりやすいシーズンストック株は「サマーストック株」などとも呼ばれます。

サマーストック株は、気象庁の夏の気象予測情報が出揃う6月から買われ始め、8月終わりに掛けて売られていく傾向があります。

家庭用殺虫剤大手の【4998】フマキラーは、典型的なサマーストック株です。

【4998】フマキラーの月足チャート

夏になると殺虫剤の需要が上がることもあり、フマキラーの株価は毎年6月以降に急騰しやすい傾向が出ています(上図赤丸)。

夏に強いサマーストック関連銘柄をもう1銘柄見ていきましょう。

日本では近年、2017年7月の九州北部豪雨、2018年7月の西日本豪雨、2019年9~10月の台風15号・台風19号、そして2020年7月に九州で大きな被害をもたらした令和2年7月豪雨など、毎年のように豪雨・台風災害が相次いでいます。

台風シーズン中には、水害対策事業を手掛けている水害対策関連銘柄が買われる傾向があります。

地盤改良に強い建設会社として知られる【1926】ライト工業の株価を見ていきましょう。

【1926】ライト工業の月足チャート

ライト工業の株価は、2018年7月の西日本豪雨、2019年9~10月の台風15号・台風19号、2020年7月の令和2年7月豪雨によって、それぞれ上昇していることが分かります(上図赤丸)。

冬に上がりやすいウィンターストック株

冬に上がりやすいシーズンストック株は「ウィンターストック株」とも呼ばれます。

ウィンターストック株で必ず抑えておかなければいけないのは、クリスマス商戦に強い銘柄です。クリスマスの経済効果は7,000億円と推計されており、経済効果としては最大のイベントとなっています。

ガンプラを始めとするおもちゃで知られる、おもちゃメーカー最大手の【7832】バンダイナムコホールディングスは、クリスマス商戦に強いウィンターストック株の代表格です。

【7832】バンダイナムコホールディングスの月足チャート

バンダイナムコホールディングスの株価は右肩上がりの成長株となっています、特に11月から12月に掛けては上昇が目立つ傾向が見てとれます(上図赤丸)。

クリスマスに強いウィンターストック株をもう1銘柄見ていきましょう。

クリスマスと言えば、おもちゃと並んでケーキの需要が高まります

お菓子メーカーの中でもケーキに強い【2211】不二家は、毎年11~12月に上昇する傾向が明らかに見てとれるウィンターストック株です。

【2211】不二家の月足チャート

不二家の株価は、長期的には横ばいであるにも関わらず、ほぼ毎年のように11~12月には上昇しています(上図赤丸)。

イベントで上がりやすいシーズンストック株

最後に、夏と冬以外で注目されるシーズンストック株について抑えておきましょう。

2月のバレンタインデー、10月のハロウィンは注目イベントです。いずれも経済効果は1,300億円程度となっていますが、特に近年はハロウィンが株式市場でも注目されつつあります。

ハロウィン商戦に力を入れている銘柄としては、総合ディスカウントストア「ドンキホーテ」を運営する【7532】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが挙げられます。

同社は、ハロウィン用コスプレグッズやハロウィングッズ、お菓子などを取り扱っており、特にハロウィンに力を入れている企業として知られます。

【7532】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの月足チャート

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの株価は、2016年以降は、9月から10月に掛けて毎年上昇していることが明らかです。

なお、2020年は新型コロナの影響でハロウィンイベントも自粛されると思われるため、ハロウィンは季節要因にはならないものと思われます。

まとめ

今回は、株式市場における季節性サイクルについて解説した上で、季節性サイクルの影響を受けて上がりやすい代表的なシーズンストック株について紹介してきました。

株式市場は、先物市場ほどには季節性サイクルの影響は受けにくく、全体相場に影響を与えるほどの季節性サイクルはほとんどないというのが現状です。

一方、個別銘柄の中には、夏に上がりやすいサマーストック株、冬に上がりやすいサマーストック株、クリスマスやハロウィンに上がりやすい銘柄などのシーズンストック株が存在しています。

季節性サイクルやアノマリーは株式投資においても有用な場合がありますが、どのような情報であろうと、その情報を真に受けることなく、自分自身の手で検証することが何よりも重要です。

例えば、アノマリーとして知られている「5月は売られやすい(セル・イン・メイ!)」は、実際に検証してみると、近年はそうでもないということが分かってきます。

季節性サイクルについて理解して、株式投資に役立てていきましょう。

紫垣 英昭