紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
半導体は、スマホや家電製品、自動車、産業機器、人工知能(AI)に至るまで、社会のありとあらゆる機器に使われている「産業のコメ」となっています。
株式市場においても、半導体株は最重要セクターの一つとなっており、日本企業が強みを持つ半導体製造装置やシリコンウエハーなどの半導体材料、電力供給に使われるパワー半導体を手掛ける銘柄が中心です。
半導体株の特徴としては、半導体需要予測のニュースをもとに、日経平均株価などの全体相場に先駆けて動く景気敏感株であることが挙げられます。
今回は、半導体株の特徴や重要テーマ、直近の株価動向について解説した上で、東証を代表する半導体株についてチャート付きでご紹介していきます。
- 半導体株の特徴や重要テーマついてわかる
- 直近の株価動向について学べる
- 東証を代表する半導体株についてチャート付きでわかる
半導体は産業のコメ!半導体株は株式市場でも重要セクター
半導体は社会のありとあらゆる機器に使われている最重要部品となっており、株式市場においても最重要セクターの一つとなっています。
半導体はあらゆる製品に使われている「産業のコメ」
半導体とは、電気を通す金属などの導体と、電気を通さないゴムなどの絶縁体の、中間の性質を持つ物質です。
代表的な半導体としてはシリコン(Si)が挙げられますが、半導体を材料に使ったトランジスタや集積回路も半導体と呼ばれることが一般的です。
半導体は、情報の記憶や数値計算、論理演算といった情報処理機能に欠かせない部品として、スマホや家電製品、自動車、産業機器などありとあらゆる機器に用いられています。
かつては鉄鋼が「産業のコメ」と呼ばれていましたが、情報化社会が進んだ現代では、半導体が「産業のコメ」と呼ばれることが多くなっています。
2023年にはAI型チャットボットのChatGPTが話題となっていますが、人工知能(AI)においても半導体の進化は欠かせず、人工知能に使われる半導体GPUを手掛けているアメリカのNVIDIAは半導体企業としては世界一の時価総額を誇る企業です。
かつては日本企業が半導体市場で世界シェアの多くを占めていましたが、近年はサムスン電子などの韓国企業や、TSMCなどの台湾企業が台頭したことで、日本企業の存在感が低迷していることは否めません。
とはいえ、半導体メモリ市場では日本企業は苦戦しているものの、半導体製造装置や半導体材料、パワー半導体といった分野では、日本企業はまだ世界的な存在感を発揮しています。
半導体株は全体相場を先導しやすい景気敏感株セクター
半導体株(半導体関連銘柄)は、東証においても重要なセクターとなっています。
半導体株の特徴としては、世界経済や世界の半導体需要予測の影響を受けて株価が動く「景気敏感株(シクリカル株)」であることが挙げられます。
半導体需要は、世界経済の先行指標の最たるものとなるため、半導体株の株価動向は日経平均株価などの全体市場に先立って動きやすいことが特徴です。
これは実際の株価チャートで確認してみましょう。
日経平均株価の月足チャート
日経平均株価の動向を見ると、2018年には米中摩擦ショックで乱高下し、2020年はコロナショック後に大きな反発となっていきましたが、2021年11月以降は米国利上げでやや売られました。
次に、代表的な半導体株である半導体製造装置大手【8035】東京エレクトロンの株価を見てみましょう。
【8035】東京エレクトロンの月足チャート
東京エレクトロンの株価は、2018年には早くから下落し、2020年コロナショック後は真っ先に反発し、2021年11月の米国利上げを受けて2022年は下落するなど、日経平均株価の動向とほぼ重なっている傾向があることが確認できます。
このように、半導体株は全体相場を先導しやすい景気敏感株であるため、半導体株に投資するか否かに関わらず、チェックしておくことが重要なセクターです。
半導体株(半導体関連銘柄)のテーマと株価動向
半導体株の重要テーマやニュース、2023年時点の半導体株の株価動向について押さえておきましょう。
半導体株の重要テーマ:半導体製造装置、半導体材料、パワー半導体
半導体株と一口に言っても、その範囲は非常に広くなっています。
代表的な半導体株と言えるのが、「半導体メモリ」を手掛けている企業です。
日本の半導体メモリ企業としては【6723】ルネサスエレクトロニクスが代表的となっており、今後は旧・東芝メモリことキオクシアホールディングスの新規上場(IPO)も期待されています。
日本株の半導体株としては、「半導体製造装置」メーカーが最も代表的なセクターとなっています。
世界的な半導体製造装置メーカーである【8035】東京エレクトロンや【6857】アドバンテストをはじめ、2012年の上場から10年で150倍以上の上昇となった【6920】レーザーテックなどが代表的な銘柄です。
また、日本企業は「半導体材料」にも強く、特に「シリコンウエハー」は【4063】信越化学工業と【3436】SUMCOの2社で世界シェアの大半を占めています。
さらに、電力供給に使われる半導体である「パワー半導体」も日本企業が強く、【6504】富士電機や【6502】東芝は世界シェアで上位となっています。
半導体株は大型株だけでも注目銘柄が多くなっていますが、中小株や新興銘柄、IPOも盛んとなっており、常に注目銘柄が移り変わっている状況です。
半導体株は2021年最強テーマ株となり、2022年以降も重要セクター
2023年5月時点での、半導体株の直近の株価動向について押さえておきましょう。
半導体需要は、新型コロナ禍の巣ごもり消費などを背景に、2020年から2021年に掛けて世界的な半導体不足となり、経済ニュースでも「半導体が足りない」と連日のように報道されていました。
株式市場においても、半導体株は2020年から2021年に掛けては非常に強く、特に2021年には多くの半導体株が強く買われました。
ただ、2021年11月、米国FRBがインフレ退治のための利上げ方針に舵を切ったことで状況が一変。
新型コロナ相場では真っ先に買われた半導体株は、2021年11月以降は真っ先に売られる展開となりました。
2023年1月時点の半導体需要予測では、世界的に新型コロナ対策が終わったこともあり、スマホやPC向けの半導体特需は一巡し、在庫調整は2023年後半まで続く見込みとされています。
半導体株は、2020~2021年頃のような強さはないものの、2023年には反転の兆しとなっており、今後も重要セクターであることは世界経済の産業構造からしても間違いありません。
また、日本では、熊本県が台湾の世界的半導体企業TSMCの工場を誘致したことにより九州地方は半導体バブルに湧きつつあり、日の丸半導体企業ラピダスの動向にも注目が集まってきそうです。
半導体株の重要銘柄10選!
日本株を代表する半導体株10銘柄について見ていきましょう。
【6723】ルネサスエレクトロニクス
三菱電機・日立製作所から分社化したルネサステクノロジと、NECから分社化したNECエレクトロニクスの経営統合で誕生した半導体メモリ企業【6723】ルネサスエレクトロニクスは、代表的な半導体株です。
日本企業の半導体メモリ企業としては、キオクシア(旧・東芝メモリ)に次ぐ2位となっており、特に車載半導体市場では世界3位、車載マイコンでは世界シェアトップであることで知られています。
【6723】ルネサスエレクトロニクスの月足チャート
ルネサスエレクトロニクスの株価は、コロナショック後から右肩上がりの上昇を続けており、半導体株の好調を象徴しています。
【8035】東京エレクトロン
世界4位の半導体製造装置企業である【8035】東京エレクトロンは、日本株を代表する半導体株です。
同社は、コータ・デベロッパや熱処理、エッチング、CVD、洗浄、検査装置などを手掛けていることで知られている世界的な半導体企業です。
また、同社は、日経平均株価への寄与度が高い銘柄としても知られています。
【8035】東京エレクトロンの月足チャート
東京エレクトロンの株価は、右肩上がりの成長を続けていますが、米国利上げを受けた2022年1月以降は調整フェーズとなっています。
【6857】アドバンテスト
世界6位の半導体製造装置企業である【6857】アドバンテストは、東京エレクトロンと並んで重要な半導体株です。
同社は、半導体試験装置において強みを持っており、特にDRAM用では世界トップであることで知られています。
【6857】アドバンテストの月足チャート
アドバンテストの株価は、右肩上がりの成長を続けており、米国利上げを受けた2022年は調整となりましたが、2023年には上場来高値を再び更新しました。
【6920】レーザーテック
マスクブランクス欠陥検査装置で世界トップシェアを誇る半導体製造装置企業【6920】レーザーテックは、半導体株の成長を象徴する銘柄です。
同社は、2012年の上場以降、長年に渡って上昇し続けてきた銘柄として知られていますが、特に2019年以降は東証でもトップクラスの人気銘柄となっています。
また、同社はニッチ分野のグローバル市場で強みを持つ「グローバルニッチ企業」の代名詞とも言える銘柄にもなっています。
【6920】レーザーテックの月足チャート
レーザーテックの株価は、2012年3月の上場時価格に換算した210.5円から約10年間上がり続け、2022年1月には36,090円を付けました。
上場から10年で171倍の上昇となりましたが、米国利上げの影響などで2022年以降は遂に下落に転じています。
【6146】ディスコ
半導体の研削・切断・研磨装置というニッチ分野で世界トップの半導体製造装置企業【6146】ディスコも、人気の半導体株です。
同社は、半導体ニッチ企業として多くの経済ニュースなどでも取り上げられています。
【6146】ディスコの月足チャート
ディスコの株価は、右肩上がりの成長を続けており、2021~2022年は横ばいとなっていましたが、2023年には現在進行形で上場来高値を更新しています。
日本の半導体製造装置企業には有力銘柄が多く、ウエハ洗浄装置で世界トップの半導体製造装置企業【7735】SCREENホールディングスや、新興市場の半導体製造装置企業【6890】フェローテックホールディングスなども人気銘柄です。
【4063】信越化学工業
半導体材料であるシリコンウエハーで世界トップの【4063】信越化学工業は、半導体材料に強い半導体株として注目の銘柄です。
なお、シリコンウエハーとは、高純度シリコンの単結晶を薄く切断してウエハー状にした材料で、半導体製造に欠かせないものです。
信越化学工業は、半導体事業専業の他の半導体株とは異なり、塩化ビニールなどにも強い大手化学株でもあることから、半導体株でありながら化学株としての性質も持つ銘柄となっています。
【4063】信越化学工業の月足チャート
信越化学工業の株価は、上昇し続けています。
【3436】SUMCO
シリコンウエハー専業で世界2位の【3436】SUMCOも、半導体材料で有力な半導体株です。
同社は、信越化学工業と比較されることが多く、シリコンウエハー専業企業で、信越化学工業と比べると値幅が大きいことが特徴です。
【3436】SUMCOの月足チャート
SUMCOの株価は、長期的に見ると横ばいとなっています。
【4062】イビデン
ICパッケージとプリント配線板の世界的企業である【4062】イビデンは、半導体材料企業としても注目される半導体株です。
同社が手掛けるICパッケージ基板は、ICチップと一体となって機能する重要な半導体部品で、半導体の進化に合わせて付加価値が高まっています。
【4062】イビデンの月足チャート
イビデンの株価は、長期的には上昇を続けていますが、米国利上げを受けた2022年には売られました。
【6504】富士電機
電子機器の電力供給に使われる「パワー半導体」も日本企業が強みを持ちます。
半導体が演算や論理演算を行う「脳」の役目を果たす一方で、パワー半導体は電力供給という「筋肉」の役目を果たすものです。
重電大手の【6504】富士電機は、パワー半導体にも力を入れる銘柄となっており、2021年にはパワー半導体で世界5位となっています。
【6504】富士電機の月足チャート
富士電機の株価は好調となっており、特に2020年から2021年に掛けては強く買われました。
パワー半導体は、EV(電気自動車)シフトや再生可能エネルギーなどでも連想されやすい重要部品であることから、株式市場において重要テーマ株の一角となっており、パワー半導体に力を入れる【6338】タカトリは2022年に大きく買われました。
【6526】ソシオネクスト
2023年に買われている半導体株としては、ファブレス形態でSoC(システム・オン・チップ)の設計・開発・販売を手掛ける【6526】ソシオネクストが挙げられます。
同社は、2022年10月12日に東証プライム市場にIPOしたばかりの新しい銘柄です。
【6526】ソシオネクストの月足チャート
ソシオネクストの株価は、2022年10月12日の上場以降、上げ続けています。
まとめ
今回は、半導体株の特徴や重要テーマ、直近の株価動向について解説した上で、東証を代表する半導体株についてチャート付きでご紹介してきました。
半導体は、ありとあらゆる機器に使われる「産業のコメ」となっており、株式市場においても半導体株は最重要セクターの一角となっています。
半導体株は、全体市場に先行して株価が動きやすい「景気敏感株」であるため、投資するか否かに関わらずチェックしておくことが欠かせないセクターの一つです。
半導体株のテーマとしては、日本企業が強みを持つ「半導体製造装置」や「シリコンウエハー」などの「半導体材料」、電力供給に使われる「パワー半導体」などが挙げられます。
半導体株は、2020~2021年には半導体不足を背景に強く、2022年には米国利上げを受けて売られたものの、【8035】東京エレクトロンを始めとする大型株から、中小株や新興株、IPOに至るまで注目銘柄がひしめいています。
紫垣 英昭
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