紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
短期売買では、あらかじめ決められたステップを踏んで売買する事が基本的な姿勢となります。
そこで今回は、プロと同じ実践的なステップの踏み方をお伝えしたいと思います。
まずは、基本となる全体構造をしっかりと抑えて、短期売買を成功させましょう。
※この動画は過去に撮影した動画を再編集したものです。
- 短期売買の基本構造が理解できる
- 短期売買で重要なセットアップ、トリガー、フォロースルーの三構造がわかる
- チャートでの解説つき
短期売買の全体構造を理解しよう
短期売買は、きちっとした構造が決まっています。
株式だけではなく、為替や先物も全く同じ事が言えるのですが、あらかじめ決められたステップを踏んで売買するのが短期売買の基本となっています。
株式のプロ、いわゆる証券会社や銀行、保険会社に属しているディーラーは、全体構造をしっかりと把握し、ステップ通りに動いています。
個人で売買をしても上手くいかないという方は、この全体構造を把握しておらず、自分の思惑だけで売買をしてしまうケースが多いことに原因があると言えるでしょう。
全体構造を把握できていないと無駄な売買や損失が多くなり、せっかく得た利益を全部吐き出してしまうこともありますので、まずは、短期売買の全体構造を理解してほしいと思います。
短期売買の基本構造
はじめに、「短期売買の基本構造がどうなっているのか」をお話していきたいと思います。
短期売買のファーストステップとしてセットアップ、2番目にトリガー、3番目にフォロースルー。この3つの構造から成り立っており、この順番で行われます。
例えば、セットアップが無いのにいきなりトリガー、いわゆるエントリーはしません。
必ずセットアップという確認作業を経て、そこからトリガー(エントリー)するということになります。
フォロースルーというのは後追い、フォローしていくということ。つまり、エントリーして必ず利食い、もしくは損切りが発生してくるということです。
このフォロースルーについては、ある一定のルールを設けます。
ルールは個々の投資家が決めていただいて問題ありません。どのようにしてルールを決めていけば良いかは後ほどお話していきたいと思います。
まずは、短期売買は「1.セットアップ」「2.トリガー」「3.フォロースルー」の3段階に分かれていることを認識しましょう。
基本構造についての詳細解説
基本構造について、さらに詳しく解説していきます。
セットアップについて
セットアップとは、環境もしくは条件がちゃんと整っているかどうか確認作業をするということです。
大きく分けて、「相場の確認作業」と「個別銘柄のセットアップ」に分かれます。
相場の環境確認というのはどういうことかというと、例えば、自分が「何か銘柄を買おうかな」と考えていた時、全体相場(日経平均や為替市場、債券市場、経済のマクロ指標)の環境が、買いに対して「プラスに働いているか」「マイナスに働いているか」ということを、まずは「大枠で確認していきましょう」ということです。
つまり、為替がドル高円安に向かっていれば、日本株にとってプラスに働くので「買いだったら有利に働く」いわゆる後追いの後押しが得られるということです。
当然、円高に向かっている時に買うと結果を出すのは厳しくなります。
まずは、大枠の確認をするようにしましょう。その後に個別銘柄のセットアップをしていきます。
個別銘柄のセットアップとはどういうことかというと、前回トレンドの定義のところでもお話しましたように、今は「レンジなのか」「トレンドの動きなのか」を確認しましょうということです。
レンジとトレンドによって売買戦略は変わってきます。
セットアップはあくまでも確認作業です。すぐにエントリーするということはありません。
まずは、しっかりとベースを確認して、自分が決めたシグナルが達成したときに初めてエントリーという行動に繋がっていきます。
ここの認識を間違えないようにしましょう。
トリガーについて
トリガーとはある意味シグナル。セットアップを経て、エントリーの行動に直接繋がるものがトリガーです。
その中でも、私がオススメするのはTDトラップという手法。こちらの手法については後ほど、詳しく解説したいと思います。
フォロースルーについて
エントリーをしたら、ある一定期間株式を保有することになります。
1分後、1週間後、1ヶ月後、どの時点で決済しても一定期間株式を保有する。そのことをフォロースルーと言います。
エントリーしたら「どこで利益確定するのか」「何日後に利益確定するのか」あるいは「何パーセント下がったらそこで損切りするのか」ということは、事前にシナリオとして組んでおかなければいけません。
要するに、エントリーしたときには、すでに次の行動が決まっているということです。
ここで重要なのが、自分が戦う局面を明確に持つということ。戦いやすい局面や自信がある局面に絞って短期売買を行うようにしましょう。
実際のチャート画面で解説
それでは、実際のチャートで実践してみましょう。
今回は、サニックス(4651)のチャートを参考に解説していきたいと思います。
もともと低位株に属している銘柄でしたが(2013年の時点)、太陽光が材料になり、かなり急激に上昇をしています。株価250円から1,700円まで上がりました。
仮に、急騰前にレンジで売買しようとしたとします。レンジというのは一定幅で動いているもの。
当然、セットアップというのは、下図の範囲でしか動きません。
こういう下限に到達したということは、1つの条件付けにしなければいけません。そうでなければ、セットアップは完了とはならないわけです。
例えば、前日の高値を抜けたところをシグナルとして、そこにトリガーが入ればエントリーということになります。
トレンドの場合は、明らかにレンジを抜き去ってトレンドモードに突入したという判断ができます。
それでは、こういうトレンドが出た時、どこでエントリーしていけば良いのでしょうか。
やり方としては2つあります。1つは高値を抜けた時にエントリーする場合、もう1つは調整を入れたところを待ってエントリーする場合です。
サニックスの場合は一旦調整を入れているのですが、銘柄によってはそのまま上昇してしまう場合もあります。
2012年の暮れから2013年のはじめにかけて、IPS絡みで再生医療関連の銘柄、例えばナノキャリア(4571)やカイオム・バイオサイエンス(4583)がありました。
そういった銘柄のほとんどが、押し目を入れることなく急激に上昇しています。
一旦調整を待つということをセットアップにした場合、上昇し続けてしまったらその銘柄は追わないという判断が適切です。
それでは、下図のように、完全にレンジを抜けた場合はどうしたら良いのでしょうか。
トレンドの定義に従って高値、上値とも切り上がっていく動きになると判断した場合は、高値を抜けた所でトリガーを入れる戦略になります。
つまり、自分が取ろうと思う方向に有利に働くか確認するのがセットアップ。まずは、そこをしっかりと理解しましょう。
TDトラップとは
例えば、下図のようにローソク足があったとします。
この場合のTDトラップはどこかというと、高値のあたりになります。この高値を抜けた所でエントリーをするということです。
そもそも、この高値の付近で新規の逆指値を入れておけば、ここで上手くヒットしてエントリーができるということになります。
こういった場合は、下図のように上昇が続くことが多いです。レンジの動きでも同じような動きになると思います。
これまでお話したのは買いのTDトラップでしたが、当然、売りのTDトラップもあります。
下に抜けてしまった場合、今度は直近の安値で売りのエントリーをします。
こうした直近のローソク足を使うこともあれば、何日か前の高値を元にする場合もあります。
例えば、下図のような動きになったとしましょう。
高値を大きく抜けた所でエントリーする。これもある意味TDトラップの一種です。レンジブレイクアウトという言い方をする場合もあります。
要するに、直近の高値・安値を抜けた所でエントリーするか、あるいは数日、もしくは数週間前の高値を抜けた所でエントリーします。
例えば、今解説に使用しているサニックスの場合は、大体2週間前の高値を抜けた所でエントリーすると良いでしょう。
ポイントとなる高値を抜けたところは、上昇の力が加速します。プログラムの売買が入っているので上図の丸印のように加速していくのです。
仮に、ここで上手くエントリーできれば、数日間ポジションを保有することができます。
さらに細かく見てみましょう。
下図の丸印のあたりのように、安値をブレイクしているあたりで売りの仕掛けができます。
このような動きはどんな銘柄でも起きます。一度、別のチャートでチェックしてみてください。
まとめ
今回は、短期売買を成功させるために重要な全体構造について解説しました。
「1.セットアップ」「2.トリガー」「3.フォロースルー」の三構造、しっかりと理解できたでしょうか。
チャートを使って実践的なお話もしました。
とにかく、TDトラップであれ、レンジブレイクアウトであれ、あくまでも「セットアップが整っている事が前提」ということを絶対に忘れない事が大切です。
プロも実践している三構造、順序を守ってステップを踏んでいけば、短期売買を成功させる事ができます。
しっかりと全体像をインプットしておきましょう。
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