2022年の年末相場はどうなる?株式市場はもちろん為替にも注意が必要

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

2022年の年末相場は、例年以上に為替相場に必要な展開となってきそうです。

年末相場はご祝儀相場で上がりやすいアノマリーがあると言われますが、2017年~2021年について振り返ってみると、下落展開が目立つ状況となっています。

とはいえ、年始の大発会においては、新年への期待を込めてご祝儀相場で買いが入りやすい展開となることも多く、注目銘柄は大きな値上がりとなりやすいことも確かです。

今回は、年末相場の特徴やアノマリー、2017年~2021年までの過去5年間の年末相場について振り返った上で、2022年の年末相場の動向や買われそうな銘柄、注意点について解説していきます。

この記事を読んで得られること
  • 年末相場の特徴やアノマリー、2017年~2021年までの過去5年間の年末相場について振り返れる
  • 2022年の年末相場の動向や買われそうな銘柄、注意点についてわかる
  • 2022年年末相場の注目材料について学べる

株式市場における年末相場とは?

株式市場における年末相場、2022年年末相場のカレンダーについて押さえておきましょう。

東証の年末相場とは?

東京証券取引所では、1年間の取引最終日は「大納会(だいのうかい)」、1年の初めに取引が開始される日は「大発会(だいはっかい)」と呼ばれており、大体的なイベントも開催されます。

年末の大納会では、その年の顔となった方をゲストに呼び、立会終了の鐘を鳴らすことが恒例行事です。

2021年の大納会では、2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公で、東京株式取引所の創設にも重要な役割を担った渋沢栄一を演じた、俳優の吉沢亮さんがゲストに迎えられました。

年始の大発会では、若い女性たちが晴着姿で参加して、1年の取引開始の鐘を鳴らすことが東証の風物詩となっています。

大納会は原則として12月30日となっており、12月30日が休日の場合はその直前の営業日となります。

大発会は原則として1月4日となっており、1月4日が休日の場合にはその翌営業日に行われます。

2022年の年末相場カレンダー

2022年の大納会は2022年12月30日(金曜日)、2023年の大発会は2023年1月4日(水曜日)と、大納会・大発会ともに原則通りの日程となっています。

大納会・大発会のイベント概要については、2022年10月末時点ではまだ発表されていませんが、今年はコロナ自粛も解禁されているため、例年通りに大体的に行われるものと見られます。

2022年の大納会・大発会カレンダー

年末相場の最大のリスクは、大納会から大発会の間は休場となることです。

2022年の年末相場は、大納会から大発会の休場期間は4日間と例年通りとなりますが、通常の週末に比べると持ち越し期間が倍になるリスクには気を付けておきましょう。

年末相場の特徴やアノマリー、買われやすい銘柄とは?

年末相場の特徴やアノマリー、買われやすい銘柄について押さえておきましょう。

年末相場の投資格言「掉尾の一振(とうびのいっしん)」

年末相場の特徴やアノマリーを表す相場格言として「掉尾の一振(とうびのいっしん)」という言葉が広く知られています。

「掉尾(とうび)」とは、物事の終わりの方になって勢いが盛んになることです。

つまり、「掉尾の一振」とは、年の終わりの大納会に向けて株価の勢いが増すという意味で使われます。

株価が年末に掛けて上昇する背景としては、機関投資家が年内に含み損を解消するための売りが一巡してから、年末に掛けて決算目的のドレッシング買いをすることが要因の一つと考えられています。

年末相場に買われやすい銘柄とは?

年末相場は「掉尾の一振」と言われていますが、近年の年末相場を見てみると、大納会には下げている展開が目立っており、「掉尾の一振」のアノマリー通りにはなっていないと言わざるを得ません。

ただ、年末の大納会に向けては売られる展開が目立つ一方で、年始の大発会からはご祝儀相場となって上げている展開が見られます。

特に、新年において期待されるテーマ株は、ご祝儀相場として買われやすい傾向があると言えます。

2018年の年末相場は米中貿易摩擦ショックによって大きく下げましたが、日本では新元号が期待されていたことから新元号関連銘柄が大きく上がりました。

包装資材や紙製品製造大手の【7919】野崎印刷紙業は、カレンダー大手としても知られており、新元号への期待から2018年の年末相場には大きく買われました。

2018年末の【7919】野崎印刷紙業の日足チャート

野崎印刷紙業の株価は、2018年12月25日には292円まで下落していましたが、2019年1月8日は一時458円まで上昇し、年末相場だけで最大+50%以上の上昇となりました。

また、2019年から2020年に掛けての年末相場は、イラン問題を受けて大きく下げましたが、防衛関連銘柄は大きく上昇。

海上自衛隊向けの機雷などを手掛ける【6208】石川製作所は、2020年の大発会からストップ高となりました。

2019年末の【6208】石川製作所の日足チャート

石川製作所を始め、【4274】細谷火工や【6203】豊和工業などの防衛関連銘柄は2019年の年末相場では最注目テーマ株となりました。

2020年から2021年に掛けての年末相場では、2020年秋から脱炭素が世界的テーマとなっていたこともあり、水素関連銘柄や再生可能エネルギー関連銘柄といった脱炭素関連株が大きく上昇しました。

日本国内で水素のトップシェアを誇る【8088】岩谷産業などの脱炭素関連株は、2020年12月から2021年1月の年末相場に大きく買われる展開に。

2020年末の【8088】岩谷産業の日足チャート

年末相場は相場全体が大きく動きやすいことから、注目銘柄や注目テーマはより大きく動きやすい傾向があります。

直近5年間(2017年~2021年)の年末相場の株価動向を解説!

直近5年間(2017年~2021年)の年末相場を、日経平均株価の動向から振り返ってみましょう。

2017年の年末相場

2017年の年末相場は、大発会からご祝儀相場となり上昇となりました。

2017年末の日経平均株価の日足チャート

2017年の大納会は12月29日、2018年の大発会は1月4日でした。

大納会は横ばいでしたが、大発会以降は大きく上げたことが分かります。

2018年の年末相場

2018年の年末相場は、米中貿易摩擦ショックの煽りを受けた暴落相場となりました。

2018年末の日経平均株価の日足チャート

2018年の大納会は12月28日、2019年の大発会は1月4日となり、休場日が例年より2日多くなっていました。

日経平均は、2018年10月に付けていた24,000円台から、12月には一時20,000円台を割り込む展開に。

大納会・大発会ともに下落となり、米中貿易摩擦による暴落相場の影響が年末相場にも現れていたことが分かります。

日本では新元号が期待されており新元号関連銘柄は買われましたが、全体相場まではご祝儀相場とはなりませんでした。

ただ、日経平均はこの年末に安値を付けて、2019年は緩やかな上昇相場となりました。

2018年の年末相場は絶好の押し目だったことになります。

2019年の年末相場

2020年がオリンピックイヤーとなることが期待された2019年の年末相場は、年末相場特有の持ち越しリスクが表出してしまう展開となりました。

2019年末の日経平均株価の日足チャート

2019年の大納会は12月30日、2020年の大発会は1月6日となり、休場日が例年より2日多くなっていました。

大納会は下落し、大発会にも大きく下げました。

大発会に大きな下落となった背景には、2020年1月3日にアメリカがイラン革命防衛隊司令官のソレイマニ氏を殺害したと声明を出したことで、中東リスクが再燃したことが要因です。

まさに、年末相場の持ち越しリスクが出てしまったと言えます。

その後、イラン問題は収束して株価も戻っていきましたが、株式市場は新型コロナウイルスというさらなる大きな問題に直面していくことになります。

2020年の年末相場

新型コロナ相場となった2020年の年末相場は、大きな値動きとなりました。

2020年末の日経平均株価の日足チャート

2020年の年末相場は、11月にファイザー・モデルナが新型コロナワクチン開発に成功したことを受けて、世界的に株価が一段高となった中で迎えました。

また、2020年秋には世界的な脱炭素やEVシフトの波が吹き荒れたことで、EVや再生可能エネルギー、水素といった脱炭素テーマ株が急騰。

なお、日本では新型コロナ第三波が猛威を振るっており、ワクチン開発のニュースがあったとはいえ、延期されたオリンピックの開催は絶望的な風潮となっていました。

2021年の年末相場

東京オリンピックが無事に開催された2021年の年末相場は、特に大きな動きもなく平穏だったと言えます。

2021年末の日経平均株価の日足チャート

2021年の年末相場は、大納会には売られ、大発会には上げました。

ただ、2021年11月には、米国FRBがインフレ対策のための積極利上げ路線に舵を切ったことが、株式市場にとってはリスク要因に。

2022年の世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻という新たなリスクと向き合っていくことになるとともに、世界的なインフレや利上げにより、日本も急激な円安に見舞われることになっていきます。

なお、2022年1月時点の為替レートは、1ドル115円台となっていました。

2022年年末相場に買われそうなテーマ・銘柄候補

2022年年末相場に買われそうなテーマや銘柄候補について押さえておきましょう。

円安メリット関連銘柄(インバウンドなど)

2022年の年末相場に掛けては、円安による恩恵を受ける円安メリット関連銘柄に注目が集まりそうです。

円安メリット関連銘柄は、輸出に強い銘柄とインバウンド(訪日外国人観光客)に強い銘柄が主となりますが、特に注目されるのはインバウンド関連です。

2022年10月11日から水際対策が完全緩和されたことを受けて、インバウンド関連銘柄は東証で最も注目されているテーマ株の一つとなっています。

急激な円安は、日本経済にとってはデメリットの方が強いとされますが、日本旅行の価格競争力が上がり、インバウンドにとって追い風となることは数少ないメリットです。

具体的なインバウンド株としては、百貨店大手の【3099】ミツコシイセタンや【8233】高島屋、インバウンドに特化した旅行会社の【6561】HANATOUR JAPAN、リゾートホテル最大手の【4681】リゾートトラスト、AI翻訳機「ポケトーク」を手掛ける【4344】ソースネクスト、航空大手の【9201】JAL、【9202】ANA、羽田空港を運営する【9706】日本空港ビルデングなどが挙げられます。

インフレに関する銘柄(原発再稼働や生活防衛関連株)

2022年年末には、電気代やガス代などの値上げラッシュが注目されてくる可能性が高くなっています。

岸田政権は、インフレ抑制のための経済対策をするとしていますが、経済学的的にはインフレ下での財政出動はさらなるインフレを招く懸念材料にもなります。

電気代・ガス代の上昇は、原発再稼働への追い風になる可能性があり、柏崎刈羽原発の再稼働で注目される【9501】東京電力ホールディングスに注目が集まってくるかもしれません。

また、インフレが進むとなると、安さを売りにした生活防衛関連株にも注目が集まる可能性が出てきます。

生活防衛関連株としては、100円ショップの【2782】セリアや【2698】キャンドゥ、フリマアプリの【4385】メルカリ、「業務スーパー」を展開する【3038】神戸物産、格安販売店「ドンキホーテ」の【7532】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスなどが挙げられます。

クリスマスやコロナ・インフル対策などウィンターストック関連銘柄

2022年の年末相場に掛けては、円安・インフレ、インバウンド以外には、特に注目されるテーマやトレンドも見当たりませんが、冬特有のテーマに注目しておくことは悪くないかもしれません。

2022年のクリスマスは3年ぶりにコロナ自粛がないため、クリスマス商戦が盛り上がる可能性があります。

クリスマス商戦で注目されそうな銘柄としては、ゲーム・おもちゃ大手の【7974】任天堂や【7832】バンダイナムコホールディングス、宝石ブランドを手掛ける【8008】ヨンドシーホールディングス、ケーキ特需が期待できる【2211】不二家などが挙げられます。

また、新型コロナ・インフルエンザ対策も注目トレンドになってもおかしくありません。

インフルエンザ薬「タミフル」を手掛ける【4519】中外製薬、マスク大手の【3604】川本産業、石油暖房機大手の【5909】コロナなど、冬に業績が挙がりやすい銘柄を押さえておくとよいでしょう。

2022年年末相場の注意点

2022年年末相場の注意点を押さえておきましょう。

例年以上に為替相場には注意が必要になる

年末相場では為替相場の急激な動きが注意点となりますが、急激な動きをしている2022年の年末相場では、より一層注意が必要になってきそうです。

ドル円相場は、2022年10月21日には一時1ドル151円台まで円安ドル高が進みましたが、為替介入などもあり、10月28日時点では1ドル145~146円台まで戻ってきています。

日米の金利差拡大によって円安がさらに進行するとの見方もありますが、米国利上げが鈍化することで円安が一服する可能性もあるため、今後の動向はしっかりと見極めていく必要があります。

米国FRBの金融政策を左右する米国CPIはもちろん、日銀の金融政策や為替介入といった情報は要チェックしておくようにしましょう。

ウクライナ情勢による持ち越しリスクもあり得る

年末相場の最大のリスクは、大納会から大発会の期間までに最短4日以上の持ち越し期間が発生してしまうことです。

この期間中にイラン問題が発生した2019年の年末相場では、まさにこのリスクが現実化してしまいました。

2022年の大納会は12月30日、2023年の大発会は1月4日となっており、持ち越し期間は最短の4日間です。

2022年の年末相場では、ウクライナ情勢が気になります。

ウクライナが善戦していることでロシアは苦戦していますが、プーチン大統領は核兵器の使用も示唆しており、予断を許さない状況となりつつあります。

過去の年末相場を見ると、年始の大納会に保有していたとしても、大発会の寄り付きに特別大きな上昇となったケースはほとんどなく、大発会の寄り付きから買ってもご祝儀相場に乗ることができました。

持ち越しリスクを最小限とするため、大納会に利益確定して、大発会の寄り付きに買い戻すという投資戦略を取ることもアリと言えるでしょう。

ただ、利益確定することで税金が確定してしまうことには注意しておきましょう。

長期投資をしている場合にはそのまま保有しておくことが賢明です。

大納会には利益確定売りが出やすい

年の終わりである大納会には、機関投資家やヘッジファンドがその年の利益確定をするための売りが出やすい傾向にあります。

2022年の年末相場は、米国利上げにウクライナ情勢など、世界経済リスクが高まっていることが懸念されています。

少なくとも、「年末相場だから、ご祝儀相場になる!」と安易に考えるのではなく、株価チャートを見るなどして年末相場に至るまでの相場展開を確認しておくことが重要です。

まとめ

今回は、年末相場の特徴やアノマリー、2017年~2021年までの過去5年間の年末相場について振り返った上で、2022年の年末相場の動向や買われそうな銘柄、注意点について解説してきました。

2022年の大納会は2022年12月30日(金曜日)、2023年の大発会は2023年1月4日(水曜日)となっており、持ち越しリスクは最短の4日間となっています。

2022年の年末相場は、例年以上に為替相場の動向に注意が必要な展開となってきそうです。

米国利上げによって急激に進む円安に加えて、電気代などのインフレや、核兵器使用の可能性もあるウクライナ情勢なども、2022年年末相場の注目材料となります。

年始の大発会には、その年に期待されるテーマ株がご祝儀相場で買われやすい傾向にあるため、2023年の大発会には、円安メリットを受けているインバウンド関連銘柄などが注目されるかもしれません。

紫垣 英昭