株式投資で見るべきおすすめ指標9選!「PER」や「PBR」をわかりやすく解説

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

株式投資に役立つ指標を知っているだけでも、成果は大きく変わります。

株式投資に指標を活用すれば、企業の収益性や安全性から株価を予測することもできるようになり、企業の価値や財務状況を比較することも可能です。

そこで今回は、株式投資をする上で特にチェックしておくべき代表的な9つの経済指標について解説していきます。

指標を使った銘柄比較の実例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を読んで得られること
  • 株式投資に役立つ指標がわかる
  • 株式投資をする上で特にチェックしておくべき代表的な9つの経済指標がわかる
  • 指標を使った銘柄比較の実例がわかる

株式の投資判断に役立つ指標9選

ここでは、株式投資の判断に役立つ主な指標を9つ紹介していきます。各指標の計算式や具体的な活用方法も詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

株あたり利益(EPS)

EPS(Earnings Per Share)とは「1株あたり利益」のことです。

投資した会社が「1株でどの程度の利益を上げているのか」を知りたいときに役立ちます。

計算式は次のとおりです。

EPS=当期純利益÷発行済株式総数

A社:発行済株式総数10万

EPS=1億円÷10万=1,000円/1株

 

B社:発行済株式総数20万

EPS=1億円÷20万=500円/1株

このケースの場合、1株あたり利益が高いのはA社いうことになります。

なお、EPSの数値が伸びれば収益が高まっていると判断できるため、将来的に株価が上がる可能性も高くなります。

株価収益率(PER)

PER(Price Earnings Ratio)とは、株価がEPS対して割安なのか、割高なのかが判断できる指標です。

株価収益率とも呼ばれます。

計算式は次のとおりです。

PER=株価÷EPS

EPSと株価を見れば、「1株あたり当期純利益」の何倍で株が買われているのかがわかります。

たとえば、EPSが400円A社株が4,000円だった場合、PERは10倍です。

一般的に、同業他社や過去の数値と比較してPERが低いときは株価が割安、高ければ割高と判断されます。

しかし、投資家の評価が過大になっているケースも多く、場合によってはPERが100倍を超えることもあります。

 

このような銘柄は、突然の失望売りによる大暴落を引き起こす可能性があるので注意が必要です。

1株あたり純資産(BPS)

BPS(Book-valuePerShare)とは、1株に対して企業が保有している純資産を示す指標です。

計算式は下記となります。

BPS=純資産÷発行済株式総数

BPSが高いほど負債が少なく、純資産は多くなります。

すなわち、安定性の高い会社であると判断できます。

具体的な例で見てみましょう。

A社:株価1,500円、BPS1,000円

B社:株価1,500円、BPS2,000円

A社もB社も株価は同じですが、A社の株価はBPSより高いので、株価が割高と判断できます。

一方、B社は株価よりもBPSの方が高いので、株価が割安と判断できます。

株価純資産倍率(PBR)

PBR(Price Book-value Ratio)とは、BPSに対して株価が割安なのか、割高なのかを測る指標です。

株価純資産倍率とも呼ばれます。計算式は次のとおりです。

page3image35928512PBR(株価純資産倍率)=株価÷1株当たり純資産(BPS)

たとえば、株価が1,000円でBPSが500円の場合、500円分の純資産しかない株式に1,000円を払っているので、PBRは2倍となります。

一般的にPBRが高いほど割高な株と判断され、逆にPBRが1倍以下の株は割安と判断されます。

総資産利益率(ROA)

ROA(Returnon Assets)とは、総資産利益率のことです。計算式は下記となります。

総資産利益率(ROA)=当期純利益/総資産×100

ROAを求めれば、その企業が資産を活用してどれだけ効率的に利益を上げているのかがわかります。具体例を見てみましょう。

A社:当期純利益10億円総資産150億円

B社:当期純利益15億円総資産200億円

A社のROAは6.0%、B社は7.5%です。A社とB社が同業種の場合、ROAが高いB社の方が資産を効率的に活用して利益を上げていると判断できます。

自己資本利益率(ROE)

ROE(Return on Equity)とは、自己資本に対する当期純利益の割合を示す指標です。

自己資本利益率とも呼ばれます。計算式は次のとおりです。

自己資本利益率(ROE)=当期純利益/自己資本×100

ROEを求めると、株主が出資したお金を効率的に使って利益を上げているがどうかが分かります。

A社:当期純利益8億円 自己資本100億円

B社:当期純利益2億円自己資本10億円

A社のROEは8%、B社は20%です。

当期純利益だけを見るとA社の方が優れているように思えますが、ROEはB社の方が高いので、資本効率はB社の方が優れています。

従って、同じ金額を投資するなら、B社の方が大きなリターンを得られる可能性が高くなるのです。

株式投資の判断材料としてROEを使うときには、最低でも10%を目安にするといいでしょう。

15%なら相当な優良企業と判断できます。

なお、日本企業は海外の企業に比べてROEが低くなる傾向にありましたが、近年では10%を超える企業も目立つようになってきました。

配当利回り

配当利回りとは、投資した企業からどれだけ効率的に配当が得られているかを示す指標です。

計算式は下記となります。

配当利回り=1株配当÷株価×100(%)

たとえば、株価が100円で配当が2円の企業は、配当利回り2%です。

配当利回りが高いほど配当金額に対して株価が割安であると判断できます。

なお、日経225を構成している企業の配当利回りは平均1.8%前後です。

株主資本比率

株主資本比率とは、総資産に対する株主資本比率を示す指標で、財務の安定性を見る指標です。

計算式は下記となります。

page5image63133040page5image63131584株主資本比率=株主資本÷総資産×100(%)

株主資本比率が高い企業は財務の健全性も高いため、倒産の可能性が低くなります。

ただし、株主資本比率は業種によって大きく異なるので、異業種間の比較には適していません。

株式投資の指標にする場合は、同業種間の比較に使いましょう。

流動比率

流動比率とは、企業の短期的な支払い能力を示す指標です。計算式は下記となります。

流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)

「流動資産」とは、1年以内に現金化できる流動性の高い資産のことです。

「流動負債」は、1年以内に支払わなければならない負債を表します。

流動比率が高いほど支払い能力が安定していると判断できます。

逆に、流動比率が1を下回ると手元の資産では負債を返済できなくなるため、新たに資金を調達する必要があります。

株式投資の指標一覧

 

株式投資の指標を一覧にして再確認してみましょう。

指標の名称

計算式

使い方

EPS(1株あたり利益)

当期純利益÷発行済株式総数

高いほど優良

PER(株価収益率)

株価÷EPS

低いほど割安株

BPS(1株当たり純資産)

純資産÷発行済株式総数

高いほど優良

PBR(株価純資産倍率)

株価÷BPS

低いほど割安株

ROA(総資産利益率)

当期純利益/総資産×100(%)

高いほど優良

ROE(株主資本利益率)

当期純利益/自己資本×100(%)

高いほど優良

配当利回り

1株配当÷株価×100(%)

高いほど割安株

株主資本比率

株主資本÷総資産×100(%)

高いほど優良

流動比率

流動資産÷流動負債×100(%)

高いほど優良

見るべき指標はたくさんありますが、株式投資には欠かせない知識なので、できるだけ覚えるようにしましょう。

株式投資指標の簡単な覚え方

PERやPBR、ROEといった指標は、真ん中のアルファベットに着目すると簡単に覚えられます。

たとえば、PERとPBRはどちらも「企業の実力に対して株価が何倍なのか」を表します。

そこで、PER(株価収益率)は真ん中の「E」を「益(Eki)」と覚え、PBR(株価純資産倍率)は真ん中の「B」を「簿価(Boka)」と覚えます。

ROE(自己資本利益率)も「O」に注目して「己(Onore)」と覚えましょう。

なお、この3つの指標には「PER=PBR÷ROE」「PBR=ROE×PER」「ROE=PBR÷PER」という関係が成り立ちます。これを覚えやすい図にしたものが下記です。

並び順は、それぞれ真ん中のアルファベットを取って「BOE」と覚えます。

この図を覚えておけば、ROEの計算式がわからなくても、PERとPBRから求められます。

PERとPBRも同様です。

世界の株価指標もチェックしよう

日本の株式市場は、世界の市場と連動するケースが少なくありません。

とくに米国市場と日経平均の月間騰落率には相関があるとされています。

そこでここからは、アメリカの主な株価指標をご紹介していきます。

NYダウ

NYダウとは、米国の代表的な株価指数です。ナスダックやニューヨーク証券取引所に上場している主要30銘柄から構成されています。正式名称は「ダウ工業株30種平均」です。

NYダウは米国経済だけではなく、世界全体の経済を読み解くヒントとしても役立ちます。

S&P500

S&P500とは、米国の代表的な500銘柄を時価総額で加重平均した指数です。

米国株式市場の時価総額のうち約80%を網羅しているので、米国市場全体の動向を知りたいときに活用できます。

ナスダック総合

ナスダック総合指数とは、ナスダックに上場している銘柄約3,000以上の株価指数です。

ハイテク関連やインターネット関連銘柄の動向を把握したいときに使えます。

ラッセル2000

ラッセル2000とは、米国の代表的な小型株指数です。ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している約5000の銘柄から、時価総額上位1001位~3000位の企業を選んでインデックスを出しています。

ラッセル2000の動向を見れば、大企業の株価推移を除外した市場の動向を確認することが可能です。

なお、同様の指数に「ラッセル1000」や「ラッセル3000」があります。

まとめ

今回は、株式投資をする上でチェックしておきたい代表的な9つの指標をご紹介しました。

1度に多くの指標を活用するのはなかなか難しいですが、最低でもROEとPBR、PERはチェックしておきたいところです。

株価が割安なのか、割高なのかを判断できるだけではなく、財務状況を知ることで倒産リスクを下げられます。

日本経済は世界経済やアメリカ経済の影響を大きく受けるので、「NYダウ」や「S&P500」もチェックしておくといいでしょう。

ただし、これらの指標はあくまで参考指標の一つに過ぎないことには注意が必要です。

指標だけにとらわれることなく、指標を有効活用して株式投資に役立てていきましょう。

紫垣 英昭