紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
NFT(非代替性トークン)が、経済やマーケットで大きな注目を集め出しています。
特に、アメリカのIT大手Facebookが、仮想空間事業「メタバース」に力を入れる方針により社名をMetaに変更したことを受けて、マーケットは「メタバース相場」に沸くとともに、メタバースと関わりがあるNFT関連銘柄も買われることになりました。
NFTには仮想通貨と同じブロックチェーン技術が用いられていますが、仮想通貨市場においても「エンジンコイン(ENJ)」に代表されるNFT仮想通貨が注目を集めています。
今回は、NFTの基本からメタバース・仮想通貨との関わりについても解説した上で、日本株で注目されるNFT関連銘柄について紹介していきます。
- NFTの基本からメタバース・仮想通貨との関わりについてわかる
- 日本株で注目されるNFT関連銘柄についてわかる
- NFT関連銘柄についてチャート付きでわかる
NFT(非代替性トークン)とは?
NFTとは、ブロックチェーン技術を使って情報の改ざんを防ぐデジタルデータのことです。
NFTは「Non-Fungible Token」の略称で、「非代替性トークン」とも呼ばれています。
なお、「トークン」とは、仮想通貨業界において、既存のブロックチェーン技術を利用して発行された仮想通貨のことを指して使われる言葉です。
NFTと仮想通貨はやや異なりますが(NFTと仮想通貨の違いについては後述しています)、「トークン」とは「ブロックチェーン技術で発行される通貨」のことだと認識しておけばよいでしょう。
「非代替性トークン」という言葉が意味するように、NFTは他に取り替えの効かないトークンのことを指します。
NFTは、コンテンツやデジタルアイテム、デジタルデータの希少性を証明する用途で使われています。
従来、画像やファイルなどのデジタルデータは、PCやスマホで簡単にコピーできてしまうものでした。
このため、音楽や漫画、映画といったコンテンツを違法に配信する海賊版サイトが問題となり、違法漫画サイト「漫画村」は社会問題に発展するまでにもなりました。
デジタルデータの著作権を持つ権利者がNFTを使ってファイルに署名すれば、公式ファイルとしての証明となり、第三者がコピー・改ざんすることはできなくなります。
また、有名人によるSNS上の書き込みなどについても、本人がNFTで署名すれば、本人によるものであることの証明となります。
NFTは、情報化社会全般における価値の証明手段として広く使われることが期待されています。
NFT関連銘柄はメタバースバブルで大きな注目を集めている
NFTは、メタバース(仮想空間)での利用が広まることが期待されています。
まることが期待されています。
「メタバース」(仮想空間)はNFTとも重要な関わりを持つ
メタバースとは、コンピュータやコンピュータネットワーク上に構築された3次元の仮想空間のことです。
かつて2000年代後半には、仮想空間サービス「セカンドライフ」が世界中で流行することとなりましたが、一過性のブームに終わってしまいました。
2010年代はSNSの時代となり、仮想空間はほとんど話題になることはなかったと言えます。
ただ、2020年代には、VR・ARといった仮想空間の臨場感を高めるテクノロジーが進歩し、さらにはAIや半導体なども急発展していることから、仮想空間の精度が「セカンドライフ」の時代とは比べ物にならないほど上がってきています。
近年、仮想空間は「メタバース」と呼ばれており、次世代の成長セクターとして株式市場においても重要テーマの一つです。
NFTは、メタバース内において、デジタルデータの権利や資産の証明をするために使われることが期待されています。
メタバース内で、利用者がデジタルデータのやり取りを円滑に行うためには、その価値の証明としてNFTの利用が欠かせないのです。
FacebookがMetaに社名変更でメタバース相場が到来!
2021年10月から11月に掛けては、日本を含む世界中のマーケットに“メタバース相場”が到来しました。
この背景にあったのは、アメリカのIT大手Facebookがメタバース事業に注力する方針を受けて、社名をMetaに変更したことです。
Facebookは、SNS「Facebook」「Instagram」ともに利用者数が鈍化してきており、SNS事業からメタバース事業に注力する方針を積極的に示しています。
Meta(Facebook)の動きを受けて、メタバース事業を手掛けているメタバース関連銘柄は全面高に。
アメリカ市場では、ゲーム機や人工知能向け半導体「GPU」の世界的企業である【NVDA】NVIDIA(エヌビディア)が、メタバースによるGPU需要増を期待されて一段高となりました。
NVIDIA(エヌビディア)の時価総額は、GAFAMやテスラに次ぐ規模となっており、半導体企業としては世界一となっています。
日本市場でも、【3632】グリーや【3976】シャノン、【6879】IMAGICA GROUPなど、メタバース事業に少しでも関わっている銘柄であれば買われ、メタバース関連銘柄は全面高商状となりました。
特に、メタバースファッション事業への進出を発表した【3083】シーズメンは、1ヶ月で9倍以上の暴騰となる狂乱相場となっています。
【3083】シーズメンの日足チャート
メタバース相場の到来を受けて、メタバースにおいても重要な役割を果たすと期待されるNFT関連銘柄も物色される展開となっています。
NFTと仮想通貨
NFTと仮想通貨は、いずれもブロックチェーン技術を使って発行された通貨(トークン)であるという点で共通していますが、いくつかの点で異なる点もあります。
また、メタバースによってNFTの注目度が高まったことを受けて、仮想通貨市場ではNFT仮想通貨にも注目が集まっています。
NFTと仮想通貨の違いとは?
NFTと仮想通貨の最大の違いは、NFTは非代替性トークンであるのに対し、仮想通貨は代替性トークン(Fungible Token)であることです。
非代替性トークンと代替性トークンの違いを押さえてきましょう。
「代替性トークン」とは、同じ機能を有するなら、全てが同じ価値であるとみなされるものです。
例えば、代替性トークンであるビットコインの価値は、他のビットコインで代替することが可能です。
代金の支払いをビットコインによって行う場合、ビットコインAを使っても、ビットコインBを使っても、その価値は同じであるため問題ありません。
これが「代替性トークン」と言われるものであり、通常の貨幣や株式においても同様です。
平成元年に製造された500円玉を使っても、令和元年に製造された500円玉を使っても、その価値は代替することが可能であるため、同一の価値を持ちます。
一方、「非代替性トークン」は、同じ機能を有するとしても、それぞれが異なる価値を持つものとなります。
例えば、全く同じ機能を持つTシャツがあったとしても、NFTによって署名されていれば、唯一無二の価値があるとみなされます。
|
NFT(非代替性トークン) |
代替性トークン |
概要 |
同じ機能を持っていても、唯一無二の価値 |
同じ機能ならば同じ価値 |
例 |
有名人のサイン入りアイテム、ゲーム内資産、アート作品など |
仮想通貨、貨幣、株式など |
仮想通貨市場でもNFT仮想通貨に注目が集まる
仮想通貨市場においても、「NFT仮想通貨・関連銘柄」という仮想通貨に注目が集まっています。
「NFT仮想通貨・関連銘柄」とは、NFTに使われているブロックチェーン技術を使って、ゲームやアートといった特定のプラットフォーム向けに開発された仮想通貨のことです。
「NFT仮想通貨・関連銘柄」は通常の仮想通貨とは異なり、代替不可能となっており、分割できず、他の価値とは交換できない点が特徴となっています。
特に注目されている代表的なNFT仮想通貨としては、「エンジンコイン(ENJ)」が挙げられます。
「エンジンコイン(ENJ)」は、世界的人気ゲームの「マインクラフト」を始め、ゲーム向けに開発されたNFT仮想通貨です。
「エンジンコイン(ENJ)」の価格は、2021年に入ってから上がっており、世界中のマーケットがメタバースバブルに沸いた2021年10月から11月に掛けて一段高となったことが分かります。
NFT関連銘柄
日本株で注目されるNFT関連銘柄を見ていきましょう。
【3121】マーチャント・バンカーズ
不動産投資・仲介業を手掛ける【3121】マーチャント・バンカーズは、東証では最も注目されているNFT関連銘柄の一つです。
同社は、子会社のMBKブロックチェーン社がNFT売買プラットフォームを運営していることから、NFT関連銘柄に位置付けられています。
【3121】マーチャント・バンカーズの月足チャート
マーチャント・バンカーズの株価は、メタバース相場となった2021年10月から11月に掛けて大きく買われたことが分かります。
NFTが、いかにメタバースにとって重要なのかを示す動きとも言えますが、12月に入ってからは暴落していることには注意が必要です。
【8783】GFA
不動産投資事業を展開する【8783】GFAは、NFT関連銘柄として物色されている銘柄です。
同社は2021年10月6日、NFTを保管するウォレットなどを独自開発していくことを発表し、NFT関連銘柄として物色される運びとなりました。
【8783】GFAの月足チャート
GFAの株価は、長期的には大きく下げていますが、メタバース相場となった2021年11月に大きく反応しました。
上図チャートは対数表示となっていることからあまり大きな反発には見えませんが、低位株から約2倍の反発となっています。
【3739】コムシード
パチンコ関連のモバイル向けコンテンツを手掛ける【3739】コムシードは、NFT関連銘柄として注目される銘柄です。
なお、同社は名証セントレックス上場銘柄となっています。
同社は2021年11月25日、韓国最大の総合デジタルマーケティンググループであるFSN社とNFTゲーム事業に関する基本合意書を締結したと発表しました。
【3739】コムシードの月足チャート
コムシードの株価は、韓国企業とのNFTゲーム事業締結のニュースを受けて大きく反発しました。
【2437】Shinwa Wise Holdings
高級絵画や陶磁器などを手掛けるオークション最大手【2437】Shinwa Wise Holdingsは、NFT関連銘柄に位置付けられる銘柄です。
同社は2021年3月17日、同社が扱うアート作品においてNFT生成・販売事業を開始すると発表しました。
【2437】Shinwa Wise Holdingsの月足チャート
Shinwa Wise Holdingsの株価は、NFT事業を発表した2021年3月には一時的に買われました(上図赤丸)。
しかし、それ以後は売られ続けており、メタバース相場となった2021年10~11月にも物色されてはいません。
【3758】アエリア
スマホゲーム開発を手掛ける【3758】アエリアも、NFT関連銘柄に位置付けられています。
同社は2021年3月31日、子会社のサクラゲート社が音楽専門のNFTマーケットプレイス「The NFT Records」を開始すると発表しました。
【3758】アエリアの月足チャート
アエリアの株価は、長期的に大きく下落しています。
2021年3月末にNFT事業を発表した際には一時ストップ高になるなど買われましたが(上図赤丸)、2021年10~11月のメタバース相場ではほぼ無反応です。
【2743】ピクセルカンパニーズ
ゲームアプリコインや地域共通通貨、カジノ向け決済用暗号通貨などを手掛ける【2743】ピクセルカンパニーズは、NFTにも力を入れていることで知られています。
同社は、NFT/ブロックチェーンコンテンツの開発を手掛けており、2021年10月22日には、ブロックチェーン・AI製品の開発を行うXクリエーション社、マレーシアのゲーム開発会社TRICOA社とNFT/ブロックチェーン用いたゲーミングアプリケーションの提供に向けて基本合意したと発表しています。
【2743】ピクセルカンパニーズの月足チャート
ピクセルカンパニーズの株価は下落が止まらず、100円未満のボロ株領域に突入してしまっています。
【3845】アイフリーク
携帯向けデジタルコンテンツ事業を展開する【3845】アイフリークは、NFT事業を発表して買われたNFT関連銘柄です。
同社は2021年12月8日、ブロックチェーン関連のコンサルティングやシステム開発を手掛けるHashPort社と、NFTマーケットプレイスの開設などNFT分野での契約を締結したと発表しました。
※※※(図解イメージ):【3845】アイフリークの月足チャート
アイフリークの株価は、直近のNFT提携発表ニュースを受けて買われています。
【3661】エムアップホールディングス
アーティストの有料ファンサイト運営などのコンテンツ配信を手掛ける【3661】エムアップホールディングスも、NFT関連銘柄に位置付けられます。
同社は、2021年12月1日、音楽アーティストのファンサイト運営を手掛ける子会社Fanplus社がNFTマーケットプレイス「Fanpla Owner」を2022年2月にオープンすると発表しました。
【3661】エムアップホールディングスの月足チャート
エムアップホールディングスの株価は順調ですが、NFT関連銘柄として物色された形跡は特に見当たりません。
NFTに関連する仮想通貨関連銘柄
NFTは仮想通貨と同じブロックチェーン技術を使ったトークンということもあり、NFTに強い仮想通貨関連銘柄もいくつか押さえておきましょう。
【8698】マネックスグループ
ネット証券大手「マネックス証券」を展開する【8698】マネックスグループは、傘下に大手仮想通貨取引所「コインチェック」を持つことから、代表的な仮想通貨関連銘柄となっています。
仮想通貨取引所「コインチェック」ではNFTと仮想通貨を交換可能になっており、NFT仮想通貨「エンジンコイン(ENJ)」に投資することも可能です。
【8698】マネックスグループの月足チャート
マネックスグループの株価は、世界中がメタバース相場となった2021年10~11月に大きく買われました。
ただ、この背景には、ビットコイン高騰や、米国子会社のトレードステーショングループ社がニューヨーク証券取引所に上場する思惑などが重なった結果とも見られています。
【3825】リミックスポイント
仮想通貨取引所「ビットポイント」を運営する【3825】リミックスポイントも、代表的な仮想通貨関連銘柄として知られています。
同社は、2021年5月24日、NFT事業への参入を発表しています。
3825】リミックスポイントの月足チャート
リミックスポイントの株価は、ビットコイン価格が高騰している2021年に入ってから反発しています。
まとめ
今回は、NFTの基本からメタバース・仮想通貨との関わりについても解説した上で、日本株で注目されるNFT関連銘柄について紹介してきました。
NFTは、コンテンツやデジタルアイテム、デジタルデータの希少性を証明する用途で使われており、メタバース(仮想空間)でも重要な役割を果たすと期待されています。
2021年秋にはFacebookがMetaに社名変更したことでメタバース相場となり、NFT関連銘柄も【3121】マーチャント・バンカーズや【8783】GFAなどが大きく買われました。
NFTには新規企業の参入が相次いでおり、活気付いていることは間違いありません。
今後、NFT関連銘柄がマーケットでより注目されるテーマ株となっていくかどうかチェックしておくようにしましょう。
紫垣 英昭
この記事が気に入ったら
いいねしよう!
最新記事をお届けします。