紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
岸田総理は2022年9月22日の会見で、10月11日から地域ごとに旅行代金を補助する観光支援策「全国旅行割」の開始を発表し、入国者の上限撤廃や個人旅行の解禁などの「水際緩和」も発表しました。
全国旅行割は、2020年8月に株式市場でも注目された「Go To トラベルキャンペーン」の再来と期待されます。
水際緩和では、海外旅行の本格的な解禁になるとともに、円安も追い風にインバウンドが回復することが期待されます。
全国旅行割、水際緩和で注目のテーマ・銘柄をご紹介!2022年10月に最注目テーマとなる?
全国旅行割と水際緩和を受けて、株式市場では旅行株やインバウンド関連、ホテル株などに注目が集まってきそうです。
今回は、全国旅行割、水際緩和の概要について解説した上で、両政策で注目されそうなテーマ・銘柄について紹介していきます。
- 全国旅行割、水際緩和の概要についてわかる
- 両政策で注目されそうなテーマ・銘柄についてわかる
- 「Go To トラベルキャンペーン」の再来として注目される注目すべきテーマ株について学べる
岸田総理は2022年10月11日から全国旅行割、水際緩和を発表!
岸田総理は2022年9月22日の会見の中で、10月11日から観光支援策「全国旅行割」の開始を発表するとともに、入国者の上限撤廃や個人旅行の解禁などの「水際緩和」を行うことを発表しました。
全国旅行割とは
全国旅行割は、旅行代金の割引と旅行クーポン付与を行う観光需要対策です。
これまでは「県民割」として実施されてきた観光支援で、全国旅行割の名の通り、対象を全国に拡大したものとなります。
具体的には、旅行代金を1人当たり最大8,000円まで40%割引し、土産店や飲食店などで利用できる地域クーポンを平日3,000円、休日1,000円分が進呈され、代金割引とクーポン配布で1人1泊当たり最大1万1,000円支援されます。
ただ、全国旅行割の割引を受けるには、ワクチン接種3回以上か、PCR検査陰性の証明書などが必要となります。
全国旅行割の実施期間は、2022年10月11日から12月下旬までです。
また、全国旅行割と同時に、イベント支援策として「イベント割」も開始されます。
イベント割とは、映画、ライブやスポーツ観戦などのイベントチケット等が 最大2000円まで20%割引されるイベント需要喚起策です。
水際緩和とは
日本では、2022年6月から海外旅行の大幅緩和がされ、入国者数の上限が1万人から2万人に引き上げられ、9月からは5万人にまで引き上げられていました。
ただ、旅行者は団体観光客にのみ限定され、多くの場所でマスク着用が求められ、隔離が義務付けられているなど、日本ではインバウンドの完全解禁がされたとは言えない状況となっており、外国人観光客から不評の声が強かったことも確かです。
10月11日から実施される水際緩和では、1日あたりの入国者数の上限が撤廃され、訪日客の個人旅行、ビザなし渡航も解禁されます。
全国旅行割、水際緩和は旅行株に追い風になる?
株式市場においては、全国旅行割、水際緩和は旅行株やインバウンド関連銘柄に追い風になることが期待されます。
旅行株などのリオープン銘柄は出遅れ反発株になっている
新型コロナで需要が大きく落ち込み、株価も暴落状態となった観光・外食・エンタメ産業は、「アフターコロナ関連銘柄」や「リオープン銘柄」と呼ばれ、2020年以降は出遅れ反発株として注目されてきました。
2022年は、米国FRBの利上げやウクライナ情勢などを受けて世界的な株安となっていますが、旅行株などのリオープン銘柄は比較的堅調な値動きとなっています。
また、新型コロナからの人の動きの回復に伴って、良決算を発表する銘柄も増えており、着実に新型コロナ前に戻りつつあると言えます。
旅行株の代表銘柄としては、空運大手の【9201】JALや【9202】ANA、鉄道大手の【9020】JR東日本、【9021】JR西日本が挙げられます。
【9201】JAL(日本航空)の月足チャート
【9020】JR東日本の月足チャート
2022年は大きく下げる銘柄が多い中で、JAL・ANA、JR各社ともに大きく売られてはおらず、新型コロナ前の水準に向かって反発している様子がうかがえます。
全国旅行割は「Go To トラベルキャンペーン」の再来になる?
全国旅行割は、2020年7月から実施された「Go To トラベルキャンペーン」の再来になることが期待される政策です。
「Go To トラベルキャンペーン」は2020年末から中断しており、全国旅行割は1年10ヶ月ぶりとなる全国規模での観光支援策となります。
2020年7月から実施された「Go To トラベルキャンペーン」は、賛否両論あったものの、新型コロナで壊滅状態に陥っていた観光産業にとっては救いの一手となる政策でした。
株式市場においても、当時の新型コロナ相場で暴落状態となっていた旅行株が大きく買われる材料となりました。
次のチャートは旅行大手【9603】エイチ・アイ・エスの2020年夏の週足チャートとなります。
【9603】エイチ・アイ・エスの週足チャート(2020年)
エイチ・アイ・エスの株価は、2020年7月末に大きく下げていた所、「Go To Travelキャンペーン」を契機に大きく反発していくことになりました。
今回の全国旅行割は、「Go To トラベルキャンペーン」の再来となり、旅行株全般に大きな買いが入ることが期待されます。
水際緩和では、インバウンド関連銘柄に追い風期待!
水際緩和で注目されるのが、インバウンド関連銘柄です。
日本政府観光局(JNTO)が発表した訪日外国人観光客のデータは次のようになっています。
訪日外国人観光客の推移
※出典:日本政府観光局(JNTO)「国籍/月別 訪日外客数(2003年~2022年)」
2019年には3,188万人と過去最多になっていた訪日外国人観光客は、新型コロナによって市場そのものが消滅してしまった形となりました。
今回の水際緩和によって、新型コロナ前のインバウンド水準に本格的に戻っていくことが期待されます。
さらに、2022年は米国利上げによる日米の金利差拡大や、日本の貿易赤字の拡大などを受けて、急激な円安が進行していることも、インバウンドにとって追い風となります。
外国人観光客が増えれば、円を買う動きが強まることになるため、円安の進行にとっても緩和材料になるかもしれません。
全国旅行割、水際緩和で注目されそうなテーマ・銘柄!
全国旅行割、水際緩和で注目されそうなテーマや銘柄について押さえておきましょう。
旅行株
旅行株は、全国旅行割、水際緩和で最も注目されるセクターです。
空運大手の【9201】JALと【9202】ANA、鉄道大手の【9020】JR東日本や【9021】JR西日本は基本的な銘柄として押さえておきましょう。
旅行会社大手の【9603】エイチ・アイ・エス、同じく旅行会社大手「近畿日本ツーリスト」を運営する【9726】KNT-CTホールディングスも基本銘柄となります。
ややリスクが大きい銘柄としては、旅行比較サイト「トラベルコ」を運営する【3926】オープンドア、航空券予約サイト「スカイチケット」を運営する【6030】アドベンチャー、航空券予約サイト「エアトリ」を運営する【6191】エアトリなどは、新型コロナ相場以降に数倍になった銘柄です。
【6030】アドベンチャーの月足チャート
インバウンド関連
訪日外国人観光客向け事業を手掛けるインバウンド関連銘柄は、今回の水際緩和によって注目されるテーマ株です。
上述した旅行株と被る銘柄も多いですが、日本人を対象とした旅行からは連想されない銘柄も押さえておくようにしましょう。
具体的には、インバウンド向け旅行業を手掛ける【6561】HANATOUR JAPAN、自動翻訳機「ポケトーク」を手掛ける【4344】ソースネクスト、外国人観光客に人気の百貨店【8233】高島屋などが挙げられます。
【6561】HANATOUR JAPANの月足チャート
HANATOUR JAPANやソースネクストは、日本がインバウンド解禁に舵を切ったことから2022年に大きく反発している銘柄となっています。
また、外国人観光客に人気の商品としては化粧品が挙げられます。
【4911】資生堂などの化粧品セクターは、新型コロナでマスク社会になったことで化粧品需要が大きく落ち込んだことから株価はすぐれませんが、新型コロナの終焉やインバウンド回復によって反発に向かうことも期待されます。
ホテル株
ホテル株も、全国旅行割、水際緩和で業績が回復することが期待されます。
具体的には、高級ホテル「エクシブ」を展開するホテル首位の【4681】リゾートトラスト、ビジネスホテル「ドーミーイン」を展開する【9616】共立メンテナンス、ワシントンホテルや椿山荘を運営する【9722】藤田観光、高級ホテル「リーガロイヤル」を展開する【9713】ロイヤルホテルなどが挙げられます。
【4681】リゾートトラストの月足チャート
ホテル株は、旅行株やインバウンド関連銘柄に比べると大きな値動きはしていませんが、全国旅行割、水際緩和に関連して押さえておいて損はないセクターです。
イベント株
全国旅行割と水際緩和の陰に隠れていますが、スポーツ観戦や音楽ライブ、演劇などのチケット代が割り引かれる「イベント割」も開始されます。
イベント割に関連しては、イベントチケット販売最大手の【4337】ぴあや、アニメ映画大手の【4816】東映アニメーションなどを押さえておきましょう。
【4337】ぴあの月足チャート
ただ、2020年にも「Go To イベントキャンペーン」が実施されましたが、「Go To トラベルキャンペーン」「Go To イートキャンペーン」に比べると、イベント株は株式市場においてほとんど反応がありませんでした。
まとめ
今回は、全国旅行割、水際緩和の概要について解説した上で、両政策で注目されそうなテーマ・銘柄について紹介してきました。
全国旅行割は「Go To トラベルキャンペーン」の再来として、旅行株を中心に再び大相場が到来するかもしれません。
水際緩和では、円安も追い風に訪日外国人観光客が急増することは間違いなく、インバウンド関連銘柄を要チェックしておくようにしましょう。
全国旅行割、水際緩和で期待される旅行株やインバウンド関連銘柄は、「アフターコロナ関連株」や「リオープン銘柄」として出遅れ反発株となっているセクターであることも期待が高まります。
紫垣 英昭
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