初心者でも大丈夫!株式投資の基礎知識と株の始め方を解説

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

株式投資に初めて挑戦する方にとって、聞き慣れない用語や制度には戸惑うことも多いのではないでしょうか。

とはいえ、自分の大事な資産や将来の生活に関わる内容ですので、なるべくしっかりと覚えておきたいところです。

今回は株式投資にチャレンジしてみたい初心者の方に向けて、株式投資の基礎知識や取引までのおもな手順、知っておきたいポイントをまとめて解説します。

この記事を読んで得られること
  • そもそも株とは何か、株式投資の仕組みや上場市場など基礎知識を知ることができる
  • 証券会社選びから注文まで、株式投資の手順を知ることができる
  • 投資初心者が株式投資で失敗しないためのポイントがわかる

株式投資の基礎知識

まずは、株式投資を行なう前に理解しておきたい基礎知識について説明します。

そもそも株とは何か?

株は、企業が事業資金を調達するための仕組みのことです。

何か新しい事業を始めようとしたときや、事業の規模をさらに拡大しようとしたとき、企業は多額の資金を調達する可能性が出てきます。

状況によっては、この資金を投資家から募って株を購入してもらい、企業が成長した場合に利益を還元します。

「株を購入する」ということは、要は「企業に出資する」ということです。

出資者は、その企業の今後の成長を見込んで株を購入します。

ちなみに、株関連でよく出てくるキーワードとして、“上場”という言葉があります。

上場とは、証券取引所での売買を認められている状態を指すものです。

国内には数多くの株式会社が存在しますが、そのなかでも上場している企業はほんの一握りです。

企業が上場するには、経営状況など一定の基準を満たさなくてはなりません。

なお、日本国内では東京証券取引所が最も大きい規模の取引所となります。

東京証券取引所で開設されているのは、以下の4つの株式市場です。

  • 東証第1部:上場の難易度が高く、安定した大企業が多い市場
  • 東証第2部:知名度は低いが、老舗の大企業・中堅企業が多い市場
  • マザーズ市場:新興企業が中心の市場。東証第1部を目指す企業が多い
  • JASDAQ市場:新興企業が中心の市場。スタンダード市場・グロース市場に分かれる

株式市場によって、それぞれ上場している企業の特徴が異なります。銘柄を選ぶときには、上場している場所も併せてチェックしておきましょう。

株式投資の仕組み

ちなみに、株式投資では“値上がり益”を得られるように株を購入するのが一般的です。

値上がり益とは、株価が安いときに購入して値上がりしたときに売却することでその差額を利益として得る仕組みであり、売却のタイミング次第では大きく利益を得られる場合もあります。

企業は株を購入してくれた出資者に対して株券を発行し、業績が良ければ利益を配分します。

配分方法は配当金や株主優待などで、株を保有し続けると出資者にも還元される仕組みです。

ちなみに配当金をもらえるタイミングは決められていて、国内の株式の場合は年1~2回程度支払われます。

なお、株式優待は商品券や優待券、自社製品などが多数を占めます。

株主は株主総会での経営に関する議決権を1株につき1つ有し、株の持株比率が高いほど影響力が高くなります。

【初心者必見】1から株を始める手順

基礎知識を理解できたら、続いては実際に株を買うまでの流れを見ていきましょう。

株を始める証券会社を決める

株式投資を始めるためには、どの証券会社で株の売買を注文するかを決める必要があります。

証券会社のタイプは実店舗を構える“店舗型”と、インターネットで取引できる“ネット型”の2つに分かれますので、両者の違いを理解しておきましょう。

店舗型のメリットは、いざというときに担当者に口頭で相談できるという点です。

ただし、店舗型はネット型よりも売買手数料が高いため、パソコンやスマートフォンを使えるならネット型の証券会社のほうがよいでしょう。

一方で、ネット型の証券会社は手数料が安く、取扱件数が豊富なのがメリットです。また、サイト内検索がしやすく、投資情報が調べやすい特徴があります。

以上のことから、初心者が証券会社を選ぶときには、「売買したいときにすぐに取引できる」「低コストで取引できる」という2点を意識することが大切です。

初心者が株式投資を始めるなら、まずはこの2点を満たしているネット型で始めてみることをおすすめします。

さらに、ネット型の証券会社を比較する際には、銘柄の数やスマホアプリの利便性、ポイントサービス、サイトの安全性など細かな違いを確認しておきましょう。

証券会社に口座を開設する

近年はインターネット上で口座開設が完結するケースが多く、早ければ翌日、または2~5営業日後に開設でき、従来と比べて簡単に申し込めるようになりました。

ここでは、ネット型の証券会社での口座開設方法を説明します。 まずは証券会社のサイトから、口座開設のページを開きましょう。

サイトに書かれている指示をよく読み、氏名・生年月日・住所・電話番号・メールアドレスなど必要事項を入力していきます。

手続きを進めていくと、マイナンバーを確認できる書類の提出が求められます。

マイナンバーカードをすでに持っている人は、スキャンして画像をアップロードしてください。

マイナンバーカードを持っていない場合は、“マイナンバー通知カード”もしくは“マイナンバーの書かれた住民票”に加えて、“本人確認資料”を用意する必要があります。

このとき、運転免許証など顔写真付きの本人確認書類を用意できるとスムーズです。

健康保険証や年金手帳のように、顔写真が載っていない本人確認書類の場合、複数提出が必要な場合もあるため、よく確認しておきましょう。

入力を進めていくと、“特定口座”の選択項目が出てきます。

ここでの選択肢は、特定口座(源泉徴収あり)・特定口座(源泉徴収なし)・一般口座の3種類です。

確定申告を自分でする方は“特定口座(源泉徴収なし)”を、確定申告をせず証券会社に源泉徴収してもらう場合は“特定口座(源泉徴収あり)”を選択するとよいでしょう。

なお“一般口座”に関しては、年間取引報告書を作成したうえで確定申告する必要があるため、初心者には少々難しいでしょう。

口座に入金する

口座開設が無事完了したら、いよいよ取引開始です。

まずは口座に入金して、いつでも株を購入できる状態にしておきましょう。

なお、口座への入金時には「即時入金」が可能かどうかも株取引のタイミングを左右します。

即時入金は、口座へ入金した時点でその入金額が買い付け可能額に反映されるため、入金したタイミングで即取引をすることができるものです。

しかし、これはすべてのネット型証券会社で利用できるものではありません。

利用を検討しているネット型の証券会社がこの即時入金に対応しているのか、それに付随して「即時入金に手数料はかかるのか」「どのネットバンキングと提携しているのか」を、あらかじめ確認するといいでしょう。

買う銘柄を選ぶ

企業や業界の情報を収集して、購入したい銘柄を選択していきます。

気になる銘柄がたくさんあるかもしれませんが、無理し過ぎない程度の金額から始めてみましょう。

なお、信用取引でレバレッジという「てこ」のような効果をかければ、手持ち資金よりも大きな金額で取引が行なえます。

しかし、信用取引はリスクが高く大損する可能性も高いため、初心者のうちは控えたほうがよいでしょう。

株を買い注文する

株の買い注文では、銘柄・株数・注文方法の指定が必要です。

注文方法には “指値注文”と“成行注文”の2種類があり、いずれかを選択します。

指値注文とは、購入希望価格を指定して注文する方法のことです。

指定した価格まで株価が下がると注文が成立しますが、逆に言えば、その時になるまで株の購入が成立していないことになります。

株をすぐに手に入れたい場合は、注文が確定した時点の株価で購入する“成行注文”を選択してください。

なお、株を取引できる時間には制限があることを覚えておきましょう。

東京証券取引所の場合は、前場(9時~11時半)、後場(12時半~15時)に分かれており、この時間内で取引を行ないます。

ただし、一部の証券会社では“夜間取引(PTS)”に対応していて、日中の取引が難しい方でもリアルタイムで取引できるようになっています。

また買い注文・売り注文自体は、インターネットで24時間いつでも出すことが可能です。

株を売り注文する

売り注文の場合、タイミングの見極めと指値注文・成行注文の使い分けが重要です。

株価が上昇の気配を見せ、「この価格まで上昇した時点で売りたい」という価格が決まっていれば指値注文をし、利益を確定させましょう。

対して、その時点の取引価格ですぐに売りたい場合は成行注文を選択します。

株価の下落が著しく、損切り(購入した株に損失が出ている状態で売却し、損失を確定させること)したい場合には注意が必要です。

売りたい希望価格があり、指値で売り注文したとしても、株価が下落状態ではなかなか売れずに損失を増やしてしまうおそれがあります。

そのため、損切りしたい場合は“成行注文”で株を売却することになります。

初心者が知っておきたい株のポイント

最後に、株式投資を始めるにあたって覚えておきたいポイントや注意点をご紹介します。

株式投資の運用方針を持つ

途中で方向性を見失わないためにも、最初に株式投資の運用方針を決めておくことが重要です。

株式投資の目的、投資の期間、許容できるリスクの程度などを明確化しておくことで、今後の戦略を考えやすくなります。

例えば、売買益・配当金・株主優待など、株式投資の利益にもさまざまな種類があり、どの利益を目的とするかによって購入すべき銘柄が変わってきます。

投資に対する考えがしっかりとまとまっていなければ、誰かの意見に振り回されたり、売るタイミングを逃したりするかもしれません。

運用方針を決めずにいることで、大きく損する可能性が高まることを覚えておきましょう。

銘柄は現物取引を選ぶ

株式投資に初めて取り組むなら、まずは現物取引の銘柄を選択しましょう。

7現物取引とは、レバレッジをかけない一般的な取引方法のことです。

投資で大きな目標を掲げる方のなかには、「結果をすぐに出したい」という気持ちが先走って、先物取引や信用取引に手を出す初心者の方もいます。

レバレッジをかければ、少ない自己資金でも大量の株を購入することができるでしょう。

しかし、結局のところ先物取引・信用取引は借金をして株を買うのと同じような仕組みです。

投資に失敗すれば、もともとの自己資金以上の金額を失う結果となります。

予算に上限を設ける

株式投資の経験が少ないうちは、あらかじめ毎月の予算を設定しておき、小額から購入するのが望ましいでしょう。

生活を圧迫しない程度にとどめ、あくまでも余剰資金の範囲内で行なうことが肝心です。

自分の貯金のすべてを投じてしまうと、マイナスになったときに冷静な判断ができなくなるおそれがあります。

一度の取引で儲けようとするのではなく、経験を積み重ねてプラス分を徐々に増やしていきましょう。

また、投資額が少なければ損切りの判断もしやすいものです。

予算を使い切ってしまわないためにも、あらかじめ損切りルールを決めておきましょう。

早い段階から損切りのタイミングを見極められるようになることが大切です。

株の利益は税金がかかる

株式投資には“譲渡益課税”と“配当課税”の2種類の税金がかかります。

株の売却で得た利益に対してかかるのが譲渡益課税で、配当金にかかるのが配当課税です。

どちらも税率は約20%ですが、株式優待に関しては雑所得として扱われるため、収入によって税率が変動します。

ちなみに、口座開設の際に“特定口座(源泉徴収なし)”もしくは“一般口座”を選択すると、利益が20万円以下の場合に確定申告が不要となります。

ただし、“特定口座(源泉徴収あり)”を選ぶとこの特例の対象外となるため注意が必要です。

株式投資にかかる税金をできるだけ抑えたいなら、NISA(少額投資非課税制度)を利用してみましょう。

NISAとは、株式投資の譲渡益や配当金のうち、毎年120万円分が非課税対象になるという税制優遇制度です。

国内外の上場株式や株式投資信託が、NISAの対象となります。

まとめ

そもそも株とは、企業が事業に必要な資金を集める手段として使われるものです。

投資家は株価の動きを見ながら売買を行ない、利益確定と損切りを繰り返していきます。

初心者のうちは経験が少なく、投資判断が難しい局面もあるかもしれません。

株式投資を今後始めようと考えている方は、今回ご紹介したネット型証券の口座開設方法や株のポイントを参考に、ぜひ挑戦してみてください。