紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
将来の資産形成のために、投資信託を始めようと考えている方もいることでしょう。 しかし、投資信託の知識がまだ十分にない初心者では、どの投資信託を選べば良いのか、判断することは簡単ではありません。 そこで本記事では、投資信託を選ぶうえで判断基準となる純資産総額についてご紹介します。 純資産総額について理解を深めると、純資産総額の大小によって投資信託の状態や変動するタイミングに起きていることがわかるようになるでしょう。 これから投資信託を始めていきたいと考えている方は、ぜひご覧ください。
- 純資産総額の基本的な情報や仕組みについて知ることができる
- 純資産総額の大小によって何が読み取れるのか知ることができる
- 純資産総額が変動するときのタイミングがわかる
投資信託における純資産総額とは?
はじめに、投資信託における純資産総額について解説していきます。 純資産総額とは、投資信託に組み込まれて運用されている株式や債券などの総資産額から、運用する際にかかる手数料といった負債額を差し引いた総額のことです。 ここでは、純資産総額を見ることで、その投資信託についてどのような判断ができるのか、知っておきましょう。
純資産総額はファンドの規模を表す
純資産総額は、投資信託に組み込まれている株式や債券などの資産から、負債を控除した信託財産の合計です。 つまり、その投資信託にどれくらいの資産があるかどうかを判断できるため、投資信託の規模を表しているともいえます。
純資産総額が大きいファンドは人気のファンド
投資信託には数多くの商品がありますが、純資産総額が大きい投資信託は人気のファンドです。 純資産総額が大きいということは、多くの投資家から資金が集まっていることを意味します。 そのため、投資信託に組み込まれている株式や債券などの資産も増加し、純資産総額が大きくなるわけです。
純資産総額の計算方法
純資産総額は投資信託の販売の際に、交付が義務付けられている交付目論見書に記載されています。 そのため、純資産総額を確認したいときには、交付目論見書を確認しましょう。 また、先ほどお伝えしたように、純資産総額は投資信託の総資産額から負債額を差し引いた総額であるため、簡単な計算で算出することも可能です。 下記に純資産総額の計算方法を記載します。 純資産総額 = 総資産額 − 総負債額 この計算式を見てわかるとおり、純資産総額は総資産額や総負債額が増減することによって、変動することを知っておきましょう。
純資産総額は大きい方が良いのか?
純資産総額が大きい投資信託は、多くの投資家から投資されている人気のファンドであり、資産総額も大きいことを意味します。 そのため、純資産総額が大きい投資信託のほうが、良いと感じられるでしょう。 しかし、純資産総額が大きくなり過ぎてしまうと、デメリットが生じてしまうケースがあることに注意が必要です。 ここでは、純資産総額の大小から見るメリットやデメリットを詳しく解説します。
純資産総額が大きいほうがコストを抑えられる
純資産総額が大きいことにより得られるメリットは、運用するうえでかかってくる経費のコスト負担率を抑えられることです。 投資信託では、経理が正しく行なわれているかを監査する監査費用や、投資信託を管理・運用する際にかかる信託報酬などの経費がかかります。 これらの費用は、純資産総額が豊富なほど、純資産総額に対する経費の割合が低くなり、コストが抑えられるわけです。
純資産総額が大きくなり過ぎると運用が難しくなるケースも
投資信託では複数の銘柄に分散して投資することで、一つの銘柄がマイナスになっても他の銘柄でカバーすることにより、安定した投資ができることが売りです。 しかし、純資産総額が少ないと、費用が足りずに多くの銘柄に分散して投資できません。 このことから、基本的には純資産総額が大きいと分散投資ができるため、良い投資信託といえるでしょう。 しかし、大きければ大きいほど良いのかというと、そういうわけではありません。 純資産総額が大きくなり過ぎてしまうと、その資産を運用するために投資効率が良くない資産にも、投資しなければならない場合が生じます。 すると、全体的な投資効率にも影響が出て、投資信託のトータルの運用益が悪くなってしまう可能性があるのです。 このように純資産総額は、大きければ大きいほど良いわけではないことを知っておきましょう。
純資産総額が減り過ぎると繰上償還のリスク
投資信託が予定していた期間よりも、短い期間で運用が終了してしまうことを「繰上償還」といいます。 この繰上償還は、純資産総額が減り過ぎてしまい、効率的な運用ができなくなったときに起こるものです。 つまり、純資産総額が少ない投資信託は、繰上償還のリスクが高いといえます。 必ずしも純資産総額が少ないと繰上償還になるとはいえませんが、繰上償還を避けるためには、純資産総額が大きいファンドを選んだほうがリスクは少ないでしょう。
純資産総額が変動するときはどのような場合?
純資産総額は投資信託を選ぶうえで、重要な判断基準となることをお伝えしました。 ここでは、純資産総額が変動するタイミングについてご紹介します。 純資産総額は複数の要素によって変動するため、変動する理由を知らないと焦って売却してしまうこともあるかもしれません。 ここで、純資産総額が変動するタイミングを理解して、焦らずに投資信託を続けていけるようにしましょう。
資金の流出入
1つ目の変動するタイミングは、資金の流出入時です。投資信託が購入されたり、解約されたりしたときに資金の流出入が起こり、純資産総額が変動します。 投資信託が購入されたときは資金が増えるため、純資産総額は増加し、反対に解約されたときは資金が減るため、純資産総額は減少します。
運用資産の価格変動
2つ目の変動するタイミングは、運用資産の価格変動によるものです。投資信託で運用している株式や債券の価格が変動すると、投資信託の総資産額も変動します。 純資産総額は総資産額から、負債額を差し引いた金額であるため、運用資産の価格変動により、純資産総額も変動するでしょう。
分配金の支払い
3つ目の変動するタイミングは、分配金の支払い時です。投資信託によっては、分配金といって、運用で得られた利益を投資家に還元する仕組みがあります。 この分配金は、投資信託の資産のなかから支払われるため、分配金の支払いが生じると分配金の額だけ、純資産総額も下がってしまうのです。
まとめ
純資産総額は、投資信託の規模を表す重要な数字です。 額の大きさによって生じるメリットやデメリットがあるため、投資信託を選ぶ際には確認しておきたいポイントといえるでしょう。 投資信託は他の投資に比べて、低リスクで始められるため、投資の第一歩を踏み出したい方におすすめの投資です。 本記事でご紹介した純資産総額に着目して、将来の資産形成のために、投資信託を始めてみてはいかがでしょうか。
紫垣 英昭
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