紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
収束の兆しが見えない新型コロナ。日本でも連日新型コロナ感染者の増加が報じられており、外出の自粛要請や緊急事態宣言などによる経済的ダメージが甚大であることは間違いありません。
株式市場は「新型コロナ相場」とも呼ばれる反発局面となっていますが、新型コロナの第二波も懸念される中で、新型コロナ関連の倒産が増加することも懸念されます。
今回は、新型コロナによって倒産した企業の株価について抑えていくとともに、新型コロナでコロナ破綻リスクが高まっている企業やセクター、また東京オリンピックが中止になった場合に危険な銘柄についても、解説していきます。
- 新型コロナによる関連倒産の状況と倒産リスクの高い銘柄、セクターがわかる
- 新型コロナで倒産したレナウンのチャート値動きがわかる
- 東京オリンピック中止の場合の倒産リスクの高い銘柄、セクターがわかる
新型コロナによる関連倒産の状況について抑えておこう
東京商工リサーチによると、2020年2月から7月27日までの間の新型コロナ関連倒産は全国で352件に上っているとのことです。
※出典:東京商工リサーチ
月別で見てみると、2月は2件、3月は22件だったものの、4月と5月には80件台に急増し、6月は103件、7月は27日までに58件の新型コロナ関連倒産が発生しているようです。
都道府県別で見てみると、東京都が90件と最も多くなっており、次いで大阪府32件、北海道20件と続いています。
業種別で見てみると、飲食業が53件、アパレル関連が43件、観光・宿泊業が40件となっています。
飲食業は外食自粛による来店客の減少と緊急事態宣言による休業要請がダブルパンチとなり、アパレル関連は百貨店や小売業の休業が影響、宿泊業はインバウンド需要が消失したことに加えて旅行・出張の自粛が影響したということです。
新型コロナで影響を受けている産業としては、外食・観光・エンタメ産業の3つが挙げられますが、目に見える形で倒産件数にも表れていることが分かります。
東京都を中心に新型コロナの新規感染者数が増加していることを受けて、今後も外出自粛による消費の低迷は続くことが想定されるため、新型コロナ関連倒産は増加していくものと見られます。
新型コロナで倒産した上場企業【3606】レナウン
新型コロナで経済が低迷する一方、株式市場は「新型コロナ相場」とも呼ばれる反発局面となっています。
東証全体で見てみると、2020年7月現在では、新型コロナによって倒産した上場企業はアパレル名門の【3606】レナウン1社のみとなっています。
レナウンは、消費税増税や暖冬によって業績悪化していた所に、新型コロナで止めを刺されてしまった形となりました。
レナウンは、2020年5月15日、東京地裁に民事再生法を申請しました。東京商工リサーチの調査によると、手形決済資金8,700万円が不足していたことが原因となったとのことです。
レナウンの負債額は138億7,900万円となっており、新型コロナ関連倒産の中でも最大級の負債額です。東京商工リサーチによると、新型コロナで100億円以上の負債額を抱えた大型倒産は3件発生したとのことですが、その一つがレナウンだったということになります。
レナウンの株価は、民事再生法の申請が発表された5月15日直前までは50~100円のボロ株領域で推移していました。
※レナウンの株価は、上場廃止となったことから多くのチャートソフトで表示できなくなっていますが、Yahoo!ファイナンスのレナウンのページでは、2020年7月現在では、まだ見ることが可能となっています。
レナウンは2期連続赤字だったこともあり、民事再生法申請前の段階から既に売れていたことが分かります。
そして、民事再生法を申請したことによって上場廃止が決まったため大暴落。上場廃止直前の6月15日には4円で取引を終えました。
レナウンのコロナ倒産は、かつて栄華を極めたアパレル名門の経営破綻だったということでニュースではセンセーショナルに伝えられましたが、直近の経営状況からしたら、そこまでサプライズ的な倒産ではなかったと言えます。
新型コロナで倒産リスクがある企業の株価はどうなっている?
新型コロナで倒産した上場企業はレナウンだけですが、新型コロナで経営状況が傾いている企業の株価を見ていきましょう。
【3053】ペッパーフードサービス
「いきなり!ステーキ」を展開する【3053】ペッパーフードサービスは、業績・株価ともに危険な状況となっています。
同社は、「いきなり!ステーキ」の業績不振による店舗閉店が相次いでいることがニュース報道されていますが、アメリカで「いきなり!ステーキ」を展開していた子会社のKuni’s Corporationが2020年7月3日、チャプター7に基づく破産申請をしたことも発表されています。
【3053】ペッパーフードサービスの月足チャート
ペッパーフードサービスの株価は、この2年間は一直線の下降トレンドとなっており、新型コロナ相場でも反発が限定されています(上記赤丸)。
外食産業は、新型コロナで打撃を受けていることが指摘されますが、外食株はそこまで大きく売られているわけではなく、むしろドライブスルーが好調な【2702】マクドナルドなどは業績・株価ともに好調です。
新型コロナは、大手外食チェーンよりも、個人飲食店に大きな打撃を与えていると言えるでしょう。
ただ、ペッパーフードサービスだけは、新型コロナ相場において外食株では一人負けの状況となっています。外食株では、最も危険な銘柄の一つと言って間違いないでしょう。
【8011】三陽商会
「ポール・スチュアート」や「マッキントッシュ」などのアパレルブランドで知られる【8011】三陽商会は、アパレル産業で危険な銘柄です。
同社は、百貨店向けが中心であることから新型コロナの影響を強く受けており、2020年6月30日に発表した2021年2月期第1四半期決算では、当期純利益が42億8,400万円の赤字だったと発表しています。
【8011】三陽商会の月足チャート
三陽商会の株価は、新型コロナ相場でも全く反発していません(上図赤丸)。反発するどころか、暴落が止まらない状況です。
アパレル業界では、レナウンの大型倒産がありましたが、他にも「シティーヒル」や「オカベアンドパートナーズ」などコロナ倒産が相次いでおり、アメリカでも大手アパレルチェーン「J.Crew Group」などがコロナ倒産しています。
一方で、「ユニクロ」を展開する【9983】ファーストリテイリングや「WORKMAN」を展開する【7564】ワークマンは株価が好調となっており、アパレル株は二極化している状況です。
アパレル株を物色するとしても、ネット通販など最新トレンドに適応している銘柄のみを手掛けるようにしましょう。
【9603】エイチ・アイ・エス
世界的な外出自粛により、観光株や航空株はコロナショックで暴落したにも関わらず、新型コロナ相場でもほとんど反発していません。
大手旅行会社の【9603】エイチ・アイ・エスも、業績・株価ともに大きく下げています。
【9603】エイチ・アイ・エスの月足チャート
エイチ・アイ・エスの株価は、コロナショックで大きく下げた後に、一時は反発したものの、弱い状態のままです(上図赤丸)。
観光株としては、【9201】JALや【9202】ANAなどの航空株、【9020】JR東日本や【9021】JR西日本などの鉄道株など、総崩れ状態となっています。
観光産業は、株式市場において、新型コロナで最も大きな悪影響を受けているセクターであると見て間違いないでしょう。
特に、2020年は東京オリンピックによるインバウンド特需が期待されていただけに、投資家の失望感はより大きいものになっていると言えます。
エイチ・アイ・エスやANA・JAL、JRがコロナ倒産することはありませんが、このような大手企業ですら大打撃となっており、中小の観光企業が甚大な打撃を受けていることは間違いありません。
「Go Toキャンペーン」は大きな批判を浴びていますが、このような政策を強行しなければいけないほど、観光産業が厳しい状況にあるということでもあります。
新型コロナが再拡大した場合に危険な産業は?
緊急事態宣言解除後の2020年5月から6月に掛けては新型コロナの新規感染者数が収束しつつありましたが、7月に入ってから再び拡大しています。
今後、特に懸念されるのは、秋以降の第二波です。
現在は冬である南半球の南米やオーストラリアでは感染が拡大しており、日本でも秋から冬に掛けて第二波が来る可能性は高いものと見られます。
秋以降に新型コロナが急拡大した場合には、再度の緊急事態宣言が発令されることが想定されますが、ここまで持ちこたえてきた外食・観光・エンタメ産業には止めになってしまうかもしれません。
上場企業でも、レナウンに次ぐ新型コロナ倒産が出る可能性も十分にあり得るでしょう。
新型コロナの第二波の懸念が残る以上は、外食・観光・エンタメ、アパレル産業の銘柄には手を出さない方が賢明かと思われます。
また、7月末からは、コロナショックを含んだ企業決算が徐々に発表されてきていますが、コロナショックの影響を物語る数字が並んでいます。
自動車業界では、三菱自動車が3,600億円の赤字、日産自動車が6,700億円の最終赤字となったことを発表しました。
【7211】三菱自動車の月足チャート
さらに、キヤノンも初の四半期赤字となることを発表するなど、ついに新型コロナの影響が企業決算にも表れ出してきています。
企業決算で悪い数字が相次ぐことになれば、新型コロナ相場に暗雲が立ち込めてくる状況にもなりかねません。
オリンピックが中止になってしまった場合に危険な銘柄も抑えておこう。
秋以降にも新型コロナの感染が止まらなかった場合には、2021年に延期された東京オリンピックが中止となってしまうことも考えられます。
日本にとっては最悪の事態ですが、株式投資をする上では、この最悪の展開に備えておく必要はあります。
株式市場では、東京オリンピックの中止リスクも織り込まれ始めており、広告代理店最大手の【4324】電通グループの株価は顕著です。
【4324】電通グループの月足チャート
電通グループの株価は、コロナショックで大きく下げてから、株価の戻りが限定されていることが分かります(上図赤丸)。これは、東京オリンピックが中止になるリスクを想定している投資家が少なくないということでしょう。
電通以外にも、インバウンドやホテルといった東京オリンピックでの特需が期待された銘柄の多くは低迷したままです。
もちろん、東京オリンピックが中止になってしまったからといって、電通が倒産することはあり得ませんが、インバウンド事業やホテルを展開している企業の中から新型コロナ倒産が出てくることは考えられます。
まとめ
今回は、新型コロナ関連倒産の状況や、新型コロナ関連倒産となった上場企業レナウンについて解説した上で、新型コロナで倒産リスクが高まっているセクターや銘柄について見てきました。
新型コロナ関連倒産は、外食・アパレル・観光の3つのセクターを中心に増加傾向にあります。
上場企業では、アパレル名門のレナウンが2020年5月15日に民事再生法を申請し、上場廃止となりました。
新型コロナの感染拡大は相次いでおり、秋以降の第二波が懸念されますが、日本にとっては東京オリンピックの開催可否についても気になる所です。
新型コロナによる経済的ダメージが顕在化するのは秋以降とも言われており、レナウンに次ぐ上場企業の新型コロナ関連倒産も出てくるかもしれません。
現に、7月末に続々と発表されている決算では、三菱自動車と日産自動車が巨額赤字となり、キヤノンが四半期では初の赤字となるなど、ついに新型コロナの影響が企業決算にも表れ出しています。
外食・観光・エンタメ・アパレル産業といった新型コロナで大きな打撃を受ける中小株については、新型コロナ倒産リスクがあるため、安易な低位株投資などは控えておいた方が賢明です。
紫垣 英昭
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