EPSはPER・ROE・配当性向の計算に使われるファンダ分析重要指標!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

EPS(1株当たり当期純利益)は、企業が1株当たりいくらの利益を出しているかを示す収益性指標です。

EPSそれ自体はあまり使われませんが、EPSはPERやROE、配当性向といった重要指標の計算に使われるため、ファンダメンタル分析において必ず抑えておかなければいけない指標です。

ただ、EPSの計算式には株価が含まれておらず、マーケットでは好材料となる株式分割ではEPSは悪くなってしまうなど、EPSの問題点を認識した上で使うことが重要となります。

今回は、EPSのメリットやデメリットについて解説した上で、PERやROE、配当性向といったEPSが計算式に使われる指標についてもご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • EPSとは何か、メリット、デメリットがわかる
  • EPSが計算に使われる重要指標がわかる
  • EPSを調べる方法がわかる

EPSとは?

EPSとは「Earnings Per Share」の略称で、「1株当たり当期純利益」を示す指標です。

EPSを一言で説明すると、「企業が1株当たりいくらの利益を出しているか?」を示すもので、EPSが高ければ高いほど企業の収益性が高いことを示します。

EPSは、次の計算式で求められます。

EPS=当期純利益÷発行済株式数

なお、「当期純利益」とは、企業が稼いだ純利益から法人税や住民税といった税金を差し引いた後に残る利益のことです。

例えば、当期純利益が1億円で、発行済株式数が100万株なら、EPS=1億円÷100万株=100円となります。

企業が純利益を増やすか、自社株買いや株式併合などを行い発行済株式数を減らすことによってEPSは増加します。

一方、企業が純利益を減らすか、増資や株式分割などを行い発行済株式数が増えることによってEPSは減少します。

株式投資においてEPSは高いことに越したことはありませんが、ファンダメンタル分析においては、EPSよりも、EPSによって算出されるPERやROE、配当性向の方が重要指標となっています

EPSのメリット

EPSのメリットを抑えておきましょう。

PERやROEなどの重要指標の計算に活用できる

株式投資におけるEPSの最大のメリットは、PERやROE、配当性向といった重要指標の計算に使われることです。

株式投資をする上では、EPSそれ自体を指標として見ることは一般的ではありません

しかし、EPSが計算式に使われるPERやROEは、株式投資のファンダメンタル分析に欠かせない指標となっています。

ただ、株式投資においてはPERやROEといった指標の方が重要であるとはいえ、これらの指標を使う上でEPSについて理解しておいた方が良いことは言うまでもありません。

収益性や成長性の比較に使える

PERやROEの方がメジャーであるとはいえ、EPSそれ自体がファンダメンタル分析に使えないわけではありません。

ある銘柄について、前期と当期でのEPSの変化を比較すれば、会社の収益性や成長度を把握することができます。

前期比でEPSが増加していれば、その企業は成長していると見ることが可能です。

また、企業規模が異なる同業他社についてEPSを比較してみることにより、会社規模の影響を除外した収益性を比較することも可能となります。

EPSのデメリット

EPSのデメリットや注意点について抑えておきましょう。

増資や株式分割によって希薄化されてしまう

EPSは、公募増資や第三者割当増資などの増資や株式分割によって下がってしまう性質があり、これは「希薄化」と呼ばれます。

株価が好調な銘柄が株式分割を実施することはマーケットでは好感されますが、EPSという観点で見ると株式分割は悪材料になってしまうのです。

しかし、増資も株式分割も、それ自体は企業の成長性や収益性に影響を与えるものではなく、企業の営業活動には関係ない資本異動上の出来事でしかありません。

なお、株式分割でEPSは悪化しますが、PERは変化しません(詳しくは下記「PER」の項目で解説します)。

この点が、まさにEPSよりもPERの方がポピュラーになっている理由の一つです。

計算式に株価が含まれていない

EPSが株式投資で直接使われない理由として、EPSの計算式には株価が含まれていないことが挙げられます。

EPSそれ自体では、現在の株価が割高か割安かの判断をすることができないのです。

株価がストップ高を連発して急騰していたとしても、逆にストップ安を連発して大暴落していたとしても、EPSそれ自体には何の影響も現れません。

いくらEPSが高くても株価があり得ないほど急騰していた場合には投資に適さず、逆にEPSが低くても割安になっている場合があります。

EPSそれ自体は収益性指標として悪くありませんが、株価が反映されないEPSだけで投資判断をするのは危険であるとしか言いようがありません。

EPSが計算に使われる重要指標

EPSが計算に使われている重要指標について抑えていきましょう。

PER

PERは「Price Earnings Ratio」の略称で、「株価収益率」を示す指標です。

収益性の観点から、現在の株価が割高か割安かを見るために使われます。

PERは、次の計算式で求められます。

PER=株価÷EPS

計算式から明らかなように、PERはEPSに株価の概念を導入した収益性指標と言えます。

例えば、株価が2,000円で、EPSが100円の場合は、PER=2,000円÷100円=20倍となります。

PERは14倍以下の場合には割安とされ、20倍以上の場合は割高とされることが一般的です。

ただ、PER20倍以上となっても急騰し続ける銘柄は少なくなく、逆にPER14倍以下で割安とされる銘柄の暴落が止まらないことも多々あります。

このため、PERでの割安・割高水準はあくまで一般論として抑えておくことが重要です。

なお、株式分割を行うとEPSは下がり、株式併合を行うとEPSは上がります。しかし、PERは株式分割・株式併合のいずれでも変化しません。

なぜなら、株式分割(株式併合)は分割(併合)割合に応じて株価も変化するためです(例えば、1株→2株の株式分割の場合、株価は2分の1になります)。

このため、株式分割によってEPSが下がったとしても、同時に株価も下がることになるためPERは変化しないことになります。

一方、公募増資や第三者割当増資といった増資では株価は変化しないため、EPSが上がることによってPERは割高に振れてしまいます。

増資では希薄化が懸念されて株価が下がりやすい一方、株式分割は好材料となって株価上昇に繋がりやすいのは、このような側面からも説明可能です。

ROE

ROEは「Return On Equity」の略称で、「自己資本利益率」と呼ばれる指標です。

「株主投資資本を活用して、どれだけ効率的に利益を出しているのか?」を示す指標となります。

アメリカでは最も重要視される指標であり、ファンダメンタル分析による長期投資をする上では欠かせない指標です。

ROEは、次の計算式で求められます。

ROE=当期純利益÷自己資本
あるいは ROE=EPS÷1株当たり純資産(BPS)

例えば、EPSが100円で、1株当たり純資産が1,000円なら、ROE=100円÷1,000円=10%となります。

ROEが15%以上あれば、投資効率が良い銘柄と見ることが一般的です。

ただ、ROEの計算式は「当期純利益÷自己資本」でも「EPS÷1株当たり純資産(BPS)」でも、いずれにしても株価が計算式に入っていないことには注意が必要です。

ROEはEPSによって計算される代表的な指標ですが、ROE自体では割安・割高を判断できないため、PERやPBR、テクニカル分析といった他の手法も組み合わせて使うことがおすすめです。

配当性向

配当性向は、純利益から配当金への還元率を示す指標です。企業が出した利益を、どの程度、配当金として株主に還元しているかを示す指標となります。

配当性向は、次の計算式で求められます。

配当性向=1株当たり年間配当金÷EPS

例えば、配当金が年間20円、EPSが100円なら、配当性向=20円÷100円=20%となります。

中には、配当性向が100%を超える銘柄もありますが、これは必ずしも良いことだとは言えません。

なぜなら、純利益を全て配当金に回すということは、利益を成長のための投資に使っていないことを意味するためです。

配当性向はEPSを使った指標ではありますが、PER・ROEに比べると重要度は下がると言えます。

また、計算式に株価が入っていないこともネックです。

高配当株投資を目的とした配当指標としても、配当性向よりも配当利回り(=年間配当金÷株価)のほうがポピュラーとなっています。

EPSを調べる方法

EPSを調べる方法について抑えておきましょう。

個別銘柄のEPSを調べる方法

個別銘柄のEPSをチェックする方法を抑えておきましょう。

まず、Yahoo!ファイナンスにアクセスして、画面左上の検索欄に、調べたい銘柄の銘柄名もしくは銘柄コードを入力します。

銘柄情報が表示されたら、下にスクロールしていくと、「参考指標」の中に「EPS(会社予想)」があります(なお、下の画像はトヨタ自動車【7203】のEPSとなります)。

EPSが高い銘柄を調べる方法

EPSが高い銘柄を調べる方法について抑えておきましょう。

まず、Yahoo!ファイナンスにアクセスして、ページ上部の「株式」→「株式ランキング」をクリックします。

ランキングが表示されたら、下にスクロールして、左側の企業ランキング欄の「1株当たり当期利益(会社予想)」をクリックします(“EPS”とは表示されていないことには注意しましょう)。

これでEPSが高い銘柄順にランキング形式で表示されます。

まとめ

今回は、EPSのメリットやデメリットについて解説した上で、PERやROE、配当性向といったEPSが計算式に使われる指標についてもご紹介してきました。

株式投資におけるEPSの役割は、PERとROEの計算式に使われることに尽きます。極端なことを言ってしまえば、PERとROEさえ見ていれば、EPSは見る必要はありません。

ただ、PERとROEについてより深く理解しておくためにも、EPSについて理解しておくことが重要であることは確かです。

特に、EPSの計算式には株価が含まれていないことには注意が必要です。これはROEや配当性向といったEPSが計算式に使われる重要指標でも同様となっています。

EPSについて理解しておき、PERやROEを株式投資で使いこなしていきましょう。

紫垣 英昭