グローバルニッチ関連銘柄株とは?日本が世界で強いニッチ分野を押さえておこう

執筆者
プロフィール写真

紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

経済産業省が、世界市場のニッチ分野に強みを持つ企業として選定した「グローバルニッチ関連銘柄」が注目を集めています。

特に、半導体マスク欠陥検査装置というニッチ分野で世界シェア100%を誇る半導体製造装置メーカーの【6920】レーザーテックは、新型コロナ相場で最も強い銘柄の一つです。

グローバルニッチ関連銘柄には中小株が多く、半導体やEV・脱炭素といったテーマ性の強い銘柄が、買われる傾向が強くなっています。

今回は、グローバルニッチ関連銘柄の概要や特徴について解説した上で、特に注目されるグローバルニッチ関連銘柄について紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • グローバルニッチ関連銘柄の概要や特徴についてわかる
  • 特に注目されるグローバルニッチ関連銘柄についてわかる
  • グローバルニッチ関連銘柄は今後の成長も期待できる中、どのようなテーマを手掛けていることが重要かがわかる

グローバルニッチとは?

株式投資においても注目されつつある「グローバルニッチ」について押さえておきましょう。

グローバルニッチの基本概要

グローバルニッチ企業とは、世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業や、国際情勢の変化の中でサプライチェーン上の重要性を増している部材・素材などの事業を有する企業のことです。

そもそも「グローバルニッチ」という言葉は、経済産業省による造語です。

日本には、マーケティングや技術開発を通じた差別化戦略により、個々の市場規模は小さいものの、世界シェアが極めて高い製品が多数あります。

グローバルニッチ

経済産業省は2020年6月、世界のサプライチェーンにおいてなくてはならないグローバルニッチ企業として、「グローバルニッチトップ企業100選」と題した113社を選定しました。

選定企業について単純平均すると、世界市場シェア43.4%、営業利益率12.7%、海外売上比率45.0%という優秀な企業群となっています。

さらに、選定企業113社の製品・サービスの市場規模は、今後5~10年で2.21倍の成長率が期待されるということです。

つまり、株式投資において、「グローバルニッチトップ企業100選」に選定された上場銘柄に投資すれば、世界のニッチ分野の成長の果実を享受できる可能性があるかもしれません。

経済産業省「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」に選定された上場企業は?

経済産業省の「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」に選定された113社のうち、上場企業は次の44社となります。

コード

企業名

コード

企業名

コード

企業名

3407

旭化成

6143

ソディック

6481

THK

3446

ジェイテックコーポレーション

6145

NITTOKU

6814

古野電気

3891

ニッポン高度紙工業

6157

日進工具

6841

横河電機

4027

テイカ

6159

ミクロン精密

6859

エスペック

4062

イビデン

6268

ナブテスコ

6914

オプテクスグループ

4082

第一稀元素化学工業

6272

レオン自動機

6920

レーザーテック

4186

東京応化工業

6278

ユニオンツール

7012

川崎重工業

4216

旭有機材

6284

ASB機械

7250

太平洋工業

4970

東洋合成工業

6289

技研製作所

7408

ジャムコ

5185

フコク

6349

小森コーポレーション

7730

マニー

5482

愛知製鋼

6363

酉島製作所

7747

朝日インテック

5695

パウダーテック

6373

大同工業

7826

フルヤ金属

5726

大阪チタニウムテクノロジーズ

6376

日機装

7856

萩原工業

5984

兼房

6384

昭和真空

7963

興研

6136

OSG

6473

ジェイテクト

 

今回は、経済産業省「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」に選定された上場企業を「グローバルニッチ関連銘柄」として取り上げていきます。

グローバルニッチ関連銘柄の特徴

グローバルニッチ関連銘柄の特徴を押さえておきましょう。

中小株が多いためリスク・リターンが高めの銘柄が多い

グローバルニッチ関連銘柄について、時価総額上位10銘柄は次のようになります。

※時価総額は2021年12月9日終値時点。

・【6920】レーザーテック(2兆9,323億円)

・【3407】旭化成(1兆5,278億円)

・【4062】イビデン(9,818億円)

・【7747】朝日インテック(6,951億円)

・【6841】横河電機(5,741億円)

・【6268】ナブテスコ(3,935億円)

・【6473】ジェイテクト(3,635億円)

・【6481】THK(3,598億円)

・【7012】川崎重工業(3,345億円)

・【4186】東京応化工業(3,274億円)

また、日経平均(日経225)構成銘柄は下記4銘柄です(2021年12月9日時点)。

・【3407】旭化成

・【6473】ジェイテクト

・【6841】横河電機

・【7012】川崎重工業

これらの銘柄は、グローバルニッチ関連銘柄の中でも特に流動性が高く、リスク・リターンも低めの傾向がある大型株です。

グローバルニッチ関連銘柄の多くは中小株となっており、リスク・リターンが高めの成長株を中心に構成されています。

テーマ性が強い銘柄が特に買われる傾向がある

グローバルニッチ関連銘柄は、世界経済の成長を受けて、業績・株価ともに成長していくことが期待されます。

ただ、株価は必ずしも業績に連動しないように、グローバルニッチ関連銘柄だからといって、必ずしも株価が上昇するとは限りません。

特に、グローバルニッチ関連銘柄の中でも買われやすいのは、半導体やEV材料、脱炭素など、マーケットで注目されているテーマと関わりがある銘柄であることです。

代表的な銘柄は半導体製造装置メーカーの【6920】レーザーテックです。

【6920】レーザーテックは、半導体株や半導体製造装置関連銘柄というマーケットで特に強いテーマ株であることからも大きく買われています。

グローバルニッチ関連銘柄に投資する際は、企業の成長性はもちろん、マーケットで注目されているテーマ性がある銘柄かどうかも要チェックしておくようにしましょう。

円安メリットを受けやすい

グローバルニッチ関連銘柄の特徴の一つとして、「海外売上比率45.0%」ということが挙げられます。

グローバルニッチ関連銘柄は輸出企業が中心となっており、これはつまり円安メリットを受けやすいということです。

逆に言えば、円高になると売られやすい銘柄ということになります。

グローバルニッチ関連銘柄への投資は、為替相場の影響も考慮する必要があると言えるでしょう。

グローバルニッチ関連銘柄10選!

グローバルニッチ関連銘柄の中でも特に大きく上昇している銘柄など、注目度の高い10銘柄を見ていきましょう。

【6920】レーザーテック

半導体マスク欠陥検査装置で世界シェア100%を誇る【6920】レーザーテックは、東証を代表する半導体株の一角であり、グローバルニッチ関連銘柄の象徴とも言える銘柄です。

同社は、新型コロナ禍での世界的な半導体不足を背景に、新型コロナ相場では最も買われている銘柄の一つとなっています。

【6920】レーザーテックの月足チャート

レーザーテックの株価は青天井の上昇トレンドとなっています。

なお、チャートでは見切れていますが、2012年3月の上場時の株価は210.5円となっており、上場から10年弱で約150倍の上昇となっています。

上場から10年間、横ばい期間は数回あったものの、一度も下落トレンドになったことがありません。

グローバルニッチ関連銘柄の中でも例外的な銘柄であり、他のグローバルニッチ関連銘柄にもこのような上昇を期待することは、さすがに酷というものです。

【3407】旭化成

総合化学大手の【3407】旭化成は、グローバルニッチ関連銘柄の中では最もメジャーな銘柄と言えます。

同社は、「再生セルロース繊維キュプラ(ベンベルグ、ベンリーゼ)」に強いことから、グローバルニッチ企業に選定されました。

【3407】旭化成の月足チャート

【4062】イビデン

ICパッケージやプリント配線板に強みを持つ【4062】イビデンは、グローバルニッチ関連銘柄ではレーザーテックと旭化成に次ぐ時価総額となっています。

同社は、「最先端ICパッケージ基板」で世界トップシェアを誇ることで知られています。

【4062】イビデンの月足チャート

イビデンの株価は上昇トレンドとなっています。

新型コロナ禍では、5Gやデジタルトランスフォーメーション(DX)による半導体需要が増加したことを受けて業績・株価ともに好調です。

【6841】横河電機

工業計器最大手の【6841】横河電機は、グローバルニッチ関連銘柄の中では大型株に分類される銘柄です。

同社は、安全計装システム「ProSafe-RS」がグローバルニッチということで選定されました。

【6841】横河電機の月足チャート

横河電機の株価は、2020年3月のコロナショックでは大きな下ヒゲを付けたものの、2018年10月に付けた上場来高値付近で推移しています。

【7012】川崎重工業

航空宇宙や鉄道車両、大型二輪などに強い総合重機大手の【7012】川崎重工業も、グローバルニッチ関連銘柄となっています。

同社は、「航空用ギヤボックス製品」が世界トップクラスであることから、グローバルニッチ企業に選定されました。

【7012】川崎重工業の月足チャート

川崎重工業の株価は、好調とは言えません。

有名企業ではありますが、株価は2015年からの6年間で大きく下落しています。

このように、グローバルニッチ関連銘柄だったとしても、必ずしも全ての銘柄が上がるわけではないということには注意しておきましょう。

【3891】ニッポン高度紙工業

コンデンサ用セパレータやフレキシブルプリント基板に強みを持つ製紙メーカー【3891】ニッポン高度紙工業は、EVテーマ株としても注目されるグローバルニッチ関連銘柄です。

同社は、「アルミ電解コンデンサ用セパレータ」に強みを持ち、世界シェアは60%となっています。

同製品はEV(電気自動車)においても重要な部材となることから、同社はEV株としても注目が集まっています。

【3891】ニッポン高度紙工業の月足チャート

ニッポン高度紙工業の株価は、世界的なEVシフトとなった2020年10月以降に大きな上昇となっていることが分かります。

【4082】第一稀元素化学工業

ジルコニウム化合物の国内最大手【4082】第一稀元素化学工業は、脱炭素やEVシフトで注目されるグローバルニッチ関連銘柄です。

同社は、「自動車排ガス浄化触媒用材料」に強いことから、グローバルニッチ企業に選定されました。

【4082】第一稀元素化学工業の月足チャート

第一稀元素化学工業の株価は、2021年に大きく上げています。

【6145】NITTOKU

ファクトリーオートメーション(FA)とコイル巻線機のトップメーカー【6145】NITTOKUは、2013年・2020年と2回連続でグローバルニッチ企業に選定されたグローバルニッチ関連銘柄です。

同社は、「精密FAライン設備」によって2回連続の選定となっており、グローバルニッチ関連銘柄としての注目度が高い銘柄となっています。

【6145】NITTOKUの月足チャート

NITTOKUの株価は、2016~2017年の上昇後は調整局面が続いています。

【5185】フコク

自動車ワイパー向けの工業用ゴム製品大手の【5185】フコクは、グローバルニッチ関連銘柄の中でも、配当利回りの高さが魅力の銘柄です。

同社は、「新車装着用ワイパーブレードラバー(四輪車新車に取付けガラス面を拭くワイパーのゴム部分)」というニッチ分野に強みを持ちます。

また、同社の配当利回りは5.12%(2021年12月9日時点)となっており、グローバルニッチ関連銘柄の中では配当利回りが最も高い銘柄の一つです。

【5185】フコクの月足チャート

フコクの株価は、2015年から2020年コロナショックに掛けては下落していましたが、2021年に大きく反発しました。

【6349】小森コーポレーション

印刷機専業大手の【6349】小森コーポレーションは、2回連続受賞のグローバルニッチ関連銘柄となっており、配当利回りの高さも魅力の銘柄です。

同社は、「商業用オフセット印刷機(枚葉機・輪転機)、証券印刷機、B2デジタル印刷機」で強みを持ち、2013年・2020年と連続でグローバルニッチ企業に選定されています。

また、同社の配当利回りは4.88%(2021年12月9日時点)と、グローバルニッチ関連銘柄の中では高水準です。

【6349】小森コーポレーションの月足チャート

小森コーポレーションの株価は、芳しくありません。

グローバルニッチ企業ではありますが、印刷というテーマはマーケットではあまり好感されないことも原因かもしれません。

まとめ

今回は、グローバルニッチ関連銘柄の概要や特徴について解説した上で、特に注目されるグローバルニッチ関連銘柄について紹介してきました。

経済産業省「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」に選定された40社あまりの上場企業が、「グローバルニッチ関連銘柄」と呼ばれることが多くなっています。

半導体製造装置メーカーの【6920】レーザーテックをはじめ、【3407】旭化成や【4062】イビデンなどの大型株もありますが、グローバルニッチ関連銘柄の多くは中小株が占めています。

グローバルニッチ関連銘柄は今後の成長も期待できますが、必ずしも株価が上がるということはなく、半導体やEV、脱炭素といったマーケットで注目されているテーマを手掛けていることが重要です。

紫垣 英昭