紫垣英昭
昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介
配当金を目的とする高配当銘柄投資は、投資初心者を中心に実践する人が増えています。
高配当銘柄投資は、配当利回りが3%以上でかつ業績が安定している複数の銘柄を長期・分散投資するというシンプルなものであるため、投資初心者であっても今すぐに始めることができます。
ただ、かつては高配当銘柄の代表銘柄として知られていた【7201】日産自動車や【7201】日産自動車は減配・無配を発表して大暴落するなど、高配当銘柄投資を実践するにはいくつか注意が必要です。
今回は、高配当銘柄投資のメリットや注意点について解説した上で、具体的におすすめの高配当銘柄10銘柄についてチャート付きで紹介していきます。
※投資に絶対はありませんので、すべて自己責任で投資を行ってください。
- 配当利回りと配当性向の違いがわかる
- 高配当銘柄投資のメリットや注意点がわかる
- 高配当銘柄投資におすすめな銘柄がわかる
高配当銘柄とは?
高配当銘柄の基本的な概要やメリットについて抑えておきましょう。
高配当銘柄の基本
株式投資で得られる利益には、値上がり益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)の2つがありますが、今回注目していく高配当銘柄は配当金に優れた銘柄のことです。
具体的には、高配当銘柄とは「配当利回りが3%以上の銘柄」のことを指します。
配当利回りは、「ある銘柄がどれだけ配当金に優れるか」を示した指標であり、
配当利回り = 1株当たり配当金÷株価×100(%)
で求めることが可能です。
例えば、ある銘柄の1株当たり配当金が30円で、株価が1,000円の場合には、
30円÷1,000円×100=3.00%
となります。
配当利回りと似た言葉として「配当性向」がありますが、こちらは「企業が出した利益を、いかに配当金に還元しているのか?」を示すもので、
1株当たり配当金÷1株当たり利益×100(%)
で求められます。
高配当銘柄投資は、配当性向よりも配当利回りを重視して行うことが一般的です。
ただ、配当利回りの計算式を見ると明らかですが、分母に株価があることには注意が必要です。
これは、株価が下げれば配当利回りが上がることを意味します。
高配当銘柄投資をする上では、この配当利回りの性質には注意しておくようにしましょう。
高配当銘柄のメリット
高配当銘柄のメリットは、何と言っても不労所得を実現できることが挙げられます。
今や、日本だけではなく欧米でもゼロ金利となっているため、銀行預金はもちろん、通貨や国債を保有していても、ほとんど金利が付きません。
一方、高配当銘柄なら年間3%以上の配当金を手にすることが可能です。
新型コロナウィルスの影響は金融市場にも広がっていますが、実体経済と反して株式市場が堅調となっている背景には、配当金が安定して得られることが好感されている面があることは間違いありません。
また、高配当銘柄投資は、配当利回りが3%以上でかつ業績が安定している銘柄を長期投資するというシンプルな投資手法であるため、投資初心者であっても簡単に始めることができます。
高配当銘柄投資は、株式投資の中でも敷居が低い投資手法であるため、株式優待投資と並んで投資初心者に最もおすすめの方法です。
高配当銘柄投資をする際の注意点
高配当銘柄投資をする際の注意点について抑えておきましょう。
成長も期待できる安全な銘柄を選ぶ
高配当銘柄投資は、配当利回りが3%以上ある銘柄に長期投資するものです。
ただ、例えばYahoo!ファイナンスの配当利回りランキングなどで調べてみると分かりますが、配当利回りが3%以上の銘柄は東証全体で500銘柄以上あります。
この中には、名前も聞いたことのない銘柄も少なくないものかと思いますが、高配当銘柄投資においては名前も知らないような銘柄は選ばないようにすることがリスク管理として重要です。
高配当銘柄投資をする上では、成長も期待できる安全な銘柄を選ぶようにしましょう。
特に、日本の場合には、その銘柄が「何年連続で配当金を増やしているか?」を示す連続増配年数が重視されない傾向にあります。
このため、高配当銘柄であっても、業績が悪化すると、配当金が減らされる「減配」や配当金が廃止されてしまう「無配」が発表されることが少なくありません。
さらに悪いことに、高配当銘柄として投資家に人気だった銘柄が減配や無配を発表すると、株価が大暴落に見舞われることが多くなります。
次のチャートは、かつて高配当銘柄として人気があった日産自動車と青山商事の月足チャートになります。
【7201】日産自動車の月足チャート
【8219】青山商事の月足チャート
両銘柄ともに、業績の悪化を理由に減配・無配を発表したことを受けて直近2年間では大暴落となっていますが、暴落前には安定した値動きをしていました。
高配当銘柄投資においては、成長も期待できる安全な銘柄を選ぶことがとにかく重要となります。
いくら配当利回りが高いからといって、名前も事業も知らない新興銘柄を選ぶようなことはおすすめできません。必ず、東証一部上場の安全な銘柄を選ぶようにしましょう。
多くの高配当銘柄に分散投資する
高配当銘柄投資をする上では、複数の高配当銘柄に分散投資することが必須です。
ここで重要なことは、配当利回りが3%以上の高配当銘柄に1銘柄だけ投資した場合にも、配当利回りが平均3%の高配当銘柄10銘柄に分散投資した場合にも、配当金は同じだけ貰えるということです。
1銘柄に集中投資した場合と複数の高配当銘柄に分散投資した場合とでは、リスクは雲泥の差となりますが、配当金のリターンは変わらないのですから、必ず分散投資するようにしましょう。
分散投資の目安としては、最低でも5銘柄、できれば10銘柄程度に分散することがおすすめです。ただ、分散投資するにしても、そのポートフォリオは全て東証一部の安全な銘柄で構成することが重要です。
なお、現在は東証の全ての銘柄が100銘柄から買えるようになっているため、かつてに比べると個人投資家であっても分散投資はしやすくなっています。
また、高配当銘柄投資ではNISAを使うのもおすすめです。NISAの120万円分の投資枠の範囲内であっても、5銘柄程度の高配当銘柄に分散投資することが可能です。
リスクが小さいディフェンシブ高配当銘柄
値下がりリスクが小さいディフェンシブ銘柄の中から、おすすめの高配当銘柄を見ていきましょう。
【9434】ソフトバンク
携帯キャリア大手の【9434】ソフトバンクは、東証全体の中でも特におすすめの高配当銘柄です。
【9434】ソフトバンクの月足チャート
ソフトバンクは2018年12月のIPOでは公募価格割れとなったものの、その後は携帯キャリアらしい安定した値動きで推移しています。
これだけの安定性がありながら、ソフトバンクの配当利回りは6.33%(2020年7月1日時点)という驚異的な値です。
日本株で高配当銘柄投資をするなら、ポートフォリオの核になる銘柄と言ってよいでしょう。
【9432】NTT
通信大手の【9432】NTTも、ディフェンシブ銘柄でありながら高配当が期待できる銘柄です。
【9432】NTTの月足チャート
NTTは直近4年間ではほぼ横ばいとなっていますが、直近の配当利回りは4.06%(2020年7月1日時点)となっているため、保有していればトータルで大きな利益となっていました。
【9433】KDDI
携帯キャリアの一角である【9433】KDDIも、業績が安定している高配当銘柄です。
【9433】KDDIの月足チャート
KDDIの配当利回りは3.77%(2020年7月1日時点)となっています。
値上がり益も期待できるNTTドコモ、圧倒的な配当利回りを誇るソフトバンクと比べると、携帯キャリア株の中では中途半端でありますが、おすすめの高配当銘柄であることには違いありません。
【9502】中部電力
ディフェンシブ銘柄の代表セクターとも言える電力会社の中では、【9502】中部電力が高配当銘柄としておすすめです。
【9502】中部電力の月足チャート
中部電力は電力株だけあって値動きが安定しており、配当利回りは3.77%(2020年7月1日時点)となっています。
値上がり益が期待できる高配当銘柄
配当利回りの分母には株価が入っていることから、株価上昇しながら配当利回りも優れる銘柄は希少となっています。
値上がり益も期待できるおすすめの高配当銘柄を見ていきましょう。
【9437】NTTドコモ
携帯キャリア大手の【9437】NTTドコモは、成長株でありながら高配当銘柄としても優れる銘柄です。
【9437】NTTドコモの月足チャート
NTTドコモは、長期的には上昇傾向にあり、配当利回りは4.26%(2020年7月1日時点)となっています。
携帯キャリア3社は、高配当銘柄投資においては外せない銘柄です。必ず、ポートフォリオに入れておくことをおすすめします。
【8001】伊藤忠商事
商社の中でも勢いがある【8001】伊藤忠商事は、成長株でありながら高配当銘柄となっています。
【8001】伊藤忠商事の月足チャート
伊藤忠商事の株価は長期的に右肩上がりとなっており、配当利回りは3.84%(2020年7月1日時点)となっています。
商社株の中では、最もおすすめの高配当銘柄と言ってよいでしょう。
配当利回りが高い高配当銘柄
東証一部銘柄の中でも、特に配当利回りが高くなっているおすすめの高配当銘柄を見ていきましょう。
【2914】JT
たばこ大手の【2914】JTは、高配当銘柄の代名詞的な銘柄と言えます。
【2914】JTの月足チャート
JTの株価は中長期的に下落していますが、配当利回りは7.85%(2020年7月1日時点)まで上昇しています。
東証一部銘柄ではトップの配当利回りとなっており、多くの投資家が配当金目的で投資していますが、この数年間の値下がりは配当金でもカバーしきれていないというのが現状です。
8%に迫る配当利回りはとても魅力的ですが、リスクについてもしっかりと認識しておきましょう。
高配当銘柄としておすすめの銘柄ではありますが、ポートフォリオの全てを埋めるような資金配分はおすすめできません。
【8316】三井住友フィナンシャルグループ
銀行株は配当利回りに優れる銘柄が多くなっており、メガバンクの【8316】三井住友フィナンシャルグループも高配当銘柄として知られています。
【8316】三井住友フィナンシャルグループの月足チャート
三井住友フィナンシャルグループの株価は、ここ数年間は下落しているものの、配当利回りは6.31%(2020年7月1日時点)と高水準です。
メガバンクはいずれも高配当銘柄であり、【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループは5.99%、【8411】みずほフィナンシャルグループは5.74%となっています(いずれも2020年7月1日時点)。
ただ、銀行は旧態依然の最たる産業であり、日銀のマイナス金利やフィンテックへの対応などで劣勢となっていることから、成長があまり期待できない点がネックです。
【8058】三菱商事
商社株も高配当銘柄の代表的なセクターです。商社大手の【8058】三菱商事を見ていきましょう。
【8058】三菱商事の月足チャート
三菱商事の株価はこの2年間では下げていますが、配当利回りは5.93%(2020年7月1日時点)となっています。
他の商社株の配当利回りとしては、【8053】住友商事は5.67%、【8031】三井物産は5.10%となっています(いずれも2020年7月1日時点)。
【2121】ミクシィ
大人気ソーシャルゲーム「モンスターストライク(モンスト)」を手掛ける【2121】ミクシィは、2020年6月に東証一部に昇格したこともあり、高配当銘柄としておすすめです。
【2121】ミクシィの月足チャート
ミクシィの長期チャートを見ると、リスクが高い動きとなっていますが、2020年6月に東証一部に昇格したことから、今後は低リスクの値動きになるものと思われます。
ミクシィの配当利回りは5.81%(2020年7月1日時点)となっています。
まとめ
今回は、高配当銘柄のメリットや注意点について解説した上で、具体的におすすめの高配当銘柄を10銘柄紹介してきました。
高配当銘柄投資は、配当利回りが3%以上かつ業績が安定している銘柄を長期投資するというシンプルなものであるため、投資初心者におすすめの投資手法です。
高配当銘柄投資をする上では、東証一部上場の成長も期待できる安全な銘柄に分散投資することが重要です。
ただ単に配当利回りが高いというだけで、名前も聞いたことのないような銘柄に投資するようなことはしないようにしましょう。
東証の高配当銘柄としては、携帯キャリア3社(【9437】NTTドコモ、【9434】ソフトバンク、【9433】KDDI)が特におすすめです。
商社株の中でも成長している【8001】伊藤忠商事や、配当利回りが高い【2914】JTなども、人気の高配当銘柄となっています。
高配当銘柄について理解して、株式投資に役立てていきましょう!
紫垣 英昭
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