生活防衛関連株は値上げラッシュで物色傾向?消費者のインフレ対策で注目のテーマ株!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

2022年は、円安・資源高・物不足を背景に、日本でもインフレになることが懸念されています。

レギュラーガソリン価格が170円を超え、国民的お菓子「うまい棒」までもが10円から12円に値上げとなるなど、あらゆる商品が値上げラッシュとなっており、生活者の財布にジワジワと打撃を与えそうです。

マーケットでは、迫るインフレを背景に、安さを売りにする生活防衛関連株に注目が集まりそうな情勢です。

今回は、インフレで生活防衛関連株が注目される背景について解説した上で、代表的な生活防衛関連株10銘柄についてチャート付きでご紹介していきます。

この記事を読んで得られること
  • インフレで生活防衛関連株が注目される背景についてわかる
  • 代表的な生活防衛関連株10銘柄についてチャート付きでごわかる
  • 投資初心者にもおすすめのテーマ株がわかる

生活防衛関連株とは?

生活防衛関連株について簡単に押さえておきましょう。

生活防衛関連株の概要

生活防衛関連株とは、不景気や物価の上昇、増税といった局面において、消費者が生活を守るための行動をすることで恩恵を受ける銘柄を総称したテーマ株です。

消費者の生活防衛手段としては、消費を控えて支出を抑えることや、中古品などの価格の安い商品を購入することが挙げられます。

2010年代には、2014年4月から消費税が5%→8%に、2019年10月には消費税が8%から10%に増税となり、この際にも生活防衛意識が高まりました。

また、最近ニュースでも話題となっていることが、先進国では日本だけが20年以上に渡って賃金が上がっていないということです。

さらに、日本では高齢化・人口減少によって社会保障費が上昇し続けていることを背景に、実質可処分所得が減少し続けています。

2025年には団塊世代が75歳以上の後期高齢者となることから、社会保障費のさらなる高騰は避けられず、消費者の生活防衛意識が高まる流れは必然とも言えます。

生活防衛関連株は日常生活でおなじみの身近な銘柄が多い

生活防衛関連株は、日常生活でもおなじみの身近な銘柄が多いことが特徴です。

生活防衛の代表的なサービスとしては、「100円ショップ(100均)」があります

100円ショップ最大手のダイソーは非上場企業ですが、【2782】セリア、【2698】キャンドゥ、【2735】ワッツは上場企業で、2022年にはイオンがキャンドゥを傘下にしたことは大きなニュースとなりました。

また、中古品売買を手掛ける銘柄も、代表的な生活防衛関連株です。

フリマアプリ最大手の【4385】メルカリは、若者を中心とする多くの人の生活圏の一部となっており、マザーズ市場(グロース市場)で時価総額最大の銘柄となっていることで知られています。

この他、安さを売りにする外食店やスーパー、ネットショッピングなども生活防衛関連株の一角です。

「業務用スーパー」を展開する【3038】神戸物産や、「ドンキホーテ」を展開する【7532】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスなども挙げられます。

生活防衛関連株は、消費者の生活に必要なサービスを手掛けており、不景気でも業績が下がりにくい(むしろ、生活防衛意識の高まりにより上がりやすい)ディフェンシブ銘柄が多くなっています。

生活防衛関連株は、日常生活でおなじみの身近な銘柄が多いこともあり、株式投資を始めたばかりの株初心者の投資デビューにもおすすめのテーマ株です。

2022年は値上げラッシュが避けられない情勢

日本経済はこれまで長らくデフレとなっていましたが、2022年には値上げラッシュとなることが避けられない情勢です。

円安・資源高・物不足で日本にもインフレの足音

2022年に入ってから、日本でもさまざまな商品の値上げラッシュが続いています。

具体的には、レギュラーガソリン価格が170円を超え、電力・ガス価格も上昇、国民的お菓子「うまい棒」が10円から12円になるなど多くの食品も値上げとなり、ティッシュやトイレットペーパーといった日用品の値上げも次々と発表されています。

今回の値上げの背景にあるのは、円安・資源高・物不足というトリプルパンチが起こっているためです。

日本円は、アベノミクス以降は円安となっており、物価や購買力から通貨の実力を示す指標である「実質実効為替レート」は1970年来の安さとなっている状況です。

次のチャートは、米ドルやユーロなど複数の主要通貨に対して日本円の為替レートを指数化した「円インデックス(円指数)」です。

円インデックス(円指数)の月足チャート

日本円は2012年末のアベノミクス以降に円安が進みましたが、直近の2020年後半から2022年初めに掛けても円安が進んだことが分かります。

そして、2020年秋からは、世界的な脱炭素を受けて、原油や石炭、液化天然ガス(LNG)などの石油資源価格が大きく上昇しています。

代表的な原油先物価格である「WTI原油先物価格」は次のようになっています。

WTI原油先物価格の月足チャート

 

原油価格は、2022年には緊迫化するウクライナ情勢も受けて一段高となっており、石油依存度が高い日本経済にとって原油やLNG価格の上昇はインフレ要因となります。

さらに、新型コロナからの急激な経済回復を受けて、半導体や海運などの供給が追い付いていない物不足の状況となっていることもインフレ要因です。

米国では、5%を超えるインフレが進行しており、FRBが早期利上げの方針を取る事態ともなっています(この利上げ観測が、ドルと円の金利差拡大となり、さらなる円安圧力にもなっています)。

次の表は、2021年の米国の消費者物価指数(CPI)[前年同月比]です。

※出典:Yahoo!ファイナンス

 

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10

11

12

21年

1.4

1.7

2.6

4.2

5

5.4

5.4

5.3

5.4

6.2

6.8

7.0

日本では物価高ほどに給料は上がらない「スタグフレーション」が懸念されている

日本のインフレ指標としては、総務省が毎月発表している「消費者物価指数(CPI)」があります。

「消費者物価指数(CPI)」は、消費者が実際に購入する段階で、商品の小売価格の変動を表す指標です。

日本の2021年の消費者物価指数(CPI)[前年同月比]は次のようになっています。

出典:Yahoo!ファイナンス

 

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11

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21年

-0.6

-0.4

-0.2

-0.4

-0.1

0.2

-0.3

-0.4

0.2

0.1

0.6

0.8

日本ではアメリカのような急激なインフレにはなっていませんが、年後半に掛けて上昇傾向にあることが分かります。

さらに、日本銀行が発表している「国内企業物価指数」を見てみると、インフレ傾向が明らかです。

「国内企業物価指数」は、企業間で売買する物品の価格水準を数値化したもので、景況感やインフレ率、消費動向を予測する指標として用いられているものです。

2021年の国内企業物価指数[前年同月比]は次のようになっています。

※出典:Yahoo!ファイナンス

 

1

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6

7

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9

10

11

12

21年

-1.6

-0.7

1.0

3.6

4.9

5.0

5.6

5.5

6.3

8.0

9.0

8.5

国内企業物価指数を見てみると、アメリカがインフレとなった時期と一致して上がっていることが分かります。

これはつまり、企業物価は上がっているにも関わらず、販売価格には転嫁できていない状況にあると考えられます。

今回のインフレの背景にあるのは、円安・資源高・物不足という外部要因です。

このため、今後の日本では、物価高にはなっても、給料は上がらない状況になる可能性が高いと考えられます。

インフレと不景気(リセッション)が同時に進行する状況は「スタグフレーション」と呼ばれており、かつてのオイルショックのような悪性インフレが、2022年の日本経済のリスクになるかもしれません。

消費者のインフレ対策で生活防衛関連株の業績が上がる?

2022年の日本経済は、値上げラッシュとなるものの給料は上がらない悪性インフレ(スタグフレーション)になる可能性があります。

多くの消費者は生活防衛をする必要が出てくることから、100円ショップや中古売買といった生活防衛サービスを使う機会が増えてくることはほぼ必然的な流れです。

また、今回のインフレの背景にある円安・資源高・物不足のうち、物不足は解消されていったとしても、円安と資源高は長引く可能性も指摘されています。

米国が利上げしたとしても、大量の国債を発行してしまった日銀は利上げに踏み切ることは難しいため、円安の進行を止めることは難しいと考えられます。

また、原油高やLNG高の背景にあるのは脱炭素ですが、人類が脱炭素を進めていくなら、そのコストとして資源高は避けられず、日本だけが脱炭素の潮流から逃れることはできません。

このように悪性インフレが長期化した場合には、生活防衛関連株の業績や株価は長期に渡って好調が続くことも期待できるかもしれません。

生活防衛関連株10選!

代表的な生活防衛関連株について身近な銘柄を中心に見ていきましょう。

【2371】カカクコム

価格比較サイト「価格.com」などを展開する【2371】カカクコムは、生活防衛関連株を象徴する銘柄といってよいでしょう。

同サイトを使って商品を調べれば、商品価格が最安値となっているネットショッピングを発見することができます。

ネットショッピングをしたことがあれば、誰しもが一度は使ったことがあるのではないでしょうか?

【2371】カカクコムの月足チャート

カカクコムの株価は、右肩上がりの成長曲線を描いています。

物価高が話題となった直近では下げていますが、これまでの上昇トレンドへの調整に見えます。

【2782】セリア

100円ショップ業界2位の【2782】セリアは、代表的な生活防衛関連株の一角です。

【2782】セリアの月足チャート

セリアの株価は、2017年末に高値を付けて以降は苦戦している状況です。

【2698】キャンドゥ

イオン傘下で100円ショップ業界3位の【2698】キャンドゥも、生活防衛関連株の一角として注目の銘柄です。

【2698】キャンドゥの月足チャート

キャンドゥの株価は、イオンによる子会社化TOBが発表された2021年10月には上場来高値更新まで買われましたが、それ以降は下落が続いています。

【2735】ワッツ

100円ショップ「ワッツ」「meets.」「シルク」などを展開する【2735】ワッツも、生活防衛関連株として注目の100均株です。

【2735】ワッツの月足チャート

ワッツの株価は、2017年に高値を付けてからは、やや厳しい値動きとなっています。

【4385】メルカリ

フリマアプリ「メルカリ」を展開する【4385】メルカリは、マザーズ市場(グロース市場)最大の時価総額を誇ることでも知られる、代表的な生活防衛関連株です。

今や中古品売買においては、ブックオフやゲオなどの店舗型ではなく、メルカリでの取引が中心となっています。

【4385】メルカリの月足チャート

メルカリは、新型コロナの巣ごもり消費拡大で注目されたこともあり、2020年以降は上昇傾向にあります。

【3038】神戸物産

格安スーパー「業務スーパー」を展開する【3038】神戸物産は、小売業を代表する生活防衛関連株です。

【3038】神戸物産の月足チャート

神戸物産の株価は、右肩上がりの成長を続けています。

「業務スーパー」の業績拡大は多くの経済ニュースでも取り上げられており、同社の時価総額は1兆円の大台に到達しました。

【7532】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

格安販売店「ドンキホーテ」を展開する【7532】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスも、多くの消費者にとっておなじみの生活防衛関連株と言えるでしょう。

【7532】パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの月足チャート

パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの株価は、「ドンキホーテ」の店舗拡大を背景に長期的な上昇を続けています。

【3349】コスモス薬品

ドラッグストア「ディスカウント ドラッグコスモス」を展開する【3349】コスモス薬品は、低価格に強みを持つドラッグストアとして知られています。

ドラッグストアは、薬や化粧品で利益を出す代わりに、日用品や食料品を安くするビジネスモデルとなっていることから、生活防衛関連株の一角を占めるセクターです。

【3349】コスモス薬品の月足チャート

コスモス薬品の株価は、右肩上がりの上昇を続けています。

ドラッグストア株としては、【3141】ウエルシアホールディングスや【3391】ツルハホールディングスなども主力銘柄です。

【7581】サイゼリヤ

低価格を売りにするイタリアンレストラン「サイゼリヤ」をチェーン展開する【7581】サイゼリヤは、外食株としては代表的な生活防衛関連株です。

【7581】サイゼリヤの月足チャート

サイゼリヤは、新型コロナで厳しい外食株ですが、株価はなんとか持ちこたえているといってよいでしょう。

低価格に強い外食株としては、牛丼チェーン「すき家」を展開する【7550】ゼンショーホールディングス、うどんチェーン「丸亀製麺」を展開する【3397】トリドールホールディングスなども挙げられます。

【7564】ワークマン

作業服に強いアパレル店「WORKMAN」を展開する【7564】ワークマンは、低価格アパレルとして注目の生活防衛関連株です。

【7564】ワークマンの月足チャート

ワークマンの株価は、長らく成長を続けていましたが、2021年以降は下落が続いています。

まとめ

今回は、生活防衛関連株が注目される背景について解説した上で、代表的な生活防衛関連株10銘柄についてチャート付きでご紹介してきました。

円安・資源高・物不足を背景に値上げラッシュが続いており、2022年の日本経済は、物価高にも関わらず給料は上がらない悪性インフレ(スタグフレーション)になることも懸念されています。

インフレが長引くことになれば、生活防衛関連株は長期的に買われるテーマ株になることも期待されます。

生活防衛関連株は、100円ショップや「メルカリ」、「業務スーパー」や「ドンキホーテ」など、日常生活でもおなじみの身近な銘柄が多いことが特徴です。

多くの人が利用している生活防衛関連株は業績も良く、右肩上がりの成長を遂げている銘柄も多くなっています。

また、業績が安定しているディフェンシブ銘柄が多いことからも、生活防衛関連株は投資初心者にもおすすめのテーマ株と言えるでしょう。

紫垣 英昭