夏枯れ相場はいつからいつまで?投資戦略についても解説!

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紫垣英昭

昭和62年証券会社に入社し事業法人、金融法人、ディーラー経験
現在、延べ2万人近くの個人投資家に日本株の売買指導を行っている。
3年前より「全方位型トレード・システム」を提唱し、多くのプロトレーダーを育成。
著書3冊を出版、新聞、雑誌の執筆や講演も多数あり。
著書紹介

8月のお盆休みは「夏枯れ相場」と呼ばれ、売買代金が減って閑散としやすい傾向があります。

日本人投資家・海外投資家が夏休みシーズンに入ることが、夏枯れ相場が閑散とする背景です。

夏枯れ相場では、銘柄のボラティリティー・流動性ともに低下して、小幅な値動きとなりやすいため、短期トレードをするにしても利益を出しづらいことには注意が必要です。

この記事では、夏枯れ相場の期間やアノマリー、過去の夏枯れ相場の動向について解説した上で、夏枯れ相場中の投資・トレード戦略や2023年の夏枯れ相場の対策についても紹介しています。

この記事を読んで得られること
  • 夏枯れ相場の期間やアノマリーがわかる
  • 過去の夏枯れ相場の動向についてについてわかる
  • 夏枯れ相場中の投資・トレード戦略や2023年の夏枯れ相場の対策が学べる

日本株の夏枯れ相場とは?

夏の相場格言「夏枯れ相場」について押さえておきましょう。

8月のお盆期間中は売買代金が減り閑散としやすい

「夏枯れ相場」とは、8月のお盆期間に、市場参加者が減り、相場の動きが鈍る現象を指すアノマリーです。

夏枯れ相場中には、値動きが小幅になりやすい傾向があります。

また、夏枯れ相場中に付けた最安値は「夏底」とも呼ばれます。

一般論として、市場参加者が減り取引量が小さくなると、ちょっとした材料にも敏感に反応して、乱高下しやすくなると言われますが、夏枯れ相場中はむしろ閑散としやすく、強い銘柄も弱い銘柄も少なくなりがちです。

夏枯れ相場となる背景について

8月のお盆期間に「夏枯れ相場」になりやすい背景としては、少なくない市場参加者が夏休みを取ることにあります。

日本では、お盆期間中はお盆休みとなりますが、東証の多くを占める外国人投資家も夏季休暇を取り、避暑地へバカンスに行く慣習があります。

また、8月中旬という期間は、3月末日を決算日としている多くの上場企業にとっては、第一四半期決算を発表し終える期間に当たります。

第一四半期決算の発表は、7月~8月始めに掛けて集中するため、夏枯れ相場期間中は第一四半期決算発表後のイベントが少ない時期に相当することも閑散としやすい原因の一つです。

過去の夏枯れ相場を徹底検証!

TOPIXや日経平均株価の出来高で見てみると、お盆期間中が「夏枯れ相場」となっていることは一目瞭然となります。

過去の夏枯れ相場について、TOPIX(東証株価指数)の週足チャートおよび日足チャートを使って見ていきましょう。

夏枯れ相場中は出来高が大きく減少する

次のチャートは、2019年と2020年の夏を含む週足チャートです。

TOPIXの週足チャート(2019年~2020年)

2019年、2020年ともに、お盆期間中には出来高が目に見えて小さくなっていることが分かります。

また、大きく上昇しているわけでもなく、下落しているわけでもなく、小幅な値動きとなっています。

2020年は新型コロナ相場の上昇相場の途中でしたが、ほとんど動きませんでした。

続いて、2021年と2022年の夏枯れ相場を見ていきましょう。

TOPIXの週足チャート(2021年~2022年)

2021年と2022年も、お盆期間中には出来高が目に見えて小さくなっていました。

2021年は大きく下げましたが、その後は反発し、2022年は夏枯れ相場後には下げています。

夏枯れ相場は上がる・下がるとは一概には言えませんが、出来高が急減することは明らかな傾向となっています。

夏枯れ相場はいつからいつまで?

夏枯れ相場中の値動きについて、日足チャートでより詳細に見ていきましょう。

次のチャートは、2021年の日足チャートとなります。

TOPIXの日足チャート(2021年夏)

2021年の夏枯れ相場は、8月12日(木)頃から8月20日(金)頃までだったと見られます。

続いて、2022年の夏枯れ相場について日足チャートで見ていきましょう。

TOPIXの日足チャート(2022年夏)

2022年の夏枯れ相場は、8月15日(木)頃から8月19日(金)頃までだったと見られます。

ただ、8月12日(金)には大陽線で大きく上げて出来高も上昇しました。

2021年・2022年のいずれも、週足チャートで見ると、夏枯れ相場中の出来高減少は目に見えて分かりますが、日足チャートだとあまり可視化できません。

日足チャートで見ていると、体感的には夏枯れ相場を実感しにくいですが、傾向として夏枯れ相場中には閑散としやすいことに注意が必要です。

相場参加者が夏休みを取り始める時期はバラけるため、お盆休みに向かって夏枯れ相場となりやすく、お盆休み後から元に戻ってくると言えそうです。

夏枯れ相場の投資戦略を解説

夏枯れ相場中には、どのような投資戦略やトレード戦略を取るべきかについて見ていきましょう。

お盆休みでザラ場を見られる個人投資家は注意しておこう

個人投資家に少なくない行動パターンとして、お盆休みに入って、普段は見られないザラ場を見られるため、下手に取引してしまうケースがあります。

しかし、夏枯れ相場中は市場参加者が少なく、デイトレードやスイングトレードをするとしても、大きく動かないケースが多いため、利益を取りづらい傾向があることに注意が必要です。

短期投資で利益を得るには、銘柄の値幅の大きさ(ボラティリティー)や取引のしやすさ(流動性)が重要となりますが、夏枯れ相場中はいずれも低下するためです。

お盆休みで、マーケットの日中の値動きを見られるようになり、普段はできない短期投資ができるかもしれませんが、夏枯れ相場中は利益が出しづらい相場状況となっていることには留意しておくようにしましょう。

順張りの方がまだ勝ちやすい

大前提として、相場のボラティリティー・流動性ともに低下する夏枯れ相場中は、順張り・逆張りのいずれにおいても利益を出しづらい傾向にあります。

ただ、どちらかと言えば、順張りの方がまだ利益を出しやすいかもしれません。

夏枯れ相場中は、市場への資金流入自体が低迷するため、大きく買われることも大きく売られることも少なくなります。

それでも資金が集中するとしたら、決算やテーマなどで強い銘柄です。

夏枯れ相場中にも急騰や暴落する銘柄はなくはないため、順張りの方がまだ勝ちやすいと言えるでしょう。

資金を小さくしてリスクを低下させる

夏枯れ相場中は利益を出しづらい相場環境になっているため、トレードをするとしても、資金を小さくしてリスクを低下させることが重要です。

「夏枯れ相場中は動きが小さくなるから、その分だけ玉を大きくして利益を確保しよう」と考える個人投資家の方は少なくありません。

ただ、夏枯れ相場中はボラティリティー・流動性ともに低下するため、そもそも勝率も低下することを考慮すべきでしょう。

お盆休み期間中に、上手くトレードをしてお小遣いを稼ぎたいと考える個人投資家も少なくありませんが、損するケースについても考えるようにしておきましょう。

夏枯れ相場中は、利益を出せたらラッキー程度に考えて、資金量を小さくすることを推奨します。

2023年の夏枯れ相場で注目の銘柄やテーマ株

2023年の夏枯れ相場について見ていきましょう。

まず、2023年8月の東証カレンダーは次のようになっています。

2023年8月の東証カレンダー

上図の水色の日には東証は開いており、赤色の日は休場です。

東証にお盆休みはなくカレンダー通りのため、8月11日(金)の「山の日」は休場となっていますが、それ以外は通常通りとなっています。

2023年は、8月14日(月)から8月18日(金)に掛けて夏枯れ相場になるものと推測されます。

また、3連休からのお盆休み前にも警戒感が高まりそうであり、3連休前の8月10日(木)も売買が低調になってもおかしくありません。

以上を踏まえて、2023年の夏枯れ相場で注目されそうな銘柄やテーマ株を見ていきましょう。

日銀のYCC修正で注目される銘柄

日銀は、2023年7月28日の金融政策決定会合で、YCC(イールド・カーブ・コントロール)の柔軟化を決定し、それまで上限を0.5%としていた長期金利の上限を1.0%まで修正しました。

これまで円安の要因とされてきた日米金利差拡大の是正につながることが考えられますが、金融緩和は継続となっているため、逆に円安が進行している状況となっています。

今後は、マイナス金利の撤廃など、日銀の金融政策の出口戦略にも注目が集まりそうです。

今回のYCC修正は、円安トレンドの転換とまではなっていませんが、金利上昇で恩恵を受ける金利上昇メリット関連銘柄として、銀行株や保険株が買われました。

【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループの日足チャート

【8306】三菱UFJフィナンシャル・グループなどのメガバンクや、【8308】りそなホールディングスなどの大手地方銀行は大きく買われました。

一時的な上昇に留まったと見る向きもありますが、日銀の動きに関わる銘柄は、2023年の夏枯れ相場においても引き続き注目のテーマと言えるでしょう。

半導体や自動車、海運など注目銘柄

半導体や自動車、海運といった、マーケットでの注目度が高い銘柄にも引き続き注目です。

半導体株としては、【8035】東京エレクトロンや【6857】アドバンテスト、【6146】ディスコといった半導体製造装置メーカーに注目です。

自動車株としては、【7203】トヨタ自動車はもちろん、自動車部品最大手の【6902】デンソーなども押さえておきましょう。

特に、トヨタ自動車は、2023年8月1日に発表した第一四半期決算において、4~6月期の連結純利益が前年同期比+78%増の1兆3,113億円だったことを受けて一段高となっています。

【7203】トヨタ自動車の日足チャート

ただ、トヨタ自動車は第一四半期決算発表を受けて夏枯れ相場前に買われているため、夏枯れ相場中には停滞が懸念されるとも言えそうです。

【9101】日本郵船・【9104】商船三井・【9107】川崎汽船の三大海運を中心とした海運株も強く、一時10%を超えていた日本郵船と商船三井の配当利回りは減配となったものの、株価は好調です。

【9101】日本郵船の日足チャート

まとめ

この記事では、夏枯れ相場の期間やアノマリー、過去の夏枯れ相場の動向について解説した上で、夏枯れ相場中の投資・トレード戦略や2023年の夏枯れ相場の対策についても紹介してきました。

過去の夏枯れ相場を見てみると、お盆休みの始めに掛けて出来高が減少していき、お盆休み明けまでは閑散とする傾向が見てとれます。

夏枯れ相場中に上げる・下げるとは一概に言えませんが、銘柄のボラティリティー・流動性ともに低下して、小幅な値動きとなりやすいことには注意が必要です。

2023年は、3連休前の8月10日(木)から8月18日(金)に掛けて、夏枯れ相場になっていくものと思われます。

夏枯れ相場では利益が出しづらいため、お盆休みでザラ場を見られるからといって、リスクを取り過ぎたトレードをしないように気を付けておきましょう。

紫垣 英昭